ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
よくよく考えたら、いちかのお母さんって国境なき医師団の人ってことになるんですかね?
まぁ、そのあたりを勝手に妄想して、私が個人的に日本史上最強の刑事ドラマと思っている『相○棒』から、懐かしいあの人を出させていただきました。
……え?菖の両親?今回は出しませんので、ご了承を。
では本編どうぞ。
その日、菖はイチゴ坂にあるキラパティに来ていた。
なんでも、いちかが菖に用事があるということだったのだが。
「……で、俺個人に用事って何?」
「うん。この前、お母さんが帰ってきた時にちらっと聞いたんだけど……菖さん、もしかしなくても、わたしのお母さんに会ったことある?!」
「……会ったことはあるな、サルウィンで」
いちかの母は世界を巡って治療を行う、国境なき医師団のような活動をしている女医だ。
菖もまた、長期休暇であれば、両親に呼ばれ、海外の遺跡の発掘調査を手伝うこともある。
いちかはおそらく、母親から高校生くらいの考古学者がいた、とでも聞いたのだろう。
それを確認することと、海外での母親の様子を知りたくて、菖を呼んだのではないだろうか。
と、勝手に予測して、菖は記憶を掘り起こし、いちかから聞いた特徴をしている女医と、その時に訪れた国のことを思い出し、そう返した。
「やっぱり!!ね、ね!その時のお母さんのこと、教えてください!!」
よほど母親が大好きなのか、いちかは目を輝かせながら、菖にそう頼んできた。
その勢いに気圧されそうになりながらも、菖は自分がサルウィンに渡ったときのことを思い出しながら、いちかに語り始めた。
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つい数週間前の夏休み、菖は両親と共にサルウィンの集落付近にある古代の集落跡の発掘を行っていた。
遺跡の周囲には、大学が雇った警備員が周辺の警戒を行っていた。
サルウィンは日本に比べ、治安が悪く、麻薬が横行しているだけでなく、誘拐がビジネスとなっているとすら言われている。
そのため、遺跡発掘隊に被害者が出ないよう、警備員を雇い入れてくれていたのだ。
だが、警備員の中に、短髪でたくましい体をしている日本人男性がその中に混ざっていることに菖と菖の両親は気づいていた。
なぜ、日本人がこの国にいるのか。それが気になった菖は、休憩時間に好奇心で尋ねてみることにした。
「こんにちは」
「―――、って、日本語か。こんにちは」
「いえ。現地の言葉も慣れてはいますけど……わかるってことはやっぱりあなたも日本人なんですね?」
挨拶をすると、現地の言葉で返され、苦笑を浮かべながら菖は返した。
その笑顔から、悪い人ではなさそうだ、と菖は推測した。
話しかけられた男性は人懐っこい笑みを浮かべたまま、菖の問いかけに肯定した。
「えぇ、まぁ。といっても、もうここに住んで十年くらいですけど」
「十年ですか……長いですね」
十年間もこの地に住んでいることを聞き、菖は目を丸くした。
が、ふと、大事なことを忘れていたということを思い出し、遅くなりましたが、と謝罪した。
「俺、春川菖って言います。日本人の高校生です」
「高校生?!で、遺跡の発掘か……すごいな。俺は亀山、亀山薫。よろしく」
互いに自己紹介をした二人の男は握手を交わした。
ふと、菖は握った手の
「……変わったたこですね。なにかされていたんですか?日本にいる間に」
「え?わかるの??」
「なんとなく」
菖の問いかけと返答に、薫と名乗った男性は苦笑を浮かべ、参った、とつぶやいた。
「まさか、右京さん以外にもこんな人がいたなんてな……」
「右京さん?」
「あぁ、俺の元上司で……かけがえのない、相棒だった人さ」
何かを懐かしむように、薫は空を見上げながら、菖に自分の身の上話をしてくれた。
どうやら、薫は元々日本で警視庁の警察官をしていたらしい。だが、同級生の死が絡んだ事件をきっかけに、エルドビアの子どもたちに日本語と「
薫が語る一つ一つの話を、真剣に聞いていると、菖の耳に悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「っ?!」
「な、なんだ??!!」
声がした方向には、遺跡の発掘現場がある。
そして、この類の声が聞こえてきたということは、
「……まさか!」
菖は顔を青くして、悲鳴が聞こえた方向へ走っていった。
発掘現場に到着すると、そこは菖の予想通り、落石事故で発掘チームの何人かが巻きこまれ、怪我をしていた。
「すぐ助けます!おい、菖くん!手伝ってくれ!!」
「はい!!」
薫の言葉に、菖は手早く返して、発掘隊の救助を行った。
救助自体は特に問題なく行われたのだが、問題はその後だった。
「まずいな。この人、骨が折れてる……適切な処置をしないと、後遺症が……」
「けど、このあたりに医者なんて……いや、俺が世話になってる集落に、確か女医さんがいたはず!!」
