天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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フルゴアエイムを装備したことで甘いハチミツが欲しくなる

しかし狂竜ウイルスに感染したことで身体は闘争を求める。

アーマード・コア6が発売される。

AC6が発売されるのは全部ゆうたさんのおかげじゃないか

Q.E.D.証明終了




イサナちゃんと天を廻りて戻り来よ3

 

 

 

 

 

「それじゃあ思い出巡りの旅へレッツゴー♪」

 

「レッツゴーニャ♪」

 

「チッ……。」

 

家の外に出たハルカとマガラ、そしてヴェルガイン。

兄であるマガラと久々に一緒に出掛けることが出来るということで、さっきまでとは打って変わって非常にテンションの高いハルカ。

 

「えへへへ。」

 

ハルカはそのままマガラの右腕に抱き着く。

 

「何のつもりだ?」

 

「私とお兄ちゃんが一緒に出掛ける時はいつもこうしてたの。記憶を取り戻すためにも普段と同じようにした方がいいでしょ。」

 

「本当か?」

 

どうも騙されているような気がするマガラだったが、今日一日付き合うと宣言した以上は無下にすることも出来ず、ハルカに腕を引っ張られて歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腕を組んで街中を歩くマガラとハルカ。

ヴェルガインは普通のネコのフリをして、二人の後を着いて回る。

 

「視線が鬱陶しいな……。」

 

傍から見れば仲睦まじく腕を組んで歩く美男美女と可愛らしいハチワレのネコ、注目を集めないわけがない。

微笑ましく眺めてくる者もいれば、嫉妬の視線を向ける者もいる。

 

「お兄ちゃんと出掛ける時はいつもこんな感じだったのよ。言ったでしょ、いつも腕を組んで出かけていたって。この視線も記憶を取り戻すのに大事なものだって!」

 

「一先ずはそう言うことにしておいてやる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人と一匹は記憶を取り戻すために町の探索を続けた。

時にはブティックに入ってマガラを着せ替える、またある時はペットショップに入ってヴェルガインの匂いが付いたマガラが店の子猫に興味を持たれたことでじゃれつかれたり、町を流れる川に小石を投げ込んでみたり。

ペット同伴では入れない場所も多く、ヴェルガインは着いていくのに難儀した。

 

「どう、何か思い出せそう?」

 

「ダメだな、何も思い出せん。」

 

「そっか……。」

 

何も思い出せないという割に平然としているマガラ、実際に思い出せないことを何とも思っていないのだろう。

 

「そもそもこれって本当に思い出巡りの旅なのニャ!?ただデートしているようにしか見えないニャ!」

 

「本当だよ。私とお兄ちゃんはいつもこんな感じだったんだもん!」

 

ヴェルガインからマジかよこの兄妹といった目で見られるもののハルカは気にしない。

ハルカにとっては当たり前のことを当たり前のようにやっているだけなのだから、他人にどう思われようと気にならないのだ。

 

「でもここまでやっても何も思い出さないのは流石に不安だから、これから記憶を刺激する取って置きの場所に案内するわ!」

 

未だに何も思い出さないマガラだが、ハルカは次に案内する場所に余程の自信があるようで、意気揚々とマガラの腕を引いて歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

ハルカによって連れて来られたのは町外れにある小さな売店。

客が入る店内スペースというものはなく客と店員がやり取りする出窓だけがある、いわゆる昭和の町のタバコ屋のような雰囲気の売店だった。

 

「ここが私とお兄ちゃんの取って置きの場所!小さい頃からここによく通ってたんだよ。ごめんくださーい!」

 

ハルカは売店の窓をコンコンと叩くと窓が開き、中から初老の女性が顔を出す。

 

「はいはい、いらっしゃい……ってハルカちゃんじゃない!久しぶりだねえ、一年振りくらいじゃないの?」

 

「おばちゃん久しぶり!全然顔出せなくてごめんね。」

 

