ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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まぁ、タイトルの通りです。
劇場版のストーリーを、菖を交えたオリジナル展開を加えつつ、といった感じです。
一応、「邂逅」、「対話」、「激突」というサブタイトルで三部構成を予定しています。
大まかな展開としては……

「邂逅」=オープニング~オリヴィエとの邂逅
「対話」=オリヴィエとプリキュアの対話~オリヴィエ離脱
「激突」=最終決戦~エンディング

といった感じです。
なお、菖について補足がありますので、それはあとがきにて。
まずは本編をどうぞ。
(なお、あとがき代わりのスキットはございません。気が向いたら、後日、「パリでの一幕」ということでまとめたものを投稿いたします)

余談ですが、このお話でこのシリーズも通算30話目に突入しました。
さてさて、どこまでのびるのやら(汗
これからもよろしくお願いいたします。


花の都でファッションショー、ですか?!~邂逅:パリと不思議な男の子~

日本を離れ、西へ向かうこと、およそ12000キロ。

そこは江戸とならび”花の都”と称されるフランスの首都パリ。

深夜、パリのシンボルとも言えるエッフェル塔の上で、二人の人影が佇んでいた。

「おぉ!麗しの都、パリよ!我々は帰ってきたぞ!!」

シルクハットにステッキという出で立ちをした、左目を仮面で隠している男が芝居じみた口調で高らかに口を開くと、その顔には笑みがこぼれていた。

だが、その眼は決して笑ってはいない。

何か不愉快なものを見るような、そんな視線を街に向けていた。

「砂漠の王にキュアアンジェ、世界は本当に憎らしいものであふれているな……だが、幸運なことに、月が満ちるまであとわずか」

男は手にしたステッキの持ち手にある紅に輝く宝玉を前にかざした。

「失われた力も、ここにある!今度こそ、この世界を破壊する!!はははははははは!!!」

満月まであとわずかという程度にかけた月と、それに負けないほどに強く輝く星空を仰ぎながら、男は高笑いしていた。

だが、傍らにいた彼の腰より少し高い程度の人影がその杖にあった宝玉を奪い取った。

男は宝玉を奪った少年に視線を向け、問いかけた。

「何をしている、ルー・ガルー?それを返しなさい」

ルー・ガルー、狼男と呼ばれた少年は髪の毛を青白く輝かせながら、金色の瞳を男に向け、嫌だ、と強く否定した。

「力も戻ったし、もう十分だろう?!世界を破壊するなんてやめてよ!お願いだ、男爵!!」

少年――ルー・ガルーは必死に訴えるが、男爵と呼ばれた男はまったく聞く耳を持たず、ただ、それを返せ、と命じた。

すると、男爵の背後に、無数の蝙蝠が姿を現した。だが、よく見るとその顔は、砂漠の使徒の戦闘員、スナッキーのものだった。

男爵が一言、スナッキーたちに命じると、スナッキーたちは奇声を上げながら、一斉にルー・ガルーに向かって突進していった。

大量のスナッキーの突撃を受け、ルー・ガルーはなすすべなく、エッフェル塔から落下した。

――どうしてわかってくれないんだ?!……父さん!!

落下する中で、ルー・ガルーは、なぜ男爵が自分の想いをわかってくれないのか、心のうちで悲痛な叫びを上げていた。

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パリのシンボル、エッフェル塔が見える広場で、えりかがエッフェル塔を手の乗せるようなポーズを取っていた。

