ようやく時間が作れたので投稿。
書いてて思ったけどテレビ一話分に収まる話じゃないねコレ。
先の見通しが甘いからこんなことになるのだ。(反省)
廃工場にて氷妖のフルアグナを倒したマガラ。
しかしその後、血を吐いて倒れてしまう。
ハルカとヴェルガインはどうにかして助けようとするものの適切な治療など出来るわけもなく、かといって救急車を呼ぶわけにもいかない。
せめて家に連れ帰ってベッドで休ませたかったが、少女とネコの力で男一人を距離の離れた家まで運ぶのは無理がある。
それでも二人は力を合わせてどうにか公園までたどり着き、マガラをベンチに寝かせたのであった。
「ハァ……ハァ……。」
「お兄ちゃん、しっかりして!」
公園の蛇口で濡らしたハンカチをマガラの額に乗せ、ティッシュで血や汗を拭きとる。
ハルカの賢明な手当てにより容体は少しずつ回復しているようだが全快には程遠く、まだ自分で起き上がることすら出来ない。
「ねえヴェルちゃん、どうしてお兄ちゃんはこんなことになっているの?」
行方不明、記憶喪失、謎の組織からの刺客、不思議な姿への変身、そして激しい体調不良。
兄の身に起こったこれら数多くの異変。
再開直後は怖くて聞くことが出来なかった、聞けば兄は再び自分の元から離れていくと思った。
だがもうそんなことは言っていられない。
少しでも兄のことを知るためにハルカはヴェルガインに尋ねた。
「うーん、勝手に話しちゃっていいのかニャ?」
「お願い!私が知らないお兄ちゃんのことを受け入れるためにも知っておきたいの!」
ヴェルガインはしばらく逡巡していたものの、ハルカの意思の前に折れたのか話すことを決めたようだ。
「分かったニャ。」
「う……く……ここは?」
「目が覚めましたか?」
男が目を覚ますと見覚えのない場所に寝かされていた。
病室にありがちな簡易的な医療用ベッドと仕切り用のカーテンがあるだけの全体的に暗く無機質な部屋。
男のベッドサイドにはシルクハットを被り、赤いゴーグルとペストマスクを付けた全身黒づくめの怪しい男が立っていた。
「誰……だ?」
「私は痺賊のフルギルオス、あなたの手術を担当した者です。こう見えても医師の心得があるのですよ。」
フルギルオスと名乗った男は自分の事を医師だと紹介した。
しかしそのゴーグル越しに感じる視線は医師が患者に向けるものではなく、マッドサイエンティストが実験動物を見るものであった。
「手術?オレは手術を受けたのか?」
「ふむ、手術を受けたことは覚えていないようですね。それではあなた、自分の名前は分かりますか?」
「オレの名前は……フル……ゴア。そうだオレの名前は狂竜のフルゴアだ。」
男は頭に思い浮かんだその言葉を自分の名前だと認識した。
本当は別の名前を名乗っていたような気もするが、それを思い出すこともなければ思い出そうとも思わなかった。
今の彼にとっては狂竜のフルゴアこそが正しい自分の名前だからだ。
「ではあなたは何故ここにいるのかも分かりますね?」
「あぁ、そうだ。オレは竜を超える龍の戦士としてネオウェポンズに選ばれたんだ。そして龍の宝玉と絆石を埋め込まれた……。」
「では他に分かることは?」
「いや……今のオレにあるのは龍の戦士として生まれ変わった事実、ただそれだけだ。」
「よろしい、記憶処理は問題ないようですね。」
男、フルゴアが名前と己の立場以外何も覚えていないことにフルギルオスは満足そうな様子を見せる。
余計な記憶は必要ない、ネオウェポンズの一員として組織に役立つことだけが重要なのだ。
「それでは行きましょう。あなたはもう既に動けるようになっているはずです。これからのことは歩きながら説明します。」
歩き出したフルギルオスを追ってベッドから降りるフルゴア。
今の彼が身に着けているものは粗末な入院着だけで履物すらないが、気にすることなく裸足で後を着いていく。
