Re:Re:ゼロから始める異世界生活   作:此処何処

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第n+4話 「Re:Re:ゼロから始める異世界生活」

「レ、レム!!」

 間違いない。彼女は、あのレムだ。

 俺と一緒に逃げて暮らした、掛け替えのない、彼女だ。

 咄嗟に俺は彼女の元へ駆け寄って、肩を掴もうとした。

 けれど――、

「くっそ、なんでだよ!」

まるでレムに――いや、俺に実体がないみたいに、差し伸べた手が、空を切る。弱弱しい、彼女の短い呼吸が、聞こえてくるばかりだ。

「どうして、どうしてどうして!!こんなに……」

 死ぬほど会いたかった彼女が、目の前に居るのに。

「くそっ……!落ち着け、俺……!」

 そもそもどうして俺はここにいるんだ?墓所は?そこで倒れている、俺は・・・?

「わっかんねえよ、どこにいんだエキドナは……」

 これを見させて、アイツは何がしたい?何のために?

 まさか……。

「これも、『試練』だってのかよ……」

 終わってしまった未来に、背けていた現実に。

 俺は向き合わされているのか……?

 

「すばる、くん……?」

「!!」

 レムの右腕が、動いた。

「……ぅぅ、レムが、今……」

「やめろ!!今、動いたら……!」

 全身を震わせながら、『スバル君』とよんだ人に向かって、ゆっくりと進んでいく。

「スバル君を、助けます、から……」

 二人の距離が、近づく。

 どれだけ叫んでも、レムは何も聞こえていないといった風で、足を止めてくれなかった。

 たぶん、レムに触れないことと同様に、俺は『今見させられているもの』に、干渉できない。

 ただ、彼女が掴んだ青い草が、赤く染まっていくのを、見てることしか、できない。

 あと一回、二回で手が届きそうな位置で、レムが突然、止まった。

 

「はは、は……、ごめんなさい、スバル君。もう足も、手も、何もかも、動かせません。……スバル君?聞いていますか?」

 レムが途切れ途切れの声で、横たわっている『俺』に、語り始める。

 

「じゃあ、聞いてくれているという体で。だから、スバル君。ちゃんと、聞いてくださいね?

 

「あれから、スバル君が私を選んでくれたあの日から、たくさんの事が、ありました。

 

「中でも一番嬉しかったことは、やっぱり、リゲルとスピカを身籠ったことでしょうか。あれほど泣いて、笑った日は、レムの人生を思い出しても、そうそうありません。

 

「リゲルの時は、スバル君との生活がまだ安定していなかったので、ちょっとだけ顔が青くなりましたけど。

 

「きっとスバル君は今、一家の一人息子ににもっと構いたかった、目に入れても痛くないくらい可愛い娘ともっと遊びたかった、なんて思っているんでしょう?

 

「レムも、そうです……。せめて、あの子たちが立派な大人になって、私たちのような、楽しい家庭を……、かけがえのない、愛する人ができるまで、見守りたかった。

 

「あっ、そういえば。

 

「最後の散歩の時に、スピカに『愛すると好きになるって、何が違うの?』って、聞かれたでしょう?

 

「ふふふ、レムも同じことを、聞かれたんです。

 

「その時に、エミリア様の事を、話したんです。……あの時に言えなくて、ごめんなさい。

 

「勿論言ったことは、女同士の、秘密です。たぶん今はちゃんと伝わっていないかもですけど、大人になったら、きっと……、

 

 ゴホッゴホッと、器官を痛めるような咳が雑木林全体に響く。

 俺はそれを、黙って聞いているしかできなかった。

 

「あ、ああ……、最後に、一つだけ」

 

 レムは、苦しそうに下がった頭を持ち上げて、『俺』を見る。

 まるで……、本当に最後の力を振り絞っているように。

 

「スバル君は、ここで生まれた人じゃ、ないんでしょう?」

 

「……」

 …。

 ……。

 ………え?

