ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
色々はしょってますが、そこはそれ、時間短縮ということでお許しを。
あ、今回は後日談ありませんので。
砂漠の王、デューンの襲撃により、一瞬のうちに砂漠となってしまった地球。
さらわれた薫子の救出と、砂漠の使徒との決着をつけるため、プリキュアたちは惑星城に赴いた。
「……早速のお出迎え、かな?」
「そのようね」
惑星城に到着して早々、大量のスナッキーたちが出迎えてきた。
全員、気合もやる気も十分な状態でここに来ているため、圧倒的な数の差でひるむようなことはなかった。
だが、ここまで運んでくれたコッペが五人の前に躍り出た。
「……コッペ様?」
「どうやら、ここは任せてほしいってことみたいだよ」
ムーンライトが問いかけると、コロンがそう返した。
申し出はありがたいのだが、コッペだけで大丈夫なのか不安を覚えたプリキュアたちとセイバーだったが、その想いを察したのか、コッペは目を閉じ、自分の周囲に花吹雪を出現させた。
花吹雪が止むと、コッペの姿は眼鏡をかけた美形の書生へと変わっていた。
その書生が、ブロッサムたちのピンチを何度となく救ってくれたイケメンさんであることに気づくまで、さほど時間はかからなかった。
そのことにショックを受けたブロッサムだったが、今はそれどころではないことをしっかりわかっていたため、復活するまで大して時間はかからなかった。
このイケメンがかなりの使い手であることは、ブロッサムもマリンも身をもって知っているため、コッペに任せて、先へと進んだ。
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その後も、クモジャキーとコブラージャが妨害に来たが、クモジャキーはマリンが、コブラージャはサンシャインが相手をすることになり、残ったのはブロッサム、ムーンライト、セイバーの三人だけになってしまった。
だが、その三人の前に、デューンを除き、砂漠の使徒の中でも最強最悪の敵が姿を現した。
「キュアムーンライト……」
「ダークプリキュア……っ!」
「今度こそ、決着をつける!!」
そこにいたのは、ダークプリキュア。
かつて、コロンを消滅させ、心の種の大半を砕いた、キュアムーンライトの宿敵だ。
ダークプリキュアはその双眸を金色に輝かせ、ムーンライトに鋭い視線を向けてきた。
どうやら、ここでの対決は避けられないらしい。
「……ブロッサム、あなたは薫子さんのところへ。セイバー、ブロッサムをお願い」
「でも、三人で戦えば!!」
「……行こう、ブロッサム」
一人で戦おうとするムーンライトに反論するブロッサムだったが、セイバーにそれを止められた。
「でも!」
「その気持ちだけで十分よ……それに、これはわたし一人でやらなければならないことなの」
ムーンライトは反論するブロッサムを諭すように静かに告げた。
「彼女は、かつてのわたし。
ムーンライトとダークプリキュアの宿縁は、長く一緒に戦ってきたセイバーすら入る隙がないほど深く、根強いものだ。
どうしても、ムーンライトは一人で決着をつけたいらしい。
「ここはムーンライトに任せて。俺たちは薫子さんのところへ急ごう……大丈夫、ムーンライトが簡単に負けるなんてこと、ありえないから」
微笑みを浮かべ、セイバーはブロッサムにそう語り、ムーンライトの方へ視線を向けた。
ムーンライトもまた、セイバーに視線を向け、力強くうなずいた。
セイバーはそれにうなずいて返すと、ブロッサムと一緒に薫子の探索にむかった。
二人の姿が見えなくなると、ムーンライトは再び、ダークプリキュアに視線を戻した。
どうやら、ダークプリキュアもまた、誰にも邪魔されずにムーンライトと決着をつけることを望んでいたようだ。
