ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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ア・ラ・モード最終回、ハッピーエンドで終わったというのに、こんなタイトルのお話を投稿する私って……

何度も話していますが、基本的に本編は漫画版をベースにしていますので、アニメ本編と違う点が多々存在しますが、そこは気にしないでいただきたく。
ちなみに、仁頼さん、意味深なセリフを出していますが、気づいていて追求していないかったという設定になっているので、まったく問題はない……はず!


突きつけられた絶望

その男は、突然やってきた。

それは、クリスマスを無事に乗り越え、お正月も過ぎて、妊娠したみずきが安定期に入り、戻ってきたある日のことだった。

その日も普段通り、つぼみは植物園の手伝いをしていた。

そこには、いつものように仲間たちも一緒にいて、笑顔の花が咲いている。そんないつもと変わらない平和な日常に、突如、その青年は踏みこんできた。

一見すれば、穏やかそうな好青年だが、彼を見た瞬間、菖と薫子の顔は険しくなった。

菖はその瞳の奥から漏れ出ている、穢れと呼んでも過言ではない負の感情を感じ取ったため。薫子は、その青年がかつて自分が死闘を繰り広げ、やっとのことで封印した相手であることを知っていたから。

だが、そんなことはまったく知らないつぼみは。

「いらっしゃいませ!」

「こんにちは……この植物園で最も高齢な花を探しているんだけれど」

と、少年と言葉を交わしていた。

少年の口から出てきた、最も高齢な花、という言葉に首を傾げていると、つぼみの耳に薫子の鋭い声が響いてきた。

「つぼみ!その人から離れて!!」

薫子の悲鳴に、つぼみは驚き、身をすくませてしまったが、少年のほうはまるで長い間、探し求めていたものをようやく見つけたかのように、楽しそうな笑みを浮かべた。

「ふふふ、五十年ぶりだね。キュアフラワー」

「デューン!!」

「五十年前に君に封じられた僕の力、返してもらうよ!!」

薫子がデューンと呼んだ青年は、宣言すると同時に薫子にむかっていった。

だが、その進行を妨げるように、菖とゆりが立ちふさがった。

「コロン!」

「あぁっ!!プリキュアの種、いくぞ!!」

「プリキュア!オープンマイハート!」

ゆりはココロパフュームを手に、傍らにいたコロンに声をかけた。その意図を察したコロンはすぐさまプリキュアの種を取りだした。

一方の菖は、変身アイテムである指抜き手袋をはめて、すぐにユグドセイバーに変身し、名乗ることなく、エターニアハートを引き抜き、デューンに接近した。

振り下ろされたエターニアハートを、デューンは眉一つ動かすことなく受けとめて、微笑みを浮かべた。

「ほぉ?君が二代目のユグドセイバーか」

「お初にお目にかかる、砂漠の王デューン……失礼だが、早々にご退場いただけないだろうか?」

「無理な話だね」

「言うとおもった!!」

できることなら、争いは避けたいところだったのだが、それは最初から無理なことだと、セイバーもわかっていた。

それでも砂一つ部分でも可能性があるのなら、それに賭けてみたいと思っていたのだが、やはり無駄だったらしい。

セイバーはデューンから距離を取ることなく、さらに一歩、踏みだし。

「ユグドフォルテウェーブ!」

心の花の力を手のひらに集め、デューンに叩きつけた。

技を繰りだすその速さに対応できなかったのか、デューンはセイバーの技を受けて、植物園の外まで吹き飛ばされた。

幸いなことに、閉園日だったため、周囲に一般人はいないため、植物園の中で戦っても問題はないだろうが、園内の植物たちにどんな影響を与えるかわからない。

だからこそ、戦いの場を外に移すよう、仕向けたのだ。

「「先に行く/ってるわ!」」

「わたしたちもすぐ追いかけます!!」

言うが早いか、地面を蹴ってデューンの追撃に向かったセイバーとムーンライトの背中にむかって、変身していなかったつぼみの声が響いた。

だが、それに反応することなく、セイバーもムーンライトもデューンを追いかけ、植物園の外へ出た。

外に出ると、デューンが涼しい顔で立っていた。

その様子から、どうやらあまりダメージは入っていないらしいということが嫌でもわかった。

そして、同時に、それだけの実力差があるということも。

「……手ごわいぞ」

