ズイカクチャンカワイイヤッター!
可愛くない天龍はポイーで
ごめん嘘、天龍かわいいよ天龍
「今回の目的は空母棲鬼の討伐よ。空母棲鬼と戦うのは初めてでしょう?初見の相手だけど戦えるかしら?」
「平気よ、初見だから戦えないなんて言わないわ。」
何よ、年上だからって子ども扱いしてぇ!!
空母棲鬼だか正規空母だか何だか知らないけど、さっさと片付けて帰るんだから!
「相手は空母、しかしここはカリュード諸島です。本土の空母と同じように航空機を飛ばしてくるとは限りません。相手がどんな攻撃をしてくるか、まるで想像出来ないのがここの海域よ。決して油断をしないように。」
「それも大丈夫、油断なんてしないわ。」
そんなことくらい分かってるわよ!私だって同じ空母の狩娘だけど、今まで1回も艦載機なんて飛ばしたことはないもの。言われるまでもないわ!
「ならいいわ。それで空母棲鬼の居場所は分かるかしら?」
「千里眼の薬を持ってきたわ、抜かりなんてないわよ。」
あ~もう、一々うっさい!いい加減にしてよ~!!
あんたは私の母親か!?母親ポジションなら鳳翔さんで間に合ってるっての!
心配性の翔鶴姉ぇだってここまで口出ししないわよ!
イライラを表に出さないように我慢しながら、千里眼の薬を飲んで空母棲鬼の居場所を探る。
ここから少し離れているけど、走ればエリアチェンジされる前に間に合いそうね。
待ってなさい、空母棲鬼!加賀さんに私の実力を見せつけるための踏み台になってもらうんだからっ!
「空母棲鬼はこのエリアの先にいるようね、準備はいいかしら?」
「大丈夫、今日のために準備してきたものがあるのよ!」
そう言いながら私は被せていた布を取り払い、新兵器を加賀さんに見せる。
「その武器は?」
流石の加賀さんもこの武器には驚いたようね、気分がいいわ。
「よくぞ聞いてくれました。これぞ私の新たな相棒、組み立て式ボウガンです!」
「……そう。」
そうって、たったそれだけ?
もっとこう他に言うことないの?わ~何それスゴーいとか、キャー初めて見た~、とか?
……いや加賀さんはそんなキャラじゃなかったわね。
キャーキャー言う加賀さんとか想像しただけで鳥肌立つわ。
「以前ロックラック鎮守府でやってる峯山砂嵐祭りを見に行った時に、そこで仲良くなった狩娘に作り方を教えてもらったのよ!」
この組み立て式ボウガンはロックラック鎮守府とモガ鎮守府以外ではほとんど使われていない珍しい形式のボウガンで、最初から規格に沿って作られている普通の一体型ボウガンとは違って、フレームにバレルにストックといったそれぞれのパーツを自分の好みで組み合わせて作り上げる持ち主の個性が強く表れる武器なのよ。
そしてガンナーが多いココット鎮守府でも、これを使っている狩娘はいないレアな武器でもあるわ。
残念だけど私の腕前じゃライトボウガンにヘビィボウガンに弓のどれも、鳳翔さんや加賀さんに赤城さんといった先輩達の技術には敵わない。
だから私は誰も使っていないこの武器で、鎮守府の天下を取ってみせるわ!
ロックラック鎮守府でお世話になった3人のお友達、いや同志と呼ぶべきね。
同志達のお陰で完成したこの新兵器、名前が無いと不便ね……そうね、RZTカスタムとでも呼ぼうかしら?
これがあればどんな深海棲艦なんて鎧袖一触よ。心配いらないわ……なーんてねっ。
BGM:太古の律動
「ナンドデモ……ナンドデモ……シズンデイケ……!」
私達は目的のエリアに到着し、そして空母棲鬼を発見した。
どことなく顔が加賀さんに似ているわね、あの深海棲艦……。
それとデータで見たものより遥かに艤装のサイズが大きい。
カリュード諸島に生息している深海棲艦の資料はまだ数が少なく、大部分が本土の物の流用だからこういうことはよくあるのよ。
とはいえ、資料ですら数メートルもあった艤装が10メートル近い大きさにまで巨大化しているとは思わなかったわ。
深海棲艦の人型の部分のサイズが私達とあまり変わらないせいで、余計に巨大に見える。とはいえ、今回の私にとってその巨体はむしろ好都合ね。
「それではあなたがどれだけ戦えるか見せてもらうわ。その武器に自信があるのでしょう?」
そう言うと加賀さんは後ろに下がった。
いいわ、お望み通り見せてあげる。この新兵器の威力を!
