ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
メイド喫茶はともかく、執事喫茶って、調べたら予約制のところとかあったりでわけわからなくなってきたので、完全にイメージです。
(というか、メイド喫茶にも行ったことないぞ、私は(--;
それはそれとして、前後編の二部でお送りします。
一週間、という作中時間の都合上、複数チームが一緒に来店なんてことになってますが、ご了承を。
では、本編どうぞ。
とある日の放課後。
「頼む!!もう頼れるの、春川しかいねぇんだ!!」
「っていわれてもなぁ……」
「バイト代、はずむように交渉するから!」
「……はぁ……わかったよ、しゃあない」
菖は、一人のクラスメイトにバイトの代打を頼まれていた。
なんでも、どうしても外せない用事があるため、バイトを休まなければならないのだが、一週間も休むことはできない、ということで、菖に代打を頼んだようだ。
最初こそ、菖は断っていたのだが、明堂学園高等部では、『困ったときの神頼み』ならぬ、『困ったときの春川頼み』という格言が存在しているほど、菖は人がよかったりする。
そのため、最終的に折れることにしたようだ。
「……で?仕事の内容は?」
「あぁ、それな……」
菖の問いかけに、クラスメイトは自分の仕事の内容を説明し始めた。
この時、菖はまさか自分が一週間、最も売り上げに貢献した臨時スタッフとして密かな伝説になるとは、思いもよらなかった。
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菖がアルバイトの代打を引き受けた翌日。
ゆりとももかは希望ヶ花市にある、喫茶店に来ていた。
ももかが少しばかり多めに給金をもらえたため、普段、世話になっているゆりと菖にごちそうすることにしたそうだ。
もっとも、菖は用事があると言い、また今度の機会ということになったのだが。
「ほんと、残念。ここのアップルパイ、美味しいのに」
「ふふ、それなら、お土産に買っていきましょうか?」
「それもいいわね!」
と、女子高生らしい会話をしながら喫茶店に入っていくと、いらっしゃいませ、とさわやかなウェイターの声が聞こえてきた。
だが、その声に聞き覚えがあるゆりとももかは、ウェイターの方へ視線を向け、目を見開いた。
そこには、用事で来られない、と言っていたはずの菖の姿があったのだ。
「え?……しょ、菖くん?!」
「しょ、菖?!な、なんであなたがここにいるのよ??!!」
ゆりとももかは思わず、菖にそう問いかけたが、菖は答えることなく、メニューを手渡し、そそくさと立ち去っていった。
自分たちの勘違いだったのかしら、と首を傾げながら、ゆりとももかはおすすめの欄にあった紅茶とアップルパイを注文することにして、ウェイターを呼んだ。
すると、先ほどと同じウェイターがやってきて、注文を受けてくれた。
「……ね、ねぇ、やっぱり菖くんなんじゃ……」
ももかが恐る恐るといった感じで声をかけると、ウェイターはにっこりと笑みを浮かべ、メニューを回収し、代わりに冷水が入ったボトルを置いていってくれた。
ふと、ゆりがボトルの近くに視線を落とすと、一枚のメモが置かれていることに気づいた。
ゆりがメモに手を伸ばすと、そこには確かに菖の文字で短い文章が書かれていた。
「……バイト、代打、一週間、不本意……そういうことね」
「なになに?やっぱり、菖くんなの??」
「そうよ。不本意ながら、一週間、バイトの代打で来ているそうよ」
「へぇ……けど、不本意なんてもったいないなぁ。せっかくにあってるのに」
なお、この喫茶店は店長の趣味なのかどうかはわからないが、ウェイターの衣装は執事服、ウェイトレスの衣装は正統派のメイド服となっている。
ちなみに、菖の現在の恰好は、髪の毛をオールバックでまとめ、
普段のラフな格好からは想像できない、魅惑的な雰囲気が醸し出されていた。
もともと顔立ちは整っているほうであるためか、少しばかり格好を整えるだけでがらっと印象が変わってしまうのが、菖の恐ろしいところともいえるのだが。
「お待たせいたしました、アップルパイとアールグレイティー、フルーツタルトをお持ちしました」
「……あら?わたしたち、フルーツタルトは頼んだ覚えはないのだけれど?」
「こちらのタルトは、わたくしめのサービスでございます」
ゆりが疑問をはさむと、菖は優しく微笑みながらそう返した。
口止め料、というわけではなく、ももかからなにか無理な注文がこないようにけん制する目的があってのことなのだろう。
もっとも、菖は真相を話すことなく。
「それでは、ごゆるりと」
