ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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前日談(スキット風)

~こたつでゆっくりと……~
つぼみ「ほわわ~……」
えりか「はふぅ……」
いつき「ん~……」
ゆり「……」
菖「……見事に炬燵の魔力に取りつかれてるな」(みかん食べつつ
ゆり「そうね……というか、この子たち」
中学生組「「「……ZZZ……」」」
菖「寝てるな」
ゆり「そうね……ふぁぁ……」
菖「まぁ、炬燵に入るとこうなるよな……」
ゆり「……菖、肩借りてもいい?」
菖「どうぞ」
ゆり「ありが……と……」
菖「……平和だなぁ……なんだか、俺も……ふぁあ……」
全員『すぅ……すぅ……』


初夢物語~もしもの10年後~

ピピピピッ、ピピピピッ。

けたたましい電子音が耳に届いてきた。

ふと、ゆりが目を開けると、目覚まし時計は六時半を示していた。

きっちり時間通り。意識もはっきりしている。

ふと隣を見ると、大学から帰ってきてそのままの格好で寝落ちてしまったのだろう、幼馴染の姿が目に入ってきた。

「ふふっ……菖、起きなさい?」

「……ん、む??」

「おはよう、あなた(・・・)。昨日は遅くまでご苦労様」

「ん~……おはよう、ゆり……」

まだ寝たりないのか、寝転がったまま、眠そうな瞳をゆりのほうへ向けた。心なしか、その顔には幸せそうな笑みが浮かんでいるような印象がある。

「どうしたの?なにか、おもしろいことでも思い出したのかしら?」

「……いや。ほんとに俺みたいな男のお嫁さんになってくれたんだなって思ったら、うれしくてさ」

菖のその一言に、ゆりの顔は真っ赤になった。

その左手の薬指には、細身ではあるが、菖が首から下げているものと同じデザインの結婚指輪がつけられていた。

二人が結婚したのは実に数カ月前。幼馴染としてそのほとんどの時間を一緒に過ごしてきた二人だったが、ようやくゴールインを果たし、いまは希望ヶ花市内で一緒に暮らしている。

ちなみに、ゆりはつぼみと同じ植物研究所の研究員となり、大学で植物学の教鞭を取っており、菖もまた、同じ大学で考古学の教鞭を取っている。

もっとも、理系と文系で研究室が分かれているため、職場で顔を合わせることはめったにないのだが。

「……そ、それじゃ、あなたのお嫁さんらしく、朝ごはんを作ってこようかしらね」

「それじゃ、俺は起きるとするかなぁ……」

そう言いながら、ベッドから降りるゆりの背中を見送りながら、菖は微笑みを浮かべるのだった。

そんな二人の様子に背後から、やれやれ、というため息が聞こえてきた。

菖はそのため息が聞こえてきた方へ視線を向けると、そこには十年来、姿を変えることなくゆりの近くにいる妖精が座っていた。

「……やれやれ、君たちはずっと変わらないね」

「そういう君もな、コロン」

「僕は変わりたくても、変わりようがないさ。そもそも僕の時計は止まってしまっているんだし」

「そうだったな……」

高校を卒業してから十年。

砂漠の使徒の侵攻だけでなく、様々な闇の勢力との戦いもあったが、ゆりも菖も、そしてつぼみやえりか、いつきも、もはや戦うことがなくなった。

それだけ優秀な後輩がいる、ということもあるのだが、他の世界からの侵略者に対抗するため、プリキュア以外の勢力が誕生したためという部分が大きい。

そのため、心の大樹の守護者として契約を結んだ菖はともかく、プリキュアたちは一斉に戦いから身を引き、パートナーの妖精たちもプリキュアに力を割く必要がなくなったため、成長していった。

が、すでに死を迎え、菖とゆりの心の花の力で実体を保っているコロンは、その姿をとどめたまま、変化することはなかった。

だからこそコロンは、自分の時計が止まっている、と言ったのだろうが。

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朝食を終えて、菖とゆりは一緒に職場である大学へと向かっていった。

