ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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えぇ……アンケートにお応えしての作品なんですが……
すみません、この場にて謝罪を。
今回、見方によってはヘイトに取られかねない作りになってしまいました。
が、断言します。作者の想像力が足りなかったせいでこうなっただけで、私個人にまったくそのような意図はございません。

それと、ちょっと新しい職場に就職したことと年末に向けての動きの都合上、次話投稿まで少しばかり間を開けさせていただきます。
まぁ、ちょうど通算100話目にあたる話になので、予告通り、リアルのイベントにからんだ物語を、と思っています。



高校生組のドタバタ騒動記

ある日の昼休み。

珍しく、学園のイケメン五人と美少女四人が一堂に集っていた。

そんな中で、ゆりがありえない行動を取っていた。

「はい、明くん(・・・)

「サンキュ、ゆり(・・)

ゆりは自分の弁当のおかずを、明にあげていた。

それも、自分の箸で持って、明の口元へ運んでいる。

いわゆる、"あ~ん"である。

「……どうかしら?」

「ん、うまい。こんなうまい料理作れるんだから、いい嫁さんになれるぜ、ゆり」

「うふふ♪ありがとう」

明からの褒め言葉を、ゆりは素直に受け取っていた。

そんな二人の様子は、まさに恋人同士という様子だった。

そして、それはあながち嘘ではないらしく。

「しっかし、あの二人がなぁ……」

「意外といえば意外よねぇ」

「でも、二人とも幸せそう」

「そうだな」

君尋とひまわり、ももかと小狼は二人を遠巻きにしながらひそひそと言い合っていた。

どうやら、二人が付き合っているというのはあながち嘘ではないらしい。

そんな状況の中で、少なからず、ゆりのことを想っていた菖はというと。

「……は、春川くん?」

「さっきから箸が進んでねぇぞ?もらっていいのか?」

「……あぁ」

弁当箱を眺めていた。

普段なら、黙々と食べているはずなのに、おかずはおろか、ごはんも減っていない。

どうやら、かなり動揺しているらしい。

菖がそんな状態になっていることに、静とさくらは少なからず気遣っているようだったが、まったく気づいていないゆりと明はまだいちゃいちゃしていた。

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放課後になって、菖は一人で下校しようとしていた。

そんな菖の背中を見つけたゆりは、いつものように声をかけた。

「菖、またせ……」

「……俺といるよか、御剣と一緒にいたほうがいいんじゃないか?月影(・・)

ゆりに視線を合わせることなく、菖はそう返してきた。

その語調に棘はないし、敵意もない。

だが、何かが決定的に違う。幼馴染として菖と付き合ってきたゆりだからこそ、その違和感に気づいた。

そして、その正体に気づくまで、大して時間は必要なかった。

「……あ、名前」

いつもならば、ゆり、と呼んでくれる菖なのだが、この時に限って、月影、と苗字で呼んでいたのだ。

だが、その理由がわからない。

春川菖という人間は名前で呼んでいた人物を、いきなり苗字で呼んだりしない。うぬぼれかもしれないが、特に自分にそんなことをするようなことはないと、ゆりは思っていた。

その想いは、もはや確信とまで言ってもよかった。

ならば、何があったのか。

ゆりはそれをずっと考えていた。

すると。

「……どうしたの?月影さん?」

「ゆり、どうしたの?ずっと考え込んでるみたいだけど」

ひまわりとももかが声をかけてくるまで、二人が近づいていることにすら気づかなかった。

ゆりは慌てた様子もなく振り返ると、二人に何があったのかを話した。

「なるほどねぇ……」

「まさか、菖くんがねぇ……というか、九軒さん。これって」

「……うん、そうだね」

二人だけ納得したかのようにうなずきあい、ゆりに視線を向けた。

「「やっぱり、ちょっとやりすぎたってことよね/だよね」」

「……やっぱり、そうかしら……」

二人に同時に指摘され、ゆりは珍しく、落ち込んだ。

かくいう二人も、少しばかり申し訳なさそうな顔をしていた。

実のところ、屋上でゆりと明は付き合っているような素振りを見せていたし、君尋や小狼、ひまわりにさくらも、二人が付き合っているという噂が本当であるかのように振る舞っていたが、それは菖を困らせるための演技だった。

