今回はオリジナル艦娘改めオリジナル狩娘が登場します。
そういうのが苦手な人は要注意。
待てよ?狩娘の時点でオリジナルみたいなもんだし問題無いな。(意味不明)
「今日は天龍ちゃんのために特別講師を呼んでおいたわよ~。」
龍田と二人でいつものように朝飯を食べていると、龍田が唐突にそんなことを言い出した。
ふーん、特別講師ねぇ。あっ、この納豆美味いな。糸を引くネバネバがいい感じだ。
何か知らねぇけど今朝、今日は狩りに行かないって龍田に言われたからタダ飯の方を食べてんだ。
この島独自の食材を使った有料メニューも美味いけど、この無料メニューも捨てたもんじゃない。
これは珍しくもなんともない本土で作られた市販品の納豆だけど、慣れた味がして食べやすい。
値段が高くて珍しいものが美味いんじゃなくて、美味いものが美味いんだな。
珍味とかは珍しいってだけで美味いワケじゃないし、癖も強くて好みが分かれるっていうしな。
何よりこのメニューはタダだ。タダっていうのは懐が寂しいオレにとっては何よりも代えがたいからな!
そういや長門は納豆の臭いが苦手で食べられないとか言ってたな。
ティッシュを平気で食べるヤツが何言ってんだって話だが……。
「もぅ、ちゃんと聞いてよねぇ。天龍ちゃんのためにわざわざお願いしてきたのよぉ。」
「特別講師って言われたって、一体何の講師だよ?それに今日は狩りに行かないって言ってたじゃん。」
狩娘になってまで何か勉強しなきゃなんねーのか?
オレは座学ってヤツが嫌いなんだよ、身体を動かしている方が性に合ってるぜ。
そもそもオレに何の相談も無しに勝手に決めるなよな~。
「狩りには行かないわよぉ。今日は天龍ちゃんに太刀の使い方を学んでもらおうと思っているの。太刀の扱いがとっても上手な狩娘が先生になってレッスンしてくれるわよぉ~。」
「マジで!?」
前回散々龍田に立ち回りについて怒られたから、そこは直したいと思ってたんだ。
それに艦娘のオレは眼帯と刀がトレードマークの天龍だってのに、狩娘になった途端に太刀が使えないとか言われるのは癪に障るしな。
オレのために太刀の上手い狩娘に交渉してきてくれるなんて、やっぱりお前は最高の妹だぜ!
「本当は私が太刀の使い方を教えてあげてもいいんだけどぉ、やっぱりプロに任せるのが一番いいものねぇ。ちなみに私の得意武器は操虫棍だけど、それでも今の天龍ちゃんよりは上手に太刀を使えるわよぉ。」
「う、うるせいやいっ!」
「うふふっ、その狩娘は鎮守府の中庭にいると思うから歯を磨いたら会いに行ってね。私は自分の狩りがあるから今日は天龍ちゃんに付き合えないの、ゴメンねぇ。」
まぁ龍田も自分の用事があるからいつまでもオレに掛かりっきりってワケにはいかねーよな。それにいつまでも妹におんぶに抱っこじゃ姉として情けねぇぜ。
「大丈夫だって。見てろよ、今日1日で見違えてみせるからな!」
その後龍田と別れたオレは、身支度を済ませると中庭に向かって歩き始めた。
それにしても太刀が得意な狩娘ねぇ、誰なんだろうな?
陸軍仕込みの剣術でも使っていそうなあきつ丸か?それともオレとキャラ被りしてる木曾とか?
まさか神通じゃないよな?身体を動かすのは好きだが、スパルタは勘弁してほしいぜ。
他にも那智とかも太刀が似合いそうだなぁ……。那智に太刀……プッククク……。
『全然面白くないわよ~。』
ハッ!?今龍田の声が聞こえたような?気のせいだよな?あいつは狩りに行ったはずだし……。
ようやく中庭に着いたオレは今回の目的である特別講師の狩娘を探していた、探していたんだが……?
その狩娘ってヤツはどこにいやがるんだ?どこを見てもそれらしいヤツはいねぇ。
待たせすぎて帰っちまったのか?
中庭にいるのは黒髪に青い羽織袴を着た見馴れないノッポのおっさんだけで、それらしい狩娘なんて影も形もねぇぞ?
