ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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昔語りです。
菖がムーンライトの正体を知った日の物語ですかね。
現在と二年前の回想が入り混じりますが、時系列が変化する際は「----」と「~~」で時間軸を区切ってますので、大丈夫とは思いますが、わかりずらかったらごめんなさい。
なお、二年前の話は小説をベースにしていますが、オリジナルも混ざっております。
ご了承ください。


気になります!菖さんがムーンライトの正体を知った日!

「そういえば、思ったんだけど……」

いつもの休日、いつもの昼下がり。

いつものように、植物園の温室に集まって、お茶会をしていたつぼみたちだったが、ふと、えりかが思い出したかのようにゆりと菖に視線を向けた。

「菖さんっていつゆりさんがプリキュアだってことを知ったの??」

「そういえば……」

「そうだよね……」

えりかの疑問に、つぼみといつきは同意した。

ゆりにしても、菖にしても、あまり自分のことを話さないため、つぼみたちは二人が幼馴染であり、自分たちがプリキュアになる以前に戦っていた頼れる先輩であることしか知らないのだ。

「あぁ……話したことなかった……かな?」

「そういえば、そうね……」

今の今まで忘れていた、という態度で二人そろって顔を見合わせた。

その様子に、休憩中の薫子がくすくすと微笑みを浮かべた。

「それなら、いい機会だから話してあげたらどうかしら?」

「僕もそれに賛成だね」

薫子の言葉に、ゆりと菖の間に浮かんでいたコロンが反応し、同意した。

コロンのその反応に、ゆりは困惑しながら菖のほうへ視線を向けた。

向けられた本人は、俺にどうしろと、と困ったような笑みを浮かべ、そっとため息をついた。

「ゆりのことはゆり本人から聞いてくれ。俺が話すのは、俺のことだけだぞ?」

「「「それでも構いません/構わないっしゅ!!」」」

「……ほんと、お前ら仲いいよなぁ……」

菖の言葉に、つぼみたちは目を輝かせながら同時に口を開いた。

菖はそっとため息をついて、手にしているティーカップを口もとに運んだ。

ティーカップに入っていたダージリンを飲んで一息つくと、菖は笑みを浮かべながら口を開いた。

「……話をしよう。あれはいまから三十六万……一万四千年前だったか……?」

「そ、そんな昔の話なんですか?!」

菖の言葉に、つぼみは目を見開いて反応した。

だが、それはつぼみが純粋すぎるがゆえの反応であり、えりかといつきは苦笑しながら、ないない、と手を左右に振っていた。

菖の悪ふざけに、ゆりはそっとため息をつき、いい加減になさい、と静かに言い放ち、菖を威圧した。

もっとも、菖はその威圧を飄々と受け流していたのだが。

「あなた、どこかの黒スーツの男の人にでもなったつもり?」

「そのうち、指パッチンしたら時間を止められるようになったりしてな?」

「冗談はそれくらいにして、本題に入ってもらえないかしら?」

「あぁ、ごめん。そうだな、ここからは本題だ」

そう言って、菖は本当のことを、二年前に自分に起きた出来事を話し始めた。

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~二年前~

菖はその日、ゆりとともに植物園に来ていた。

当時、菖とゆりは明堂学園の中等部二年生だったが、ゆりの父親、月影英明氏はすでに失踪していた。

月影博士は、薫子とともに心の大樹についての研究プロジェクトを進めていたのだが、パリ郊外へ向かってから、音信不通となってしまった。

失踪した月影博士の手がかりについては、薫子も国際警察(インターポール)に連絡し、情報を集めていたのだが、手がかりらしい手がかりはつかめていなかった。

ゆりは、もしかしたら薫子なら何か知っているのではないかと藁にも縋る気持ちで薫子を訪ねてきたのだ。

なお、菖の両親は考古学者で、世界各地の遺跡の調査に同行したり、大学で臨時講師を受けもったりすることもあったりと、世界中を飛び回っているため、何か手がかりがないか、探してみるとのことだった。