そもそものきっかけは、ゆりが菖になかなか振り向いてもらえないことにやきもきしたことを明たちに相談したところ、それならいっそ、嫉妬させてみたらどうか、という話に発展したのだ。

ゆりからすれば、菖が自分をどう思っているのかを知ることが出来るし、明や君尋からすれば、滅多に見られない菖の姿を見ることができるという、一石二鳥の作戦だったので、珍しくゆりもこの計画に乗っかったのだ。

その結果が、菖からの拒絶とも取れる態度だった。

そして同時に、ゆりの心に一抹の不安が芽吹いてきた。

もし仮に、今回のことが嘘だと菖に知れたら、菖の態度はもとに戻るのだろうか。それとも、ずっと自分を拒絶し続けるのだろうか。

もし前者であれば、まだいい。いや、拒絶され続けるよりはずっといい。

だが、もし後者であったら。それを思うと、ゆりは不安でたまらなくなってしまった。

が、そんなゆりの心に追い打ちをかけるように、さくらが突然、教室に飛びこんできた。

「つ、月影さん!!大変だよ!!春川くんが……」

交通事故で病院に運ばれた。

さくらの口からその言葉が出るか出ないかのうちに、ゆりはカバンを持つのも忘れて、教室を飛びだしていった。

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時間を少し巻き戻し、菖は校門を出て、一人で歩いていた。

が、その心中は決して穏やかではなかった。

表情には出さなかったものの、実のところ、菖の心のうちは、明に対する嫉妬で渦巻いていたのだ。

が、仮にも神事に携わる身であり、視える体質であるため良くないものを引き寄せないようにするため、この感情を表に出すわけにはいかないため、抑え込んでいた。

それこそ、食事に手をつける余裕もないほど。

そして、自分の周囲の状況を認識することが困難なほど。

もっとも、なぜ自分がそうなっているのか、理解できていないわけではなかった。

――あれ?俺、なんでこんな気持ちになってるんだっけ……あぁ、そうか。御剣がゆりと付き合ってるからか……ほんと、今さらなのになぁ……

菖は、自分の趣味である遺跡探検が危険を伴うものであることはわかっているが、やめられそうにないことも同時にわかっていた。

だからこそ、大切に思っているゆりを"特別な人(恋人)"にしたくなかった。

恋人にしてしまったら、もしものとき、ゆりを悲しませてしまうことはわかっていたから。もっともそれは、ゆりが自分をどう思っているか知らないから出てくる、身勝手な考えなのだが。

そこまで考えたとき、菖の耳に、ビッビー、というけたたましい音が響いてきた。そんな気がした。

だが、その音の正体が何なのか、それを確かめることができないまま、菖は意識を手放した。

いたずらが過ぎてしまい、想定以上のダメージを与えてしまったことに気づき、菖の身を案じて追ってきた友人たちに気づくこともなく。

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菖が目を開けると、見えてきたのは見覚えのない天井と、真っ暗になった左半分の視界だった。

何があったのか。

とりあえず、身じろぎしてみたが、その瞬間に激痛が走り、身を起こそうにも起こせなかった。

――つつっ……一体、なにが?