「ランポス兵のようなウェポンを名乗ることすらおこがましい雑兵も分類上は下級ウェポンであり、強力な竜の力を自在に操るのが組織の主力である上級ウェポンです。一般的にウェポンと呼称されるのはこの上級ウェポンからですね。そしてその竜すら超える龍の魂をその身に宿すのがG級ウェポンです。しかし龍のウェポンはこれまでの技術では作成不能でした。龍が持つあまりにも強大なエネルギー。それは我々の手に余るものであり、力を引き出すどころか安定させることさえ至難の技でした。そんなものを人の身に宿してしまえば大き過ぎる力に肉体は耐え切れず崩壊してしまいます。ですがそれも今日で終わる。優秀なあなたの素質と私の優れた技術、これらが合わさったことにより遂に新世代のウェポンが誕生しました。あなたは栄えある龍のウェポンの第一号であり、未来への礎となる試作モデルでもあるのです。」
一人で興奮気味に話すフルギルオス。
フルゴアとしてはフルギルオスが語る技術や成果には興味はない。
フルギルオスもそれが分かっているのかフルゴアに解説しているというよりは、自分の成果に酔っているだけのようにも見える。
やがてフルゴアは頑丈そうな合金で作られ、一部に強化ガラスで作られた窓が張られた小部屋に案内された。
内部には監視カメラやスピーカーこそあるが、それ以外は椅子の一つすらない殺風景な作りである。
「あなたは龍の力を埋め込まれましたが、まだ実際に龍の力を引き出したわけではありません。理論上は龍の力を使えるとしてもそれは理論上の話に過ぎないのです。よく失敗に対して理論上は完璧だった、私の理論が間違っているはずがないなどと言い出す愚かな研究者がいますが、そんなものはフィクションの世界だけの存在です。実際に目に見える成果が出ずに成功などとは口が裂けても言えません。」
「それで、オレに何をさせたいんだ?」
フルゴアはこれから何をするのか内心で察してはいたが一応フルギルオスに尋ねる。
「ここは実験用特殊耐久室です。この部屋はちょっとやそっとのダメージでは傷付かない頑丈な素材で作られています。あなたにこの中で龍のウェポンとしての力を開放して貰いたいのです。」
「つまりオレのデータ取りというわけか。」
「理解が早くて助かります。あなたの実力を計測し、定められた基準値を超えていればようやく龍のウェポンとしての完成になるのです。」
フルゴアが部屋に入ると合金製の扉が閉められ密室になる。
フルギルオスはガラス窓の外に立ち、何やら計測機器のようなものを弄り始めた。
『それでは変身してください。』
部屋に備え付けられたスピーカーから流れるフルギルオスの声。
その声に従いフルゴアは全身に力を巡らせていく。
するとフルゴアの全身から黒い粒子があふれ出し、フルゴアの全身を覆い尽くす。
その粒子は硬質化していき黒い鎧へと変わっていった。
『……フム?想定より数値が低い?まぁいいでしょう、これからダミーを出しますので攻撃して下さい。』
床の一部が開き、その中からマネキンのような人形が現れる。
「エイムofトリック。」
フルゴアは黒い粒子を硬質化させて両刃の棍を形成すると即座にダミーに斬り掛かった。
この武器を握るのは初めてなのだが、改造の際に脳内に戦闘技術がインプットでもされているのか実に手に馴染む。
そのお陰で武器の使い方が分からないなどといった無様を晒すこともなく、ものの数秒でダミーはバラバラになってしまった。
『なるほど、戦い方に問題はないと……。では次は実戦です、手加減の必要はありません。思い切りやって下さい。』
再び床が開くと今度は青いトカゲのような姿をした兵士が一人現れた。
『彼はランポス兵、ネオウェポンズの最下兵です。彼らはクローン技術で作られたいくらでも替えの利く安価な存在。殺す気で戦い……いや、戦って殺しなさい。』
「ギイッ!!」
奇声を上げながら手にした短剣で襲い掛かるランポス兵。