「いいのいいの!お兄さんいなくなってずっと探してたんでしょ。唯一の家族なんだし仕方ないわよ。」

 

「うん。それでね、今日はおばちゃんに会わせたい人がいるから連れてきました!」

 

そう言ってハルカはおばちゃんの前にマガラを押し出す。

 

「あらっ、フォージ君じゃない!帰ってきたのね、おばちゃんも心配してたのよ~。お兄ちゃん見付かってよかったわねぇ、ハルカちゃん!」

 

喜ぶおばちゃんだったが、マガラからしてみれば初めて会うおばちゃんに親しげに声を掛けられたことで困惑しかない。

 

「それじゃ、いつもの二つね!久々だからいつものって言うのもちょっと変だけど……。」

 

「はいよ、いつものね。」

 

ハルカのオーダーを受け、おばちゃんはゴソゴソと何かを作り始める。

そして500㎖は入りそうな大きめの紙コップに入った飲み物を二つ、カウンターに置いた。

 

「お待たせ。ハチミツレモンだよ。」

 

「それじゃお会計を……。」

 

「あぁ、今日はタダでいいよ。」

 

「えっ?」

 

出てきたハチミツレモンにお金を払おうとするハルカだったが、それをおばちゃんは制止する。

 

「おばちゃん道楽でやってるところもあるしさ、それに久しぶりに顔を見せてくれてたことと、お兄ちゃんが見つかったことへのおばちゃんからのささやかなお祝いさ。その代わりこれからはまた昔みたいに顔を見せておくれよ?」

 

「はい!おばちゃんありがとう!」

 

「ありがとう……ございました……。」

 

「ふふっ、またおいで。待っとるよ。」

 

元気よく礼を言うハルカ、それに釣られるようにマガラも思わず礼を言う。

マガラとしては礼を言うつもりはなかったし、そもそもそんなことを言うキャラでもなかったが、このおばちゃんには何故か礼を言わなければいけないような気がしたのだ。

これが失われた記憶に関係することなのかと訝しみながらもハルカにハチミツレモンを手渡され、そのまま今までと同じように腕を引かれてその場を立ち去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハチミツレモン片手に連れて来られたのは公園であった。

昨夜マガラがランポス兵を倒し、そしてハルカと出会ったあの公園である。

今の時刻は昼時であり本来であれば遊ぶ子供達がいる時間帯だが、公園の入り口には立ち入り禁止のテープが張られており誰もいない。

だがハルカはそれを無視してテープを跨ぐと公園の中に入っていく。

マガラとヴェルガインも公園の中に入ってみれば地面にはトリガーofハザードで開けた大穴がそのまま残されており、穴の周囲には三角コーンとコーンバーで簡易的な柵が作られていた。

どうやら昨夜マガラ達が立ち去った後に誰かが通報し、それを受けて役所が一時的に封鎖をしたようであった。

 

「よいしょっと。」

 

ハルカは公園のベンチに腰掛けるとハチミツレモンを飲み始めた。

マガラも取り合えずハルカの横に座り、ヴェルガインも誰もいないのをいいことに普通のネコのフリをやめてベンチに座る。

 

「フニャ~、ずっと四足歩行だったから疲れたニャ。」

 

「ふふっ、ヴェルちゃんもお疲れ様。この公園はね、私とお兄ちゃんがちっちゃい頃によく遊びに来ていたんだ。そしてさっきのお店でハチミツレモンを買ったら必ずここのベンチで飲むようにしていたんだよ。ほら、飲んでみて。」

 

「……分かった。」

 

マガラはハルカに付き合えば付き合う程に自分のペースが崩されていくことを自覚していた。

ネオウェポンズを倒すこと以外に興味がなく刺々しい態度で他人を遠ざけていたはずの自分が、いつの間にか促されるがままに公園のベンチで大人しくハチミツレモンを飲もうとしている。