しょうがねぇ、そこのノッポにこの辺で狩娘を見なかったか聞いてみるか。
BGM:船が来たゼヨ
「おーい、そこのアンタ。聞きたいことがあるんだが、ちょっといいか?」
「ん?ワシのことゼヨ?」
ここでようやく振り返ったノッポの顔を正面から見たんだが……うわぁ眉毛ふっといな。それにすんごい糸目、前見えてんのかな?それと後ろに流しただけの黒髪に広いオデコ、そしてアゴヒゲ。耳が尖って見えるのは気のせいに違いない。
老け顔の頼りない坂本龍馬って感じの男だ。マジで誰だよ?提督の友人か?
「オレは人を探しているんだが、アンタこの中庭で誰か見なかったか?」
「人探しゼヨ?悪いけどここではオヌシ以外誰も見ていないゼヨ。」
「おかしいな~、確かここで待っているって聞いたんだが?」
「それでその探し人とはどんな格好をしているゼヨ?」
「格好?そういやどんなヤツが来るのか全然聞いていなかったなぁ、参ったぜ。」
「待ち人がどんな人か分からないんじゃ、探しようがないゼヨ。」
確かにその通りで返す言葉もない。
あらかじめ龍田に聞いときゃよかったな、つーかなんで龍田は何でどんな狩娘が先生になるのか教えてくれなかったんだ?ウッカリか?それともワザとか?きっとワザとなんだろうなぁ……。
「うーん、一緒に探してやりたいのはやまやまゼヨ。だけどワシもここで人を待っているゼヨ。だから悪いけど付き合えないゼヨ、申し訳ないゼヨ。」
「いや、気にすんな。それにしてもアンタも人と会う用事があるのか、奇遇だな。」
「その通り、奇遇ゼヨ。何故ならワシもどんな人が来るのか全然知らないゼヨ。オヌシとおんなじゼヨ。」
ふーん、このノッポもそうなのか。偶然の一致にしちゃ出来過ぎていて気味が悪いな……。
「ワシはとある狩娘に『私のお姉ちゃんが新しくここの鎮守府に着任したんだけど、まだまだ太刀の使い方が下手っぴな初心者なのぉ。ここの中庭に行くように言ってあるから、会ったらあなたの得意な技術のことを教えてあげてほしいの。お願いねぇ。』と言われただけゼヨ。その狩娘はお得意様だし、ワシも世話になっているから、なるべく力になってやりたいゼヨ。」
へぇ~、どこかで聞いたことあるような喋り方。そして話の内容。
「太刀が下手なヤツを待っているのか?ますます奇遇だな。オレは逆に太刀の扱いが上手い狩娘を探してるんだよ。」
「太刀の扱いが上手い狩娘?それはひょっとしてワシのことゼヨ?」
「いやアンタじゃなくて、オレが探しているのは狩娘なんだが。そもそもあんた男だろ?」
「だからワシがその狩娘ゼヨ。ならオヌシが龍田殿が言っていた狩娘ゼヨ?」
「えっ、狩娘?それに龍田って……。じゃあオレが探している狩娘って、もしかしてこの糸目ノッポ……じゃなかった、この人?あんたマジで狩娘?人間じゃなかったのか!?」
「フッフッフッ、だゼヨ。ワシはこう見えてもれっきとした狩娘。その名も潮風丸ゼヨ、ヨロシクゼヨ~。潮風がワシを呼んでいるゼヨ!」
「潮風丸ゥ~?オレはそんな軍艦見たことも聞いたことねーぞ?っていうかお前女なのか!?どこからどう見ても男にしか見えねぇんだけど。」
「聞いたことが無いのは当然ゼヨ。なんたってワシは交易船、軍艦ではないゼヨ。それとワシは男で間違いないゼヨ。何ならここで脱ぐゼヨ?」
交易船であって軍艦じゃない?……つーか艦じゃないなら艦娘じゃねぇじゃん!
……あっ、そうか!狩娘は艦娘じゃねぇから艦じゃなくてもなれる……のか?
でもこの潮風丸だって建造、またはドロップして現れた狩娘なんだろ?
軍艦じゃないってのにどうやって船が狩娘化したんだ?
それと別に脱がなくていいです。憲兵呼ぶぞ?
そもそも男なら狩娘じゃなくて狩息……っていうか狩人じゃないの?
