ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
もしかしたら、別の話でまた5GoGoとの話は書くかもしれません。
まぁ、ひとまず、本編どうぞ。
その日、菖はサンクルミエール市の町を歩いていた。
その脇には、やや厚めの封筒が挟まれていた。
そこに入っているのは、いままで菖が発掘作業に同行した遺跡に関する資料と自分なりの見解を書き記したレポートが入っている。
なぜ、そんなものを持っているのかというと、
その仲間というのが、将来、小説家を目指しているこまちだった。
――半分、冗談のつもりで言ったんだけど、まさかこまちから連絡がくるとは思わなかったなぁ
以前、紅葉狩りへ行った際に初めて先輩プリキュアの存在を知ったのだが、こまちが小説家を目指していると知り、自分が持っている遺跡の資料を見せようか、と提案したことがあった。
その言葉をこまちが覚えていたらしく、新しい小説の舞台の参考にしたいから、と連絡が入ってきたのだ。
ちなみに、その隣には。
「はぁ……なんだか、すごいです」
と、町並みに感動しているつぼみがいた。
なんでも、りんが実家の花屋のことで相談したいことがあるとのことだったので、一緒にいくことになったのだ。
「う~ん、この町並み、日本って感じじゃないよなぁ。ヨーロッパの……あぁ、フランスとかイングランドみたいな感じなんだ」
「行ったことがあるんですか?」
サンクルミエールの和洋折衷、というよりもいかにもヨーロッパの町並みを模倣しました、という景観に、菖がそんな感想をもらうと、つぼみがきょとんとした顔で問いかけてきた。
その問いかけに、菖は苦笑しながら、俺の趣味、とだけ言うと、なぜか納得したようだ。
余談だが、いまでこそ祖父の仁頼と二人暮らしだが、菖の両親は健在だ。
考古学者という職業柄、世界各地の遺跡を研究するため、海外へ向かっているのだが、菖も長期休暇で時間があれば両親のいる国へ飛び、一緒に発掘作業を手伝うことがある。
そのため、サンクルミエールの町並みにどこか懐かしさを覚えてもいた。
「さて、ここでいつまでも時間をつぶすわけにはいかないし、行こうか」
「はい!」
菖がそう言うと、つぼみは元気よく返事をして菖の隣を歩き出した。
二人のその様子が、カップルのように見えなくもなかったため、この後、ちょっとした事件になるのだが、それはまた別の話。
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こまちとりんが集合場所として指定してきたアクセサリーショップ「ナッツハウス」の前に来た二人は、なんのためらいもなく、中に入っていった。
「「こんにちは」」
「いらっしゃ……あぁ、君たちか。久しぶりだな」
店に入ると、褐色肌で金髪の青年に変身したナッツが出迎えてくれた。
「お久しぶりです、夏さん」
「久しぶり。ところで、こまちとりんに用事があったんだけど……」
「二人なら、こっちだよ」
菖が二人がいるかどうかを問いかけると同時に、上から別の声が聞こえてきた。
そちらへ目をやると、今度は茶髪で爽やかな印象を受ける青年が顔を出していた。
その隣には、りんとこまちが顔をのぞかせていた。
「あ、来た来た」
「こんにちは、菖さん。つぼみちゃんも」
「こんにちは。りんさん、こまちさん、小々田さん」
「や、三人とも。久しぶり」
りんとこまちに笑顔で挨拶を返した二人は、ナッツに許可を取って、二階へとあがった。
そこには、のぞみとうららとくるみがうんうんとうなっている姿があった。
「……何があったの?」
「あぁ、あたしのうちにきた仕事で、今度、結婚式のブーケを作ることになったんですけど、そのデザインが今一つ決まらなくて」
「わかります!悩みますよねぇ、あれ……」
「わかる?そうなんだよねぇ……せっかくの晴れ舞台だから、思い出に残るものにしたいけど、あんま派手派手しいのは花嫁に失礼だし、かといって地味なのにはしたくないからさぁ」
りんの口から出た愚痴に、つぼみは同意するように大きくうなずいた。
つぼみも、結婚式のブーケを作る経験をしたことがあるため、その大変さは理解しているようだった。