だが結局のところ今まで何も思い出さなかったのだ、これを飲んだらいい加減におさらばしよう。

そう考えてハチミツレモンに口を付けた瞬間、見覚えのない光景が頭の中に広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん待ってよ~。」

 

自分の後ろをトコトコと走る幼い少女。

顔はハルカの家で見た写真の幼い頃のハルカそのもの。

 

「ほら、早くおいでよ!」

 

とても近くから少年の声がする。

否、近くからではない。この声は自分自身が出しているようだった。

映像の中の自分は幼いハルカを連れて走り、やがて先程の売店へと到着した。

 

「おばちゃ~ん!いる~?」

 

売店に向かって声を掛ける自分。

売店の窓ガラスに映っているのはハルカの家の写真で見た幼いフォージそのものだった。

だとすればこれが自分の顔なのか。

 

「はいはい、よく来たねぇフォージ君、ハルカちゃん。」

 

売店のカウンターから顔を出したのは中年の女性。

少し若くはなってはいるものの、間違いなくあの初老の女性だ。

 

「ハチミツください!」

 

「ハチミツくださーい!」

 

「うん、ちょっと待っててねぇ。」

 

女性からハチミツレモンを受け取り、お金を払った自分とハルカは仲良く手をつなぐとその足で公園を目指す。

そして今自分達が座っているベンチと同じベンチに二人で腰掛け、同じように二人でハチミツレモンを飲むのであった。

 

「美味しいねお兄ちゃん!」

 

「うん、美味しいね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハチミツ……くだ……さい……?」

 

「お兄ちゃん!?い、今ハチミツくださいって!?」

 

マガラがこぼした呟きに驚き振り向くハルカ。

 

「確かにオレはここでハチミツレモンを飲んでいた……のか?今と同じように……。」

 

「思い出したの!?」

 

「いや、思い出したのはそれだけだ。」

 

「だとしても、それだけでも嬉しいよ……お兄ちゃん。」

 

マガラが記憶の一端を思い出したことにハルカは思わず涙ぐむ。

 

 

 

 

 

ガシッ!

 

 

 

 

 

 

だがマガラは持っていたハチミツレモンのコップをベンチに置くと、いきなり真剣な顔をしてハルカの両肩を掴み自分の方へと向き直らせる。

 

「えっ、お兄ちゃん!?こんな場所、こんな時間からそんな大胆な!でも私、お兄ちゃんにだったら……。」

 

「危ないっ!」

 

「えっ、キャッ!?」

 

マガラはそのままハルカを抱き寄せてベンチの後ろに倒れ込みながら伏せる。

それを見たヴェルガインも慌ててベンチから飛び降りた次の瞬間、マガラ達が座っていたベンチの手前の地面に何かが勢い良く突き刺さった。

 

「あぅ、お兄ちゃん……。」

 

「ビックリしたニャ、何なのニャ?」

 

「これは、矢文か?」

 

地面に刺さっていたのは畳まれた紙が結びつけられた矢。

マガラは用心深くそれを拾い上げ、罠などがないか確認しながら紙を広げていく。

そこにはこの街の地図が描かれており、街外れの廃工場跡がある場所に赤い印が付けられていた。

 

「ネオウェポンズからの果たし状か。矢文といい古風な真似をする、気取っているのか?ヴェルガイン!」

 

「はいニャ!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「着いて来るな!家に帰ってろ!」

 

マガラは果たし状を握り潰すと、ヴェルガインを肩に乗せて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか、指定の場所は……。」

 

「フフフッ、よく来たな。待ったいたぞブラック・マガラ、組織の裏切り者よ。」

 

廃工場跡に辿り着いたマガラの前に姿を現したのは、くすんだ灰色の甲冑を身にまとった細身の男。

立派なトサカ飾りの付いたアーメットヘルムを身に着けており、その出で立ちは中世の剣士のようだった。

 

「何者だ?」

 

