天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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30分くらい勉強しようと思ったら
1145141919分も勉強しちゃった…。(頭に入ったとは言っていない)

   約2180年

ちょっとした資格取得のために現在勉強中であります。
その影響で投稿が死ぬほど遅いしこれからも遅くなるけど許し亭ゆるして。




イサナちゃんと天を廻りて戻り来よ5

 

 

 

 

 

 

「……こうしてマガラはウェポンを一人残らず倒すことを決意したのニャ。これはマガラにとっての復讐であると同時に、失敗作と判断された自分の価値を証明させるための戦いでもあったんだニャ。」

 

「そうだったの……。」

 

今までの記憶を全て失ったことで自分を構成する過去がないマガラは、自分がウェポンであるという事実しかアイデンティティとなるものが残されていない。

それを剥奪され、失敗作という烙印を押されるというのは存在の否定に他ならない。

だからこそ自分の価値を証明するために戦っているのだ。

ましてや復讐という戦いを後押しする動機もあり、余命幾ばくもないという事実から死に急いでいるという面もあるだろう。

だがハルカは血のつながった妹としてそれを許容することは出来ない。

 

「ねぇヴェルちゃん、お兄ちゃんを止めることは出来ないの?」

 

「そんなの何度も止めたに決まってるニャ、でもマガラは止まらないニャ。だったらせめてマガラがやりたいことを手助けしてあげるのが今のオイラに出来ることなのニャ。じゃないとマガラは一人で突き進んで、それこそどこかで死んじゃうのニャ。」

 

ヴェルガインの声からも苦渋の色がにじんでいる。

ヴェルガインも恩人であり友人でもあるマガラを戦いに駆り立てるようなことはしたくないが、自分が手を貸さなければ彼はより惨たらしく死ぬということが分かっているのだ。

 

「………………随分、好き勝手に語ってくれたな。」

 

「マガラ、気が付いたニャ!?」

 

むくりとマガラが上半身を起こす。

まだ本調子ではないが、意識の方はハッキリとしているようだ。

 

「ごめんなさい、お兄ちゃん。お兄ちゃんの過去を知りたがった私が無理矢理聞いたの、話したヴェルちゃんを責めないであげて!」

 

「別に話したことについては怒ってはいない。だが何故知ろうと思った?知ってどうするつもりだ?」

 

疲れの見える声色だが本人の言う通り怒っている様子はない。

しかしその力の無い声、澱んだ瞳、痩せ気味のやつれた顔がハルカの心を傷付ける。

記憶の中のいつも笑顔を絶やさなかった兄と比べて、今の僅かに残された精神力だけで無理矢理動いている兄の姿は見ているだけで辛いのだ。

 

「だってお兄ちゃん、傷だらけじゃない。お兄ちゃんの身体は改造の副作用で戦うだけでも弱っていくんでしょ?私はお兄ちゃんにこれ以上傷付いてほしくない、だから……。」

 

「オレから戦いを……復讐を奪うなッ!!」

 

兄を説得すべく話を続けていたハルカだったが、マガラが突然激高し大声を上げたことで思わず気圧され中断してしまう。

だがマガラもそんな対応をするつもりはなかったようでバツの悪そうな顔をする。

 

「お、驚かせて悪い。そんなつもりじゃなかった……。だが戦いはもはやオレの生きる理由になっている。復讐を止めたら肉体の前に心が死んでしまう……。」

 

ネオウェポンズによって改造されたウェポンは組織に貢献するよう忠誠心を刷り込まれている。

これにより個人差はあるものの、基本的にどのウェポンも組織のために行動をするようになる。

だがマガラは欠陥品としてネオウェポンズから捨てられたことで、その忠誠心が憎しみへと反転してしまった。

組織のために動こうとするウェポンとしての忠誠心と、組織に対する深い憎しみ。

この矛盾する二つの感情が混ぜ合わさったことにより、マガラは組織に自分の価値を認めさせるために自分以外のウェポンを次々と倒していくようになったのだ。

マガラも自分が洗脳されて、行動原理を植え付けられていることは自覚している。

仮に組織に自分の力を認めさせたところで復権出来るわけもなく、この行為に何の意味がないということも理解している。

だが薬物中毒者が更生しようにも薬物から逃れるのが難しいように、マガラもこの衝動から逃れることが出来ていない。

復讐を止めると心が死ぬとはそういうことなのだ。

 

「そんな生き方おかしいよ……。」

 

「だがオレは……ハッ!?」

 

そんな苦しい生き方を憐れむハルカに対してマガラは言葉を続けようとしたが、突然聞こえた風を切るような音に反応し弾かれるようにベンチから飛び退く。

 

「えっ、何?キャッ!?」

 

「しまった!!」

 

マガラに続いてヴェルガインも身をかわすことには成功したが、唯一戦いとは縁のないハルカだけが逃げ切らずに飛んできた物体に囚われる。

マガラ達がいたベンチ周辺に飛んできたのは捕獲用ネット。

このネットは本来であれば環境生物を捕らえるのに用いるものだが、人間を捕らえる為に大きく改造をしたもののようだ。

 

「チッ、本命は逃したか。だが成果はあった、セカンドプランだ。」

 

マガラはハルカをネットから解放しようとするが、その前に公園に現れた新たなウェポンに思わずその手が止まる。

そのウェポンの姿はどう見てもフルアグナだった。

だが先程戦った氷妖のフルアグナとは違い、こちらのフルアグナは燃え盛るような赤い色の鎧に身を包んでいる。

また手に持つ得物も双剣ではなく背ビレの生えた赤い重弩、捕獲用ネットのロープはこの砲門につながっておりマガラ達を捕獲するために狙撃したのだろう。

 

