「ウルトラマン」。数年前に流れた都市伝説の一つだ。新宿で巨大な怪物と戦った空を飛ぶ銀色の巨人。その噂は一大ブームとなり、ウルトラマンを探して回った人もいたほどである。

しかし、その噂はしばらくしたら自然消滅していった。そもそもそんな巨人の存在自体があやふやだったのである。誰の記憶にも残っていない、しかし確かに噂として存在した伝説の英雄。それはほかの都市伝説同様、すぐに忘れ去られるものだとばかり思われていた。




衝動的にここに載せたくなったので最初の部分だけ載せます。
とりあえず続きを載せるかどうかは反応を見てから考えますので。

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やはり絆の光が俺を導くのは間違っている

 

 

 

「ねぇねぇ二人とも、ウルトラマンってしってる?」

 

奉仕部の部室でいつも通り私と比企谷くんが本を読んでいると不意に携帯をいじっていた由比ヶ浜さんが質問を投げかけてきた。

 

「ウルトラマン?なにかしら」

「聞いたことねぇな」

 

私や比企谷くんも知らない様子からするとどうやら一般的な知識や図書の中身ではなく、由比ヶ浜さんが好きな噂や都市伝説というものかしら。

 

「知らないの?最近すごく有名な都市伝説だよ!」

「そんなの知るわけねぇだろ」

「そうね、私も聞いたことがないわね」

「ん~とね、最近変な事故とか多いじゃん?」

「ええ、そうね」

 

そう、最近奇妙な事故が多発している。人が突然消息を絶ったり、山道が急に崩れたりと被害者も大勢出ている。

 

「それで、それがどうかしたの?」

「それ、全部なんか変な生き物の仕業なんだって。すぺ~す、びーとる?とかなんとか」

「スペースビーストな。直訳すると宇宙の獣」

 

比企谷くんがスマホを見ながら話してくれる。なるほど、由比ヶ浜さんの話が気になって調べてみたのね。

 

「そう、それそれ!それでね、そのスペースなんちゃらと戦う銀色の巨人。それがウルトラマンなんだって」

「あほくさ~、そんなのいるわけねぇだろ」

「誠に遺憾ながら私も同意見ね。そんな生き物や巨人がいたらいくらなんでも噂じゃすまないわよ」

「それにそんなのがいたらさすがに自衛隊も動くだろ。けど、そんなニュースもない」

「これらのことから考えても、まず間違いなくウルトラマンというのはただの伝説ね」

 

私と比企谷くんの二人に論理的に説明されて由比ヶ浜さんも納得した様子。でも、この噂は一体どこから発生しているのかしら。今度調べてみるのも・・・いえ、この部や私にはあまり関係なさそうだし、その必要はなさそうね。

 

 

 

 

 

 

 

その夜、都心部から少し離れた山の中。

 

 

「うわぁあああ、助けてくれぇ」

 

スペースビーストの触手がついに逃げる男をとらえた。男はもがきながらなんとか触手から逃れようとするが力の差は歴然だった。スペースビーストがその男を食そうとしたその時、

 

「ハァァア、シュア」

「ギィアアア」

 

一筋の光線がビーストに直撃し、雲散霧消させたのだった。光線を放ったその本人は気を失った男性を安全に運んだ。その銀色の姿は噂と同じで、まばゆい光を放っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日のこと、

 

「聞いて聞いてゆきのん!また出たんだって!」

 

今日は由比ヶ浜さんが部室に入ってきた途端にひどく興奮した様子で大声を出していた。正直予想外だったため比企谷くんも、たぶん私もかなり驚いた表情をしていたと思う。

 

「落ち着いて由比ヶ浜さん」

「あっ、うんごめん」

 

話が進みそうになかったからとりあえず由比ヶ浜さんを落ち着かせる。由比ヶ浜さんは興奮すると話の流れがちょっとわかりにくくなってしまうことがあるからからこれで少しはやりやすくなったわ。

 

「それで、出たって言ってたけどなにが?」

「そうそれ!昨日の夜に目撃した人がいるって話!」

「何を目撃したの?」

「ウルトラマンだよ!」

 

その言葉に比企谷君が少し反応する。彼も意外とこの話に興味があるのかしら。

 

「由比ヶ浜さん、とりあえず話を聞かせてくれるかしら。詳しい内容が知りたいのだけれど」

「うん!あのね、昨日の夜なんだけど、トンネル工事の現場で事故があったって聞いてる?」

「えぇ、原因不明の破損があったとニュースで」

「実はそこで、スペースなんちゃらが人を襲ってたんだって!実際何人かけがしてるって言ってたけどその時の傷だと思う。そのうちの一人が食べられそうになった時に、来たんだよ」

「ウルトラマンがかしら?」

「そう!なんかレーザーみたいなのでやっつけたんだって!ね?すごいよね?」

 

ちらりと比企谷君の様子を見てみる。視線は本に注がれているけどあまり集中できていないようね。視線が全然動いていないし、このくらいの時間があれば彼ならページの一つや二つめくっていてもおかしくないはずだもの。やっぱり彼も本当は興味があるのかしら。

 

