臆病者は今すぐにでも逃げだしたいみたいですよ? 作:ぱいんあっぷる
何だろう…?何か嫌な予感がする…
《中の奴》
俺の好きな臭いがするやつがいるな、久しく忘れていた良い匂いだ!
現在、能義、耀、飛鳥の臆病者一名と問題児二名の計三名はジン・ラッセルという緑髪の男の子が待っているという門に向かって歩いていた
何故、黒ウサギと別れたかというとそれは、今から五分程前の事に遡る
~五分前~
黒ウサギは最高に上機嫌だった、新しく四人も黒ウサギのコミュニティに入ってくれるというのだから、つい浮かれてしまうのも仕方がない事なのだ
そう、だからつい、新しくコミュニティに入った人達が目を離してはいけない、そんな問題達であるという事を忘れ、目を離してしまう事も…仕方のない事なのである
「…ねえ?黒ウサギ僕らって全員で五人いたよね?」
「はい♪なのでございますよ」
能義からの質問に黒ウサギは上機嫌で答える、そう今、黒ウサギは新しくコミュニティの仲間になった四人を連れ、コミュニティのリーダーであるジン・ラッセルの所に向かっている最中なのだ
先頭を黒ウサギが、二番目を能義が、三番目を飛鳥が、四番目を耀が、そして最後尾をもう一人、十六夜の計五名で並んで歩いていた筈だ…
「…ねえ?黒ウサギ、十六夜君がいない気がするんだけど」
「い、今何と仰いました…?」
慌てて黒ウサギが後ろを振り返ってみると確かにいない最大の問題児にして、最強の問題児、逆廻十六夜の姿がそこにはなかった
「ああ、十六夜くんならちょっと世界の果てを見てくるぜ、とか言って何処かに行ったわよ」
困惑する黒ウサギに追い討ちをかけるように飛鳥が言った
「どうして、止めてくれなかったんですか!?」
「止めてくれるなよと言われたから」
「なら、どうして黒ウサギに伝えてくれなかったのですか!?」
「黒ウサギには伝えるなよって言われたから」
「嘘です、御二人ともめんどくさかっただけでしょう!」
「「うん」」
どうやら、耀と飛鳥は知ってたようだ
「…"箱庭"の貴族ともいわれる黒ウサギを怒らせたらいったいどうなるか、その身で味わせてやるのですよ」
なんだか、黒ウサギが怖い…何か変な黒いオーラみたいなのが見えるというか何か先程まで黒かった髪がいきなり桃色に変わった
能義は黒ウサギは怒らせないようにしようと静かに自分の心の中で誓った
「御三人様はこのまま真っ直ぐ、歩いていってくださいこの先にある門で私達のコミュニティのリーダー、ジン・ラッセルが門の前で待っておりますので、く・れ・ぐ・れも何処かに行ったりしないように!!」
「は、はい…」
それだけ言い残すと黒ウサギは脱兎の如き勢いで十六夜の追跡いや、あの勢いはそんな生易しいものなどではない、追撃を開始した
「"箱庭"のウサギは随分と速く跳べるのね」
飛鳥の何気ない一言が能義に改めて、此処が人外達の住まう世界だという事を再認識させてたのだった
そして、現在、黒ウサギと別れて五分ほど経った今大きな門が見えてきた、そしてその門の前で門の前の階段に腰掛けて本を読んでいる少年の姿が見える
予め、黒ウサギから聞いていた見た目の情報と酷似するどうやら彼がジン・ラッセルという、僕らが所属する事になったコミュニティのリーダーと見て間違いなさそうだ
「えっと、君がジン・ラッセルくんかな?」
「…そうですけど、貴女方は?」
ジン・ラッセルは読んでいた本を閉じて立ち上がり、能義を見つめた
能義は何故だか小さな子供に、下から顔を覗かれる事にトラウマがある為、あまり良い気分にはならなかったがそこは何とか涙目になるだけで堪えた
「大丈夫ですか?何だか辛そうですが…」
「う、うん気にしないで…大丈夫だから…」
何とか涙目で堪えてた筈なのだが、優しくされた事によりボロボロと涙が溢れ落ちてきた
「このままだと話が進まないわ、能義くん代わって」
そして、そんなやり取りを見ていられなくなった飛鳥が能義の代わりに黒ウサギとの事、自分達がこれからジンのコミュニティでお世話になる事を伝えてくれた