「誰だ?貴様はフルアグナなのか?」

 

「そうだ、俺は炎魔のフルアグナ。弟が世話になったな。」

 

「弟?ということは貴様はあいつの兄か!?」

 

「その通り。」

 

「……弟の敵討ちというわけか?」

 

「敵討ち?ハッ、誤解しないでもらおう。」

 

マガラは炎魔のフルアグナが水妖の敵討ちのために現れたと思ったが、フルアグナはそれを鼻で笑う。

 

「アイツが破れたのはアイツが弱く、そして愚かだったからだ。美しい戦いなどという戯言に陶酔し、つまらない戦い方で命を落とす。そんなもの身内でも何でもない。だからこそアイツを始末したお前には感謝すらしている。」

 

自分の弟を徹底的に蔑む炎魔。

妹として兄の心配をし続けていたハルカとは完全に対照的だ。

 

「しかしアイツにも使い道はあった。それはお前を弱らせ、そして手の内を暴いてくれたことだ。」

 

「何!?さっきの戦いの時にも貴様はいたのか!」

 

だとするとこの男は戦いを傍観し、そして敗れる弟を見殺しにしたことになる。

二人掛かりで挑めば確実にマガラは倒され、そして弟は生き残ったというのにだ。

 

「不思議なことではあるまい?手を貸すと言って聞くような弟ではない。そもそもアイツの主義と俺の主義は違う。だったらここで死んでもらった方が後腐れがない。さて、それでは交渉の時間だ。」

 

「きゃあ!?」

 

フルアグナが重弩のトリガーを引くとロープが巻き戻され、捕らえられたハルカはフルアグナの下に引き寄せられる。

 

「何をする!?」

 

「言ったはずだろう、交渉だと。降参しろブラック・マガラ。抵抗してもいいが、この女の命の保証はないぞ。」

 

「お……お兄……ちゃん」

 

ネットの上から首をギリギリと絞められ苦悶の声を上げるハルカ。

 

「これのどこが交渉ニャ!これは脅迫ニャ!お前は卑怯だニャ!ただでさえマガラは弱ってるっていうのに人質まで取って脅すなんて、お前にはプライドってものがないのかニャ!?」

 

「卑怯?プライド?言っただろう、俺の主義は弟とは違うと。俺は使えるものは何でも使うし、やれることは何でもやる。それが戦いというものだ。」

 

ヴェルガインはフルアグナを責めるが、フルアグナは聞く耳を持たない。

 

「さあどうする?このまま小娘の首をへし折ってもいいんだぞ?」

 

「くっ……。」

 

記憶を失う前は本当に妹だったのかもしれないが、今のマガラにとってハルカは妹を名乗る不審者に過ぎない。

見捨てるべきだ、自分の中の冷たい部分がそう告げる。

今までだってそうだ、ネオウェポンズを倒すためなら自分の身体だけでなく周囲の被害にも目を逸らしてきた。

ネオウェポンズを倒すことだけがマガラの目的であり、そのためならそれ以外はどうなってもいい。

そのはずなのに自分の中に僅かに残った暖かい部分が彼女を絶対に見捨てるなと囁く、彼女を死なせれば絶対に後悔すると……。

 

「分かった、降さ……。」

 

「そこまでだッ!!」

 

フルアグナの脅迫にマガラが屈する直前、風と共に更なる乱入者が公園に現れた。

突然の事態に流石のフルアグナの手も緩み、ハルカは息を吹き返す。

 

「お前はクロス・ダオラ!?どうしてここに!!」

 

乱入者の正体はクロス・ダオラ。

既に変身を済ませており、鬼斬破を片手に油断なくフルアグナの様子を窺っている。

 

「だが状況が分かってないのか?こちらには人質がいるんだぞ?」

 

「彼女に何かしてみろ、そのときは容赦はしない。」

 

思わぬ増援にたじろぐフルアグナだったが人質がいることで強気に出る。

だがクロス・ダオラもそんなことは百も承知、人質にアクションを起こされないように油断なく身構えている。

 

「弱ったブラック・マガラだけならともかく、万全のクロス・ダオラまで現れたとなると分が悪い。しかし想定外の事態ではない、サードプランにまで移る必要が出てくるのは癪だがな……。」

 

だがそこは卑怯な策略を得意とするフルアグナ。

逆上してハルカを傷付けることもなく、冷静に状況を見極めると右足で何かを踏みにじる動作をする。

その瞬間激しい閃光と高音が発生し、視覚と聴覚を一瞬奪う。

 

「くっ、目潰しか!?」

 

「うにゃあ!?」

 

「ハルカッ!!」

 

目を見開けば既にフルアグナもハルカもおらず、その場には紙切れ一枚だけが残されていた。

 

「これは……。」

 

「よこせっ!」

 

その紙を拾い上げるクロス・ダオラだったが、横からマガラがひったくる。

そこには水妖のフルアグナと戦ったあの工場跡の地図が書き記してあり、一人で来なければ人質の身は保証しないと書かれていた。

 

「あいつ、こんなものまで用意していたのかニャ。」

 

セカンドプランでマガラを仕留められなかったときの逃走用に靴底に閃光玉と音爆弾を仕込み、改めて一人にするために地図と脅迫状まで用意するとはどこまでも用意周到な男である。

 

「行くぞヴェルガイン、工場跡だ。」

 

「待てっ!」

 

ふらつく身体に鞭を打ち、マガラは歩き出す。

だがそれをクロス・ダオラが止めた。

 

「チッ、何だ?」

 

「その身体でこれ以上は無茶だ!ここは俺が代わりに行く。脅迫状には一人で来いとはあったが、誰が来るかまでの指定はなかった、万全の俺が行ってもいいはずだ!」

 