なお、ゆりが菖をここに連れてきたのは、菖の口から、月影博士のことを何か聞けないかと思ったからだ。

だが。

「……そう、おじさまもおばさまも」

「うん。探しているんだけど……変な期待させちゃって、ごめん」

ダージリンを振る舞われながら、菖はゆりに謝罪した。

なお、菖の父親と月影博士は同じ大学の出身で、学部こそ違うが親友同士だった。

そのため、海外で仕事をしていた菖の父親は、一時期、自分が心の大樹の記述があった碑文を見つけなければ、と悔やんでいたこともある。

その後悔の想いからか、今は某アメリカ映画の考古学者よろしく、世界各地の遺跡を冒険しながら月影博士の行方を追っているのだ。

ゆりは、謝罪する菖に対して首を振って返した。

「ううん。協力してくれているんだもの。それだけでも感謝しなくちゃ。それに、案外、心の大樹を見つけて、研究に没頭しているだけかもしれないもの」

「……おじさんだったらありえそうだな」

幼いころから、月影博士を知っている菖は、ゆりが話す光景をありありと思い浮かべることができた。

それは薫子も同じだったようで、菖と一緒になって苦笑を浮かべていた。

ふと、菖の耳にこの場にいる人のものではない声が響いてきた。

「……??ゆり、薫子さん。何か言いました??」

「いいえ?」

「何も言ってないわよ??」

「……すみません、空耳だったみたいです」

二人の反応を見て、菖は微苦笑を浮かべてそう返したが、視線だけは一か所に向かっていた。

そこには、巨大なオランウータンのようなぬいぐるみが鎮座していた。

なお、このぬいぐるみがあることから、菖たちがいるこの場所は、ぬいぐるみ館とも呼ばれていることは、希望ヶ花市に住んでいる人ならば誰もが知っていることだ。

――まさかな

菖は心中でそうつぶやき、ティーカップに視線を戻した。

この声が、のちに自分と契約を交わすことになる心の大樹の声だということに、この時の菖はまだ気づいていなかった。

そして、ゆりもまた、パートナーとなるコロンが自分を見つけたのもこの時だということを知らなかった。

 

それから一週間ほどの時間が経過した。

ゆりと菖は幼馴染同士ということもあり、登校と昼休みはだいたい一緒に過ごしている。

もっとも、そのなかに来海ももかという、ゆりの親友が加わるのだが。

この日は、珍しくももかが一日中仕事がなく、朝から登校していたため、三人でお昼を食べていたのだが。

「「視線を感じる?」」

「えぇ……この一週間、ほとんどずっと」

ゆりがいきなり物騒な話題を切りだしてきた。

どうやら、この一週間、学校や自宅、はては買い物のときでさえ、どこかから視線を感じるのだという。

なお、ゆりを見ていたのはコロンなのだが、この時のゆりと菖はそのことを知る由もなかった。

「……ストーカー?」

「だったらゴミとかあさられてる可能性あるけど、聞かないからなぁ……」

ももかの言葉に、菖は可能性は低いことを示唆した。

ストーカーならば、ゆりとほとんどの時間を一緒に過ごしている(男子)にも何かしらの被害が出るはずだが、今のところは何も起きていないため、その可能性は低いと考えたようだ。

「けど、わたしなんかをつけ回して何が面白いのかしら?」

「いやぁ、ゆりは美人だからなぁ……案外、ゆりが好きな男の子だったりして?」

ももかがにやにやと笑みを浮かべながら、ゆりの言葉に返した。

明堂学園は中等部も高等部もレベルが高い生徒が多いのだが、ももかとゆりは中等部のクラスでもツートップであるため、その可能性はなきにしもあらずなのだ。

もっとも、ゆりはその自覚がないらしく。

「そんなことないわよ。というか、こんな地味な子を好きになる物好きなんて、菖くらいなものなんじゃないの?」

「……おいおい」

遠回しに自分が変わり者呼ばわりされたことに、菖は苦笑を浮かべながら文句を言った。

もっとも、ゆりとしては菖以外の男子はあまり意識したことがないのだが。

それはそれとして。

「で、どうする?もし必要なら、登下校中だけでも一緒にいるけど?」

「そこまで大げさにしなくても大丈夫よ」

そう言って、ゆりは菖の申し出を断った。

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~現代~

「ゆ、ゆりさんにストーカーですかぁぁぁぁぁっ?!」

「乙女の敵っしゅ!!」

「そんな卑劣漢、ゆるせない!!」

菖のここまでの話をきいて、つぼみたちは憤慨した。

憧れのゆりにストーカーがつきまとっていたという事実に憤慨したようだ。

その様子に、コロン(ストーカー本人)は冷や汗を伝わせていた。

その姿を見ていたゆりと菖は、ざまぁ見ろ、とでも言いたそうな顔をしていた。

「続けるぞ?」

「「「あ、はい」」」

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~二年前~

ゆりからストーカー被害の報告を受けてから二週間。

特に問題が起きたということはなく、ゆりからも視線を感じなくなったという報告を受けたので、菖もそれ以上、何も追及することはなく、いつもと変わらない日々が続いていく……はずだった。