薫はこの近くにある集落に身を寄せていて、そこにはいま、国境なき医師団から派遣された女医さんがいることを思い出し、乗ってきたジープで集落まで行き、話していた女医さんを連れてやってきた。
「先生!お願いします!!」
「えぇ!任せて!!」
薫がそう頼むと、女医さんは返事を返すが早いか、ジープから飛び下りてすぐに患者のもとへと駆けていった。
「もう大丈夫ですよ、安心して」
女医さんは怪我をした調査員に声を掛けながら、適切な処置を施していった。
数分して処置が終わり、しばらく入院生活を余儀なくされることを話すと、菖のほうへ向き直った。
「あなたが応急処置をしてくれたおかげで、早く処置ができました。ありがとう」
「いえ、できることをしただけです。それに、亀山さんがいなかったら、先生の到着ももっと遅かったでしょうし」
お礼を言いながら差しだされてきた右手を握り、菖と女医は握手を交わした。
「そういえば、さっきから日本語で話してるけれど」
「あ、俺、日本人です。春川菖っていいます」
「そう。わたしは宇佐美さとみよ。よろしくね」
「はい……ん?」
菖は女医さんの苗字に聞き覚えがあり、首を傾げた。
そして脳裏に浮かんできたのは。
『わたし、宇佐美いちか!スイーツ大好き!中学生二年生!!』
キラパティの制服を着てブイサインをしながら、自己紹介するいちかの姿だった。
そういえば、母親が世界中で活躍しているお医者さんだ、と言っていたことを思い出し。
「……もしかして、宇佐美いちかさんのお母さん?」
「……あら?娘を知ってるの?!」
問いかけてみたらどんぴしゃりだった。
それから少しして、菖たちが身を寄せている集落では、さとみと薫、菖がたき火を囲んで談笑していた。
「まさか、いちかのお友達と会うなんてねぇ……いちか、元気にしてた?」
「えぇ。友達と一緒にパティスリー開いてますよ」
「へぇ……スイーツ作るなんて、今どきの中学生にしちゃ珍しい」
「これもわたしの教育の賜物ね!」
薫の感想に、えっへん、と胸を張りながらさとみがそう返すと、菖はその明るさと笑顔に、やはり親子だな、と笑みをこぼした。
「日本に帰ったらいちかに何か伝えておきますか?よかったら、亀山さんも伝言預かりますけど」
「俺は……いいかな。右京さんに伝言って思ったけど、また事件に首突っ込んで忙しくしてるだろうし」
「それなら、わたしはお願いしようかしら?体に気を付けて、元気で頑張りなさいって伝えてくれないかしら?」
「わかりました。伝えておきます」
薫は、元上司と話していた刑事への伝言を頼もうかと思ったが、忙しくしてるだろうからという理由でそれをやめ、さとみはいちかに、親らしい伝言をお願いしてきた。
菖は心よくそれを引き受け、翌日、日本へ帰国したのだった。
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「やっぱりお母さん、かっこいいなぁ……」
「……あんまし無理すんな?俺も経験したことあるけど、親が家にいないのって、けっこう堪えるもんだからさ」
菖の話を聞き終え、いちかは微笑みながらそう呟いたが、菖はその微笑みに寂しさがにじみ出ていることに気づいていた。
中学生の頃から、菖の両親も海外での講義や発掘調査に赴くことが多くなり、甘えたいときに甘えられないことがあった。
もっとも、菖の場合は祖父と一緒にいたし、なにより、甘えたいと思うほどつらいこともなかったため、それほど寂しいとは思わなかったのだが。
「……うん、でも大丈夫!わたしにはひまりんやあおちゃん、ゆかりさんにあきらさんにシエル、それに仲間のみんながいるもん!」
「……そっか」
笑顔でそう返してきたいちかに、菖はそれ以上何も言わず、ティーカップに残っていた紅茶を飲み干して、お土産用のスイーツをいくつか買ってパティスリーを後にした。
なお、この数日後、希望ヶ花市の植物園に亀を象ったスフレが送られてきたのだが、なぜ亀なのか、ハートキャッチチームの面々は疑問符を浮かべていた。
その理由を知っているのは作ったいちかと、インスピレーションを与えた菖の二人のみだった。
あとがき代わりのその後の話(スキット風)
~菖帰宅後~
いちか「う~ん……」
あきら「珍しく悩んでるね」
あおい「浮かびそうか?」
いちか「う~ん……今日の出来事……菖さん……」('-ω-'
ひまり「え?!しょ、菖さん来てたんですか??!!」Σ(0ω0
ゆかり「あら、教えてくれてもよかったじゃない?というか、菖も菖ね。顔出してたのなら、呼んでくれればいいのに」(^言^メ
あきら「ゆかり、目が怖いよ」(^ω^;
いちか「お母さんの話、亀山さん……亀?」
あおい「お?これは……」
いちか「キラッとひらめいた!!」
シエル「こんどはどんな動物にするのかしら?」
いちか「亀さんでスフレにしようかなって!メロンシロップを使えば甲羅の色ができるし!!」
シエル「
いちか「うん!レッツ・ラ・クッキング!!」