「やかましい、引っ込んでろ!」

 

クロス・ダオラの制止はマガラの身体を気遣ってのものだったが、マガラはそれを跳ね除ける。

 

「これはオレが行かなくちゃいけないんだ、お前の出る幕じゃない。」

 

しばらく睨み合うマガラとクロス・ダオラだったが、マガラの目に強い意志を感じたクロス・ダオラは決心して身を引いた。

 

「分かった、だが俺もいつでも動けるように準備はしておくぞ。」

 

「そのくらいなら勝手にしろ。」

 

歩きながらマガラはヴェルガインと融合し、ブラック・マガラへと姿を変える。

弱々しくふらつきながらも確かな信念の熱を感じさせるその背中を信じたクロス・ダオラはマガラを見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工場跡に辿り着いたマガラ。

炎魔のフルアグナは水妖のフルアグナを倒したのその場所で待ち構えていた。

ハルカはネットから解放されてはいたが、肩をフルアグナに掴まれ身動きが出来ない状態にあった。

 

「言われた通り一人で来たようだな。安心しろ、人質には傷一つ付けてはいない。」

 

「彼女を、ハルカを放せ!」

 

「言われずとも放してやる、ほらよ。」

 

フルアグナはマガラに向けてハルカを思い切り押し出す。

突き飛ばされるように押されたハルカはつんのめるように走り、そしてマガラに抱き止められた。

 

「ハルカ、無事か?」

 

「大丈夫、私は何もされてない。」

 

抱き締めたハルカの無事を確認するが本人の言う通り傷一つなく、何かを仕掛けられた様子もなかった。

 

「感動の再開というわけだな。」

 

「貴様、どういうつもりだ!?」

 

勝つためなら何でもするフルアグナが無策で人質を手放したとは到底思えない。

 

「そいつを人質のままにしておくと片手が塞がるし重弩も思う様に撃てなくて邪魔なんだ。だが立場が変わればお前にとっての邪魔になる。」

 

そう言って重弩を構えるフルアグナ。

 

「炎戈砲アグナコルピオの火力をその身で味わうがいい。」

 

 

 

 

 

BGM:大山、鳴動す/アグナコトル

 

 

 

 

 

フルアグナが引き金を引くと同時に砲門から炎の弾丸が放たれる。

このままではハルカが巻き込まれると思ったマガラはハルカを抱いたまま背を向けて背中で灼熱の弾を受け止めた。

 

「ぐあああっ!!!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「ふははは、言った通りそいつがいると邪魔だろう。どうだ、さっさと手放してみては?」

 

まるでガトリングのように高速で撃ち出される火炎弾。

隙の無い射撃の雨にマガラはその場から一歩も動くことが出来ない。

 

「この弾丸は俺の能力によって作り出されている。よって弾切れはないぞ!」

 

「だったら、この粒子で……。」

 

「無駄だ、俺の炎がそんなもので止められるか!」

 

マガラは黒い粒子を背中からのみ噴出することで弾丸を押し留めようとするが、粒子は弾丸に触れた傍から燃え尽きていきコンマ1秒も壁にはならない。

 

『これはマズいニャ!ウェポンとしてのフルゴアの性能は炎に極端に弱いのニャ!このままじゃ耐え切れないニャ!』

 

「うるさい、黙ってろ……。」

 

次々と背中に突き刺さる火炎弾にマガラの中のヴェルガインは焦りを隠せないが、マガラはハルカを庇うことを止めない。

 

「お前の粒子が炎に弱いのも調べは付いている。弟との戦いで派手に周囲に撒き散らしていたからな。お前の死角まで流れ出た粒子にちょいと火を付けてみればあっという間に焼失したのだ。肝心のお前は愚かにも気付かなかったようだがな。」

 

本来であれば黒い粒子はマガラに周囲の状況を感知するレーダーとしての役割を果たすため視界外であっても熱があれば感知することが可能である。

しかし水妖のフルアグナ戦では自分ですら制御出来ないケイオス・マガラに変身したため感知機能が低下していたのだった。

 

「ケイオス・マガラとかいう強化形態に変身してみたらどうだ?今の姿よりは強いのだろう、俺の攻撃に耐えられるかもしれんぞ?俺が手を下さずともお前から無差別に放たれる黒い粒子がその女を蝕むだろうがな!」

 

ブラック・マガラの時と違ってケイオス・マガラに変身すると黒い粒子はより濃度の高い紫の粒子へと変貌する。

だがその粒子はマガラ自身にさえ制御出来るものではなく、無差別に辺り一帯を汚染するものだ。

ケイオス・マガラに変身したが最後、腕の中のハルカは瞬時に狂竜の力に蝕まれ悲惨な死を遂げるだろう。

それを分かっていながら煽るフルアグナはどこまでも性格の悪い男である。

 

「ぐうっ!!くっ!!」

 

「お兄ちゃん、もういいよ……。」

 

「な、何を言って……。」

 

「だってお兄ちゃん、私を庇っているから戦えないんでしょ?私がいなくなれば炎の弾丸を受け止める必要も無くなる、これ以上お兄ちゃんが傷付くことも無い。あいつの言った通り私は邪魔、お兄ちゃんの足手まといなんだ。だから私のことなんかもう見捨てて……。」

 

「バカなことを言うなッ!!」

 

ハルカのことを庇いながらもマガラはふと忘れていたはずの過去を思い出した。

 

(そうだ、オレは昔も妹を庇ったことが……。)

 

 

 

 

 

BGM:ポッケ村のテーマ

 

 

 

 

 