と優雅に一礼して、そそくさとその場を立ち去っていった。
一連の無駄のない動きに、ゆりもももかも思わず。
「「……かっこいい……」」
とときめいてしまったことは言うまでもない。
なお、ももかよりも惚れた弱みというところなのか、ゆりの方が重症で、店を出てからしばらくしても顔の赤みが取れることがなかったそうな。
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その日の夜。
ゆりは菖に電話をかけていた。
「菖?」
『よ、ゆり。どうしたんだよ、急に」
「えぇ……昼間のこと、ちょっと聞きたくて」
『あぁ……クラスメイトに頼まれてな……一週間、代打をやることになった……』
「そう……よかったら、わたしも手伝う?」
ゆりのその提案は、別に他意があるわけではないのだが、本人が不本意ながら、と言っている以上、放っておくこともできないという気持ちからだろう。
『気持ちはありがたいけど、大丈夫……ももかが余計なことを言わないようにだけ注意しておいてくれれば』
「そう……わかったわ。なら、困ったときは言ってちょうだい。手伝うから」
菖が苦笑している姿をありありと思い浮かべながら、ゆりがそう告げると、菖は、ありがとう、と礼を言ってきた。
『それじゃ、おやすみ』
「えぇ、おやすみ……あ、菖」
『うん?』
「……かっこよかったわよ、今日のあなた……それじゃ」
不意打ちで今日の菖の恰好をほめて、ゆりは電話を切った。
その顔は、してやったり、とでも言いたそうな顔であった。
その様子を見ていたコロンは、自分に火の粉がかからないように、ゆりには聞こえない程度の声で。
「……やれやれ、菖。君も大変だね……」
とつぶやくのだった。
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菖は再び、喫茶店でウェイターとして働いていた。
ふと、来客を告げる鈴の音が軽やかに響き、菖は入り口の方へと向かっていった。
「お帰りなさいま……せ……」
「おぉ~!もも姉ぇの言ってたとおりだ!菖さんが執事やってる!!」
「え、えりか!す、すみません!菖さん……」
「ごめんなさい!ももかさんから伺って、少しでもお手伝いしようと思ったんですが……」
やってきたのは、つぼみたちだった。
どうやら、えりかを経由してももかから聞いたらしい。
だが、菖はあえて無視する姿勢を見せて。
「それでは、お嬢様方。奥の方へ」
と、平静さを装ってつぼみたちを奥の席へと案内した。
お嬢様呼ばわりされたことに、えりかは上機嫌になり、るんるん気分で奥の席へとむかっていき、つぼみは意中の相手の普段とは違う格好に当てられてしまい、真っ赤になってうつむきながら、えりかのあとに続いた。
だが、いつきは普段から門下生にお嬢様と呼ばれているため、慣れているのか、平然としながら、案内された席へとむかっていった。
席につくと、えりかはさっそくメニューを受け取り、何を注文しようか考え始めた。
が、その前に、と菖はえりかの耳もとでそっと忠告した。
「……えりかお嬢様、念のために言っておきます。あまり調子に乗られますと、いくら温厚な執事でも激昂いたしますので、ご理解とご容赦いただけますでしょうか?」
「……は、はいっしゅ……」
言葉遣いは丁寧ではあるが、あまりに威圧感のあるつぶやきに、えりかはいつになくしおらしくなって返した。
その答えに満足すると、菖はにっこりと笑みを浮かべて。
「つぼみお嬢様、いつきお嬢様。それではわたくしは奥の方へ控えておりますので、何かございましたら、ベルでおよびください」
そう告げると、菖はそそくさとその場から立ち去っていった。
菖の背中を見送ると、いつきはつぼみとえりかの変化に気づいた。
つぼみは顔を紅くしたまま、菖が立ち去っていった方に視線を向けたままだったが、えりかは若干、青ざめた顔で震えていた。
つぼみに関しては、いつものことなので、放置しても大丈夫だと判断したいつきは、えりかにどうしたのか問いかけた。
「や……やばいっしゅ……こ、ここで菖さんを怒らせたら何が起こるかわからないっしゅ……」
どうやら、菖を怒らせてしまったらしい。
一体、何を言われたのだろうか、と気にしながらも、いつきはメニューを開くのだった。
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つぼみたちが訪ねてきた日の翌日。
三日目となるこの日は、
どうやら、彼女たちはえりかから話を聞いてやってきたらしい。
「……それでは、お嬢様方。奥の席の方へ……」