最下兵とはいえ平穏な世界で暮らしていた一般人にとっては十分に恐ろしい存在である。
だが龍のウェポンとして作られたフルゴアはこの程度で恐怖など感じない。
また人を傷つけることや殺すことにも忌避感がないのか、相手が初対面でなおかつクローン人間とはいえ、ダミーの人形を相手にするのと同じようにまるで人間扱いなどせず淡々と斬り伏せる。
「ギギッ!!」
息絶えた一人目が塵に変わると同時に二人目が現れた。
どうやら一人殺しただけでこのテストは終わらないようだ。
フルゴアは二人目、三人目と作業的に順々と処理していく。
『ム、これは?試してみましょう。』
だが戦いを観察することであることに気付いたフルギルオスは一人ずつ出すのを止め、一気に三人のランポス兵を呼び出す。
ランポス兵も数の利を生かし、愚直に一体ずつ戦うのではなく撹乱するように動き始める。
しかしフルゴアは焦ることなくエイムofトリックをドクロのような不気味な装飾の付いた銃へと変化させた。
「レイofヴァイス、連爆榴弾発射。」
ドクロの銃口から発射された弾丸はランポス兵の一人に着弾する。
直撃した弾丸は威力が低い様でランポス兵に銃撃でのダメージは見られなかったものの、その直後に弾丸そのものが連続爆発を引き起こす。
連爆榴弾は着弾地点に爆発を起こす徹甲榴弾を改造した特殊弾であり、その威力は従来の三倍にも跳ね上がる。
その破壊力によって爆心地にいたランポス兵は勿論、その隣にいたもう一人のランポス兵までもが爆風に巻き込まれて塵と化した。
「ギ……ギッ!?ギイイィィィ!!!」
一瞬で仲間が倒されたことに狼狽えた最後のランポス兵だったが、攻撃を受けていないにも関わらず突然苦しみ出すと胸を掻き毟りながら塵に変わる。
「これは一体……クッ……!?」
突然死亡したランポス兵に流石のフルゴアも面食らうものの、突然謎の立ち眩みを感じたことで考えを中断される。
『ありがとうございます、お疲れ様でした。これにてテストは終了です。』
そこへ掛かるフルギルオスの声、戦闘終了とのことでフルゴアも体勢を立て直すと一息つく。
「ふぅ、それでオレのデータは取れたのか?」
『はい、中々に興味深い。ですがその前に……。』
フルギルオスが手元の端末を操作した、次の瞬間……。
「があああっ!?」
床からコンセントプラグのような金属の板が三枚張られた棒がフルゴアを挟むように左右に一本ずつ伸び、そしてその二本の棒の間に高圧電流が発生する。
『アノカソードダクトを改造して作成した装置です。消費電力は多く設置場所も限られる欠陥品ですが、中々の威力でしょう。』
放電は十秒にも満たなかったが、感電したフルゴアは動けなくなり仰向けに倒れる。
「ぐっ……がっ……何のつもり……だ……?」
『残念ながらあなたは失敗作だということです。』
「オレが……失敗作……?」
『えぇ、まず出力が足りていない。確かに上級ウェポンとしては最高クラスのエネルギー反応がありましたが、我々が求めているのはG級である古龍のエネルギー。上級の最高程度では困ります。そして次に何もせずとも倒れたランポス兵。あなた自身は気付いていないようでしたが、あなたが戦うたびにあなたの身体から黒い粒子が少しずつ撒き散らされていたのです。それに触れ続けていたランポス兵は肉体が破壊されました。あれが狂竜のフルゴアとしてのあなたの特性なのかもしれませんが、いくら替えの利くランポス兵とはいえあなたが戦うたびに無意味に兵を消耗させられるのは困ります。まぁあの程度の粒子量でしたら上級ウェポンには効かないとは思われますが、それも蓄積してしまえばどうなるかは分からない。身内に爆弾を抱えるのは御免です。そして最後にあなたは戦闘後に調子を崩した。あなたはただの立ち眩みだと思ったのかもしれませんがデータは誤魔化せません。狂竜の特性はあなた自身の肉体も蝕んでいます。今はまだ軽い体調不良で済んでいますが、戦いが続けばやがてその損傷は無視出来ないものになる。戦うたびにあなたは血反吐をぶちまけ、やがて死に至るでしょう。ただ基準値に満たないだけならまだよかった、上級ウェポンとして運用出来るのですから。しかしあなたは敵を滅ぼし、味方を滅ぼし、最期には自分自身をも滅ぼしてしまいます。だからあなたは失敗作なのですよ。』