「…これ使って」
未だに涙が止まらない能義に耀がハンカチを差し出してくれた、能義はまた泣いた…
それから能義が泣き止んだのは、ジンに案内されてカフェに辿り着き、大男に突き飛ばされてからだった…
「ガルド!僕の仲間に何をするんですか!」
ジンが能義を突飛ばし、強引に席を奪って同席をしてきたスーツ姿の大男に激怒する
周りにいた他の客達も悲鳴をあげる者、会計も済まさずに店を出ていく者、店員に知らせに行く者、様々な反応があった
「仲間?この何時までもピーピー五月蝿いのが貴方の仲間ですか?ジン・ラッセル」
ガルドと呼ばれた大男とジンとの間には何か因縁があるようだった
「良いんだ…ジンくん僕が悪かっただ、店の人達にも他のお客さんにも迷惑をかけてしまって、ごめんなさい、今はお金はありませんが、ここの弁償は必ずします…」
ガルドに突飛ばされた能義は、他の客席に突っ込みテーブルや椅子の下敷きになっていたが、何とか自力で這い出てきて、その場で頭を下げたが、その体は傷だらけで所々出血しているのも見られた
「ハッ、こいつが仲間か!"ノーネーム"に相応しい良い仲間じゃないか!」
「ガルド!!」
突き飛ばされたまま、やり返しても来ない能義をバカにしたように笑う、ガルドに能義は悪いのは自分だといったが、ジンにはそれが我慢が出来なかったしかし、此処が誰の領地かを知っているジンは手が出せずにいた
そして、そんなジンを見てガルドは口元を大きく吊り上げニヤリと笑った
「どうです?そこの御嬢さん方、こんな情けない男の率いる"ノーネーム"などじゃなく黒ウサギ共々、私のコミュニティ"フォレス・ガロ"に入りませんか?」
ガルドは先程までジンや能義に見せていたような獣のような表情ではなく、とても紳士的そうな顔で飛鳥と耀を見た
「お断りするわ」
「答えるまでもない」
とは言え、当然これだけ野蛮な行いをしたあとでそんなスカウトが受けいられる筈も無いことはガルドも内心では理解していた
ガルドは能義の泣き声が鬱陶しくてつい彼の素が出てしまったのである
「…ちっ!オイ、お前此処の支配人はオレだ!!弁償代金なんて要らねえからオレの気が済むまで今この場で殴らせろ!!」
ガルドの言ったことは無茶苦茶だった、確かに物を壊したのは能義がぶつかったからだ、だがテーブルや椅子を壊すことになった原因を作ったのは、能義を突き飛ばしたのはガルドなのだから
それにこの返済方法はガルドの気が済むまでと明確な終わりが話されてはいなかった
だが、そんな無茶苦茶な注文に対して能義は…
「良いよ…でも今と同じように僕を傷付ける事が出来るのならやってみせてよ」
挑発だった、とても臆病で温厚な能義が言ったとは思えないようなそんな言葉を確かに能義は言った
それは彼を少しでも知る者からしたら、妙な違和感や不思議な不気味さを感じさせたが、今、会ったばかりのガルドはそこに気付かない
「テメェ、人前だとオレが何も出来ねえとでも思って要るなら大間違いだぜェ!!」
先程まで辛うじて人の姿に見えていたガルドの見た目が二メートルを越す巨大な人型の虎のような姿に豹変した
ガルドは虎の獣人だ、それも魔王の眷属という飛びっきりの化け物だ
そんな、化け物が能義を全力で、殴る為ではなく、それ以上生意気な口をきけないよう還付なきまでに壊す為に拳を固めた
そして、ガルドの一撃必殺の拳が能義の顔面めがけで振り下ろされ…る事はなかった
何故なら、耀がガルドをその場に押さえ付けたからである
「これ以上はやらせない」
耀に完全に押さえ付けられたガルドを見てから、能義はその場に倒れた…
「ん?、ようやく目を覚ましおったか」
次に、能義が目を覚ましたのは、見知らぬ白い少女の膝の上だった
《中の奴》
オイ、大丈夫か…?お前が気を失ってる内に色んな事があったぞ
《臆病者》
と、取り敢えずこの状況の説明からしてもらっても良いかな…?