「……えぇ」

「……怖くない?」

「怖いに決まってるわ」

平然としているデューンを眼前にしながら、セイバーはムーンライトに問いかけた。

返ってきた答えは、予想できていたものだったが、その答えには続きがあった。

「けれど、あなたと……いいえ、あなたたちと一緒だから、大丈夫!」

「そっか」

ムーンライトから返ってきた答えの続きに、セイバーは笑みを浮かべた。

それと同時に、ブロッサムたちも追いついてきた。

「お待たせしました!」

「おっしゃ!こっからやったるっしゅ!!」

「わたしたちも戦います!」

追いつくなり、気合十分といった具合の様子だった。

その頼もしさに、セイバーもムーンライトも自然と笑みが浮かんできたが、すぐにその表情は冷たいものへと変わった。

その視線の先には、自分たちが倒すべき相手、砂漠の王(デューン)がいるのだから。

「……いくぞ!」

「「「「えぇっ/はいっ/やるっしゅ!!」」」」

セイバーの合図を皮切りに、プリキュアたちと同時に地面を蹴り、デューンとの距離を詰めた。

だが、デューンとの戦闘力の差は圧倒的だった。

何があったのか、まったく理解できない。唯一、理解できたことは、何があったのか理解できないまま倒された、ということだけだ。

「くっ!!」

それでもセイバーとムーンライトは立ち上がろうとしていた。

だが、それを止めるかのように、薫子の声が響いた。

「もうやめて!」

背後を見れば、そこには肩で息をしながら駆け寄ってくる薫子の姿があった。その傍らには、妖精の姿のままのコッペもいた。

「これ以上、その子たちを傷つけさせない!」

「ほぉ?なら、どうするんだい?」

「……コッペ、お願い。いまだけわたしに力を貸して!」

薫子がコッペの背に触れながらそう願うと、コッペのお腹に描かれた大きなハートマークが光を放ち、薫子を包みこんだ。

光が収まると、薫子が立っていた場所に、ブロッサムよりも明るいピンク色の長い髪をした女性が立っていた。

その女性こそ。

「聖なる光に輝く、一輪の花!キュアフラワー!!」

かつて、デューンを死闘の末に封じた伝説のプリキュア。キュアフラワーだった。

その突然の登場に、ブロッサムたちは歓喜の表情を浮かべ、セイバーとムーンライトは驚愕に目を丸くした。

「ホーリーシャワー!フラワーインパクト!!」

だが、フラワーがデューンに攻撃を仕掛けたことで、表情は引き締まり、ブロッサムたちも同時に必殺技を放った。

だが、それでもデューンの力には遠く及ばなかった。

デューンが自身の闇の力を手の平に集め、解き放った瞬間、闇の力は雷のようにブロッサムたちに襲いかかった。

想像以上のその威力に、現代のプリキュア(ブロッサム)たちはおろか、セイバーとフラワーですら立ち上がるのがやっとの状態まで追い込まれてしまった。

すでに疲労困憊の状態になっているフラワーの手首をつかみ、デューンは楽しそうな笑みを浮かべた。

「衰えたな、キュアフラワー。まぁ、時は流れ枯れて散るのが花の運命(さだめ)、ということか」

そう言いながら、デューンはフラワーの首に手をかけ、彼女がいつも首から下げていたペンダントの鎖を引きちぎり、紅玉をいとも簡単に砕いてしまった。

その瞬間、デューンの体からより強い闇の力があふれだし、その体つきも少年のそれから青年のそれへと変化した。

どうやら、力を取り戻してしまったらしい。

だが、バッドニュースはそれだけではなかった。

デューンが青年の姿へと変化すると同時に、上空から聞き覚えのある声が響いてきた。

「お迎えに上がりました、デューン様……折よく、心の大樹も見つけております」

それはデューンの腹心にして地球攻略の最高責任者であるサバーク博士の声だった。

サバークの声に、そうか、と返し、デューンは上空から降りてきた光の中へと進んでいった。

その手はいまだ、キュアフラワーの腕をつかんだままだった。

これで、自分を邪魔するものはいない。

そう確信したデューンは冷酷な笑みを浮かべて光の中へ消えていった。

キュアフラワーとともに。

----------------------------

つぼみたちが目を覚ますと、そこは植物園の中だった。

どうやら、気を失っていたところを誰かが運び入れてくれたようだ。

その誰かというのが、いまこの場にいない菖であることは、すぐに察しがついた。

ほどなくして、妖精たちが慌てた様子でつぼみたちの元へ駆けつけてきた。