「比企谷君、あなたは今の話どう思ったのかしら?」

「いきなり俺に話振るなよ、びっくりするだろうが。いやまぁなんだ、どう聞いてもおかしいことだらけだろ」

「え~、でも目撃者がいるんだよ」

「その目撃者が都市伝説に便乗してるだけかもしんないだろ」

「じゃあ原因不明の破損がどうしてできたのかわかんないじゃん」

「わからないから原因不明なんだろ。けが人にしたってあそこは山の中だ。簡単に怪我するようなことだってあるだろ」

「それに仮にその話が本当ならなぜ対策がされないのかしら」

「どゆこと?」

「つまり、あれだ。そんなに広まってるならなんで検証とかされないのかとか、本格的な調査が行われないのかとか、そういうことだよ」

「政府としてもこの話に信憑性がないと判断しているのよ。本当に存在しているとしたらそれが最優先事項になるはず。こんな都市伝説、誰も本気にしていないのよ」

 

そもそも比企谷君の好きな小説じゃあるまいし、人間を脅かす宇宙生物なんて非現実的だわ。そんなものの存在を国が認識できないなんていくらなんでもおかしいもの。

 

「まっ、所詮は噂だ。気にすることもないだろ」

「そっかぁ~、でも一度でいいから会ってみたいな~」

「やめとけ、仮にウルトラマンがいるならビーストもいるってことだ。噂通りならビーストと戦ってるんだろ?だとしたら襲われない限り出てこないってことじゃねえのか」

「そうね、可能性は限りなくゼロでしょうけれど、出会うためには命を危険にさらす必要があるということになるものね」

「あ~さすがにそれはいやだよね」

 

そんなたわいもない話をしながら、今日も奉仕部の一日は終わる。特に以来もなかったため、私たちは最終下校時刻にそれぞれの家に帰った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夜、必要なものがあったのを思い出した私は買い物のためにスーパーまで行ってきた。今はもう買い終わり、少しばかり量があったため帰りに近くの公園のベンチに腰掛けて休憩している。

 

「それにしても、スペースビーストにウルトラマン。いったいどうしてこんな噂が広まったのかしら…あっ」

 

無意識のうちに独り言を言っていたらしい。これじゃあまるで比企谷君じゃない。落ち着くのよ雪ノ下雪乃、あなたは比企谷君じゃないわ。

 

そう自分に言い聞かせながら再び考えを巡らせる。部活の後、私はこの噂について少しばかり調べてみたのだけれど、どうやらこの噂は最近のものというわけではないらしい。数年前に一度広まった後、いつの間にか忘れ去られていたもので、最近になってから再び流されたものみたいだった。昔の噂を見てみると、新宿の上空を高速で飛び回り強力なエネルギーでビーストを葬ったという内容が書かれていたのだけれど写真も何も残っていなく、やはり信憑性に欠けるものだった。

 

「…ふぅ」

 

考えすぎかしら、思わずため息がこぼれる。それにしてもどうして私はこんなあからさまに嘘みたいな話に興味を抱いているのかしら。

 

「キャアアアア!」

 

突然聞こえた女性の悲鳴。ここは夜の公園、不審者でもあらわれたのかしら。そう思い私は悲鳴の聞こえた方向へ向かった。人間相手なら組み伏せることができる自信があったからだ。

 

そう・・・人間なら

 

「なっ!嘘・・・」

 

私が見たものはつかまっている女性だった。しかしつかまえていたのは人間ではなかった。見たこともない生き物、人間よりも少し大きくピンクのゲル状の体に長い爪とも見える触手。噂に興味はあった、しかしまさか本当に存在してるなんて・・・

 

「スペース・・・ビースト」

 

そして私は目撃してしまった。ビーストが、実際に人を食すところを。そのあまりに異様な光景に体が凍りつく。悲鳴を上げようにも喉まで動かなくなってしまったように声が出ない。そうこうしているとビーストは私に気付きその触手を伸ばした。とっさによけようと思ったが片足にその触手が絡み付いてバランスを崩してしまう。

 

「っ!」

 

痛みはあった。しかしそれ以上に恐怖に私の心は埋め尽くされていた。人を襲う恐ろしい生き物が実際に今こうして私に襲いかかろうとしている。その事実だけが重要だった。死にたくない、そう思った。頭の中をいろいろなことが巡った。由比ヶ浜さんのこと、一色さんのこと、小町さんのこと、平塚先生のこと、母のこと、姉さんのこと。そして・・・

 

「・・・けて」

 

いつも捻くれていて、腐った眼をしていて、逃げることばかり考えていて・・・それでいながら自己犠牲的なやり方でいつも私を、私たちを助けてくれた彼のことを。もう一度、せめて私の頭の中でもいいから顔が見たくて目をつむる。

 

「助けて、比企谷君」

 

ズドォオン

 

「ギャピィィイ!」

 

大きな衝撃とともに私を引っ張っていた触手から力が抜ける。恐る恐る目を開くとそこにビーストの姿はなかった。代わりにそこには何か銀色のものがめり込んでいた。そう、まるで大きな手のような・・・

 

「!まさか・・・」

 

ゆっくりと視線を上にあげていく。そこにいたものは人の形をしていた。しかし巨大だ、普通の人間よりもはるかに大きい。そして全身が銀色で胸の部分には赤いV字のマークのようなものが。その顔は人間のものとはとても似ても似つかぬものであったがどこか優しさを含んでいるように思えた。

 

「・・・ウルトラマン、なの?」

 


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