「えーん、痛いよ~!」

 

転んで膝を擦りむいたことで涙を流す幼い少女、昔のハルカだ。

どうやら家の近所を散歩中に転んだらしい。

 

「大丈夫?立てる?」

 

「痛くて立てないよ~、お兄ちゃん!」

 

大人にとっては大したことのない怪我でも小さな子供にとってはとても痛く感じるものだ。

心配をして声を掛ける少年、フォージに泣き言で返す少女。

だが悪いことは続くものだ。

 

「あっ、雨が降ってきた!」

 

ぽつぽつと少しずつだが雨が降り出す。

今はまだ弱い雨だが、時間が経てば降り方もひどくなるだろう。

 

「うぅ、お兄ちゃん先に帰って。」

 

「ええっ、どうして?」

 

「だってハルカが立てるようになるまで待ってたら、ハルカだけじゃなくてお兄ちゃんまで濡れちゃうもん。お家は近くだからお兄ちゃんは先に帰って。ハルカのことは大丈夫、心配しないで!」

 

ベソをかきながらも兄に先に帰るように言うハルカ。

自分のせいで兄まで濡れるのが嫌なのだろう、幼いながらも人のことを思いやれる優しい少女だ。

 

「いいよ、僕がおんぶしていくから!」

 

だがフォージはハルカを背負って歩き出す。

これに慌てたのはハルカだ、相手は兄とはいえ自分と同じように力の弱い子供。

子供が雨の中で人一人を背負って歩くなど大変なはずだ。

 

「いいよ、降ろしてよ!ハルカのことなんか置いてっていいから!」

 

「そんなこと言わない。僕はお兄ちゃんだからね、ハルカのことは絶対に見捨てたりしないよ!」

 

こうして雨の中、幼い兄と妹はお互いの絆をまた一つ深めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、オレはお前を絶対に見捨てたりはしない!オレはハルカの兄だからな!!」

 

「お兄ちゃん、記憶が?」

 

「あぁ、全てを思い出した。自分のことも、お前のことも全部な。」

 

腕の中のハルカが驚いたようにマガラの顔を見上げる、それに対してマガラはマスク越しに微笑んで見せた。

とはいえマスク越しなので顔なんて見えるはずがない、だが妹であるハルカには伝わったらしく彼女は一筋の涙をこぼした。

 

「何をゴチャゴチャと言っている。この炎の弾幕から逃れるすべはない、お前はこのまま焼き尽くされるのだ!」

 

しかしフルアグナの射撃は止まらない。

いくらマガラが記憶を取り戻したところで事態の解決にはつながらないと思われたが……。

 

『ニャンだ?宝玉が激しく反応しているのニャ!マガラが記憶を取り戻したから?それとも別のニャニかが?いや今はニャンでもいいニャ!マガラ、狂竜の力を信じるのニャ!今のマガラなら新しい力を引き出せるはずなのニャ!』

 

「分かった。」

 

ヴェルガインの声を受けてマガラは自身の中に埋め込まれた宝玉に意識を集中していく。

今までは副作用で自分を苦しめるだけだった狂竜の力、今ならそれと正しく向き合える気がしたのだ。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

マガラの全身から深い紫色の粒子があふれ出す。

その粒子はマガラどころか腕の中のハルカさえ飲み込んで完全な球形となり、今まで焼き尽くされる一方だったフルアグナが放つ火炎弾さえ通さない。

 

「なっ、何だ!?マガラは一体何をしたというのだ!?」

 

やがて粒子の中から眩い光が漏れ出し、中から爆発するように粒子は弾け飛ぶ。

 

「ぬおあっ!?」

 

粒子の爆発に煽られたことでフルアグナもバランスを崩し、思わず射撃の手を止めた。

やがて粒子が晴れたことであらわになったマガラはその姿を大きく変えていた。

黒く染まった不気味な装甲は、美しい金色に輝く修道着を思わせるようなデザインの鎧となり、背中から下がっていたボロボロのマントは神々しい龍の翼に変わっていた。

そして悪魔を思わせる不気味なマスクは、まるで月桂樹の冠を被った光の神を思わせるマスクに変化する。

今までのマガラが悪魔の化身であるのなら、今のマガラはまさしく光を放つ守護神であった。

 

 

 

 

 

BGM:光と闇の転生~シャガルマガラ

 

 

 

 

 

「天廻剣士アーク・マガラ!!天を廻る光の意志が悪しき闇を浄化する!」

 

これこそブラック・マガラの最強形態、アーク・マガラ。

 

「な、何がアーク・マガラだ。確かに姿は変わったが、お前は我が身可愛さにその女を粒子で汚染したのだ!」

 

マガラが新しい姿に変身したことでフルアグナは狼狽えたが、直前にマガラがハルカをも巻き込む勢いで粒子を放出したことを指摘する。

 

「お兄ちゃん、姿が……。でも綺麗、天空の神様みたい……。」

 

「なっ、何故だ!?何故その女が無事なのだ!?」

 

しかしマガラの腕の中にいたハルカは無事だった。

今までであれば高濃度の粒子に触れたものはマガラの意思に関係なく狂竜の力に汚染され、遅かれ早かれ命を落としていた。

だが至近距離で狂竜の力を浴びたにも関わらず、ハルカには狂竜症の徴候が一切見られない。

 

「今のオレは狂竜の力を自分の意思で完全に制御出来ている。ケイオス・マガラの頃よりも高濃度の粒子をブラック・マガラ以上の繊細さでな。だからハルカに狂竜の力が及ぶことはない。そしてこういった芸当も出来るようになった、THEエデン。」

 