二人は同時にタクトを構え、互いに意識を向け、隙を伺った。
ふいに、惑星城のどこかで爆発が起こった。
おそらく、ここにいない誰かが戦っているために起きたものだろう。
その轟音を皮切りに二人は同時に間合いを詰めた。
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ムーンライトと別れたブロッサムとセイバーは、惑星城の最奥を目指した。
なぜ奥を目指すのか。それは、セイバーがいままで行ってきた遺跡探検の経験からだった。
古代、人間は自身の支配する土地を求め、手に入れるため"戦争"というを手段をとった。
当時の戦争の勝利条件は、その土地を支配している統治者を討ち取ることが主だった。
そのため、城というのは防御性を考慮して作られ、最も攻略まで時間がかかる場所に重要人物をかくまう場所を作るケースが多くみられるのだ。
「けれど、なんでデューンはおばあちゃんを玉座に?」
「あいつは薫子さんに敗北した。そのことを恨めしく思っているはずだ。なら、それ以上の屈辱を薫子さんに味わわせるには?」
「……まさか!」
「そう……薫子さんが、キュアフラワーが守ってきたものを、本人の目の前で破壊すること」
そのための施設が、玉座の間に備わっている。
セイバーはそう読んでいた。
そうこうしているうちに、二人は玉座の間に到着した。
そしてそこには、セイバーの読み通り、椅子に座らせられて拘束されている薫子がいた。
その脇には、二体のボスナッキーがいた。
「……俺は右、ブロッサムは左を」
「はいっ!」
ボスナッキーたちに聞こえない程度の声で、セイバーが指示すると、ブロッサムはうなずき、二人同時に玉座の間に突撃した。
侵入者たちに気づいたボスナッキーたちだったが、戦闘準備をすでに終わらせていた二人にかなうはずもなく、一瞬で浄化されてしまった。
「おばあちゃん!!」
「薫子さん!!」
「つぼみ!!菖くん!!」
薫子のところまで駆け寄ったセイバーがエターニアハートで薫子を拘束している手錠を砕くと、ブロッサムが薫子に抱き着いた。
薫子は抱き着いてきた孫娘をあやすように、軽く背中を叩きながら、それを受け止めていた。
「ブロッサム、俺はムーンライトのところへ行く」
「え、けど……」
「結果がどうなるとしても、俺には見届ける義務がある。それに……」
セイバーはモニターを見ながら、眼付きを険しくした。
「どうにも嫌な予感がする」
「わ、わかりました……わたしも一緒に行きます!!」
「けど、薫子さんは……」
「わたしなら大丈夫」
さすがに、薫子一人を残すのは危険と判断したセイバーだったが、薫子自身が大丈夫だと返してきた。
普通なら、それでもと反論するところだが、いつの間に追いついたのか、書生姿のままのコッペがやってきた。
どうやら、ここは任せろ、と言っているようだ。
コッペのその口から出てきていない言葉にあまえ、セイバーとブロッサムは再び、ムーンライトのもとへとむかった。
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玉座の間から離れ、セイバーとブロッサムはムーンライトとダークプリキュアが戦っている場所に戻ってきた。
そこではすでに、ムーンライトとダークプリキュアが激闘を繰り広げていた。
だが、それもいよいよ決着が見えてきた。
「プリキュア!シルバーフォルテウェーブ!!」
「ダークフォルテウェーブ!!」
白と黒、二つのフォルテウェーブがぶつかり合い、激しい衝撃を生み出した。
最初こそ拮抗していた二つのフォルテウェーブだったが、徐々に白い光が黒い光を呑みこんでいった。
「なっ?!」
「プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」
ダークプリキュアが驚愕に目を見開き、隙が生じた。
その一瞬の隙をついて、ムーンライトは心の花の光をまとい、ダークプリキュアにむかって突進した。
だが、その一撃はダークプリキュアに命中することはなかった。
なぜなら、それを受け止めたのは。
「ぐっ……」
割って入ってきたサバーク博士だった。
ムーンライトのフォルテッシモを受け止めたサバーク博士は、うめきながらどうにか倒れないよう踏みとどまった。その瞬間、パキリ、と乾いた音を立てて、仮面が割れた。
仮面に隠された素顔が明らかになった瞬間、セイバーとムーンライトは驚愕した。
そこにいたのは。
「お……おとう、さん……?」
「嘘、だろ……なんであなたがここにいるんだ……おじさん!!」
そこにいたのは、行方不明になっているはずのゆりの父、月影英明氏だった。
「な、何かの間違いよね……そうなのよねっ?!お父さん!!」
間違いであってほしい。
自分の父親が、砂漠の使徒だった。自分の戦うべき相手だった。
そんなことは嘘であってほしい。ムーンライトは、ゆりはそう願った。
だが、英明の口から出てきた答えは、残酷なものだった。
「……すべては、私の心の弱さが招いたことだ……」
研究に行き詰まった英明は、フランスでデューンと出会い、砂漠の使徒となってしまった。
そして、英明は立ちはだかったムーンライトとセイバーを倒すため、ダークプリキュアを作ってしまった。
そのダークプリキュアは、ダメージを受けて立つのもやっとな状態であるにもかかわらず、ムーンライトにむかって、敵意を飛ばし続けていた。
「キュアムーンライト、博士から、離れろ!!」
ふらふらと歩み寄りながら、ダークプリキュアはなおも叫び続けた。
「わたしたちはどちらかが消えるまで戦う
そんな状態のダークプリキュアを、英明が抱き止め、もういいんだ、となだめた。
なぜ、自分が作った存在とはいえ、ダークプリキュアをそこまで大切に扱うのか。
セイバーだけでなくブロッサムもそのことに疑問を抱いたが、その答えはすぐに明らかになった。
「ゆり……この子は、ダークプリキュアは心の大樹の研究で得た技術と、お前がくれたお守りにしまっていた髪の毛を使って造られた、お前の妹だっ!!……私は、キュアムーンライトを倒すために、この子を造り、
「わ……わたしの、妹……わたしを倒す、そのために、お父さんが……」
英明の独白と衝撃の事実に、ムーンライトは打ちのめされた。
むろん、その場にいたセイバーとブロッサムも、ショックを隠しきることはできなかった。
「すまない、ゆり……ダーク……私の、娘たち……」
英明からのその言葉を聞いたダークプリキュアは、薄い笑みを浮かべた。
その瞬間、彼女の体は光の粒子となって消え始めた。
ムーンライトの技を正面から受け止めただけではなく、サバーク博士に、英明にダークプリキュアという一人の存在として認められ、彼女の中の何かがほぐれたのだろう。
消えていく中で、ダークプリキュアはいままで見せたことのない穏やかな微笑みを浮かべながら、英明をお父さんと呼び、ムーンライトに視線を向けた。
憎悪にも憤怒にも満ちていない、穏やかな、慈しみに満ちたその顔を向けた瞬間、ダークプリキュアは完全に崩れ去り、消えていった。
「はははは、とんだお涙ちょうだいだね」
ダークプリキュアが完全に消え去り、数秒としないうちに、愉快そうに笑う声が上から響いてきた。
声がした方を見ると、そこには不敵な笑みを浮かべたまま石柱に腰かけているデューンの姿があった。
「……デューン!!」
娘の死をあざ笑われたからか、それとも、自分を甘言で惑わし、娘を傷つけ、娘たちを戦わせたことに怒りを感じたのか、英明は激しい怒りを込めた瞳をデューンに向けた。