「クッ、勝手なことを……。」
フルゴアはどうにかして起き上がろうとするものの、痺れた身体は言うことを聞かない。
『それではあなたの変身機構も破壊しておきましょう。』
「何ッ!?やめろっ!やめっ、ぐあああっ!!!」
フルギルオスの操作により天井からレーザートーチが出現し、細いレーザーが発射されて無抵抗のフルゴアの腹部を貫く。
『あなたに埋め込まれた改造絆石に傷を付けました。付いた傷はごく僅かなもの、ですが変身を阻害するには充分過ぎる。これであなたはもう変身出来ません。一回使うだけで部品が焼け付くため再利用の出来ないレーザートーチ、しかも高コストなので量産も難しい。ですがそれ程のものを使わなければ絆石に傷を付けるのは難しいのですよ。』
「あぁ……があっ……。」
フルギルオスは蘊蓄をのたまっているが、変身機構を破壊されて生身の姿に戻ったフルゴアにとってはそれどころではない。
ウェポンは宝玉と絆石の二つがあってようやく変身可能となる。
その絆石を傷付けられたことで尋常ではない痛みが全身を襲っていた。
『それでは名残惜しいですがあなたはこれから処理場へと送られます。あぁ、ご安心ください。失敗作とはいえ失敗もまた技術の向上に繋がるのです。あなたから得られたデータにより、次に生まれてくる龍のウェポンはより優れたものとなるでしょう。あなたの犠牲を無駄にはしませんとも、それではさようなら。』
フルギルオスの操作により扉が開くと二人のランポス兵が部屋の中に入り、倒れているフルゴアの肩と足を掴んで持ち上げ部屋の外へと連れ出した。
抵抗すら出来ないフルゴアはされるがままである。
ランポス兵達はそのまま廊下の突き当りにある廃棄物処理用の大型ダストシューターの蓋を開けるとそこにフルゴアを投げ入れた。
フルゴアを捨てたランポス兵達はそのままシューターの蓋を閉じるとその場を後にする。
蓋を閉じる瞬間に小さな黒い影がその中に飛び込んでいったことに気付かないまま……。
「……ぐっ、ここは?」
フルゴアが目を覚ますと、そこはロクに分別もされておらず生ゴミ、紙類、廃材といったありとあらゆるものが捨てられている異臭漂うゴミの堆積場だった。
ゴミの中には人骨のようなものも見える、彼も失敗作の一人なのだろうか?
このままでは自分もゴミの仲間入りをしてしまうと理解したフルゴアはどうにかして脱出を試みるも、絆石の痛みは未だに続いており身体に力が入らない。
「このままでは……。」
「おい、聞こえるかニャ?」
どうにかして脱出の糸口は無いものかと周囲を見渡しているといつの間にやら二足歩行をするハチワレ模様のネコがすぐ近くにいた。
「何だお前は?」
「オイラの名前はヴェルガイン!オイラはキミと取引がしたくてゴミ捨て場の中まで追ってきたのニャ!」
「取引だと?」
「そうニャ、キミが目覚めてからの一連のやり取りは全部見てたニャ。キミがフルゴアと名乗ったところも、フルギルオスのテストで戦っていたところも、失敗作と呼ばれて酷い目に遭ったところも……。」
「チッ……。それでお前はこんな死に掛けのオレと一体何の取引をしようと言うんだ?」
戦闘後の仕打ちを思い返して気分を害したフルゴアだったが、そこは堪えて話の続きを促す。
「オイラはずっとこのネオウェポンズの基地から脱出する機会を狙っていたのニャ。」
「脱出だと?」
