ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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通算160話目にして、ようやくNS3完結っと……
ほぼオリジナルですが、まぁ、そこはそれということで



永遠のともだち~Ep.7:目覚めの時、そして最後のひと波乱~

巨大なタコとなった悪夢を、プリキュアたちが力を合わせて倒す、少し前。

そこから離れた場所では、セイバーと友護、そして友護の知り合いとおぼしき男が、黒いオーラをまとった巨大な男――災禍の顕主と戦っていた。

 

「ユグドフォルテウェーブ!!」

「ふん!はぁっ!!」

「雷よ!!」

 

それぞれが出せる技を、一斉に災禍の顕主にぶつけるが、そのことごとくを、闇の波導で打ち消されてしまった。

歴然としている力の差を理解していながらも、どうにか倒す手段はないか、個々人でその策を巡らせていると、災禍の顕主は右半身を下げる形で身構えた。

その構えに、セイバーは見覚えがあった。いや、その構えは、自分の体が覚えているものそのものだった。

そして、その想像は現実のものとなった。

 

獅子戦吼(おぉぉぉぉっ)!!」

 

災禍の顕主が雄叫びを上げながら、右手をつきだしてきた。同時に、その手に込められた闘気が獅子の頭の形となって飛び出してきた。

 

――やはり、同じ技!!

 

それは、セイバーが海外で偶然出会った武芸者から受け継いだ技だった。

なぜ、災禍の顕主がこの技を使えるのか、それはわからないが、一つだけ、セイバーのなかで決心したことがあった。

 

――同じ技を使う以上、俺が引導を渡してやらなきゃいけない!

 

どちらが先に習得したのか、そんなことはどうでもいい。

だが、同じ技を使う以上、災禍の顕主は自分と同門ということになる。ならば、引導を渡すことが、せめてもの手向けというものだろう。

 

「……災禍の顕主!」

 

セイバーは災禍の顕主の名を叫び、エターニアハートの切っ先を向けた。

 

「お前が誰の悪夢で、どこから来たのか。そんなことはどうでもいい!だが、同じ技を持つ身として、お前をこのままにするわけにはいかない!!」

 

セイバーがそこまで宣言すると、災禍の顕主はセイバーへ視線をむけた。

その瞬間、災禍の顕主は目を見開いた。

その記憶の奥には、セイバーと同じ姿の青年がいた。

彼もまた、世界に安寧をもたらすため、その身を賭して自分と戦った。

そしていま、目の前にいる彼もまた、その青年と同じ出で立ちをしている。

自分の瞳に映る彼の魂の輝きは、あの時の青年のものと同じ。

ならば。

 

「……ならばどうする?導師よ!!」

 

答えはわかりきっているが、あえて再び問おう。

討つべき敵を前に行う、彼の選択を。

 

「導師?……俺は騎士なんだけど……いや、そんなことはどうでもいいか」

 

セイバーは災禍の顕主が何を言っているのか、理解できずにいたが、ひとまず置いておくことにした。

どうするか、なんてことは決まっている。

セイバーはエターニアハートに心の花の力を流し、その刃から青白い炎を立ち上らせた。

 

「お前を、浄化する!!」

 

その答えを聞いた災禍の顕主は、再びセイバーにむかって、突進してきた。

だが、その行く手を一本の槍が阻んだ。

槍が飛んできた方へ視線を向けると、そこには、白い鎧をまとった一人の戦士がいた。

その姿に見覚えがあったセイバーは、驚愕に目を見開いた。

 

「お前は……湊っ?!」

「今の俺の名前はアステアっすよ!先輩!!」

 

そこにいたのは、かつてフュージョンが復活した大事件の時、キュアエコーとともに誕生した、プリキュアの守護騎士アステアだった。

だが、あの事件以降、エコーもアステアも変身する力を失ったはずだ。

その疑問を察してか、湊―-いや、アステアは、いまはそんなことよりも、と災禍の顕主に視線を向けた。

 

「まずはあいつをどうにかしないと!」

「……それもそうだな。友護、それからマントのお兄さん、いけるか?!」

「……いわれずとも」

「ふっ、無論だ」

 

セイバーの問いかけに、二人がそう返すと、四人の視線は一斉に災禍の顕主へと向いた。

だが、災禍の顕主の視線は、セイバー以外にむいてはいない。

どうやら、彼の興味はセイバーにあるようだ。

 

「……さっきから、あいつ、春川以外には興味がないようだな」

「そのようだ。しかし、いったい、あの化物とどんな因縁があるんだ?君は」

「そんなの、俺が知りたいよ……けどまぁ、仕方ないかな」

 

いかにも面倒そうではあるが、セイバーはエターニアハートを握りしめ、身構えた。

 

「奴は俺が相手をする!みんなは子供たちとプリキュアのみんなを!」

「了解!」

「……ちっ、しゃあない」

「ふふふっ、なかなか勇敢で無謀な少年だ。いいだろう!だが、私たちが駆け付けるまで倒れるなよ!!」

 

敵意がセイバー一人に向いている以上、これはセイバーと災禍の顕主の戦い。ならば、無関係である子供たちを巻き込むわけにはいかない。

それをわかってくれたアステアと友護たちに感謝しつつ、セイバーは災禍の顕主に意識を向けた。

 

「……もはや、語るまい」

「……いくぞ!!」

 

セイバーと災禍の顕主は同時に踏み出し、セイバーは手にした剣を、災禍の顕主はその爪を振りかざした。

地面をえぐり、空間を切り裂くその剛爪を、セイバーは手にした剣で受け止め、あるいは回避しながら、災禍の顕主と切り結んでいた。

やがて、セイバーと災禍の顕主に間合いが生まれ。

 