「いくわよ、空母棲鬼!その(誰かさんに似た)キレイな顔をフッ飛ばしてやる!!」
早速特製ボウガンを構える。ヘビィボウガンに匹敵する大きさの武器だけど、見た目より重量は軽いので素早く構えることが出来た。
作った自分で言うのもなんだけど、予想通りの扱い易さでいい感じじゃない♪
このボウガンはミドルボウガンという、これまたロックラック鎮守府やモガ鎮守府でしか流通していないライトボウガンとヘビィボウガンの中間に位置するレアなタイプのボウガンよ。
ボウガンは重さによって種類が分けられていて、普通は小型で軽いものをライトボウガン、大型で重いものがヘビィボウガンとされているの。
だけど組み立て式のボウガンならライトとヘビィの中間の重量を選択することによって、ミドルボウガンに仕上げることが出来る。これなら武器を構えたままでも機動性を損なうことなく動くことが出来るわ。
そして採用したフレームは軽くて取り回しに優れる非中折れ式タイプ。
フレームの名前は『
抜銃が早いのもこのフレームのおかげ。中折れ式だと抜銃のたびにボウガンを組み立てる必要があるから動きが遅くなるもの。もちろん納銃も素早いわよ。戦いの中ではほんの数秒が命取りになることもあるからね。
このフレームの重量が軽いからこそストックとバレルの重量を含めても重量過多にならず、ミドルボウガンのままでいられるの。
一式で組み立てればライトボウガンになるこの玉子焼食邊竜弩、その軽さと扱い易さはパーツ別に分けられても優秀な性能よ。
ライトボウガン並みの機動性で立ち回りつつ、ヘビィボウガン並みの火力で敵を圧倒する。これがミドルボウガンの戦い方なんだからッ!
「LV1貫通弾発射っ!!撃って撃って撃ちまくれぇ!」
バギュバギュバギュバギュバギュ!!!!
あらかじめリロードして置いた貫通弾を連続して撃ち込んでいく。空母棲鬼の巨体に貫通弾は効果抜群のはずよ。
最初にああは言ったけど、流石に顔は狙わないわ。貫通弾の連続ヒットを狙うには小さい顔は不向きだもの。顔のサイズが5メートルくらいあったら狙ったかもね?
このミドルボウガンは全LVの貫通弾を5発以上装填以出来る上に、反動もやや小という貫通弾に特化した構築になっているのよ!
リロードの速度は普通だからLV2と3の貫通弾のリロードは最速にはならないけど、このくらいなら気にならないわ。
そしてこの反動を抑える役目を果たすストックの名前は『
大砲の名に違わずバレルもフレームも全て装甲大砲一式で組み合わせれば、大砲レベルの反動でも抑えられる強力なミドルボウガンになるそうよ。
「ナマイキナ……カワイクナイヤツ!!」
空母棲鬼が乗る艤装が口を開く。これはブレス攻撃かしら?まさか航空機が飛び出してくるなんててことはないわよね?
ゴバアッ!!
「きゃっ、危ない!?」
空母棲鬼が吐き出してきたのは激しい水流のブレス。納銃する暇もなく武器を構えたまま横に転がって避ける。
ビーム系の攻撃は貫通性能があって威力も高いから、あんなのが直撃したらタダじゃ済まないわ。
「マダダ……クラエ!!」
回避したばかりの私に目掛けて空母棲鬼の巨体が迫る。
突進攻撃?このタイミングじゃ更なる回避は出来ない。
「だけど、惜しかったわね!」
ガギンッ!!