「で、のぞみたちにも手伝ってもらったんだけど」
「……行き詰ったんだ?」
「はい」
菖の言葉に、こまちがため息をつきながら返した。
どうやら、こまちとかれんも手伝っているようだが、それでもアイデアがまとまらず、困っているようだ。
「それで、餅は餅屋ってことでつぼみにも協力してもらおうってことになったの。ごめんね、変なことに巻きこんで」
「いえ!お役に立てるのなら、この花咲つぼみ、全力で協力いたします!」
りんが申し訳なさそうにつぼみに謝罪すると、つぼみは握りこぶしを作って、高らかに宣言した。
その様子を微笑みながら見守っていた菖は、思い出したかのように、脇に挟んでいた封筒をこまちに手渡した。
「はいこれ、この前言ってた遺跡の資料。中に、俺なりの見解をまとめたレポートも入ってるから」
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして……さてと、俺の用事は終わ……」
「ええぇぇぇぇ?!帰っちゃうんですかぁ?!」
つぼみが突然、大声でそう問いかけてきたので、菖は苦笑を浮かべながら、反論した。
「……いや、帰らないから。俺一人ならともかく、暗くなるまでかかるかもしれないのに、女の子一人を置いていけないでしょ」
さすがに、暗い中で女の子一人を帰らせるつもりはない。
第一、つぼみが付いてくると言った時点で、こうなることは大体予測していたため、最初からそのつもりだったのだ。
もっとも、それをやろうものなら、ゆりとももかに何をされるかわかったものではないので、選択の余地というものが、菖の頭の中には最初からなかったわけでもあるのだが。
「まぁ、けど俺はそこまで詳しいわけじゃないから、陣中見舞いする程度にしか役に立たないと思うけど」
「いえ、正直、そのほうが助かります……なにせ、あたしら全員、まともな料理作れそうにないし……」
「……あぁ……」
りんの言葉に、菖は苦笑を浮かべてしまった。
つぼみとえりかから聞いた話でしかないが、のぞみたちプリキュア5のメンバーは、りんとくるみ以外はまともな料理を作れないらしい。
こまちはなんでも羊羹を、うららはカレーを入れようとしてしまうし、かれんは最近は改善されつつあるものの、適量などの意味がわからなかったり、高級食材を意味もなく入れようとしてしまう傾向がある。
のぞみに関しては論外で、鍋をひっくり返すわ、調味料を間違えるわ、もうしっちゃかめっちゃかになってしまうのだそうだ。
そのため、
「なので、お願いします。あたしの心の平穏のために、台所を守ってください」
「……いまちゃっかりぶっちゃけたよね?」
りんからの言葉の端々に、自分の心の平穏を保ちたいという欲求が見え隠れしていることに気づいた菖は、苦笑しながらそう返した。
もっとも、深く追求するつもりはなく、快く承諾したのだが。
とは言うものの、つぼみが加わってまだ時間もそれほど経っていないため、菖は店の中を見学させてもらうことにした。
「へぇ……こうして見ると、けっこう色々あるもんなんだな」
「あぁ。特に、りんのデザインは人気が高いな」
夏がカウンターで菖の背中を見ながらそう返した。
その言葉に、菖は微笑みながら、そうなんだ、と返し、笑みを浮かべた。
ふと、菖は思い出したかのように夏に問いかけた。
「そういえば、かれんとシローの姿が見えないけど?」
「シローはいま配達の仕事だ。かれんも生徒会関連の用事で遅くなるといっていたが、そろそろ……」
と夏が言っていると、店の入り口に備えつけられているベルが、カランカラン、と涼しい音を響かせた。
見ると、玄関にはちょうど噂になっていた二人がいた。
「噂をすれば、かな」
「そうだな。おかえり、二人とも」
「ただいま……って、なんだ菖も来てたのか」
「ごめんなさい、遅くなって……あら、菖さん。いらっしゃい」
菖が来ていたことに驚いたのか、シローとかれんは目を見開いていた。
俺は珍獣か、という感想を呑みこんで、菖は笑みを浮かべながら、二人に挨拶を返した。
「久しぶり。にしても、珍しいな。かれんとシローの組み合わせって」
「そういえば、そうだな」