「オイラは見ての通りちっちゃくて非力なネコ。物心ついた頃からこの基地にいて、それ以来ずっと隠れて過ごしてきたニャ。ネオウェポンズは人を攫ってはウェポンに改造するとんでもない奴らニャ。そんな奴らに捕まっちゃえばどんな目に遭うか分かんないニャ。でも弱いオイラは戦うことも逃げることも出来ずにひたすら身を隠していたのニャ。そこにキミが現れた!」
「オレが?」
「そうニャ!キミはネオウェポンズにゴミとして捨てられて、それでも諦めずに生きようとしている。違うかニャ?」
「いや、間違っていない。オレはこんなところで死ぬわけにはいかない。」
「そう、そこニャ!キミは仮にもネオウェポンズの一員ニャ。だったら組織が死ねと言ったら迷わず死ぬのが忠誠心ってものニャ。」
「随分と極端な話だな。」
死ねと言われて死ぬような組織などまっぴらごめんだが、それでも組織のために戦えと言われれば戦うつもりであったフルゴアはヴェルガインの話に理解を示す。
「でもキミは死なないため、生きるために脱出しようとしている。つまりキミの組織への忠誠心はもう無いのニャ!組織に忠誠心を持った者に取引を持ち掛けても実験動物として捕まるのが見えているニャ。だから忠誠心を無くしたキミのような存在が現れるのを待っていたのニャ。オイラは生きてここから出たい、キミも生きてここから出たい。利害は一致しているはずニャ!オイラをここから連れ出してほしいのニャ!」
ヴェルガインの言う通りフルゴアにネオウェポンズへの忠誠心はもう無い。
協力することで生きてここから出られるのであればフルゴアとしては願ったりである。
「だがお前を脱出させようにもオレは動くことすらままならない、手の貸しようがないぞ。」
「そこは大丈夫ニャ、これがあるニャ……んべえっ!」
ヴェルガインは口から大きな毛玉を吐き出す。
そしてその毛玉をほぐしていくと、中から一つの小さなビンが現れた。
「これは秘薬ニャ、これを使えば大体の傷は元通りニャ。キミが傷付いているのは知ってたから、ここに来る前にちょろまかしてきたのニャ!こう見えても物を盗ってくるのは得意なのニャ。今から塗ってあげるニャ。」
何とも手癖の悪いネコである。
ヴェルガインはビンの蓋を開けると、中身をフルゴアの腹部に塗り始める。
口から吐き出された薬ということでフルゴアも本当は嫌だったが、治療のためと自分に言い聞かせて我慢した。
「……これは!?」
秘薬を塗ってからわずか数秒で腹部に開いていた穴は綺麗に無くなり、電撃で傷付いた身体も全快していた。
絆石からの痛みも止まり、身体を動かすのに何ら支障はない。
「クッ、だが変身は出来ないか……。」
しかし鎧の姿への変身は出来なかった。
いくら秘薬が強力な治癒効果を持っていたとしても、無機物である絆石の傷を修復することは不可能なのだ。
絆石からの痛みを止めただけでも御の字である。
「治療してくれたことは感謝している。だが変身出来るならともかく、生身で堆積場の壁を破ることは出来んぞ。」
試しに壁を叩いてみるがまるで手ごたえがなく、このまま叩き続けていても壁より先に拳が潰れてしまうだろう。
「だったら変身すればいいのニャ!」
「オレの話を聞いていたか?その変身が出来ないと言っているんだろう!?」
頓珍漢なことを言い出すヴェルガインに思わずキレるフルゴアだったが、ヴェルガインはチッチッチッと舌打ちしながら指を振る。
「実はオイラには隠された能力があるのニャ。オイラ絆石の代わりになる能力を持っているのニャ。」
「は?いきなり何を言っている?」
唐突に変なことを言い出したヴェルガインを頭のおかしい人間に向けるような目で見るフルゴア。
だがヴェルガインは真剣だった。
「ギャグでもジョークでもないニャ!オイラは生まれつき絆石の機能を肩代わりする能力を持っているのニャ。何でそんな力があるのか自分でも分からないけど、きっと今のためにあったのニャ!」
「妄言だったら許さんからな、変身!」
フルゴアが宝玉の力を開放すると同時にヴェルガインは黒い粒子へと姿を変える。