大学の職員入り口にくると、それぞれ割り当てられた部屋がある研究棟へと向かっていった。

理系の研究棟に入り、エレベーターに乗り込むと、ゆりは懐かしい人物と出会った。

「あら、ほのか」

「……あ、ゆりさん!おはようございます!」

「えぇ、おはよう」

そこにいたのは、かつての仲間の一人であり、先輩プリキュアとして活躍していた雪城ほのかだった。

彼女もまた、プリキュアとしての一線を退いてから、大学で教鞭を取るようになった。

ちなみに、ほのか以外にも、大学で教鞭をを取っている仲間もいる。

なので、彼女たちとこうして顔を合わせることもまれにあるのだ。

ちなみに、ゆりはつぼみとほのかの二人とはよく顔を合わせるのだが、菖は同級生の静や君尋、小狼と顔を合わせる機会が多い。

まぁ、それはともかくとして。

ほのかは、そういえば、とゆりに視線を向けて問いかけた。

「大変ですよね、お二人そろって大学の講師って」

「そうでもないわよ?結婚はしてるけど、毎日顔をあわせなくなったのが逆に新鮮だから、今のところ、二人とも楽しんでいる感じね」

「けど、気を付けたほうがいいですよ?まだ菖さんのことを諦められないって子はいますし」

結婚した、いや、ゆりと正式に交際するようになってからも、オールスターズメンバーの中には、愛人でも構わないから、といって菖の近くにいようとしたがるメンバーは残っていた。

なお、その筆頭がつぼみである。

ちなみに菖は愛人にしてほしいというメンバーに苦い顔をしているが、ゆりはオールスターズのメンバーであれば愛人にしても構わない、と思っている。

逆を言えば、良く知りもしない娘を愛人にするのは許さない、ということでもあるのだが。

閑話休題(それはそれとして)

「えぇ、わかってる」

ほのかの警告に、ゆりは微苦笑を浮かべるのだった。

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それからしばらくすると講義(仕事)が始まった。

ちなみに、菖の講義には女子学生が、ゆりやつぼみ、ほのかの講義には男子学生が大半を占めていることは言うまでもない。

もっとも、菖の講義に男子が参加していないというわけではないし、ゆりたちの講義に女子が参加していないというわけでもない。

だが、やはり美形の異性となると、必然的に引き寄せられてしまうのは人の性、というものなのだろう。

授業が終わると、学生たちがこぞって質問にやってくるのだが、その大半は教授と話すことが目的だったりする。

とはいえ、そういうことが目当てで集まってくる人達の捌き方にはみんな慣れたもので、相手を傷つけず、かといって、必要以上につけ上がらせない程度にあしらうことができるようになっていた。

いつの間にか身につけてしまったスキルを使って、菖は今日もいつものようにのらりくらりと回避していると。

「菖兄さん」

「菖お兄様」

「菖兄ちゃ~ん」

聞きなれた呼ばれ方に呼び止められた。

視線を声がした方へ向けると、そこには高校生時代のゆりと同じくらいの身長まで大きくなったアコと亜久里、レジーナの三人がいた。

「お?アコに亜久里、レジーナじゃないか」

「あによ?わたしがいたらおかしいの?兄さんとゆり姉さんの講義が受けたくてこの大学選んだのに」

「そうですわ!まったく、講師という立ち場になってもそのあたりの配慮がまったく足りていませんわよ!!」

「まぁいいじゃない♪菖兄ちゃんに声かけるの、久しぶりなんだし」

レジーナの言うとおり、ここ最近、菖はほかの研究機関のプロジェクトに参加する機会の方が多くなっているため、大学での講義が休講がちになっていた。

そのため、菖とゆりがいるという理由で入学してきたアコ、亜久里、レジーナの三人は菖の講義がないときはゆりの講義を聴講することで時間を潰していた。

が、やはり菖の授業のほうが興味があるらしく、こうして声をかけることはないらしい。

「別におかしいとは言ってないだろ?まぁ、気に障ったなら謝るよ」

「ならいい」

「そうですわね。あまりそのことで責めるのもお門違いというものでしょうし」

菖が苦笑を浮かべながら謝ると、アコと亜久里は許してくれたらしく、仕方がない、というようなため息をつきながらそう返してきた。

そこまでくると、やっと本題に入っていった。

「ところで、今日の講義で質問が……」

「あ、あたしもあたしも!」

「……みんな順番に」

余談だが、アコと亜久里は登録している講義のすべてを真面目に受けているため、単位が不足しているという心配をまったくしていない。

一方でレジーナは二人と比べて不真面目ではあるが、要領がいいため、単位不足で落第になることをギリギリで回避している。

が、菖の講義だけは真面目に受けているあたり、やる気がないわけではないようだった。

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それからいくつかの講義とプロジェクトの会議、研究会のための論文や現在テーマとしている研究論文のための資料集めなど、大学での業務を終わらせ、菖は家路についた。