背を向けたままのマガラは顔と右腕だけをフルアグナの方へ向けると、その手の中に粒子が集まり白く美しい銃を形成する。

そこから同じく粒子を固めて作られた弾丸を一発だけ発射、弾は寸分違わずフルアグナの持つ炎戈砲アグナコルピオの砲身に真っ直ぐ撃ち込まれた。

 

「な、何だぁ!?アグナコルピオに何をした!?」

 

砲身に弾丸が撃ち込まれたにも関わらず見た目には何の変化も無く、どこかが壊れた様子はまるでない。

だが普段からこの重弩を愛用しているフルアグナには分かる、己の愛銃に何かとんでもない変化が起こってしまったことを……。

 

「気になるのなら撃ってみたらいいだろう?さっきと同じようにな……。」

 

若干名残惜しそうにしているハルカから腕を離して背中で庇い直すと、改めてマガラはフルアグナへ向き直る。

フルアグナに向かって手招きすることで撃ってこいと挑発する、ついでにTHEエデンを消して丸腰になってみせるというオマケ付きだ。

 

「クソッ、調子に乗るなよ!」

 

フルアグナは先程までと同じように火炎弾の連射を浴びせるべく引き金を引く。

しかし放たれた弾丸は一発だけ、その一発もマガラの粒子によって簡単に阻まれる。

その様子に焦りを隠せないフルアグナ、だがフルアグナの焦りの理由は弾丸を防がれたことよりも重弩の調子にあった。

 

「何だ!?引鉄が重い、それにこの反動は!?」

 

弾丸を連射しようにも引金が重くなっており、また撃った後の反動も大きくなったことで思い通りの射撃が出来なくなったのだ。

 

「狂竜の力でお前の重弩を劣化させた。もはやその重弩は炎戈砲なんて上等なシロモノじゃない、炎戈銃がいいところだ。」

 

「そんなバカなことが……。」

 

「終わりにしよう、THEシャングリラ!」

 

「ハッ、いつの間に目の前に!?」

 

マガラが胸の前で両腕を交差させると、その腕を覆う様に白い籠手が形成される。

そしてその指先からは美しくも残虐なカギ爪が現れた。

だがフルアグナにカギ爪を気にしている暇はない。

何故ならマガラがネコ科の肉食獣のように素早く、そして軽やかな身のこなしでもって距離を詰めてきたからだ。

 

「行くぞ!鬼人狂竜乱舞!!」

 

目にも止まらぬ速さで繰り出されるカギ爪の連撃、その激しさにフルアグナは反撃どころか防御すら出来ない。

いや防御をしようとはしているのだ、だが動かそうとした腕も一瞬で叩き落されるので結果としてその場から動けないのである。

 

「うごおおおぉぉぉ!!な、何故だ!?お前は戦えば戦う程弱体化するはず!こんな動きをして耐えられるわけがない!!」

 

斬られた傷から次々に狂竜の力が流し込まれていく。

自分が助からないことを悟ったフルアグナは最後の抵抗として口を動かす、それしか出来ることがないからだ。

 

「言ったはずだ、オレは狂竜の力を自由に扱えるようになったと。今のオレに狂竜の力による反動はない、それどころか自分の能力に狂竜の力を上乗せすることで、オレは今まで以上のパワーを発揮出来るようになった。これがケイオス・マガラを超えたアーク・マガラの力だ!」

 

「そんなっ、そんな都合のいいことがこの土壇場で起こっていいものかぁ!!」

 

「THEミラクル!」

 

THEシャングリラが粒子に分解され、マガラの左手に再集結する。

そして出現したのは鋭く攻撃的ながらも美しく輝く両刃の棍、マガラが一番使い慣れた武器だ。

 

「トドメだッ!狂竜旋風連斬!!」

 

棍をプロペラのように高速で回転させながらフルアグナに突っ込んでいくマガラ。

マガラはまるで水でも斬ったようにスルリとフルアグナを通り抜けた。

 

「お、俺の作戦は完璧だったはずだぁ!!」

 

遅れてフルアグナに一瞬で無数の斬撃が刻まれ、フルアグナは無念の叫びを上げながら大爆発を巻き起こす。

卑怯な手を使っておきながらの敗北、こうしてフルアグナはあれだけ見下していた弟以上に無様な最期を遂げたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……。」

 

変身を解除し、ヴェルガインと分離したマガラ。

そこにハルカが駆け寄る。

 

「お兄ちゃん、大丈夫!?」

 

「あぁ無事だ。あいつには散々撃たれたが、アーク・マガラになった際に何故か傷が消えたからな。」

 

「そうじゃなくて、お兄ちゃんは戦った後にふらついたり血を吐いたりしてたでしょ!そういうのは大丈夫なの!?」

 

「そこは心配ニャいのニャ。」

 

マガラを心配して身体中をあちこちベタベタと触るハルカだがヴェルガインはその心配は無用とだ説明する。

 

「マガラが具合を悪くしていたのは狂竜の力との同調率の低さが原因だったのニャ。だけど今回の戦いでそれが解消されたのニャ。これからはマガラが自分の力で苦しむことはニャいのニャ。」

 

「良かった……。」

 

「ハルカ、お前のお陰だよ。」

 

「えっ?」

 

「オレは今まで敵を倒すことしか頭に無かった、この力は立ちはだかるものを消し去るためだけにあるのだと思っていた。だがお前を庇ったことでようやく力の本質というものを理解したんだ、何かを守るときにこそ本当の力というものが湧き上がるということをな。その瞬間、パズルが組み上がるようにオレの中の狂竜の力があるべき場所に収まったんだ。きっとオレの中の宝玉が、正しい力の使い方が出来るオレになら力を貸していいとでも思ったのかもな。」