「聞いて驚くなゼヨ。なんとワシはカリュード諸島の先住民が使っていた船ゼヨ!そしてこの島にワシの船としての記憶が眠っていたからこそ、こうして狩娘として生まれ変わることが出来たゼヨ。カリュード諸島だからこそあり得た事例だそうゼヨ。ワシが男になったのもその辺が関係しているらしいゼヨ。それと男だとしてもワシはれっきとした狩娘ゼヨ。オスだろうがメスだろうがイヌはイヌ、ネコはネコ、狩娘は狩娘ゼヨ!」
うん?……最後の例えはよく意味が分からなかった。
イヌ?ネコ?もうちょっと分かりやすく言え。
とはいえ………………。
「カリュード諸島の先住民が使っていた船!?つーことはアンタ、未だに謎に包まれているカリュード諸島の過去を知っている生き証人なのか!?」
これってスゲェことだぞ!カリュード諸島の歴史は竜人妖精さんの話や遺跡や壁画といった過去の遺物からしか推測することしか出来ねぇんだろ?
だけど実際にかつてのカリュード諸島で使われていて当時の実情を知る船が、現在において話すことが出来る狩娘として転生しているってワケだ。だとしたら歴史の空白が埋まるかもしれねぇんだぞ?
しかしカリュード諸島だからこそあり得たって………………カリュード諸島なら仕方ないなで済ましていいのかコレ?
「………期待しているところ悪いんだが、ワシはかなり昔に作られた船だから記憶の摩耗が激しくて、当時のことはほとんど覚えてないゼヨ。すまんゼヨ。」
えぇ~~~。ほとんど覚えていないって……オレのワクワクを返せ。
「ほとんどってことは、何か覚えていることはあるんだろ?」
「数少ないワシが覚えていることといえば、ワシに乗っていた船長さんのことゼヨ。船長さんはワシに乗って海を渡りビジネスネットワークを広げていったスゴい人ゼヨ!」
へぇ~。まぁ交易船だから当然だとはいえ、当時から交易の概念があったんだな。
バケモノを狩って生活していたって聞いていたから、てっきりもっと原始的な生活をしているもんだと思ってたぜ。
「船長さんは太刀の達人ゼヨ。そのネバネバとした独特の太刀筋は誰にも真似することが出来なくて、弟子は1匹のネコ以外に誰もいなかったゼヨ。今のワシの剣術は船長さん譲りのものゼヨ。だけどワシの弟子も船長さんと同じように連装砲ちゃん1体しかおらんゼヨ。やっぱり船長さんの見事な太刀筋を常人が真似るのは難しいゼヨ。だからオヌシがワシのネバネバ剣法を学ぶというのであれば、オヌシはワシの弟子第2号になるゼヨ!」
ネバネバ剣法???どんな剣法だよ!?
弟子がいないのって、剣術の真似が出来ないからじゃなくて、ただ単に習いたくなかっただけじゃ?
それに弟子はネコ1匹って……。それって本当に弟子なのか?船長が飼っていたペットの間違いじゃなくて?
それにその連装砲ちゃんっていうのも弟子じゃなくてアンタのオトモじゃないのか?
しまいにゃオレにもその変な剣法を学ばせようっていうのか!?
「そしてこの話し方も船長さんに教えてもらったものゼヨ。船長さんが長年研究していたカッコいい言葉遣いの集大成ゼヨ。どうゼヨ~、イケてるゼヨ~?」
カッコいい……か?
「今のワシは船長さんに憧れて交易を営んでいるゼヨ。前に所属していた鎮守府は一時的に辞めて、狩りも休業中ゼヨ。だけど後悔はないゼヨ。ワシの使命はビジネスで世界をつなぐことゼヨ!」
へぇ………………まぁ狩りをするだけが人生じゃないからな。
連装砲ちゃんの幸せのために狩りではなく斡旋を始めた天津風だっているし、ケッコンして家庭を持つことを夢見る狩娘だっているだろうさ。
オレの夢は世界水準超えの狩娘になることだが、なった後はどうすんだろうなぁ………。
「せっかくだからオヌシもワシの商品を見ていくゼヨ?メイアイヘルプユーゼヨ。」
「いやオレは太刀の使い方を………………。」
「これは『足柄印の燃料揚げセット』ゼヨ。生燃料は普通の燃料焼きセットだとこんがり焼くことしか出来ないゼヨ、だけどこれならふんわりサクサクきつね色に揚がるゼヨ~。」
コイツ全然人の話を聞かないな……。
それにしても燃料を揚げるって?
燃料を焼くってだけでも意味が分からんのに、燃料を油で揚げるとか頭おかしいのか?