「おぉぉぉぉぉぉっ!!」

「やはり、我らの幕はその技か!!ならば!!」

 

セイバーの左手に心の花の光とは違う、青白い光が集まり始めた。それを見た災禍の顕主もまた、右手に赤黒い炎を集めはじめ。

 

「「獅子、戦、吼!!」」

 

互いに同じ、ライオンを思わせる光と轟音がぶつかり合い、激しい衝撃と光が生まれた。

だが、その光も衝撃も、数分としないうちに互いの技に込められた闘気が尽きたことで消滅した。いや、しようとしていた。

 

「なにっ?!」

「これが、俺の全てだ!!獅吼戦花っ!!」

 

そこにさらに、セイバーは心の花の光と闘気を掛け合わせた、自分の力で昇華させた技を繰り出してきた。

心の花の光を纏ったその闘気に、災禍の顕主は驚愕し、防御することを忘れてしまった。

その結果、災禍の顕主は吹き飛び、黒い霧へと還っていった。

 

「……終わった、か……」

 

ふらり、とセイバーの体が揺れた。

悪夢との度重なる戦いと、それに伴う四度にわたるフォームチェンジ。そして、災禍の顕主との戦いと二度の大技。

かなりの体力を消耗してしまったためか、セイバーの体は限界だった。

だが、セイバーは倒れなかった。

 

「……ここで、倒れることはできないっての……」

 

疲れた体に鞭打って、セイバーは友護が向かったであろう、マアムのもとへと急いだ。

友護はあれで、頼まれたことはきっちりとこなす男だ。子供たちは安全な場所へ、現実の世界へと返してくれているだろうことはわかっていたから、安心して任せることができた。だか、だからこそ、セイバーは一つ、危惧している事がある。

それは、こんな事件を引き起こしたマアムの処分。身も蓋もないことを言えば、マアムの討伐だ。

セイバーは、いや、菖はよくは知らないが、友護の所属している組織の上層部にいると思われる「真昼の月」と呼ばれる人物は、こういった事件を起こす存在に容赦をしない性格のようだ。

おそらく、再発防止の意味も込めて、マアムを始末するよう、言いつけているに違いない。

 

「急がなきゃ!!」

 

ふらつく足を踏み出しながら、セイバーはマアムがいると思われる場所まで急いだ。

そして、その予想は的中した。

 

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その頃、子供たちを避難させ終わらせた友護は、マアムの背後に立っていた。

 

「お前が子供たちを眠らせていたっていう妖精だな?」

「……え?」

「私怨はないが、消えてくれ」

 

そう口にした瞬間、友護は手刀を素早く振り降ろした。

が、マアムにその手刀が当たることはなかった。

訝しげに手刀の先を見ると、そこには、息を切らせているセイバーの姿があった。

 

「……何のつもりだ?」

「……やめろ。それが正しい選択だとは、俺は思えない!」

「邪魔するな。今は反省したかもしれないが、今後、同じようなことを繰り返さないという保証はない!なら、いまここで殺しておいたほうが今後のためだ!!」

「だからといって、安易に殺すのは納得いかない!!」

 

殺しを良しとしないセイバーだからこその答えだったが、それに納得する友護ではなかった。

 

「なら、今後、同じようなことが起こらないと保証できるのか?!今回はお前たちが気づいて止めることができたからまだいい!だが、次は大人を巻き込むかもしれない!現世(うつしよ)にいるすべての生き物を巻き込むかもしれない!そうなったら遅いんだ!!」

「けど、いまここでこいつを殺せば!ユメタは、こいつの子供が同じことを繰り返すかもしれないじゃないか!!」

 

なくはない話だ。

もし、人間がマアムを殺したとユメタが知れば、人間に復讐するため、マアムがしたことと同じことをするかもしれない。

なぜなら、バクは夢に住まい、夢を喰らう霊獣としての側面がある。夢を司る存在でもある以上、並の人間がかなうはずがない。

それをわからない友護ではなかった。

 

「……ちっ……(ぬる)いな、お前も」

「あいにく、お前が脆弱って蔑んでる連中の味方だからな、俺は」

「……ふっ……今は見逃す。が、次はない」

「その時は、俺も止めない」

 

セイバーの説得にしぶしぶながら、友護は応じたらしい。

だが、次はセイバーも止めるつもりはないというあたり、どうやら同じことを繰り返したら本気で殺しにかかるつもりのようだ。

 

「わ、わかりました。に、二度としません」

 

若干、おびえながらではあるが、マアムはうなずいて返した。

その態度に満足したのか、友護は何も言わず、その場から去っていった。

一方、連れの男性はというと。

 

「妖精のご婦人。私も一人の親だ。だからこそ言わせてもらうが……あなたの気持ちはわからないでもない。しかし、子供に手を差し伸べるばかりが親ではなく、見守り、信じることも親の務めだと、私は思う」

「……えぇ、まったくその通りね……私は、自分の子どもをまったく信じてあげられなかったのかもしれない……」

「それがわかれば、おそらく私たちが再びここにくることはないだろう」

 

年齢に合わない、爽やかな笑みを浮かべて、友護に続き、その場を去っていった。

慌ただしい二人が立ち去ると、セイバーはそっとため息をつき。

 

「俺たちも帰るか、アステア」

「そうだな、兄貴」

「……兄貴?」

 

アステアの言葉に疑問を感じながらも、セイバーはアステアとともに現世へと戻るゲートをくぐっていった。

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