「私は水妖のフルアグナ。双剣のウェポンにして、ネオウェポンズで最も華麗な剣技を誇る剣士とは私のことよ。」

 

「ネオウェポンズで最も華麗な剣技?悪いが貴様がそこまで大層なヤツとは到底思えないな。」

 

「フッ、無知蒙昧な者に分からぬよ。」

 

この僅かなやり取りでマガラはフルアグナがプライドが高い性格であろうと当たりを付け、敢えて軽く挑発することで揺さぶりを入れてみるが軽く受け流される。

 

「ブラック・マガラ、私の任務は組織から抜けたお前を粛清することだ。」

 

「フン、またそれか。オレの前に現れるヤツはいつも裏切り者の抹殺だの、出来損ないの処分だのそればかり。だがオレの目的も貴様らネオウェポンズの殲滅!そちらから出向いてくれるのは好都合、どれだけ来ようが返り討ちにしてやる!」

 

マガラも早速変身しようとするが、それにフルアグナは待ったをかける。

 

「フフフ、戦意は十分のようだな。その方が私としても望ましい。だがその前に私の目的を聞いてもらおうか。戦うのはそれを聞いてからでも遅くはない。」

 

「何だ?貴様の任務はオレの粛清だろう?たった今聞いたばかりだ、それとも辞世の句でも聞かせてくれるのか?」

 

「今のは飽くまでネオウェポンズからの任務、私個人の目的とは違うのだ。」

 

「一応聞くだけは聞いてやる。」

 

一体何を言い出すつもりなのか?

降伏して配下になれば命だけは見逃すとでも言うつもりか?

それとも殺される前に潔く自害でもしろと言うつもりか?

どちらにせよマガラはマトモに取り合うつもりはなかったのだが……。

 

「私の目的はお前との決闘だ。お前に一対一での尋常なる決闘を申し込む!!」

 

「決闘だと!?」

 

予想外の言葉に流石のマガラも驚きを隠せない。

言われてみれば確かに周辺に取り巻きのランポス兵の姿は一切見られない。

どうやらこの男は本当に一対一の決闘を所望のようだ。

ある事情により長く戦えないマガラからしてみれば願ったり叶ったりの状況だが、同時に相手の狙いが見えてこない。

思い返せばフルアグナは場所を指定し地の利を得ておきながら、不意打ちもせずに堂々と姿を現した。

自らの有利を捨てる行為が逆に疑念を抱かせる。

 

「分からないな、何故そんな真似をする?お前に何の得がある?」

 

「簡単なことよ、それが私の美学だからだ。私は美しいものを好む、そしてそれは戦いにおいても例外ではない。一対一の決闘で美しく相手を打ち倒すことにより、私の戦いは芸術たり得る。伏兵も罠も私の芸術を汚すだけの不純物、神聖で美しい決闘にそんなものは不要なのだ!」

 

「何が神聖で美しい決闘だ!戦いというものを遊び感覚で行う貴様は単なる時代錯誤の野蛮人だ!」

 

「フッ、何とでも言うがいい。お前のような本物の美を知らぬ者に、私の崇高なる理念を理解出来るなどと最初から思っておらん。」

 

プライドが高いナルシスト、そして揺るぎない価値観を持った狂人。

そりゃ他人からの言葉程度では一切揺るがないわけだ、とマガラは密かに納得する。

 

「そんなことよりそいつはそのままでいいのか?」

 

「何のことだ?」

 

「お前の後ろの小娘のことだ。」

 

「何っ!?」

 

フルアグナの言葉に振り返ってみれば、そこにいたのは走り疲れたことにより肩で息をするハルカだった。

 

「ハアッ……ハアッ……お兄ちゃん……。」

 

「お前っ、何故ここにいる!?帰れと言ったはずだ!」

 

「だって、お兄ちゃんが急に駆け出して……そしたら私、お兄ちゃんが二度と戻ってこないんじゃって思って心配になって……。」

 