やがて煙が晴れると黒い鎧姿のフルゴアが一人で立っていた。
「おぉ!?これは!」
『言った通り変身出来たニャ。』
ヴェルガインの言う通りフルゴア一人では変身出来なかったのがヴェルガインがいれば問題なく変身出来た、ヴェルガインがフルゴアと一体化することで絆石の代わりを果たしているのだ。
『それじゃ脱出ニャ!』
「分かっている!トリガーoハザード!!」
フルゴアは悪魔のような外観の大砲を作り出すと、壁に向けて引き金を引いた。
発射された黒い粒子の塊は爆音と共に壁に大穴を開ける。
フルゴアは迷わずその穴に飛び込むと走り出す。
出口までのルートはヴェルガインが知っているとのことだったので、後はその案内に従って脱出するだけだ。
やがて古めかしい木製の大きな扉が目に付く。
フルゴアはその扉を蹴破ると迷うことなく外へ飛び出すのだった。
出た先はどこかの山の中だった。
周りには誰もおらず、身を隠しながら進むには最適である。
『生まれて初めて外の世界を見たニャ、感激ニャ~!』
外の景色に感動しているヴェルガインは放っておいてフルゴアは歩き出そうとするが……。
「いけませんね、そのようなことをされては……。」
後ろから声を掛けられたフルゴアが振り返ると、そこには痺賊のフルギルオスが立っていた。
「まさかこんなにも早く再開するとは私の頭脳を持ってしても予想しきれませんでしたよ。ですがあなたは処分されることが決定しています。分かったら早く処理場に戻りなさい。」
「断る。」
「まぁそうでしょうね。でしたらあなたの改造に携わった者の一人として私が責任を持って処分いたしましょう。改造絆石を欠いているにも関わらずどうやって変身したかは知らないが、これも次のためのいいデータとなる。」
フルギルオスは黒い皮の貼られた片手サイズの小振りな斧、マラドタバールをフルゴアに向ける。
「気を付けなさい、この斧には麻痺毒が塗られている。上級ウェポンでも触れればただでは済みませんよ。」
「ほう、敵に情報を開示していくとは余裕の表れか?」
「えぇ、先程のデータであなたの出力限界は見切っています。それに合わせて動けば負ける道理はありません。では参ります。」
斧を片手に斬り掛かってくるフルギルオス、それをフルゴアはエイムofトリックで受け止めるとそのまま弾き飛ばす。
吹き飛ばされたフルギルオスだが、空中で体勢を立て直し華麗に着地をしてみせた。
「流石は上級ウェポンを超える出力だ。これがG級であればどれほどのものだったのやら、あなたが失敗作なのが残念でなりません。同じく上級ウェポンとはいえ実力的には下から数えた方が早い私では真っ向勝負では分が悪いようですね、しかし!」
フルギルオスは懐から玉を取り出すと、それを地面に投げ付ける。
割れた玉からは白い煙幕が発生し、辺り一面を覆い尽くした。
「けむり玉か!?」
「力では負けていても知略で勝てばいいのです。卑怯だとか小手先の技だとかは敗者のたわごと。そもそも技や戦略というものも本来は格下が格上に勝つためにあるものなのですよ。私はこのゴーグルで煙の中でも視界が確保出来ますが、あなたはどうでしょうか?」
煙の中から縦横無尽に走り回る音が聞こえる。
視覚面だけでなく聴覚面ですら翻弄し、徹底してこちらの死角を突くつもりだろう。
何故なら相手の斧には麻痺毒が塗られており、一発当てればそれで勝敗が決まるのだから。
右側から一瞬聞こえた音に振り向くフルゴア。
その瞬間、斧を構えたフルギルオスが左側から飛び掛かり……。
「フォースofフォール。」
そして自身の斧が届く前に、フルゴアの振るう巨大な斧の刃が腹部に深々とめり込んでいた。
「ガフッ……小石を投げて音に誘導したというのに……何故私の来る方向が分かったのです?」
「お前が煙の中でも物が見えるように、オレも粒子の中を動く物は感知出来るのさ。」
「そのようなことが……。」
