臆病者は今すぐにでも逃げだしたいみたいですよ? 作:ぱいんあっぷる
「お月様ってのはクシャクシャしててツルツルしてるものなんだなぁ…」
〈中の奴〉
「そんな訳無いだろ」
雪の降る、冷たい夜だった
そんな夜、中々寝つく事が出来なかった、柳 能義は気分転換にと海に来ていた、当然、彼の他に人の姿は無く、海は例年の異常なまでの寒さににより分厚い氷の床を作りあげていた
分厚い氷の床は人、一人が乗ったところで、ビクともしない、見渡す限り分厚い氷で覆われてる海を見ると、このまま何処までも歩いていけるのではないかとさえ、思ってしまう
「何で夜なのに、こんなに明るいのだろうと思ったら、お月様がこんなに近くにあるや…綺麗だなぁ…」
雪の降り注ぐ空に浮かぶ、十五夜の月に手を伸ばし手で何かを掴むような仕草をする
「フフッ、こうしてると本当に、お月様に手が届きそう」
自分でも、そんな事がある筈がないのに、可笑しな事を言ったと思った、能義は月に向かって伸ばしていた手をそっと戻そうとし…"掴んだ"
「うえっ!?」
まさか、本当に掴めるとは思っていなかった為、思わず間抜けな声を上げてしまう、初めて触れた月の感触はクシャッとしててツルツルしてて、それは、まるで紙のような感触だった
「あわわわわ…お月様に手が届いちゃったよ…これって《NASSA》に報告するべきかな?でも、このままだと月見も出来なくなっちゃうよね…皆から恨まれたりとかしないかなぁ…?」
そう言いながら、今も自分の手の中に確かにある月を恐る恐る手を開いて覗いてみる
「…手紙?」
彼が、月だと思いながら握り締めたものは、一通の手紙だった、冷静になって空を見上げてみると今も確かに月は氷の大地を明るく照らしていた
「よ、良かったぁ~…本当に月を掴めちゃってたらどうしようかとか本気で考えちゃってたよ、でも空から手紙?…まさか月から?ハハッ、ないない」
一瞬、自分の頭の中に浮かんだ考えを、即座に否定する普通に考えたら、そんな事はあり得る筈が無いのだ
そんなあり得ない事が現実に起きた事は自分の知る限り一度しかないのだから
「えっと宛先人は…?僕宛?…まさか本当に月から?」
同名の人の手紙が偶然、風で飛ばされてきたという可能性も勿論あったが、この時僕は初めて、"運命"というものをこの手紙から感じた
「差出人は書かれてないようだけど…あっ、そっか!」
差出人は書いてなかったが僕にはこれが、何処の誰から送られてきた手紙かが、直ぐに分かった
「たまには、こうして夜、出歩いてみるものだね、こんなに"面白い物"が見付かるんだから」
柳 能義はそういうと、嬉しそうに手紙の封を切った
そして、僕は、上空4000mの空にパラシュート無しのに投げ出されたのだった
〈臆病者〉
「月から僕宛に手紙が届くなんて、差出人は、きっと兎さんに違いないね!」
〈中の奴〉
「そんな訳…いや、まさかな、その様な事があり得るのか?」