マズいことになった。

ハルカは身を護る術を持たない一般人、戦いに巻き込まれてしまえばひとたまりもない。

普段であれば戦闘による周囲への被害など全く考えないマガラだったが、何故かこの少女を戦いに巻き込む気にはなれなかった。

だがフルアグナは攻撃を仕掛けることなく腕組みをしたまま静観している。

 

「どうした、早くその小娘を逃がすといい。」

 

「何だと!?」

 

「言っただろう、私の戦いは芸術だと。戦えない一般人を巻き込んだり、人質に取るような真似は私の美学を傷付ける行為に他ならない。他人を気遣って本気を出せない相手を嬲る、そんなものは決闘ではないのだ。だからこそ人のいないこの廃工場跡を戦いの場に選んだのだからな。いいか小娘よ、私はお前を狙うような真似はしない。だが私の戦いに割って入るのであれば話は別だ。完璧な芸術を作り上げるには、雑味は取り除かねばならない。だからこそ私に手を汚させるような真似をさせてくれるなよ?」

 

「ハルカ、しっかりしろ!いいか、今からここは戦場になる!死にたくなかったら離れていろ!」

 

「あ……う、うん……。」

 

怯えたことで本調子が出ないのか、ハルカはヨロヨロとおぼつかない足取りで廃工場跡から去っていった。

 

 

 

 

 

BGM:乱舞する吹雪

 

 

 

 

 

「さて、それでは美しい闘争を始めるとしようか。」

 

「そのくだらない信条にこだわったことを後悔させてやる、やるぞヴェルガイン!」

 

「ニャッ!!」

 

ヴェルガインは黒い粒子へと姿を変え、マガラの全身を覆い尽くしていく。

足を覆った粒子は硬質化しグリーヴへと変化、そのまま腰、胴、腕も順番に高質化して鎧へと変化していく。

そして最後に顔が二本の角の生えたフルフェイスのマスクへと変化した。

 

「ハッ!」

 

マガラがガントレットに包まれた左腕を伸ばすと新たに黒い粒子が集まり両刃の棍、エイムofトリックが姿を現す。

それを見届けたフルアグナの両手にも青白い双剣が握られた。

 

「黒蝕剣士ブラック・マガラ!!黒き憎悪が貴様を断つ!」

 

「いいだろう。水妖の名を冠する我が双剣、ウンディーネの華麗なる舞を見るがいい!」

 

先に仕掛けたのはフルアグナ。

本人の言葉通り、舞い踊る様に軽やかな双剣の連撃を繰り出すが、マガラはエイムofトリックで的確に弾き返していく。

 

「軽い!その程度の攻撃でオレに届くと思うな!」

 

マガラは攻撃の一瞬の隙を突き、フルアグナの腹部に横蹴りをお見舞いする。

 

「グッ!?だが仕込みは済んだ。」

 

蹴られたことで後退したフルアグナ。

だが攻撃を凌がれたにもかかわらず、その声には余裕があった。

 

「仕込み?なっ、これは水!?」

 

気付けばマガラの足元にはいくつもの水溜まりが出来ており、打ち合ったことでエイムofトリックやマガラの手足にも水が付着していた。

 

「言っただろう、我が双剣は水妖なのだ。そして当然これで終わりではない。今のは飽くまで第一楽章、続いて第二楽章を堪能してもらおう。」

 

マガラの耳にピシパシと硬質な音が響く。

 

「何だと!?凍っているのか!」

 

足元の水溜まりは徐々に凍っていき、マガラの手足に付いた水も凍っていく。

 

「だがこの程度、何の障害にもならん!」

 

とはいえ所詮付着した水が凍った程度、冷たいが動きを阻害されるほどではない。

 

「やれやれ、誰がこれで終わりと言った?第二楽章はまだ続いているのだよ。」

 