「字も読めません。お金も身寄りもありませんし、過去の事もあまり喋ってくれない。教養も、友達もいないし、なにより、後先を考えていません。そんなスバル君が、初めにエミリア様と会った所にずっと居たなんて、正直考えづらいんです」

「う……」

 凹む……。しかも、後半はただの悪口だった。

「確かにスバル君は優しくて、とても勇敢です。けれど――」

「おお……」

「——そこだけはやっぱり、気になって。そうじゃないんですか? スバル君」

「……」

「確かに、とても遠い所から来たというのもありえるでしょう。けれど、レムは今まで『節分』という言葉を聞いたことがありませんでした。曲がりなりにも、鬼の一族として、幼い時に暮らしていたレムがです。……考えすぎ、育児の傍らの読書のしすぎなのでしょうか。でも、そう思うと――スバル君が誰も知らない処から来たのだと考えると、全ての辻褄が、合うんです。……これが、レムがスバル君と一緒に暮らして、スバル君が教えてくれない中で考えて出した、最後の結論です」

「……」

 そうか、そうだったのか……。

 レムは、あの日のレムは、気づいてくれていたんだ。

 それはなんて……。

 

「もし、そうなら、もっとあなたの事が知りたかった。どういう所だったのか、スバル君の親、子供の頃、そこで好きだった食べ物、友達、兄弟、恋をしていた人……どうしてここに来たのか、とか。たぶんスバル君は、『君に会うために来たんだぜ』とか言って、誤魔化しそうですけど」

 小さな口を緩ませて笑う表情に、やはりいつものような元気さはない。

「ねぇ、スバルくん……。あなたももうすぐ、別の所へ行ってしまうのですか? レムやあの子たちを置いて。ふふ、スバル君は、ひどい人です。これじゃあ、しんでも、しにきれませんね」

「……レム」

「でも、レムは、とってもうれしいです。スバルくんが、レムの愛するスバルが、どこかで、いきてくれている……。そう思うとレムは、むねがはりさけそうなくらい、うれしい」

「……れむぅ」

「スバルくん、お体をだいじにしてください。元気にしていてください。たまにはちょっと、レムたちのことも、思い出してください。どんなに辛いことがあっても、あきらめないでください。にげないでください。ゆうかんで、いてください。ちょっとだけおちこんで、そして、なんどでもやりなおせるってことを、わすれないで、ください。……いつまでも、レムが愛した、スバルくんで、いてください」

「……あぁ」

 頼まれた。頼まれてしまった。

 何度も俺は、彼女のそれに励まされ、そして、助けられてきた。

 なんという置き土産を貰ってしまったのだろう。

 俺は……本当に、幸せ者だ。

 

「スバル君、レムは―――――」

 

 

 

 

 

 

「——————おにしあわせ、でしたよ?」

 

 そういってレムは、朗らかな表情を崩さないまま、動かなくなった。

 

 視界が歪む。

 

 試練が、もうすぐ終わる。

 

 せめて最後だけは、彼女の姿をこの目にしっかりと焼き付け……、

 

 

 

 

 

「……あー、ここにも二人、居るじゃにゃい。はぁ、クルシュ様は本当に人使いが荒いんだから」

 

 どこからか、声がした。こちらに、近づいて来る。

 

「あーあ、どこかで見た事あるにゃーって思ったら、スバルきゅんじゃ…い。じゃあ、この彼女は……はーん、そうい…とネ。全く、感動の再…ったら、ありゃしにゃ…」

 

 目の前がほぼ、白で埋め尽くされる。声にもノイズがかかり、あまり上手く聞き取れなくなる。

 

「スバ……は…メか。こ…な傷じ…ね。一応、お…れさま」

 

 終わる。

 

「あれ………、彼女、もし…て、まだ…………!」

 

———————————————————————————————————————————————————————————————ぷつん。

 

 

 

 

 

****************************************

 

 

 

 

 

「人は、……ああ、『鬼』の血を引いている彼女はその限りではないかもしれないけれど、取り敢えず人間という個体としては、心臓の動きを止まった後でも、生き返る可能性はあるらしい」

「……」

「完全には、止まっていないという訳さ……微量ながら心臓は、少しだけ痙攣している。だから、その状態で何がしかの刺激を与えた場合、目を覚ます時がある」

「……」

「だから、つまり……、彼女が君に語り掛けていた時、既に死んでいたんだ。あははー、傑作だね。彼女は死人に話しかけていたんだよ。笑い話もいいとこだ」

「……」

「まあ、死んだ後でも目が見えたり耳が聞こえたりすることは、良くあることらしいが。記憶には一切刻まれないけどね。なんてったって、死んでんだから」

「……」

「かと言って、君に同情しないことはない。はっきり言って……そうだな、ボクは人並みの何倍、何十倍くらいの人生の趨勢を見てきたけれど、眺めていた自信はあるけれど、君みたいなケースは初めてだ。比べるまでもない。君の人生の中で、およそ一人では抱えきれない程の苦を味わっているようだ。よくここに今立っていられるよね、本当に。感心に値するよ」