えりかから少し離れた位置では、つぼみがカメラを構えていた。

「あぁ、そこです!!」

パシャリ、とつぼみがシャッターを押すと、ちょうど、えりかの手のひらの上にエッフェル塔が乗っているという、トリック写真ができあがった。

「いい感じです!!それでは、もう一枚!!」

「フランスっぽいなぁ……」

「はい!本やテレビで観るより、ずーっと素敵です!!」

いつきが周囲を眺めながらそうつぶやくと、つぼみは満面の笑顔で返した。

少し離れた場所には、ゆりが地図を片手にももかと道順を確認していた。

ふと、つぼみが周囲を見渡すが、菖の姿だけ見当たらない。

「……そういえば、菖さんは?」

「さぁ?」

「どーこ行ったんだろ?……まさか迷子なんてことないだろうし……」

中学生組は顔を見合わせ、顔を青くしていると、ゆりが、大丈夫よ、と声をかけてきた。

「彼の両親、いまパリの大学にいるらしいから、顔を見せにいくそうよ?たぶん、ついでに講義を受けに行くんじゃないかしら?」

「……それはそれで困るっしゅ……」

菖の行動パターンを読んでいるかのような言葉に、えりかはげんなりとしながら返した。

だが、そこはゆりに次ぐ優等生である菖のこと。

自分がどこのモーテルに宿泊するのかと、遺跡探索に参加する可能性があるかどうかを事前にメールしていた。

なお、メールはつぼみたちにも送られていたのだが、まだ確認していなかったようだ。

「そういえば、お父さんから聞いたんだけど、最近、『出る』らしいよ?」

「出るって、何が?」

「狼男ぉ!!」

「狼男って、伝説の??」

えりかは目を吊り上げ、犬歯をむきながら、つぼみの問いかけに答えた。

その答えにおびえるつぼみとは対照的に、いつきは口にしていたカプチーノのストローから口を放し、えりかに確認した。

その問いかけに、えりかは短く返し、最近、夜のパリに徘徊している少年の特徴を話した。

つぼみはえりかの口から次々に飛び出てくる狼男の特徴に、青い顔でびくびくしていた。

その様子に気づいたえりかは、にやりと笑いながら。

「つぼみ、もしかして怖いの?」

と問いかけた。

その問いかけに、妙な意地を張ってしまったつぼみは、怖くないと頑なに否定したが、いつきがふと何かに気づいたように指をさし、狼男、と叫んだ。

すると、当然、怖がりのつぼみはひどくおびえた。

「ひぃっ!!ど、ど、どこですかぁ??!!」

「嘘だよ~」

いつきはいたずら小僧のように笑いながら、つぼみの前にしゃがみこみ、カメラを構えた。

えりかはしゃがみこんでいるつぼみと肩をならべ、満面の笑顔でピースサインをむけていた。

ぱしゃり、とシャッターを切る音がすると、つぼみはようやくからかわれていたということに気づき、半泣きになりながら。

「ひどいですーーーーーーーーーーっ!!」

と憤慨した。

すると、えりかたちの耳に聞きなれた声が聞こえてきた。

「公共の場で大声を出すのはマナー違反ですよ?お嬢さん(マドモアゼル)