再び舞い踊るフルアグナ。

マガラはこれを防いでいくものの、飛び散る水までは防ぐことが出来ずに濡れていき、そして濡れた傍から少しずつ凍っていった。

 

「どうした、徐々に動きが鈍くなってきたぞ。その体たらくで私のダンスの相手が務まるのかね?」

 

「ぐっ、やってくれる。」

 

最初は大したことのなかった凍結攻撃も、繰り返されることでじわじわとマガラの動きを制限していく。

氷の冷たさ、氷の重さ、氷の硬さ、あらゆる要因がマガラの重石となり、体力を奪っていくのだ。

 

「水を操る双剣と、氷を操る私の能力。水と氷が奏でるハーモニー、この二つのマリアージュが至高の芸術を作り出すのだ!」

 

「ぐうっ!?」

 

重くなった武器と腕ではとうとう攻撃を防ぎ切れなくなり、マガラは直撃を受ける。

相変わらず軽いフルアグナの攻撃。

この程度では致命傷には程遠いが、直撃を受けたということは今まで散らせていた水を真正面から浴びるという結果を生み出す。

 

「最終楽曲だ!フィナーレへと参ろう!」

 

「うおおぉぉぉ!?……ぉ……ぉ……。」

 

大量の水を浴びたことでマガラの身体は今までの比ではないスピードで凍り付いていった。

今まで被害の少なかった胴体や顔、そして背中までもが氷で覆われていく。

そこにフルアグナは更に水を浴びせていく、もはや防ぎようはなく氷は厚みを増していくばかり。

そして遂に指一本すら動かせなくなる、完全な氷漬けとなってしまった。

 

「美しい決闘だった。感謝するぞブラック・マガラ。お前の黒い鎧のデザインはナンセンスだったが、私の手により美しい氷像へと生まれ変わったのだ。お前は私のコレクションの一つに加えてやる、これからは芸術品として過ごすがいい。」

 

フルアグナは凍ったマガラを持ち帰るべく手を触れようとする。

だが触れる瞬間に違和感に気付いた。

 

「視線を感じる?それも真正面からだと?」

 

この場にはフルアグナと氷漬けのブラック・マガラしかいない、つまりフルアグナに視線を送る者など存在しないはずだ。

もしかしたらさっき逃げた小娘が戻ってきたのかもしれないが、それでもあんな小娘からこんな強烈な視線を感じるはずがない。

 

「だとしたら、まさか?まさか!?」

 

氷漬けとなって動けないはずのブラック・マガラ、その身体から突然暗く禍々しい紫色の光が放たれた。

続いてバキバキと音を立てて氷にヒビが入っていき、そのヒビから黒い粒子があふれ出す。

光、粒子、共に激しくなり、それにさえぎられたことで完全にマガラの姿は見えなくなった。

だが何が起きているのかは分かっている、氷の中からマガラが甦ろうとしているのだ。

そして遂に完全に氷が砕ける音が聞こえ、それと同時に光と粒子が晴れていく。

 

 

 

 

 

BGM:渾沌に呻く者~ゴア・マガラ

 

 

 

 

 

氷の牢から脱出したマガラ、その姿は大きく変わっていた。

元は美しかったものの、汚れに塗れたことで輝きを失ったステンドグラスを彷彿とさせるようなくすんだ色の鎧。

背中から生えているのは天使にも悪魔にもなり切れない中途半端な堕天使の穢れた翼。

左右で色の違う紫と金色の禍々しい角。

そして角と同じように左右で色の違う、全てを憎むような鋭い目付きをしたヘルム。

唯一手に持つエイムofトリックだけがブラック・マガラだった頃の原型を留めていた。

 

「渾沌剣士ケイオス・マガラ!!呻く憎悪が貴様を渾沌に引きずり込む!」

 

これこそブラック・マガラの強化形態、ケイオス・マガラ。

 

「なんと醜い姿だ、もはやお前に芸術としての価値はない。せめてもの慈悲だ、私の手で死に際くらいは美しく彩ってやろう。」

 