 

ハルカの頭を撫でながら優しい笑顔で語るマガラ。

その姿に記憶の中の兄が戻ってきたことをハルカは確信し、釣られるように笑みを浮かべた。

 

「だがオレはまだフォージには戻れない。戦うべき相手がいるんだ、悪いがもう少しマガラのままでいさせてくれ。」

 

「えっ?だってお兄ちゃん、もう記憶が戻ったんでしょ?自分の価値を証明する必要がないならもう戦わなくてもいいじゃない!?」

 

だが再び戦いの意思を見せるマガラ、それに驚いたハルカはどうにかして引き留めようと試みる。

戦いを続けるということは再び兄が傷付いていくということに他ならない。

 

「ネオウェポンズはまだ壊滅したわけじゃない、これからも兵を送り込んでくる。そんな時にお前も含めたこの世界のために戦える存在が必要だ。オレは記憶が戻ったからといって傷付いていく人を見て見ぬフリは出来ない、これは憎しみのためではなく守るための戦いなんだ。今まで散々ほったらかした挙句、これからも心配をかけるお前には悪いがな。」

 

だがマガラの意思は固い、記憶を取り戻したマガラはその内に眠る正義感も取り戻していたのだった。

 

「ホントだよ、でも無理はしないって誓える?」

 

「あぁ。」

 

「必ず帰ってくる?」

 

「勿論だ。」

 

「分かった。」

 

ハルカは潤んだ瞳を拭うと凛とした表情を見せる。

 

「お兄ちゃんは昔からそうなんだ、決めたことは絶対にやり遂げようとする。だけどそれがお兄ちゃんのいいところ、だったら私は妹としてそれを応援する。その代わり約束は絶対に守ってね!」

 

「当然だ、オレの帰るところはお前のところだからな。行くぞヴェルガイン!」

 

「はいニャ!」

 

マガラはハルカに背を向けると敢えて振り返らずに歩き出す。

それをハルカは優しい笑顔で見送った。

兄は決して約束を破らない、もう自分が泣くことはないと信じているからだ。

 

 

 

 

 

「マガラ、お前もようやく正しい自分と向き合えたんだな。さて、休んでいる暇はないぞシャイナス!俺達も出発だ!」

 

「了解ニャ!」

 

劣勢になればいつでも手が出せるように遠くから見守っていたコモンドも、その必要が無くなったことで踵を返す。

復讐から抜け出して守るべきものを見付けたマガラにもう心配はいらない。

これからはクロス・ダオラとブラック・マガラ、二人の剣士が世界を守っていくことになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BGM:ニャンてハッピーラッキーデイ!

 

『ニャーオ♪』

 

番組が終わり可愛らしいBGMのエンディングが流れる。

ギターをかき鳴らすクロス・ダオラとドラムを叩くブラック・マガラ、トランペットを吹くシャイナスとヴェルガイン、踊りながら歌を歌うルリとハルカ、そしてバックダンサーを務めるネオウェポンズのウェポン達。

本編の内容を完全に無視した無法エンディングである。

ちなみにこれは後期エンディングであり、前期エンディングにはトラベルナが流れていた。

 

「おのれ榛名め、多少のアドリブが許されてるからって提督に好き放題して……。それに今後本編で出番がなくても後期エンディングで登場するってことは実質毎週出番があるようなもの。主人公コモンドのヒロインであるルリと一緒に登場するってことはマガラのヒロインはハルカだって言ってるようなものじゃない!!つまり毎週提督のヒロイン面をする榛名を見なきゃならないってことよ!!!」

 

「や、山城おねえちゃん……。」

 

「キィーーーッ!!私がハルカ役をやりたかったぁ!!私もオーディションを受けていれば!!!」

 

ハンカチを噛んで悔しがる山城にイサナは普通にドン引きである。

普段はクールビューティーな筆頭狩娘としての山城しか見たことがなかったので、こんな狂ったキャラだとは夢にも思わなかったのだ。

 

(うーん、山城おねえちゃんにはちょっとビックリしたけど要するに榛名おねえちゃんに提督を盗られて悔しいってことなんだよね?何とかしてあげたいなぁ。恋愛ってのは女の子にとって戦争だって聞いたことあるし、何よりもうこんな変な山城おねえちゃんを見たくないんだよね……。)

 

ギャーギャー騒ぐ山城を尻目にイサナは考える、今自分が山城に何かしてあげられることはないものかと……。

そもそもイサナが山城と一緒にクロス・ダオラを見ることになったのは、新装備のアイデアに行き詰ったことに対する息抜きである。

新しいアイデアを考えなくてはいけないのに山城のフォローまで考えなくてはいけない。

普通の人間であればこの時点で嫌気がさしてやる気が無くなるものである。

だがイサナはそうではなかった、むしろこの状況に置いてこそ創作意欲が湧き始めたのだ。

 

(山城おねえちゃん、提督、恋愛、女の子のアピール、ブラック・マガラ、新しい装備、ここから導き出される答えは……。)

 

そして遂にイサナの中で一つの答えが出た。

 

「山城おねえちゃん、一緒に来て!」

 

「えっ、いきなり何?」

 

「いーから♪いーから♪」

 

イサナは山城の手を掴んで走り出す。

山城が連れ込まれた先はイサナのテリトリーとも言える工廠であった。

 

「ふむ、ふんふん……。」

 

「さっきから何をしているの?」

 

山城の身体をメジャーで測ったり、周囲をクルクルと周りながら観察してはノートに書きこんでいくイサナ。

山城としては少し恥ずかしいし調子も狂う。

少しずつ冷静になってきた今、イサナの前で騒ぎ続けていたことを思い出して気まずくなってきたのだ。

 