ボウガンのバレルに装備されているシールドで突進を防ぐ。
くうっ、削りダメージとノックバックがキツい。
それでも直撃を貰うよりはマシ、ガンナーの低い防御力であんなのを喰らったら瀕死になっちゃう。
装備していて良かった、シールド付きのバレル。
一体型のヘビィボウガンと違って組み立て式のボウガンは、後付けでシールドを取り付けることは出来ない。
シールドが使いたければ、初めからシールドが付いているバレルを選ぶというやり方になっているの。
私は回避に自信が無いから、シールドは頼りになるわね。
このボウガンのバレル、『
これは3人の同志の最後の1人にしてリーダー格の狩娘が使っていたボウガンのバレルと同じものよ。それにシールド付きでありながら攻撃力も高めでブレも無い、極めて強力なバレルなの。
玉子焼食邊竜弩は取り回しに優れる反面、攻撃力が低いからね、高威力のRJガン72式でカバーよ。
ただし威力とシールドを両立している反面、重量も相応なものがあるから一式で運用すれば間違いなくヘビィボウガンになるわ。
高い攻撃力とシールドを併せ持つ重量級の『RJガン72式』のバレル。
小柄なボディで機動性に優れる軽量級の『玉子焼食邊竜弩』のフレーム。
反動を抑えつつ防御力も上がる中量級の『装甲大砲』のストック。
これら3つを組み合わせた特製ミドルボウガン、RZTカスタム。
これが3人の同志が使っていたボウガンのパーツを個別に合わせた私オリジナルのボウガン。
3人の同志のボウガンとそれを扱う私、合わせて4人の狩娘の魂がこのボウガンには込められているのよッ!!
『そんなにかしこまらなくていいんだよ?ほらお腹空いたでしょ、私の作った玉子焼き、食べるぅ?』
同志Z、美味しい玉子焼きご馳走様でした!
思えば初めて訪れたロックラックで迷子状態の私に真っ先に声を掛けてくれたのもあなただったわね。お陰で峯山砂嵐祭りを楽しむことが出来た、感謝してるわ!
『ここロックラック鎮守府は広いですからね、案内は私に任せて下さい!そうそう、焼き芋はいかがですか?食物繊維は身体にいいのよ?』
同志T、道案内してくれてありがとう。あなたのガイドはとっても分かり易かったわよ。
それと焼き芋も美味しかったわ。美味しい焼き芋に免じて、途中であなたがガスを漏らしたことは黙っといてあげる。
『なんやキミィ、ココット鎮守府から来たんか?ココット鎮守府って鳳翔さんのおるとこやろ?鳳翔さんには色々と世話になったことがあるさかいに、もしキミが困ったことがあったら相談にのるで?ドーンと胸を貸したるからな……って誰の胸が貸し出し中やねん!あははは……は……はぁ。ゴ、ゴホンッ!!そ、そんなことよりタコ焼きでも食うか?美味いで?』
同志R!あなたのアドバイスを参考にして、この武器に行きついたわ。今の私がいるのはあなたのお陰!本当にありがとう!
それとタコ焼きもありがとう!熱かったからハフハフしながら食べたけど、とっても美味しかったわ……ってあれっ?ひょっとして私食べてばっかり?
……ま、まぁ私も空母だもの。赤城さんほどじゃないけど結構食べるわよ?
「まだまだっ!撃て撃てーい!」
突進した空母棲鬼はそのまま後方まで通り抜け、離れたところでようやく止まった。
こういう時こそ飛距離が長くてクリティカル距離も遠いLV3の貫通弾の出番よ。
私お得意のアウトレンジで決めちゃうわ、背を向けて隙を晒している空母棲鬼に追撃するわよ。
どう、この活躍ぶり?流石の加賀さんも私のことを見直したかな?
「ここまでですね、あなたの実力は分かりました。もう結構です、下がりなさい。」
「ええっ!?」
唐突に加賀さんが終了宣言を出してきた。
何がいけないっていうのよ?これからがいいところだってのに……。
「そのボウガン、なるほど色々と考えて組み立てたようね。だけどまだまだ甘いわ。」
えっ?どこが???高い攻撃力に敵の攻撃を防ぐシールド、取り回しに優れる重量に貫通弾の運用に適した装填数と反動、そしてガンナーとしての戦いを助ける防御力上昇効果、どこがいけないっていうの!?