そう思い、視線だけ動かすと、心配そうな顔をしている君尋と小狼が入りこんできた。

そのすぐ近くには、表情こそ変わっていないが、それでもほっとしたような目をしている静と明がいた。

「……何があったんだ?ここはどこだ?」

体は痛むが、どうにかしゃべることはできるようで、菖は事情を知っているであろう四人に問いかけた。

「ここは、病院だ。とりあえず、俺は医者を呼んでくる」

「お前、車に轢かれたんだよ。ぼーっとして歩いてたから」

「ったく、何考えてたんだよ。らしくねぇな」

「……お前のせいでもあることを自覚しろ、御剣」

四人が四人、そう返すと、小狼は宣言通り、医者を呼びに病室を出ていった。

残された三人は、小狼を見送ると、少しばかり気まずそうに問いかけてきた。

「……で、どうしたんだよ。いったい」

「いくら考え事してても、歩いてるときは車や他の人には気づくだろ」

君尋と明が問いかけると菖は、どう答えたものか、とうなり、口を開いた。

「……いや、うん。ゆ――月影と御剣が付き合ってるって知ったら、がらにもなく動揺したらしい」

「やっぱりか……」

返ってきた答えに、静はそっとため息をついた。

君尋と明も反応そのものは同じだったが、こちらのほうはかなり気まずそうにしていた。

「あぁ、じつは……」

と、種明かししようとした瞬間。

突然、病室のドアが開き、ゆりが駆けこんできた。

「菖!!大丈夫なの?!」

「……体中痛いけど、ひとまず大丈夫」

「そう……よかった……」

菖の答えに、ゆりは安堵したのか、ぺたりと床に座りこんでしまった。

どうやら腰が抜けてしまったらしく、立つに立てなくなってしまったようだ。

「……こんな時に支えてやるのが恋人なんじゃないのか?御剣」

「あぁ、そのことなんだが……すまん、あれ実は……」

と、非難するような視線を明に浴びせながら問いかけた菖に対し、明は気まずそうにしながら事の真相を話そうとした瞬間。

床にへたり込みながら、ゆりがその先を答えた。

「……そなのよ」

「ん?」

「だから、嘘なの!わたしと御剣くん(・・・・)が付き合ってるっていうのは!!」

「……四月一日(四月バカ)にはまだだいぶ早いと思うけど?」

だが、ゆりからの言葉を素直に受け止められない菖は、そう言いながら、明に視線を向けた。

が明は、本当だ、と返して続けた。

「お前をどうしたら動揺させる(いじる)ことができるか考えたら、月影(・・)に協力してもらうことが一番だってことになってな……」

「で、俺と小狼、それから来海さんとひまわりちゃんが乗っかったってわけだ……」

明の説明を補足するように、君尋が申し訳なさそうにして付け加えた。

要するに、全部、菖を嫉妬させるための演技だったというわけだ。

もっとも、それが演技だったと知っているのは、張本人である二人と君尋と小狼、そしてももかとひまわりの六人だけで、さくらと静はまったくわからなかったらしい。

なお、静には君尋とひまわりが伝え忘れていたから、ということのようだが、さくらは嘘をつくことが苦手な性格であるため、あえて黙っていたらしい。

一方、答えを聞いた菖はというと。

「……人間不信になりそう、俺……」

と、ふてくされたように見舞客たちから顔をそらした。

もっとも、口ではこう言っているものの、馬鹿がつくくらい人が好い菖のことだから、一週間もすれば元の調子に戻るだろう、と勝手に予想していたことは言うまでもない。

とはいえ、その一週間は本当に人間不信に陥ったらしく、ゆりたちだけでなく、つぼみたちの誘いすらも断るようになってしまったのだった。

なお、菖のけがは奇跡的に大したことはなく、念のための検査入院は一日のみで、その日があければすぐに退院となったことを補足しておく。




あとがき代わりの後日談(スキット風)

~元に戻るまでの経緯~
-事件翌日-
ゆり「おはよう、菖」
菖「……」(プイ
ゆり「……」Σ(゚д゚lll

-事件三日後-
ゆり「菖、一緒にお昼……」
菖「ごめん、用事があるからまた今度にしてくれないか?月影さん(・・・・)
ゆり「……」(;ω;lll

-事件五日後-
ゆり「し、菖……一緒に帰らない?」
菖「……あぁ、構わないよ」
ゆり「……ほっ」

-一週間後-
明「ようやっとせんせーの調子が元に戻ったな」
静「……こうなった原因の一端がお前にあることを自覚しろよ?」
明「ちっ……わぁってるよ」
さくら「ところで……」
ももか「うん……」
ひまわり「そうね……」
君尋「さっきから、あの二人、距離が近くないか?」
小狼「事件からの反動ってところだろうな。まぁ、好きにさせておこう」

ゆり「……菖、今度の日曜日、久しぶりにつぼみたちとお茶会しない?」
菖「そうだなぁ……だいぶ出てないからそろそろ顔出さないとだな」
ゆり「なら、あなたの淹れた紅茶、期待していいのかしら?」
菖「任せとけよ、ゆり(・・)
ゆり「なら、楽しみにしてるわね」(^^*
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