「大丈夫!私が山城おねえちゃんを誰にも負けない提督のヒロインにしてあげるから、楽しみに待っててねー!」

 

「ちょっと待って!今なんて言ったの?誰にも負けない提督のヒロイン?それ聞いて全然大丈夫じゃなくなったんだけど!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー!」

 

山城とイサナが工廠にこもって3時間程経過した後、ようやくメゼポルタ鎮守府で用事を済ませた提督と金剛4姉妹と香取がバルバレ鎮守府へと帰ってきた。

 

「榛名は大丈夫です!本当に大丈夫になりました!」

 

榛名の髪型は元のストレートに戻っており、カリスマ美容師連装砲ちゃんのサービスによってツヤツヤのサラサラにトリートメントされている。

戦闘で傷付いた痕もなくキメ細やかで美しい光沢を放つ理想の黒髪がそこにあった。

髪が綺麗になったお陰か心にも余裕が出来たようにも見える。

 

「シュッシュッ!!こうかしら?いやまだ腰のひねりが足りていないわね。」

 

その横でシャドーをしながら歩くのは霧島。

体術スキルの修行の成果か拳を打ち出すたびに空気が裂ける音がする。

だがこれでも本人はまだ納得がいっておらず修行は続けていくらしい、一体何を目指しているのだろうか?

 

「グヌヌ、結局何も出来なかったデース。せっかくのお出掛けなのに香取のせいだヨ。」

 

「私の目が黒い内はそんなことさせるものですか。提督に恥をかかせないようにするのは秘書艦として当然のことです。」

 

「カルガモのヒナのようにどこまでも着いて回る秘書艦の方がよっぽど恥ずかしいネ。」

 

「ひえぇぇぇ……。」

 

お互いにガンを飛ばしながら歩くのは金剛と香取、そして何故かその二人の間に挟まれて歩く比叡。

さながらジ・Oとキュベレイに挟まれて大破寸前の百式である。

だが挫けずに強く生きて欲しい、きっといいことあるさ。

 

「いやぁ一時はどうなるかと思ったけど榛名は無事に元に戻ったし、霧島もたった数時間の特訓で体術の才能が開花してよかったよ。」

 

そして彼女らの戦闘を歩くのはバルバレ提督。

ドクロ頭に網みたいな胴鎧とクソダサベルトなどこの世の終わりみたいな装備をしているが、本人は言って真面目である。

顔良し、声良し、性格良し、実力良しと凄まじいハイスペックの持ち主だが、この防具で全てが台無しなのであった。

 

「提督―っ、お帰りなさーい!」

 

そんな提督の前に飛び出してきたのはイサナ。

さっきまで作業をしていたので多少なりとも疲れているはずだが、待ち望んでいた提督の帰宅にテンションが上がっておりそんなこと気にもならないようだ。

 

「ただいまイサナ。どうしたんだ、そんなに慌てて。息が上がっているみたいだけど何かあったのかい?」

 

「ふっふっふっ、提督に見せたいものがあるんだー!」

 

「見せたいもの?」

 

「うん、私の新作!」

 

「そういえば言ってたね、新しいアイデアに行き詰ってるって。それじゃあ完成したんだ、おめでとう!」

 

「それでね、この新作は必ず最初に提督に見せるって決めてたんだ!」

 

「僕にかい?竜人妖精さんじゃなくて?」

 

「うん、これだけはオッショサンよりも提督に先に見せたかったんだ!」

 

オッショサンとはバルバレ鎮守府の工廠を取り仕切るリーダーの竜人妖精のことであり、イサナは彼の弟子なのだ。

 

「そんなわけでみんな撤収~!帰ってきて疲れてるとこ悪いけどこれだけは譲れないよ!」

 

「わー、何するネ!」 「ちょっ、そんないきなり!」 「ひえぇ!」 「や、やっぱり榛名は大丈夫じゃないです!」 「この角度で拳を打ち込めば、ブツブツ……。」

 

イサナは帰ってきたばかりの他のメンバーを無理矢理近くの部屋に押し込める。

いささか乱暴だが邪魔が入らないようにするためにこれも必要なことなのだ。

 

「それは光栄だね、そこまで言うなら見せてもらおうか。」

 

「うん、それじゃあ山城おねえちゃん入ってきてー!」

 

「えっ、山城?」

 

突然山城の名前が出たことに驚く提督にイサナの新作を身にまとった山城が姿を見せた。

黒と紫のシックなロングドレス、紫のリボンが付けられた上品な黒いロンググローブ、頭に乗せた黒と紫のブリム、そして小振りな黒と紫の日傘。

身に着けたあらゆるものが黒と紫で彩られており、そのイメージカラーはブラック・マガラそのものである。

 

「な、何とかいいなさいよ……。」

 

呆然とする提督に自分も恥ずかしいのを我慢して語り掛ける山城。

恥ずかし過ぎて今にも逃げ出したい気分だが、これなら絶対に提督のハートを掴めるとイサナに後押しされたのもあって必死である。

 

「き、綺麗だよ。物凄く綺麗だ、似合ってる……。」

 

「バ、バカ!そんな直球で褒めないで!」

 

「照れるにはまだ早いよー、この装備の真骨頂はこっからだもん!さぁ山城おねえちゃん、見せてあげて!」

 

「ええいままよ!」

 

次の瞬間、スカートが展開され巨大なカギ爪を持った翼へと変わる。

ブリムのリボンはせり上がることで二本の角へと変化し、ロンググローブも凶暴性を秘めたガントレットへと変わった。

スカートで隠されていた足はこれまた戦闘的なグリーヴが履かされており、スカートを失ったことで上品なロングドレスは挑発的なミニドレスへと変化した。

重さを感じさせなかった日傘は一転して重量級のハンマーへと変形しており、腰にはノコギリのような刃をした二本の短剣も下げられている。

よく見ればお尻からは鞭のようにしなる尻尾が生えており、その全体像は人型になった漆黒の竜そのもの。

攻撃的でありながら妖艶さも兼ね備える、至高の美がそこにはあった。

 

「これこそ私の自信作、地を暗黒に染めし黒蝕の竜姫!提督の演じたブラック・マガラがら着想を得て作った装備なんだよ!」

 

「今度はどう、どうなのよ?」

 

変化した山城の姿を見て固まる提督、それを見た山城は不安げに尋ねる。

何か不備があったんじゃないか、実は気に入らなかったんじゃないか?