「もちろんパン粉と油もセットだからお得ゼヨ。ウルトラ上手に揚がった燃料カツはサクッとジューシー、正に絶品ゼヨ~。」
ゴクッ……ってそうじゃない!何食い物に釣られそうになってんだ、しっかりしろオレ!
「こっちは操虫棍の教本『操瑞雲棍の全て~瑞雲だけで狩りは出来る~』ゼヨ。」
「いや、オレは操虫棍は使わな……瑞雲?」
「そうゼヨ。この本の執筆者は自分の猟虫に瑞雲という名前を付けて可愛がっているらしいゼヨ。そして棍を全く使わずに、虫だけを飛ばして狩りをしているとの噂ゼヨ。」
それって操虫棍の扱い方としてどうなんだ?
オレは操虫棍の扱い方についてそんなに詳しくないけど、龍田は棍を振り回してイ級を斬り刻んでいたぞ?
「本の作者曰く『これからは瑞雲の時代だ。瑞雲は凄いぞ、切断型なら尻尾の切断が出来るし、打撃型ならスタンが狙える。必殺の溜め撃ちだって出来るし、緑のエキスで体力の回復すら可能だ。自分の狙いが良ければ印弾も必要ない。それに武器の強化なんてしないで済むから素材もお金も安く上がる。業物?匠?わざわざそんな重いスキルを発動させるなんて、暇人もいるものだな。砥石も回復薬もオトモ連装砲も、何もかも私には不要だよ。棍は瑞雲に指示を出すのに使うだけで、これで直接相手を斬り付けて戦うというのはナンセンスだ。単なる棍の時代は終わったな。』とのことゼヨ。ワシは操虫棍は扱ったことがないからとっても勉強になるゼヨ。」
いや、それ絶対騙されてるだろ……。
瑞雲……じゃなくてそいつの猟虫がどんだけ強いのかは知らないけど、棍を使わない方がよっぽどナンセンスだって!
「これなんかどうゼヨ?ミツネ石鹸ゼヨ、いい匂いがするし泡立ちも最高ゼヨ。」
「ミツネ石鹸?ミツネって?」
「ミツネはミツキツネ草のことゼヨ。ミツキツネ草とはキツネの頭によく似た形をしたピンク色の花を咲かせる草ゼヨ!この花の匂いは最高で香水にも使われるゼヨ。そしてこの花から採れるエキスを水に混ぜると泡がブクブクとたくさん出てきて何でもピカピカになるゼヨ!」
そりゃすげぇ!こういうまともな商品なら買ってもいいかな?
「とある鎮守府の狩娘が手が滑らせて浴槽にこの石鹸を落としたところ、なんと風呂場どころか鎮守府の敷地全てが泡で覆われた程の泡立ちの良さゼヨ。お陰でそこの鎮守府は一週間以上も業務を停止したゼヨ。でもその代わりに部屋も廊下も屋根も全てがピカピカでいい匂いになったゼヨ。どうゼヨ?この石鹸欲しくなったゼヨ?」
「今の話で一気に欲しくなくなったわ。」
……っていうかそれ欠陥商品じゃ?よく製造停止にならないな。
「そしてこれは取って置き、『フルフルの実』ゼヨ!」
なんかまた意味不明なものが出てきたな。
「この木の実は凄いゼヨ!食べるとなんと、フルフルのようになってしまうゼヨ~。」
「えっと、そのだな……。」
「なんゼヨ?」
「フルフルって一体何だ?」
「それはワシも知らんゼヨ。」
知らねーのかよ!?食ったらフルフルみたいになるんじゃなかったのかよ!?
「実はワシも怖くて食べたことがないゼヨ。それに食べている人を見たこともないゼヨ。何たってこれは今まで1回も売れたことがない凄い商品だからゼヨ。だからこそ取って置いたつもりもないのに、いつの間にか取って置きになっていたゼヨ。サービスでタダにしといてやるからオヌシ食べてみるゼヨ?」
「絶対に嫌だ!!」
「残念ゼヨ。」
在庫処分も兼ねて毒見させようとすんな!!お前仮にも商売人だろ!?
こんな滅茶苦茶な奴がオレの剣の師匠になんのか、嫌な予感しかしないんだけど……。
果たしてこのまま潮風丸に剣術を習って大丈夫なのか、不安になる天龍なのであった。
潮風丸「ワシのビジュアルは交易船の船長そのままだと思ってくれて構わないゼヨ。潮風がワシを呼んでいるゼヨ!」
操瑞雲棍の使い手……一体何向なんだ!?