臆病者は今すぐにでも逃げだしたいみたいですよ?   作:ぱいんあっぷる

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〈臆病者〉
涙の数だけ強くなれるさ♪

〈中の奴〉
ほう…ならば貴様は既に"最強"という訳だな?面白いどれ程強くなったか、見てやろうではないか決死の覚悟で掛かってこい!!

〈臆病者〉
うえっ!!?


第二話 箱庭

普段見上げてばかりいる、お空の雲をまさか見下ろせる日が来るとは思いもしなかった

 

これがもし、登山により見ている景色であるなら、僕はきっと恐怖を忘れて、きっとその光景に感動していた事だろう

 

そう、登山によるものであるならば…

 

「うわああああぁぁぁぁぁんん!!」

 

僕は今、上空4000mの空から、パラシュートも着けずに急降下、否落ちていっている

 

気絶する事が出来たら、どれ程良かっただろうか、これが夢ならどれ程良かっただろうか?

 

叩きつけてくる風の冷たさが、これを現実だと教えてくれる、叩きつけてくる風の痛みがキツケとなり中々気を失わさせてくれようとしない

 

顔は既に涙や鼻水でグチャグチャに濡れている、僕は地面に叩きつけられ絶命する、その瞬間まで意識をしっかりと保っているだろう

 

今までの出来事が、頭の中を次々と走馬灯のように流れ込んできた

 

「うわああああぁぁぁぁぁん、こんな事になるなら、軽々しく、返事するんじゃなかったああぁぁぁぁ!!」

 

そう、上空4000mなどという馬鹿げたところから、パラシュートも無しに飛ぶなんていう馬鹿げた挑戦をする事になったのは、あの手紙に答えたからだ…

 

 

~三分前~

 

手紙に書いてあった内容はこうだ

 

『悩み多し、異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、全てを捨て、我らの"箱庭"に来られたし』

 

「"箱庭"…?月の何処かかな?行こうにも招待状だけで通行手段も通行料金も書いてないみたいだけど、もしかして、自分で調べてで来いってこと?いくら掛かるんだろ…全財産を捨てる気でいって僕一人分の通行費にしかならないみたいだけど」

 

能義の家は貧乏でこそないが、かといって裕福かというと違うという、この世界では極々一般的な家庭で育った

 

「折角の月からの招待だし、行ってみたい気もするんだけど、そんな額のお金僕個人じゃ出せないしなー、無料なら絶対行くのになぁ~」

 

この時は、本当に軽い気持ちで言ったんだ…まさかこの後、上空4000mの空に投げ出されるなんて誰が考えれるだろう?否考えれるはずが無い、そんな事が出来るのは余程の馬鹿か、未来視にも似た能力を持つ者だけであろう、残念ながら能義にそんな便利な能力などは無かった

 

そして、現在上空4000mには落下中の四人と一匹の姿があった、一人を除いた三名は同じように落下している人の存在に気付いたようで、それぞれが同様のの感想を抱いていた

 

「「何処だここ!?あと、うるさい!」」

 

その声すら、現在進行形で何度も気を失おうと努力している彼の耳には届く事は無く彼は、落下地点の湖に落ちるまでの時間、後悔の叫びをあげ続けた…

 

 

 

 

 

「…大丈夫?」

 

腰を抜かしたまま、何時までも立ち上がらろうとしない僕に手を差し伸べてくれた女の子がいた

 

濡れた猫を抱き抱えた、その女の子はどうやら僕と同じように空から湖に落ちて来たようだ

 

今も水に怯えている猫だが、この女の子に対しては絶対の信頼を抱いている事が目に見えて分かる、きっと優しい子なのだろう

 

「?…大丈夫じゃない?」

 

何時までも、無言のまま行動に移ろうとしない僕を心配してくれたのだろう、猫を抱いた女の子はもう一度同じ声を掛けてくれた

 

「はいぃ…なんとか…」

 

辛うじて、出した声は何とも弱々しいものだった

 

思えば、一体、何度死を覚悟しただろうか?既に涙は渇れ果てており、黒かった筈の目は充血して真っ赤になっていた

 

「…そう、大丈夫そうには見えないけど」

 

当然、そんな事を知る筈もない能義は未だにカチカチと音を立てる歯を食い縛り、これ以上心配を掛けまいとする

 

「ありがとう、でも僕は大丈夫だから、それより君もそこの猫君も、そのままじゃ風邪引いちゃうよ?」

 

『そうやで!お嬢、はよ上がろうや』

 

「うん、そうだね」

 

それだけ言うと女の子は濡れた猫をつれて陸へと上がって行った

 

「…ねえ?あの子さ、最後のあの言葉って僕の言葉に対して言ったものだと思う?」

 

たった一人、残された能義は誰にも聞こえない程度の小さな声で疑問を投げ掛けた、まるで直ぐ近くに自分以外の誰かがいるかのように

 

「いやさ、僕も周りから見たら似たようなものだからさこう言うのには敏感でね、うん…分かってるって、君の事は誰にも言うつもりはないし、君の力に頼るつもりもないよ」

 

まるで、何者かが返事を返しているかのように独り言を話す彼の姿は見るものに不気味さを感じさせるものだった

 

「僕は君に《住まい》を提供した見返りとして君と友達になる事を願ったんだ、それ以上の事を願うつもりなんて無いよ」

 

修羅神仏の住まう地"箱庭"、そこに呼び出された四人の異才を持った少年少女達、彼等はこの地にてどの様な物語を作り上げて行くのだろうか

 

 




〈臆病者〉
先に謝っておくよ、ごめん…

〈中の奴〉
む、どうした?怖じ気づいたか?

〈臆病者〉
涙と鼻水だけで済んだと思った?…落下先が湖で良かったよ、お陰で目立たなかった…

〈中の奴〉
…へっ?
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