フルギルオスが周囲を見渡してみれば煙で分かりにくかったものの、確かに足元には黒い粒子が広がっていた。
「自分で自分の首を絞めたということですか……。煙幕さえなければこの程度……すぐに見破れたというのに……。」
「だがその場合、真っ向勝負を挑むしかないお前はパワーで負けていた。つまりオレに挑んだ時点でどのみち負けるしかなかったということだ。」
「フフフ……素晴らしい……。早々に切り上げず、もっとデータを取っておくべきでしたよ……。ですが、これも次回のデータに活用し……。」
「お前に次はない、チェインソーサー!!」
斧の刃が高速回転し、フルギルオスの胴体をえぐり取っていく。
「ですが狂竜のフルゴア、あなたはもう死の運命から逃げられない!ネオウェポンズは裏切り者を許しません。次々に追手が来るでしょう。そしてあなたは戦うたびに弱っていく。追手に殺されて死ぬか、限界を迎えて死ぬかの違いしかありません!あなたがどのような終わりを迎えるのかとても楽しみですよ。」
やがて斧の刃はフルギルオスを両断し、フルギルオスの肉体は大爆発を起こす。
爆風によって煙幕も晴れ、そこには巨大な斧を片手に佇むフルゴアだけが残された。
「狂竜のフルゴアというのはお前らが定めた名前だ。組織から抜けたオレはその忌まわしい名は名乗らない。今からオレはブラック・マガラだ。」
変身を解いたことで黒い戦士はフルゴア改めブラック・マガラとヴェルガインに分離する。
「えーっと、ブラック・マガラって呼んだ方がいいのかニャ?」
「マガラでいい……クッ!?」
突然の頭痛に襲われるマガラ、これも狂竜の力の副作用なのだろう。
今はこの程度で済んでいるがフルギルオスは戦い続ければ症状はより酷くなり、最終的に死に至ると言っていた。
「これからどうするのニャ?外に連れ出してくれたことはオイラにとって返しきれない程の恩なのニャ。だからこれからも戦うというのであれば協力するけど、でもマガラは戦わない方がいいんじゃないかニャ?」
「いや、オレは戦い続ける。ヴェルガイン、力を貸せ!」
マガラが戦うことで命を縮めるということを知っているヴェルガインはマガラに戦いを止めるように言ってみるが、マガラは戦いを止めるつもりはないようだ。
「本当に大丈夫ニャ?どこかに身を隠して静かにしていれば、退屈かもしれないけど長く平穏に暮らせるのニャ。」
「オレは自分が死のうがどうだっていい。」
「ニャッ!?だって死にたくないからゴミ捨て場から脱出しようとしてたんじゃ……!?」
未だにマガラを説得しようとするヴェルガインだったが、暗く濁ったマガラの瞳を見たことで思わず息を呑む。
「オレが死にたくなかったのは失敗作として何も為すことなく処分されようとしていたからだ。オレを作っておきながら失敗作だと?そして裏切り者として追手を寄こすだと?上等だ、お前らの追手を倒し続けることでどちらが失敗作なのかハッキリさせてやる!オレを失敗作と判断して処分したことを後悔させてやろう!!」
そう言うとマガラはふらつきながら山を下りていく。
マガラに協力すると決めた以上、ヴェルガインに出来ることはない。
今日初めて会った自分の薄っぺらい言葉ではいくら説得を重ねようと絶対にマガラは止まらないだろう。
いつかマガラが心を許せる相手が現れることを願いながらヴェルガインはマガラの背を追って山を下りるのであった。
モンハンNowはやってません。
やり始めると余計に時間も電池も無くなるし、これからもやらないでしょうな。
悟空がレーザー銃で撃たれてやられてなんだこりゃってなったように、強いキャラクターを使用者の強さが反映されない上にお手頃そうな武器で倒すとなるとそれを量産すればいいじゃんってなってしまう。
なのでマガラを施設の兵器で倒す際には、やたらと使いにくい兵器であることをこれでもかと強調しております。
大群でレーザー銃を撃ってくるランポス兵とか嫌だから仕方ないね。