顔をひきつらせそうになりながら、菖はできる限り平静さを保ちつつ、なぎさたちを奥の席へと案内した。
案内する菖の背中を追いかけながら、ひかりと舞はつぼみとまったく同じ反応を示し、ほのかがそれを見てくすくすと笑みを浮かべ、なぎさと咲は何を頼もうか検討しあっていた。
席まで案内されると、なぎさたちは席につき、置かれていたメニューを開いた。
「それでは、わたくしは奥に控えております。何かありましたら、お呼びください」
「は、はい……あ、あの」
「はい、何かございましたか?」
ひかりがおろおろとしながら、菖の背中に話しかけると、菖はにこりと笑みを浮かべながら用件を問いかけた。
「い、いえ……あんまりかっこよかったので、つい……すみません。決まったら呼びます」
「ふふ、お嬢様にお褒めいただき、光栄でございます。それでは、わたくしはこれにて」
ひかりの感想に、菖は笑みを浮かべながら返し、そそくさと立ち去っていった。
その様子に、なぎさと咲は呆然としながら、同じようなことをつぶやいていた。
「……なんか、いつもの菖さんじゃない……」
「男の人って、あそこまでかっこよくなれるんだ……」
「あ、あはははは……」
そのつぶやきに、ほのかは何と返していいのかわからず、苦笑を浮かべるしかなかった。
なお、このあと、なぎさと咲は大量のフルーツタルトを注文したため、この日、一番の売り上げになったそうな。
もっとも、その料金は菖に立て替えてもらうつもりだったらしいが、菖はバイト中はあくまでも他人として接するつもりであるらしく、料金は立て替えないの一点張りであったことはここに明記しておく。
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アルバイト代打、四日目。
今度はのぞみたちがやってきた。
もっとも、小々田と夏、シローは店があるからとのことで、純粋に乙女六人での来店だった。
さすがに、えりかとなぎさ、咲で慣れた菖は、もはや驚かずに普通の客としてのぞみたちを奥の席へと案内した。
だが、のぞみとうららは感嘆しながら周囲を見まわし、見たことのない調度品を見つけては手で触れようとして、かれんとくるみにたしなめられたり、こまちは立ち止まって何かのメモを取り始めたりと、案内するまでの間に体力と精神力をごっそりと持っていかれてしまった。
どうにか、席まで案内した菖は、苛立ちをおさえながら、メニューを手渡し。
「……それでは、わたくしは奥に控えておりますので」
と、断りを入れて、そそくさとその場を立ち去ろうとした。
そうでもしなければ、いくら、温厚な菖でも何をしでかすかわからなかった。
一度、クールダウンする必要があったのだが、のぞみとうららがそれを許さなかった。
「執事さん!これと、これとこれを持ってきて!」
「わたしは、これとこれをお願いします!!」
「……かしこまりました。お持ちいたしますので、お待ちください」
顔を引きつらせながら、菖は注文を受けるとすぐに奥の方へと下がっていった。
その様子に、のぞみは首を傾げて。
「あれ?菖さん、なんか焦ってた??」
「焦っていたというより……」
「早くこの場から離れたがっていたような」
のぞみの疑問に、こまちとくるみがそう返した。
その返答に、のぞみの頭にはさらに疑問が浮かびあがってきた。
「え?なんで??」
「……あんたとうららのせいでしょ」
なんとなく、理由を察することができたりんは、そっとため息をついてそう返し他が、当の本人たちはまったくわかっておらず。
「「……??」」
首をかしげながら、疑問符を浮かべるだけであった。
その様子を見たりんは、これ以上、説明することを諦め、ため息をつきながら。
「……はぁ……あとで菖さんに謝っておこう……」
とぼやくのだった。
だが、菖の受難はまだ続くのだった。
あとがき代わりその頃話(スキット風)
~つぼみたちの帰り道~
えりか「ねぇ、思ったんだけどさ」
つぼみ「はい」
えりか「あたしらで菖さんの売り上げに貢献できるんじゃない?」
いつき「……まさかと思うけど、みんなを呼ぶの?」(^^;;
えりか「そ!けっこうな売り上げになると思うよ~」(^^♪
つぼみ「……えりか、もしかして菖さんに恩を売るつもりですか?」(--;
えりか「にっしし~♪まぁ、その通りなんだけど!」
シプレ「えりか、悪い顔してるですっ」
コフレ「けど、菖さんの素敵な姿をみんなに見せるのは賛成ですぅ!」
いつき「つぼみはすっかり赤くなってたもんね」(^^*
つぼみ「あ、あうぅ……」(///□///
えりか「そうと決まればさっそく皆に連絡っしゅ!!」
いつき「……あとで大変なことにならないといいんだけど」(^^lll