特にこれと言って事件が起きるわけもなく、無事に我が家に到着した。

――ふむ……今日はゆりのほうが帰りが遅いのか

心中でそうつぶやき、菖はジャケットを脱いで台所へ向かった。

夫婦そろって大学の講師で研究者となると、どうしても一緒に時間に食事を摂るということが難しくなってしまう。

そのため、夕飯は先に帰った方が作る、というルールが、今のところの夫婦の約束事だった。

冷蔵庫の中身を確認しながら、菖はこの日の献立を決めて、さっそく調理に取り掛かった。

しばらくすると、玄関からゆりの声が聞こえてきた。

どうやら、帰ってきたらしい。

「ただいま、菖」

「おかえり。もう少しでできるから、座ってて」

そう言いながら、菖は作り終えた料理を盛った皿をテーブルまで運んでいった。

そこからさらに食器類を並べていき、すっかり夕食の支度を整えてしまった。

一方、手持ち無沙汰になってしまったゆりはというと。

「……この料理なら、お酒は日本酒か焼酎のほうがいいかしらね?」

なぜか晩酌の用意をしていた。

実はこの夫婦、かなりの酒豪であることが成人後に判明したのだ。

どれくらいかといえば、日本酒の一升瓶を二人で五本は開けてしまえるほど。

それなりに飲める人間でも一升瓶一本がせいぜいなのだから、かなりのものである。

「そうだなぁ……うす塩味で作ったからどっちもいけると思うけど、焼酎なら麦の方がいいんじゃない?」

「そうね……あぁ、でもちょうど日本酒があるから、そっちにしましょう?」

「賛成」

ゆりが両手で一升瓶を持ち上げている様子に苦笑を浮かべながら、菖はそう答えた。

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その後、夕食を終えた二人は入浴を済ませて、寝室に入った。

だが、すぐにベッドで横にならず、菖もゆりもスケジュール手帳を手に、それぞれの予定を擦り合わせていた。

「……菖、明日だけれど……」

「大丈夫。何が何でも、明日は外させてもらいますって学会にも伝えてある。それに、俺の代打以上の活躍をしてくれる優秀な助手もいるしな」

「ふふっ……なら、明日は大丈夫そうね?」

スケジュールを確認しながら、不安そうにしていたゆりだったが、菖からの一言で安堵の笑みを浮かべた。

翌日は、二人にとって特別な日。

幼馴染としてでも、共に戦う仲間としてでもなく、特別な人として一緒にいることを誓いあった日だった。

そのため、一緒に出かける予定を立てていたのだが、ここ最近、菖は学会の研究で忙しくしていたため、もしかしたらと思っていたらしい。

だが、菖は約束を守ってくれた。

そのことに安堵したようだ。

「それじゃ、そろそろ寝ないと、ね?」

「そうだな……おやすみ、ゆり」

「えぇ、おやすみ。あなた」

部屋の電気を消し、菖とゆりは互いにそう言いながら布団の中に入った。

その手は互いにつなぎあい、顔も向き合ったままなのだが、そこを突っ込むのは野暮というものだった。

暗くてよく見えなかったが、ゆりは先に眠ったであろう愛する人の寝顔を見つめながら、瞼を閉じた。




あとがき代わりのその後の話(スキット風)

~目が覚めたら~
つぼみ「ふぁあ……すっかり眠ってしまいましたぁ……」
えりか「ん~……炬燵の魔力、恐るべし……」
いつき「あははは……」
ゆり「……油断したわ……」
菖「ははは……ところで、みんなよく寝てたけど、なんか夢でも見てたのか?」
つぼみ「は、はいっ!!あ、ああぁぁぁぁのぉぉぉぉぉそのぉぉぉぉぉぉぉ……」(/// ///
えりか「あたしは自分が作った衣装でファッションショーやってる夢、見たっしゅ!」
いつき「僕は、みんなと一緒にお弁当食べてる夢だったよ……ゆりさんと菖さんは、どんな夢だったんですか?」
ゆり「そうね……こうだったらいいなって思える夢ね」
菖「ははは、なんか、似たような夢を見てそうだな」
ゆり「あら?そうなの??」
菖「まぁ、これ以上はノーコメントってことで……というか、つぼみ。そろそろ戻ってこい」
つぼみ「は、はひぃぃぃぃっ??!!」
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