感情があらわになったことに驚愕したのか、デューンは一瞬、ほんの一瞬だけ、驚愕の表情を浮かべたが、すぐに不敵な微笑みに戻った。
「怒ったってだめさ、月影博士。力がほしいと僕に頼んだのは君だよ?」
「……くっ!!」
「フランスで研究に行き詰まっていた君は、自分で僕らの仲間になった。そんな君の研究の成果は、心の大樹の守りを破るのに役立ったよ。おかげで地球も砂漠化できた……ありがとう、月影博士」
にっこりと、無邪気な笑みを浮かべながら、デューンはそう語った。
そして、なおも無邪気な笑みを浮かべながら、淡々とした様子で口を開いた。
「最後の希望、プリキュア。そして、心の大樹の守護騎士ユグドセイバー……僕が君たちに絶望というものを味わわせてあげるよ」
そう話すが早いか、デューンは一瞬で英明との間合いを詰め、殴りかかってきた。
英明は接戦するも、吹き飛ばされてしまった。
入れ替わるようにして、ムーンライトもデューンに向かっていき、ブロッサムとセイバーも遅れて援護に入った。
だが、どの攻撃もまるで赤子の手をひねるように簡単に回避されてしまい、ムーンライトも英明同様、吹き飛ばされてしまった。
「君たちも僕が憎いのかな?」
向かってきたブロッサムとセイバーにそう問いかけながら、デューンは光弾を放ったが、ブロッサムがマントで受けとめ、デューンへ向かってはじき返した。
そのすぐ後ろに続くように、セイバーが間合いを詰め、斬りかかった。
「ははは、すごいすごい!!」
まるで戦いそのものを楽しんでいるかのような態度に、セイバーはある種の不気味さを感じた。
それにひるんでしまい、セイバーもブロッサムもデューンに吹き飛ばされてしまった。
「君たちは弱すぎる!」
再び立ち上がり、むかってくる英明たちに向かって手のひらをむけた。
その瞬間、まるで見えない鎖に縛られたかのように、四人の動きは拘束された。
動けない四人に向かって、デューンは黒い光弾を爆発させた。
爆発に巻き込まれ、ブロッサムとムーンライトは強制的に変身を解除された。
セイバーは、どうにか変身解除まではいたらなかったが、受けたダメージは大きかったようだ。
「強いものが弱いものを喰らう、なにか問題でも?」
そう言って、デューンは手のひらに闇のエネルギーを圧縮した弾丸を放った。
倒れているつぼみとゆり、満身創痍となっているセイバーと英明の前で停止した。
それと同時に、弾丸は鳴動を始めた。
その様子を見て、英明はデューンが何をしかけてのか理解したようだ。
傷だらけの体に鞭打って立ち上がり、英明はゆりたちをかばうように仁王立ちした。
「ゆり!母さんのことを……頼む」
「……お、じさん?……まさか!だめだ、そんなの!!」
英明がゆりに向けた言葉の意味を理解したセイバーは、傷だらけの体を無理やり立ちあがらせ、英明のもとへと駆け寄り、その右手で襟首をつかみ、後方へ投げた。
「なっ??!!」
「獅子戦吼!!」
体を回転させ、左手に闘気を込め、鳴動を続ける弾丸に向かって自身が最も得意とする一撃を叩きつけた。
だが、その一撃が弾丸に命中すると同時に、弾丸は爆ぜ、闇のエネルギーの奔流がセイバーを襲った。
「ははは、面白いね!たかが人間の心の力ごときで僕の闇に打ち勝とうというのかい?!」
セイバーが放つ白い光と、デューンのはなった黒い光がぶつかり合い、せめぎ合った。
大きな力を前に、なおも抗い続けるもう一人の戦士に、デューンはさらに言葉を投げた。
「僕の憎しみは消えることはない!たとえ、君が何度、手を伸ばそうと、僕は君たちと同じ場所へ行くことはないのさ!!」
「それでも!俺は手を伸ばし続ける!!」
「無駄なことを!見てわからないのかい?!
