ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
いやぁ、引っ越しのせいでネットがまったく使えないし、スマホ投稿するつもりがまったくなかったので、だいぶ間が空いてしまいました(苦笑
というわけで、久方ぶりの日常編。
実のところ、このニュースを見て思いついたお話です(URL→http://news.nicovideo.jp/watch/nw3501554)
その日、菖はゆりと小百合と一緒に歯医者に来ていた。
普段ならほとんど縁のないのだが、今回に限ってはそうも言っていられなかった。
なぜなら。
「……痛い……」
「我慢なさい、子供じゃないんだから」
「……見物人は気楽だから羨ましい」
げんなりとした表情を浮かべながらぼやく菖に、ゆりはため息をつきながら返した。
三人がここにいる理由、それは、菖の親知らずが深刻な状態になってしまったことにあった。
ただでさえ、人間の奥歯は磨きにくい場所にあるというのに、普通の歯と異なった生え方をしていたものだから、余計に磨きにくく、そのせいで虫歯になってしまっていたのだ。
そのため、親知らずを抜く、という選択肢を取る以外になかった。
そこまでなら、ゆりと小百合はなんら関係はないのだが、菖は麻酔を使うということでできるだけ誰か他の人も同伴してほしいと医者に言われたらしい。
本来なら、祖父の仁頼を頼るところなのだが、あいにくと施術予定日は用事があったため、同伴は不可能となった。
そのため、最終手段としてゆりに同伴をお願いしたのだ。なお、小百合は大好きなお姉さんがどこかに出かけるということを知り、ついていくことにしたらしい。
もっとも、目的地が歯医者であることを知ってからは、泣きそうになるのを我慢していた。
しばらくして。
「春川さ~ん」
「……行ってくる」
「えぇいってらっしゃい」
名前を呼ばれた菖は、げんなりとした顔でゆりにそう告げると、ゆりはそっけない顔と態度で返してきた。
若干、ふらふらとしながら菖が診察室へ入っていってしばらくすると。
キュイーーーーーーンッ、という、歯を削るために使われる医療用ドリルの音が響いてきた。
その音に恐怖心を覚えたのか、小百合の目に涙が浮かんできて。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ギャン泣きし始めてしまった。
さすがに周囲の迷惑になる、と判断したゆりは、どうにか泣き止むよう、なだめ始めたのだが、うまくいかなかった。
それもそのはず。
ドリルの音に恐怖心を覚えたのではなく。
「兄ちゃーーーーーーんっ!」
いままさに治療を受けている菖の身を案じているからだった。
ゆりは妹のその様子に苦笑を浮かべながら、大丈夫だから、と言ってなだめていた。
しばらくして、診察室から菖が疲れた様子で出てきて、小百合の隣に腰掛けた。
すると、小百合は泣き止み。
「お兄ちゃん、大丈夫?痛くない?」
「……うん、大丈夫、痛くないよ……」
「もうこれで終わりだよ」
「いや、経過見るから一週間したらまた来てね、ってさ……」
「これ、あげるから、元気出して」
「……うん、気持ちはありがたいけど、それ、歯医者さんのぬいぐるみだからね?返そうね?」
麻酔の影響で調子が出ないのか、それとも慣れないことに神経を使って疲れてしまったのか。
いずれにしても、いつもなら人懐っこい笑顔を向けているはずの菖が、魂が抜けたような顔をしながら小百合に対応していた。
話すことができたからか、落ち着きを取り戻した小百合だったが、どこか寂しそうにうつむいていた。
自分なりに菖を励まそうとしていたのだが、その菖がどこかドライというか、気の抜けた返事しか返さなかったため、怒っていると勘違いしたらしい。
「……菖」
さすがに見かねたうえに、大切な妹をしょんぼりさせたことに怒りを覚えたゆりは、ジロリ、と菖に鋭い視線を送った。
だが、菖はその視線に気づくことなく、ぽふ、と小百合の頭に優しく手を置き。
「ありがとうな、小百合」
とお礼を言った。
少しばかり調子が戻ったことを察したのか、小百合は明るい笑顔を浮かべるのだった。
なお、一週間後、再び歯科医に行くことになった菖なのだが、そのことを聞いた小百合がまたギャン泣きしたことは言うまでもない。
あとがき代わりの後日談(スキット風)
~一週間後~
小百合「あ!菖お兄ちゃん!!」
ゆり「あら、菖。どうしたの?」
菖「ん?経過観察でもう一回歯医者に行かないとなんだよ」
小百合「歯医者、さん?……」
菖「うん……て、どうした?小百合ちゃん??」
小百合「
菖「うん、そうだよ?」
ゆり「小百合、大丈夫よ?今度はキュイーンって音はしないし、菖も痛くないから一人で平気だって」
菖「……てか、なんで自分のことじゃないのにこんなギャン泣きされなきゃいけないのさ?優しいのはいいことだけど」