「つぼみ!つぼみ!!」

「大変ですっ!はやく、ハートキャッチミラージュを見るですっ!!」

シプレたちの慌てふためいているその様子に、つぼみたちはハートキャッチミラージュの鏡面を見ずにはいられなかった。

だが、そこには残酷な現実が待っていた。

ハートキャッチミラージュの鏡面には、枯れはてた心の大樹の姿が映されていた。

「こ、心の大樹が……枯れてます……」

「……っ!!大樹が枯れてしまったということは!!」

ゆりは目の前にある鏡像に、もっと恐ろしい事実があることに思い至り、外へと出た。

つぼみたちもそれに続き、外へ出ると、希望ヶ花市は一面の砂に覆われていた。

それがデューンの仕業であることに気づくまで、大して時間はかからなかった。

唯一、植物園だけはコッペの結界によって守られていたため、無事だったようだ。

だが、それは同時に、植物園以外の場所は無事ではない、ということを意味していた。

「……っ!!お母さん!!」

そのことに気づいたつぼみはフラワーショップのある方へと走っていった。

えりかたちもその後に続き、砂に足を取られながらもフラワーショップがある場所へとたどり着いた。

だが、そこにあったものは非情な現実だった。

フラワーショップは砂に埋もれ、屋根だけとなってしまっている状態だった。

その光景を見てしまったつぼみは、必死に砂をかきわけ、お父さん、お母さん、と泣きながら悲鳴をあげていた。

「……ひどい……ひどすぎます……」

やがて、砂をかきわける手は止まり、つぼみは泣き崩れてしまった。

何もかも砂に呑みこまれ、家族も町の人も、植物たちも全滅してしまった。

自分たちが守りたいと願ったものを、守ることができなかった。

その事実に打ちひしがれて、四人はとぼとぼと植物園に戻っていった。

ふと、ゆりといつきは温室の中から気配がすることに気づき、立ち止まった。

まさか、砂漠の使徒の追撃か。

そう思った四人は、恐る恐る、温室の扉を開けた。

だが、扉の先にいたのは。

「お前たち、無事だったか!よかった!!」

そこにいたのは、希望ヶ花に住んでいる人々と。

「お!やっと戻ってきた」

菖の姿があった。

そのすぐ近くには、ももかや同級生たちの姿もあった。

「みなさんっ?!」

「もも姉ぇ!!」

「心配したのよ!」

えりかに抱き着かれながら、ももかはそう返し、微笑みを浮かべた。

だが、えりかはふと、なぜここにももかや同級生たちがいるのか気になった。

「そういえば、なんでここに?」

「菖くんに連れてきてもらったのよ。ほかの町の人もね」

どうやら、菖がいなかったのは無事だった人達を探しに、町へ出ていたからだったようだ。

ふと、つぼみはここにいる人たちの顔に、まったく絶望が浮かんでいないことに気づいた。

町が砂漠になっているというのに。

「みなさん、どうしてそんなに元気なんですか?町は砂漠になっているのに……」

ふいにつぼみが近くいたなみに問いかけると、なみは笑顔を浮かべ、答えを返した。

「あたしたちの心は、そんなにヤワじゃないって!こんなんでめげてたら、プリキュアに怒られちゃうよ!!」

「プリキュアと白騎士は、きっといまもどこかで世界を守ろうと頑張っている!だから、俺たちだって頑張んなきゃな!」

なみの答えに同調するように、同級生の番の言葉が返ってきた。

いや、番だけではない。

「一度、プリキュアに助けられたんだもん。こんなんで負けないよ!」

「こうして無事でいるんだ。俺たちにできることを精いっぱいやらねぇとな!」

「動くことができるなら、活路を見いだすことができるまで足掻くだけだ」

「ここでわたしたちがあきらめたら、プリキュアと白騎士に顔向けできないもんね!!」

その場にいるみんなが、口々にそう返してきた。

そこには絶望や諦めの感情はいっさいなかった。

「……わたし……わたし、くじけそうになった自分の心に、堪忍袋の緒が切れましたっ!!」

誰も諦めていない。

なのに、自分は目の前に突きつけられた現実に絶望し、くじけそうになってしまっていた。

その想いを振り切るかのように、つぼみは温室に響くような大声で叫んだ。

「みなさんと同じように、プリキュアも白騎士もきっと……いいえ、絶対にあきらめませんよっ!!」

「つぼみ!」

「そうだね、それでこそプリキュアだ!」

つぼみのその言葉に、えりかといつきも元気を取り戻した。

すると、外からデザートデビルのうめき声が突然響いてきた。