「……いつからそんなに煽るのが得意になったんだ? エキドナ」

「ん? そうだな、まあこれくらい生きていたら、人の神経を逆なでする事は、赤子の手をひねることのように造作もないことなんだよ。老婆心というやつかな」

「絶対ちげぇ……。人を煽る事よりお前は、人とコミュニケーションを取ることを覚えろ」

「おお、手厳しいね。おばあさんをそんなに虐めないでもらいたいな」

「うるせえ。お前ほど饒舌なおばあさんはいねえよ」

「お褒めに預かり光栄の限りだよ」

 

 真っ白をイメージさせる身なりと髪をした、彼女――エキドナは、俺が目を開けると、何もなかったのかといった様子で、お茶……を啜っていた。

「それにしても……ああ、まずは『第二の試練』、突破おめでとうと言っておこうか。本当はもう少し他のを見させるつもりだったんだけれど、まさかの一回で当たりを引いてしまうとは。いやいや、恐れ入ったよ。あの調子じゃ、カーミラを出向かせても、あまり意味がないようだし」

「他のを? カーミラって、誰だよ」

「ああ、気にしないでくれ。こっちの話だ。……それよりも、腹は決まったのかい?」

「腹って?」

「これからキミはどうするのかって話だよ。……まあ、試練の様子を見ている限り、大体予想はつくけれど」

「ああ、そうだな……。うん、お前に話すまでもないだろ?」

「そうだね。聞くまでもない話だ。でも一応、聞いておこう。君は、ボクと組むつもりはないかい?」

「ん……んん? お前、話の流れぶった切ってないか?それと、お前と組むって、何の話だ」

「いいや、そんな事はない。予定調和で、予定通りだ。ボクが、君に助力しようと、思っているだけだよ」

「助力……?」

「ああ、そうさ。君の……頼るものがいない孤独な君の力になりたいと、ボクは望んでいる。唯一……そうだな、『この世界では』唯一君の能力に気付けているただ一人の友人さ。腹を割って話せることもあるだろう。君は君で僕を自由に利用してくれればそれで構わないし、ボクは、君の手伝いの傍ら、知的好奇心を満たすことができる。Win-Winの関係ってやつさ」

「ああ……そういうことか」

「どうだ、いい話だと思わないか?」

「とりま、お前の間違いを正しておくよ。俺は……決して、孤独なんかじゃない」

「……」

「ここで、俺は頼れる人がいる。そして前の世界で、俺に頼んだ人がいるんだ。俺は決して、一人ぼっちなんかじゃないよ。それに、俺は多分、大丈夫だ。目的がある。彼女を助けようという、はっきりとした目的が。ちょっとだけ、皆と離れているだけなんだ……。だからエキドナ、俺は、お前の助けなんて、必要ないよ」

「……そうか。残念だよ」

「知識欲を満たせないことが、だろ?」

「……君の方が、人を扇動する才に長けてると思うよ」

 

 手持無沙汰とばかりに、エキドナはお茶を啜る。

「はーあ、そうか。交渉決裂か。ほんのちょっと前の君なら、騙せ……説得できる自信はあったんだけれど」

「……」

「まあ、しょうがないかな。あんなに魅力的なお嫁さんを持っていたら……ねぇ?」

 さあ、帰った帰った。と言って、エキドナはお茶を一気に飲み干した。

 

「あ、最後にちょっとだけいい?」

「なんだい」

「ちょっとここで、泣いてもいいか?」

「え、やだ、キモい。墓所でやってくんない?」

「……」

 キモいって……。Win-Winしかり、魔女が最近の言葉を知っているのはなんでなんだ?

 てか、自分の墓所でされるのはいいんだ……。基準が分からない。

「じゃあ、さっきのあれを、もう一度見させてもらうのって無理か? 出来れば、何回でも見たいんだけど」

「それは残念ながら、難しいね。ほら、君はもう試練をクリアしちゃったから。そういう仕組みだよ」

「ふうん、じゃあ……」

 

「レムは、本当にーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おしまい

 




こんばんは!此処何処です。この話を最後まで読んでくれた人には、もう本当に、何度感謝してもしきれません。ありがとうございました!
この話について色々喋りたいこともあるんですけれど、あまり野暮な事はしたくないので、やめます。ジレンマです。
彼女の返答は、皆さんの想像でよろしくおねがいします。
なにせ小説を書くことは初めてでしたので、所々稚拙な部分もあったとは思いますが、ご容赦下さい。自分なりに、最善は尽くしたつもりです。
またどこかで僕が書いているのを見かけたら、ぜひお立ち寄りください。
よろしければ、ご感想お待ちしております!全員に返信いたします。
繰り返しになりますが、読破していただき、ありがとうございました!
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