山城の心臓は爆発寸前である。

 

「ケッコンして下さい……。」

 

「え?」

 

「間違えた!いきなり何を言い出すんだ僕は!?」

 

「いやでも今ケッコンって……。」

 

「誤解です、誤解なんです!いきなりそんなこと言い出すとか人としてありえないんです、最低なんです!分かったら聞かなかったことにして下さい、山城さん!」

 

自分でも思ってもみなかった失言に焦る提督だが、山城はその頬を両手で掴むとドクロマスクを脱がして強引に視線を合わせる。

 

「さん付けは無し、いい加減山城って呼んで。それと今後敬語も無し。分かった?」

 

「ひゃい……。」

 

大胆な行動に出た山城だが実は本人もいっぱいいっぱいである、しかしこれは千載一遇のチャンス。

このチャンスを逃せは次なんて当分ないことを理解した山城は畳みかける決心をする。

 

「それにしてもケッコンね。あなたの口からそんな言葉が出るなんて思わなかったけど、私からの返事はこうよ。」

 

掴んだままの提督の顔、そこに山城の顔が近付いていく。

そして二人の唇が触れようとした……その瞬間。

 

 

 

 

 

ドガーン!!!

 

 

 

 

 

「ぶぎゃあーっ!?」

 

「山城―――ッ!?」

 

先程イサナが金剛達を押し込んだ部屋。

そこのドアが蝶番ごと吹き飛び、山城に直撃して跳ね飛ばす。

 

「今ケッコンって聞こえたヨー!私を差し置いてなぁにやってるネー!!」

 

「ここでの勝手は!榛名が!許しません!」

 

「団長の信頼も厚い筆頭狩娘とはいえここまでのことをするとは、これは少し厳しい躾けが必要みたいですね。」

 

そして中から鬼を背負った金剛と榛名と香取が現れた。

ちなみに比叡は部屋から飛び出す際に金剛達に踏み付けられたのか床で気絶しており、霧島は未だに部屋の隅でブツブツと言っている。

 

「何が勝手よ!これは私が掴み取った成果なの!こんなところで邪魔されてたまるもんですか!」

 

だが最強クラスの狩娘は伊達ではない、何事も無かったように山城は飛び起きると金剛達に食って掛かる。

 

「よぅし、こうなったら対人戦で勝負よ!勝った者が提督を自由にする、いいわね!」

 

「望むところデス!ガンランスは私の得意武器、負けるはずがないネ!」

 

「榛名だってカリスマ美容師のお陰で生まれ変わったんです!今の榛名は一味違います!」

 

「場所はいつもの鎮守府内港ね!この香取が教育してあげますわ!」

 

怒り心頭の4人は武器を担いで港へと飛び出していく。

後に残されたのは呆然としたままの提督と状況を見守っていたイサナの二人だけであった。

 

「モテるっていいことばかりじゃないんだねー。私はまだ恋愛はいいかな?」

 

「うん、そうだね……。」

 

「心配しなくても大丈夫。あの黒蝕の竜姫は見た目だけじゃなく実戦でも使える性能だから!」

 

「いや、そういう心配をしてるんじゃないんだが……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、休みをもらったはずなのに何故かボロボロになった山城がドンドルマ鎮守府に帰還した。

ちなみに格好はいつもの姿のままである。

流石に黒蝕の竜姫の姿で直接ドンドルマ鎮守府に帰るのははばかられたらしい。

とはいえ置いてきたわけではなく、お土産としてイサナからしっかりとプレゼントされていた。

 

「お帰り、山城。」

 

「し、不知火……。」

 

山城を出迎えたのは筆頭リーダーの不知火。

山城としては色々と文句を言いたい相手なのだが、不知火はボロボロになった山城の姿を見て察する。

 

「どうやら昨夜はお楽しみだったようね。」

 

「全然楽しくないわよ!!」

 

 

 

 

 

山城とバルバレ提督はいつ結ばれるか?

それは筆頭狩娘の目を持ってしても分からないのであった。

 

 






ゴジラ-1.0見ました。(公開初日)

あれだね、世界観に沿った納得のいく方法でゴジラを倒すのって大変だね。

エメゴジみたいに通常兵器でボカーンと倒したらそんなのでゴジラが死ぬわけねーだろってなる、怪獣王としてのブランドがそう簡単にやられることを許さないわけだ。
でもスーパーXとかメカゴジラみたいなゴジラを倒せそうな超兵器は戦後直後の日本じゃ作れない。
そもそもそんな超兵器を作れるような技術力があるなら日本は戦争で負けない気がするから世界観が前提から崩壊する。
そしてモスラや千年竜王やキングコングのようにゴジラと戦ってくれる怪獣も存在しない。

そんな中で作中で用意可能でなおかつゴジラを倒せても文句を言われないような方法を考える制作側は本当に凄いと思いました。(小並感)



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