変わったことといえば、ゆりがファンシーショップで買った、というぬいぐるみをよく持ってくるようになったことだ。

菖はそのぬいぐるみに違和感を覚えたのだが、あまり追求しなかった。

そして、菖の人生が大きく変わったのは、ちょうどその時だった。

 

その日、菖は祭り囃子の練習で近所の森に来ていた。

本来なら、人が来ることもないため、一人で練習するにはもってこいの場所なのだが、その日は珍客がいた。

「……なんだ、これ……」

菖の眼の前には奇妙な面構えの怪人たちがいた。

「キー?」

「キー、キーキキ、キキッキー!」

「……あ、これあかんわ……」

怪人たちは菖の姿を見つけるなり、自分たちの存在を知ったからには生かして返さん、とでも言いたいかのような面構えで襲い掛かってきた。

襲い掛かってきたのだが。

「はぁっ!!」

『キーッ??!!』

向かってくる怪人たちを菖は掌底や蹴り、手刀で迎え撃ち、圧勝していた。

怪人たちは菖の圧倒的な強さにおびえ、逃げだし始めていた。

去るもの追わず、という態度で、菖はそっと息をついたが、その顔はすぐにこわばった。

すぐ近くで、何か嫌なものが生まれた。

そんな感覚が襲い掛かってきたのだ。

「なっ?!なんだ、これ……」

菖は気配が強く感じられた場所へと走った。

すると、そこには赤い長髪の男と、その男の倍はある大きさの怪物。

そして、そこから少し離れた場所に立つ、幼馴染の姿だった。

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~現代~

「なるほど、そこで君はムーンライトが変身するところを見たというわけだね?」

ここまでの話を聞いて、コロンはようやく口を開いた。

その表情は、どこか呆れたとでも言いたそうなものだった。

それは、隣に座っているゆりも同じだった。

「まったく……あなたの好奇心の強さというか、怖いもの知らずは知っている人からしたら冷や汗ものよ?」

「ははは……」

二人からじとっとした視線を向けられ、菖は苦笑を浮かべた。

もっとも、ゆりのその態度は菖を気遣ってのものであることを、誰よりも本人が気づいているため、下手に反論することはしなかった。

「それで、クモジャキーが作ったデザトリアンを退治したあと、菖さんは植物園に行ったんですか?」

つぼみがその後の展開が気になるのか、菖に問いかけた。

「あぁ。そこで、コロンとコッペ様の存在を知って……俺の耳に聞こえていた幻聴の正体を知ることが出来たんだ」

「幻聴?……そんなもの、あなた話したことなかったと思うのだけれど?」

「口ではどうこう言っても、俺の身にも何かあるって知ったら、お前は気が気じゃなくなるだろ?」

ゆりの質問に、菖は苦笑しながら返した。

要するに、彼なりにゆりに気を使ったということだ。

もっとも、菖の場合は体質の問題もあるため、そういうことを滅多に口にしないということもあったのだが。

「それで、幻聴の正体って?」

菖とゆりの会話にえりかが口をはさんだ。

えりかのその一言で、菖は再びそのあと、自分に起こった出来事を話し始めた。

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~二年前~

ゆりがムーンライトに変身する姿を見てしまった菖は、戦闘が終わるとゆりに連れられて、植物園のぬいぐるみ館に来た。

そこには、深刻な表情を浮かべている薫子の姿があった。

薫子とゆりから、菖は大体の事情を聞いた。

だが、あまり衝撃は受けていなかった。いや、むしろ好奇心の方が強いようにも思えた。

なぜなら。

「まさか、実在していたなんて……」

「知っていたの?プリキュアのことを?!」

ゆりは驚愕して、思わず菖に詰め寄った。

プリキュアの存在は、ゆりですらつい最近、薫子から聞かされて知ったのだ。

だというのに、菖の口ぶりはまるで昔から知っていたかのようなものだったため、無理もない。

「うん……遺跡の碑文に、ね」

「そんな遺跡、学校で習ったことな……あぁ、そうね……」

ゆりは反論しかけて、やめた。

菖の両親は考古学者。そして、菖もその血を受け継いでいるのか、学校で習う範囲の外にある遺跡についても見識が深く、授業中、教師を泣かせることもしばしばあった。