「それでも、俺は諦めない!諦めて、たまるかっ!!」
デューンの言葉に反論し、セイバーは手を伸ばし続けた。
すでに手袋は二つの力のぶつかり合いに耐えられずボロボロになり、白いマントも無残にちぎれてしまっている。
それでも、セイバーは手を伸ばし続けた。
たとえ、相いれることができないとしても、その想いを受け止めることくらいはできる。
そこから、戦うことではない、別の答えを導きだすことができるかもしれない。
たとえ、可能性の話であっても、それが大樹の騎士として、自分が導き出した答えだから。
「しっかり見ておけ、デューン!!これが、俺の全てだ!!」
もはや、変身は完全に解除されてしまっている。
それでも、菖は倒れなかった。
地面を蹴り、菖は左手で闘気を放ったまま、右手に心の花の力を込め、解き放った。
「
菖が放った
その光景に、デューンは驚愕し、目を見開いた。
だが、その視線の先にいる自分の闇を呑みこんだ菖は変身が解除され、うつ伏せに倒れていた。
もう、菖に戦う力は残っていない。そう判断すると、薄い笑みを浮かべながら。
「なるほど……さすが、プリキュアと並ぶだけのことはあるね。けれど、もうボロボロじゃないか。そんな状態でどうやって僕と戦うんだい?」
実に、愚かだね。
デューンのその一言が、ゆりの怒りに火をつけた。
無言で立ちあがり、鋭く睨みつけ、ゆっくりと歩き始めた。
だが、傍らにいたつぼみにその手をつかまれ、止められた。
「……放しなさい」
「いやです!」
冷たく言い放つゆりに、つぼみは泣きそうになりながらも抵抗した。
「憎しみや怒りのまま戦ったら、きっと負けてしまいます!」
「わたしはそれでもかまわない……父を唆し、妹をあざ笑っただけでなく、菖を傷つけた彼を、わたしは許すことはできない!!」
自分の力が至らなかったせいで、大切な幼馴染を戦いに巻き込んだだけでなく、大切なパートナーも一度、失った。それだけならばまだしも、ようやく出会えた父は、デューンの力で砂漠の使徒へと変えられ、その父の手で自分を倒すためだけにダークプリキュアが、妹が作られ、自分の手で彼女の命を終わらせてしまった。
そうなってしまったすべての元凶は、目の前で微笑みを浮かべている青年だ。
その青年を倒すためならば。そのための力を得るためならば。
「怒りや憎しみが力になるというのなら、わたしはそれでもかまわない!!」
「情けないこと、言わないでください!!わたしの大好きなゆりさんは、絶対、そんなこと言いません!!」
「でも!……それでも、わたしは……」
つぼみは必死にゆりを止め続けた。
だが、それでもゆりは憎しみのままに戦うことをやめようとはしなかった。
それがわかっていたから、つぼみはゆりの名前を叫んだ。
「月影ゆり!!」
「……っ!!」
普段からおとなしくて、引っ込み思案で、声を荒げたことなんて一回もなかったつぼみが、初めて叫んだことに、ゆりは気圧され、押し黙ってしまった。
そんなことはおかまいなしに、つぼみは拾ってきたプリキュアの種の欠片をゆりに差し出した。
「わたしが憧れた、キュアムーンライト……自分が何をするべきか、何のために戦うのか……自分で、考えてください!!」
涙を流しながら、つぼみは必死にゆりに訴えた。
その言葉に、ゆりは目を閉じ、深く息を吸った。
わかっている。いいや、わかっていた。
自分たちの、プリキュアの力は、憎しみや怒りで強くなるものではないことを。
ならば、何のために戦うのか。その答えはおのずと導き出せた。
いや、それだけではない。
つぼみもまた、家族を失った。そして、いま目の前で、自分と同じく、淡い想いを抱いている菖を傷つけられた。
怒らないはずがない、憎まないはずがない。
けれども、つぼみはそれらの感情を抑えて、なおも正反対の感情で戦おうとしている。
自分よりも小さくて、幼いこの子が。
それなのに自分は、憎しみや怒りのままに戦おうとしてしまっていた。
そんな自分を恥じながら、ゆりは差しだされたプリキュアの種をつかみとった。
そして、種はようやく一つとなり、完全な姿を取り戻した。
「……わたしたちは憎しみではなく、愛で戦いましょう……つぼみ、変身よ!」
「……はいっ!!」
涙を浮かべながら、つぼみは立ち上がり、ゆりの隣に立った。
「「プリキュア!オープンマイハート!!」」
二人が同時に叫ぶと、心の花の光が二人を包み、プリキュアへと変身した。
「大地に咲く、一輪の花!キュアブロッサム!!」
「月光に冴える、一輪の花!キュアムーンライト!!」
変身を完了させ、二人は同時に地面を蹴り、デューンとの距離を詰めた。