なお、シローとよく一緒にいる場面を目撃されるメンバーは、今も二階で難しい顔をしてうなっているうららである。
かれんは親友のこまちか、くるみが一緒にいることが多いのだが、今回の組み合わせは珍しい。
それはそれで新鮮なので、特に無粋なことは言わないのだが。
「すぐそこで合流できたのよ。それより、菖さんはどうしてここに?」
「あぁ、こまちに頼まれて遺跡の資料を渡しにね。あとは、りんの用事で呼ばれたつぼみのボディガードってとこかな?」
「ボディガードって、そんな大げさな……」
菖の説明に、シローは苦笑しながら返した。
だが、菖は首を横に振って否定した。
「いやいや、つぼみの花好きが度を越していることを忘れたか?」
「……あぁ……」
菖のその一言に、シローとかれん、そして夏も納得できてしまった。
ともすれば、時間が経つのも忘れて花を眺めているほど、つぼみは花が好きなのだ。
かくいう、菖は遺跡や石碑などの歴史遺物を見つけると、自制はできるものの、時間も忘れて調べ始めることがある。
その意味では実に似たり寄ったりな二人なのだ。
「それで、つぼみは?」
「二階でのぞみたちと頭抱えてるよ」
「あぁ、例の……菖さんは参加しないんですか?」
「俺が参加したところでどうなるってこともないでしょ?だったら、甘いものでも作って、やる気を出してもらうくらいしか、俺に出来ることはないよ」
菖は微笑みを浮かべながら、かれんの問いかけに返した。
かれんは苦笑しながら、それもそうですね、と答えた。
「あの、何か、お手伝いしますか?」
「お、お願いできる?ちょっと作ったことがないやつを作ってみようと思ってるから、ちょっと手伝ってほしいんだ」
「わたしで良ければ、よろこんで」
菖の頼みであれば断る理由がないかれんは、優しい笑みを浮かべながらうなずいた。
「ちなみに、何を作る予定だ?」
「ん~、結婚式のブーケを作ってるからねぇ、ゲン担ぎとは違うけど、ストロベリーパイでも作ろうかなと思って」
イチゴの花言葉は「幸福な家庭」。
ブーケを作っているのぞみたちも、新郎新婦が幸福な家庭を築くことを望んでいるはず。
なら、差し入れでゲン担ぎというのも悪くはない。
それはかれんも同意のようで。
「それなら、パイ生地だけ買いに行けば大丈夫ですね。ご一緒します」
「ありがとう。それじゃ、早速行こうか」
「はい」
菖の提案に、かれんは若干、頬を赤く染めてうなずいた。
あとがき代わりのその頃の話(スキット風)
~菖とかれんがパイ生地を買いに出かけた頃~
のぞみ「う~ん……決まらないよぉ……」
うらら「……ブーケ作りって、難しいです……」
りん「そりゃ、簡単にできたらあんたらに意見求めないって……」
つぼみ「でも、綺麗な花嫁さんが持っているブーケを作るのって、難しいですけど、ちょっとドキドキしませんか?」
のぞみ/うらら「「あ、わかるわかる!!/わかります!!」」
りん「あぁ……ロマンチックなほうのドキドキじゃなくて、うまくまとまってるかのほうでドキドキもんだわ」
くるみ「そうねぇ……そりゃ、仕事として請け負ってるんだもん。抱いて当然の想いだと思うわ」
のぞみ「え~……りんちゃんもくるみも、ロマンないなぁ」
りん「うっさい!」
くるみ「万年おめでたなあなたに言われたくないわ!」
こまち「うふふ……そういえば、つぼみちゃん」
つぼみ「はい?」
こまち「菖さんとはうまくいってるの?」
つぼみ「……はい?……ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ??!!ど、どどどどどういう意味ですかぁ??!!」
こまち「そのままの意味よ?それとも、まだ告白してなかったのかしら?」
のぞみ「なになに?!つぼみちゃん、菖さんと付き合ってたの??!!」
うらら「ぜひ!ぜひ聞かせてください!!」
りん/くるみ「「あんたら/あなたたちは落ち着け/落ち着きなさい!!」」
つぼみ「ま、まだ告白もしてないですよぉ……」
こまち「あらあら……(なら、かれんにもまだチャンスはあるのかしらね)」
りん「……こまちさん、なんか言いました?」
こまち「いいえ、なにも?」(ニッコリ
くるみ「……こまちの笑顔、なんか怖いわ……」