「あなたのボウガンは弾丸の飛距離が長過ぎます。それでは貫通弾の本来の威力は出ないわ。」
どういうこと?有効射程距離が長いから普通のボウガンより離れた位置からでも弾かれずに射撃が出来るのよ。これなら敵から反撃を受けにくいから立ち回りの際に有利じゃない。
「貫通弾は身体の大きい相手に撃ち込むことで、連続してダメージを与える弾丸よ。だけど飛距離が長いと連続してヒットする前に相手の身体を突き抜けてしまうわ。今のあなたの戦い方は貫通弾という名前の通常弾を撃っているだけよ。それなら最初から単発性能に優れる通常弾を使いなさい。」
うぐぐ……確かに言われてみれば確かにそうだった。
「それにそのボウガンにはもう1つ欠点があります。」
欠点?まだ何かあるっていうの?もうお説教は勘弁してほしいんだけど。
空母棲鬼はこちらとの間合いを測って移動を開始し始めた。
その隙に騒ぎを聞き付けたのか、深海棲艦の航空機が3機集まってきた。
「って航空機いるじゃないですか!?さっき空母でも航空機は出してこないって言ったのに!」
「別に空母棲鬼本体から航空機が出てきたわけではないし、航空機がいないとは一言も言ってないわ。」
いけしゃあしゃあと言い放つ加賀さん。
「それよりも、航空機は痺れ針や溶解液で大型の深海棲艦と戦うこちらの妨害をしてくる厄介な相手。あなたのそのボウガンであれを撃ち落としてみなさい。」
加賀さんったら、いくらなんでも私のことをバカにし過ぎじゃない?流石にそのくらい楽勝よ。
小さな航空機程度、このRZTカスタムで木っ端微塵にしてやるわ。貫通弾を使うまでもない、LV1通常弾で十分よ。
「……って、アレ?LV1通常弾が装填出来ない?」
「ようやく気が付いたようね。その組み合わせではLV1通常弾は撃てません。LV1通常弾は大型の深海棲艦との戦いでは、その威力の低さからなるべく使用を避ける弾丸です。しかし弾丸による持ち物の圧迫と弾数制限という枷を抱えたボウガンにとって、荷物制限にも弾数制限にも囚われないLV1通常弾はただ弱いだけの弾丸ではないわ。」
すっかり忘れてた。どんなボウガンでもLV1を装填出来るから、このRZTカスタムでも撃てるものだと思い込んでいたわ。
このボウガン自体、貫通弾に特化した半面、通常弾や散弾の装填数には難があるっていうのに……。
「そしてミドルボウガンは一般的でないが故に狩猟スタイルもギルドスタイルのみです。それに狩技も専用の物が開発されていないので使えるのも汎用狩技のみ。ライトボウガンのように全弾装填やラピッドヘブンが使えるわけではないし、ヘビィボウガンのように火薬装填もアクセルシャワーも使えない。何より武器内蔵弾に対応していないので、手持ちの弾丸に全てを託すことになります。それなのに通常弾LV1が撃てない。今のあなたの実力で本当にその銃を使いこなせるかしら?」
もうやめてぇ加賀さん、とっくに瑞鶴のライフはゼロなんだずい!
加賀さんをギャフンと言わせるはずが、逆に私がギャフンと言わされてるんだずい。
そんなに瑞鶴を虐めても何も出ないんだずい、もうぐうの音すら出ないんだずい~~~っ!!
「……加賀さん、ひょっとしてミドルボウガン使ったことあるの?何でそんなに詳しいの!?」
「いえ、ミドルボウガンも組み立て式ボウガンも使ったことはないわ。しかし1人前の狩娘を目指すのなら、自分が使わない武器についても詳しくなければいけません。自分の使わない武器を持った狩娘とチームを組んだ時に、その武器の戦い方を知らないから連携が取れないなんてことになったら困るのは自分よ。分かったら下がりなさい、空母棲鬼は私が倒します。今のあなたにはまだ荷が重いわ。」
そう言うと加賀さんは私を後ろに下がらせて前に歩き始めた。
ロックラック鎮守府で仲良くなった3人の狩娘の正体は、みんなのご想像にお任せするずい。
どういう経緯で仲良くなったのかもご想像にお任せずい。
みんな包容力溢れる素敵な狩娘ずい、ホントずい!