フルアグナはマガラを再び氷漬けにすべく、武器を構えようとするが……。

 

「うっ!?何だ?何が起こっている!?」

 

唐突な頭痛と悪寒により思わず膝を着いてしまう。

堪え切れずに咳き込むと、ヘルムの隙間からは毒々しい紫色に変色した唾液が流れ出る。

これはどう見てもただの風邪や毒によるものではない。

 

「頭が痛い!?目がチカチカする!力を思うように制御出来ん!一体何だというのだこの吐き気は!?」

 

「それがオレの持つ狂竜の力だ。」

 

「狂竜だと?」

 

「そうだ、周囲を見てみろ。」

 

フルアグナが周りを見渡してみれば、いつの間にやら紫色の澱んだ粒子溜まりがそこら中に発生しており、そしてそれら全ての粒子は目の前のマガラの鎧の隙間から漏れるように発生し続けていた。

 

「この言い方は気に入らないが、貴様ら風に言えば狂竜のフルゴアとしての特殊能力だ。」

 

ネオウェポンズのウェポンは全員大なり小なり何らかの特殊能力を持つ。

超絶のフルカイザーであれば熱と爆炎を操る能力。

激運のフル夜叉であれば運気を上昇させ、雷光虫を操る能力。

水妖のフルアグナであれば水を瞬時に凍らせる力。

風翔のフルクシャ改めクロス・ダオラには風を自在に操る力。

そして狂竜のフルゴアであるマガラの能力、それこそがこの狂竜の力なのであった。

 

「ぐっ!?があっ!?」

 

「苦しいだろう?身体が言うことを聞かないだろう?この狂竜の力はオレにさえ制御出来ない。一度この渾沌の姿になってしまえば、変身を解除するまで溢れ出る狂竜の力を止めることは出来ないんだ。だがお陰で貴様らネオウェポンズを苦しめることが出来るんだからな、止めるつもりはない。」

 

ここまで苦しんでいるにも関わらず、フルアグナは無理矢理立ち上がり戦いを続けようとする。

しかしそれは彼の誇りから来るものではない。

頭では冷静に判断しようにも、闘争心が掻き立てられて肉体の方が止まらないのだ。

 

「身体の動きに逆らおうとするな、全身がズタズタになるぞ。」

 

「ど、どういうことだ。」

 

「狂竜の力には相手の闘争心を増幅させて狂戦士に変える効果があるんだ。たとえ理性が拒んでも身体は闘争を求める。無理に抑え付けようとするより、身も心も闘争に委ねた方が楽だぞ。狂竜の力は一度感染したが最後、たとえ何もしなくても少しずつ全身を蝕んでいき、最終的には中枢神経すら破壊して死に至らせる。そんな死に方をするくらいなら肉体の限界を超えてまで暴れて命を燃やし尽くした方がまだマシだろう?」

 

「闘争心だけで暴れるなど……ぐっ、私が嫌う最も美しくない衝動の一つだ!そんな下劣なものには……飲まれん!私は最後まで私の戦い方を貫く!」

 

フルアグナは今にも暴れ出そうとする身体を制して、今までと同じように双剣の構えを取る。

だがそれに抵抗するように全身は細やかに震えており、双剣を握り締める拳からは紫色に変色した血が滴り落ちる。

 

「そこまでして美しさを求めるか……。何があっても曲げないその信念には敬意を払おう。」

 

「ぐおおぉぉぉ!!」

 

先程までと比べて明らかにぎこちないながらも、双剣の演舞を崩さずに斬り掛かってくるフルアグナ。

その意志は見上げたものだが、この状況では隙が増すだけだった。

 

「グリーフorワンダー!!」

 

マガラの叫びと共にエイムofトリックに粒子が集まり、エイムofトリックの紫色だった刃は金色の刃へと変化。

更に切っ先も鋭く伸び、そこから矢じりのように枝刃が生えて非常に攻撃的な外見へと変わる。

 