「ひゃひぃっ??!!……って、菖さん!!」

「お~、菖さんだ!ボンジュー」

「や、みんな」

そこには、いつもの青いシャツに黒いジャケットとチノパンを着た菖の姿があった。

その手には、英語で書かれた本が何冊かあった。

どうやら、考古学関連の書籍らしい。

「大学に行ってたんじゃなかったの?」

「講義は終わったんですか?」

「ていうか、菖さん、その本、読めるの?」

えりかを筆頭に、菖への質問攻撃が始まったが、その様子を見かねたゆりがため息交じりに口を開いた。

「……いっぺんに質問すると、菖が答えられないでしょ?少しは考えなさい」

「「「ごめんなさい/ちゃい」」」

さすがにゆりにお説教されて、つぼみたちも反省したようだ。

すっかりしおれた様子に、菖は苦笑を禁じえなかった。

------------------------

つぼみが落ち着きを取り戻し、菖と思わぬ形での合流を果たすと、再びパリ市内を散策し、やがて先ほどとはまた別の広場にたどり着いた。

広場を行き交う女性たちのファッションに、えりかは手にしたカメラをビデオモードにして撮影をしていた。

「おぉ……みんなすごくおしゃれ!」

「ファッションの町なんだし、当然じゃないかな?」

「いいえ!パリといえば、『花の都』なんですよぉぉぉぉぉぉ!!」

えりかがもらした感想に、いつきが返すと、つぼみは不満全開の顔でえりかに詰め寄った。

「な、なんなのよ、いったい?!」

突然、詰め寄られたえりかはつぼみの豹変ぶりに驚愕した。

その問いかけに、つぼみはうっとりとしながら答えた。

「花の都というからには、町中が色とりどりの花であふれていて、それはそれは素敵な……」

「……全然、そんな感じしないけど?」

「まぁ、秋だし仕方ないんじゃない?」

つぼみの言葉に、いつきとえりかは周囲を見渡しながらそう返した。

なお、花の都とは、花のように華やかな都、という意味であり、決してつぼみが解釈したように色とりどりの花であふれているという意味ではない。

もっとも、つぼみがそれをわかっているはずもなく。

「わたし、探してきます!」

と言い、その場から走り去っていった。

なお、この時、菖とゆりは三人の近くにはおらず、少し離れた場所にあるカフェで、二人の壮年の男女ともにお茶会をしていた。

その男女が菖の両親であることは言うまでもない。

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それから数十分。

えりかといつきから、つぼみがどこかに行ってしまったという報告を聞いた菖とゆりは、つぼみ探しはえりかといつきに任せ、一足先にアパートへ戻って、桜子の手伝いをしていた。

しかし、つぼみを心配していないわけではなかった。

「大丈夫かしら?あの子たち」

「まぁ、携帯で連絡取り合うことにしてるから、大丈夫だと思うけど。それに、何かあればコロンが気づくだろ?」

そう言って、桜子の手伝いをてきぱきとこなしていた。

すると、二人の耳につぼみとえりか、いつきの三人の声が届いた。

「おかえり。ずいぶんかか……」

「おかえりなさい。ずいぶん遠くまで……」

菖とゆりが出迎えながら少し小言を言おうかとおもったが、玄関にいた三人の姿を見て、それをやめた。

つぼみといつきに抱えられるようにして、ぼろぼろの状態の少年が気を失っていたためだ。

「すぐ、二階のベッドに」

「薬箱、取ってくる」

意外にも冷静な二人にそう指示され、つぼみたちは少年を二階の空き部屋へと運び、寝かせた。

 

その時、少年――ルー・ガルーは夢を見ていた。

それは、かつて自分が教会で大天使ミカエルに祈りを捧げていたときのもの。

自分が、父と呼ぶ男、サラマンダー男爵と初めて出会った時の記憶だった。

『ねぇ、お願い聞いてくれるんでしょ?』

『あぁ……まぁ、とりあえず、言うだけ言ってみろ』

『あのね、ぼく、パパとママがほしい!』

『なんだ?そんなの、俺だって持ってねぇぞ』

『えー?!』

『まぁ、なんなら一緒に探すか』

手をつなぎながら、サラマンダーが閉じ込められていたという不思議な空間の出口へ向かいながら、幼いルー・ガルーとサラマンダーはそんなやりとりをしていた。




菖の設定:補足

~「菖の両親」~
父母、ともに考古学者で現在は世界各地の遺跡調査の手伝いや臨時の講義を行っている。
夫婦仲がいいため、二人一緒に同じく国に滞在している。
菖が中学生に上がるまでは、夏休みや冬休みになると、菖を連れまわし、一緒に遺跡調査を行っていたこともある。
なお、その影響で、菖も日常会話程度ならヨーロッパの言語は話すことができるし、英語の学術書(考古学限定)を読むことができる。
作中では大学の講義のため、パリに滞在することとなり、菖とゆり、ももかと合流したときはものすごく驚いたとか。
登場しないシーンでは、菖がファッションショーのモデル(手伝いということはわかっている)に出ることを知り、休みをもぎ取るために全力で働いているようである。
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