となれば、菖の遺跡に関する知識の中にプリキュアの存在を示すものがあっても、おかしくはない。

ゆりはそこまで思い至り、顔を伏せた。

「……できれば、菖には知られたくはなかった。だって……」

「だって?」

「あなた、絶対にこういうもの……『ほっとけない』って」

「まぁ……言わない自信がないな」

菖は困ったような笑みを浮かべながら返した。

困っている人がいたら、放っておけない。それだけ菖は人が好い。

だからこそ、ゆりは菖にだけは黙っていたかった。

「……あなたが傷ついたら、わたしは何のために戦うのかわからなくなってしまうもの……」

「それでも、俺はほっとけない……ゆりが戦っているのを知ってて、見て見ぬふりなんて俺にはできない」

菖ははっきりとそう言った。

その瞳に宿る強い意志を、コロンは感じ取った。

それと同時に、残念にも思っていた。

もし、菖が女の子だったら、そして、自分のほかに仲間の妖精がいたのなら、と。

だが、コロンのその考えを否定する声が聞こえてきた。

《コロン、そんなことを思ってはいけませんよ?》

「心の大樹?!」

「またこの声か……」

コロンが心の大樹の声に驚愕すると、菖は眉をひそめてつぶやいた。

そのつぶやきが聞こえたコロンは目を見開いて、菖に問いかけた。

「菖、君はいまの声が聞こえたのかい?!」

「うん?ここ数日、何度か聞いてるよ……幽霊なのかと思って無視してたけど」

《あの、わたしは幽霊ではありませんよ?》

「幽霊って……言い得て妙だね、それは……」

菖の言葉に、コロンと謎の声が同時に返してきた。

------------------------

~現在~

「それが、俺と心の大樹のファーストコンタクトだったわけだ。それから、俺は心の大樹から"大樹の騎士(ユグドセイバー)"のことを聞いて、心の大樹と契約をしたってわけ」

菖はそこまで語って、ティーカップの紅茶を口に運んだ。

ファーストコンタクトについてのくだりを聞いた中学生組は、ぽかんとしていた。

「心の大樹が……」

「ゆ、幽霊ですか……」

「それは、なんというか……」

反応に困っているようだ。

もっとも、心の大樹から生まれた妖精たちは。

「「「扱いがひどいですぅ/ですっ/でしゅ!!」」」

と憤慨していた。

菖はシプレたちのその様子に、同じことをコロンにも言われたよ、と苦笑を浮かべた。

「しかたないだろ?俺、そういう体質なんだから」

「それって……」

「……あぁ……」

「……わ、わたしは何も知りません、何も聞いてません……」

菖がいわゆる視える体質であることを知らないいつきは疑問符を浮かべたが、他のメンバーはそれで納得できてしまった。

なお、納得されてしまった菖は、それもそれでなんだかなぁ、と心中でつぶやいていたのだった。




あとがき代わりの後日談(スキット風)

ゆり「そういえば、菖。言い忘れていたわ」
菖「なんだ?」
ゆり「ありがとう。あのとき、わたしを心配してくれて」
菖「あの時?……あぁ、ストーカーのことか」
ゆり「えぇ」
中学生組「「「そ、そういえばそうでした!!結局、ゆりさんのストーカーはどうなったんですか??!!」」」
菖「……食いつきすげぇ……」
ゆり「無事に退散したわよ」
コロン「それはよかった」
シプレ「どの口がいってるですぅ?」
コフレ「シプレここは話さない方が身のためです!」
つぼみ「どういうことですか?」
えりか「さてはあんたら、何か知ってるね?」
シプレ、コフレ「「な、何のことだかまったくわからないですぅ/です!コロンがゆりさんがプリキュアにふさわしいかどうか調べるためにしばらくあとをつけていたなんてことは……」」
菖「……二人とも、ばらしてる」
シプレ、コフレ「「はっ!!」」
ゆり「コロンの名誉のために黙っていたのに……あなたたちのおかげでだいなしね」
コロン「シプレ、コフレ。あとでじっくり、O・HA・NA・SI、しようか?」
シプレ、コフレ「「コロン、目が怖いですぅ/です!」」
ゆり、菖「「二人とも、自業自得よ/だ」」
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