「皆、奥へ集まるのじゃ!!」

その声を聞いた仁頼が避難誘導を始めると、つぼみたちはそのどさくさにまぎれて、外へ出た。

菖も外へ出ようとしたが、仁頼に呼び留められた。

「菖、行くのじゃな?」

「……うん。じぃじ、行ってくるよ」

「無事に戻ってこい。わしが願うのはそれだけじゃ」

「うん!」

仁頼の言葉にうなずいて返した菖は、温室の外へ飛び出した。

すでにつぼみたちは変身して、デザートデビルとの死闘を繰り広げていた。

菖は変身アイテムの手袋を取り出し、左手にはめると、気合を入れるかのように叫んだ。

「心力解放!ユグドセイバー、スタートアップ!!」

叫んだ言葉に呼応するように、手の甲に描かれた紋章が光を放ち、菖を包みこんだ。

光が収まると、紋様が描かれた白い外套(マント)を身にまとったセイバーが姿を現した。

「……どうやら、成功だな」

心の大樹が枯れはてしまう可能性を見越して、先代騎士が渡した秘策が功を奏したことに、セイバーは安堵のため息をもらした。

だが、その顔はすぐに引き締まり、エターニアハートを構えた。

「其は流るるもの、裁きを執行する水――水の執行者(アクリア・ルズローシヴ)!!」

エターニアハートに封じられた四つの言霊のうちの一つを口にした瞬間、エターニアハートは青い光を放つ弓へと姿を変えた。

セイバーは弓を引き絞り、デザートデビルに照準を合わせた。

その瞬間、心の花の力が青い光の矢となって番えられた。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

セイバーが吼えながら矢を放つと、矢はまっすぐにデザートデビルへと飛んでいき、眉間に突き刺さった。

その攻撃に、セイバーが参戦したことに気づいたブロッサムたちは、セイバーの隣へと降り立った。

「わたしたちは、五人だけど五人じゃありません!」

「応援してくれている人がいる!!」

「守りたい人がいる!!」

「心は、みんなとつながっている!!」

「だから、負けない……負けるわけにはいきません!!」

そう宣言した瞬間、プリキュアたちの体が心の花の光に包まれた。

だが、自分たちの心の花だけではない。温室の中から聞こえてくる、自分たちを応援してくれている人たちの声が聞こえてくる。

彼らがいる限り、自分たちはいつまでも絶望に打ちひしがれているわけにはいかない。

その想いが、プリキュアたちを完全復活へと導いた。

「みなさん!いきますよ!!」

ブロッサムの合図に全員がうなずき、デザートデビルへとむかっていった。

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デザートデビルをあらかた倒したあと、ブロッサムたちはコッペの背に乗り、地球を離れ、砂漠の使徒の本拠地である惑星城へとむかっていった。

ふと、ブロッサムが地球に視線を向けると、そこには赤茶けた惑星があった。

青く輝く星。世界初の有人宇宙飛行を行った宇宙飛行士の一人、ユーリィ=ガガーリンが残した言葉とはまったく異なる姿になってしまった地球を見て、ブロッサムはデューンへの怒りを募らせた。

同時に、自分たちの帰りを信じて待ってくれている人々と惑星城で待っているであろう薫子のことを想った。

必ず、砂漠の使徒を倒し、薫子を助け出す。

その誓いを胸に、ブロッサムは惑星城へと視線を戻した。

プリキュアと砂漠の使徒。

二つの勢力の四百年もの長きにわたり続いた戦いに決着がつくときが、刻一刻と近づいてきていた。




あとがき代わりのその頃(スキット風)

~ブロッサムたち出発後の惑星城~
デューン「プリキュアとユグドセイバーが近づいている?心の大樹は枯れたはず……なのになぜ、妖精もプリキュアも生きている?」
薫子「心の大樹は、まだ完全に枯れていない。人々の心に希望ヶまだ残っているのよ!!」
サバーク「……デューン様、お任せください。プリキュアとセイバーの始末、必ずや!!」
薫子「そんなことはさせないわっ!!」
デューン「ふっ、変身できない君に何ができるんだい?キュアフラワー」
薫子「くっ……」
デューン「ふふふっ、君が後生大事に守ってきたもの、そのすべてを滅ぼしてやる!何もかもだ!!はーっははははははっ!!」
薫子「……みんな……どうか、無事で……」
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