「そこだッ!」

 

「ぐおぉ!?」

 

マガラはグリーフorワンダーの鋭い穂先にフルアグナを軽く突き刺すと、フルアグナを空中に向かって投げ飛ばす。

続いて操虫棍であるグリーフorワンダーを使い、フルアグナ目掛けて高いジャンプを繰り出した。

 

「バースorデス!!」

 

空中でマガラの持つグリーフorワンダーは瞬時に分解され、今度は不気味な色をした球体を掴む黄金の爪のような外見のハンマーへと再構築される。

 

「これで終わりだッ!!」

 

バースorデスをフルアグナに叩き付け、そのままの勢いで落下していく二人。

やがて地響きと共に着地し、砕けたコンクリートと狂竜の粒子が舞い上がったことで視界が遮られるものの、次の瞬間それを超える大爆発が起きたことでその粉塵は晴れていく。

そこにはケイオス・マガラが一人だけで立っており、フルアグナがいた形跡はどこにもない。

ここに勝負は付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでまたオレの価値が証明された……。」

 

『それよりもマガラ、早く変身を解くのニャ!』

 

「分かっている。」

 

フルアグナを倒したことで感傷に浸るマガラだったが、焦るように変身解除を促すヴェルガインの声に従って渋々変身を解く。

それと同時に周囲に立ち込めていた紫色の煙も最初から無かったように消えてしまった。

 

「マガラ、大丈夫ニャ?身体は何ともないニャ?」

 

「オレは平気だ、何ともない。」

 

「お兄ちゃ~ん!!」

 

「あいつ、まだ近くにいたのか!?」

 

一息吐こうとしたところでこちらに走り寄ってくるハルカの姿を捉えたマガラは驚き呆れ果てる。

 

「ハルカ、お前帰っていろと言っただろう!?」

 

「ごめんなさい。お兄ちゃんが心配で、向こうの資材置き場に隠れてたの……。そしたら急に爆発が起きて、これはただ事じゃないと思って……。」

 

資材置き場がどこにあるかは知らないが、主戦場から離れた場所にあったことにホッとするマガラ。

もし距離が近ければ狂竜の力はハルカにも……。

 

(ハッ!?今オレはハルカが狂竜の力に蝕まれなかったことにホッとしている?さっきの公園でもそうだ、オレ達を直接狙ったものではなかったとはいえ飛んできた矢からコイツを庇った。このハルカという少女にオレはやたらと心揺さぶされている。オレ達は本当に兄妹なのか?だとしても今のオレには……。)

 

考え込むマガラだったが、突然割れるような痛みが頭に走った。

続いて全身が焼けるように痛み出し、喉の奥からは熱いものがこみ上げてくる。

 

「ぐぅあっ!?ゴホッゴホッ!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「マガラ!?やっぱり平気じゃなかったニャ!しっかりするニャ!」

 

血を吐いて倒れたマガラに駆け寄り必死に起こそうとするハルカとヴェルガイン。

 

 

 

 

 

「あれだけ大口を叩いておきながら結局は負けたか。だがあの愚か者にしてはいい働きをしてくれた。」

 

その様子を遠くから何者かが見ていたのだが、それに気付く者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

「間違いなくこの周辺からウェポンの反応があったな、探しに行くぞシャイナス!」

 

「了解ニャ!」

 

そして新たにこの町に足を踏み入れた者もいたが、それに気付く者も今はいない。

しかしこうして役者は揃い、事態は再び動き出すのであった。

 

 

 






狂竜ウイルスで弱らせてからボコボコにするなんてお侍様の戦い方じゃない……。



MHP3でアグナUシリーズを全部位に装備した上で、これまたアグナ亜種の双剣を装備してスキル欄を覗くととても美しい。(スラアクでも可)
これ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう。
ただしよい子のみんなは真似しないでね!



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