天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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トイレでの災難は天龍ちゃんの役だ!




長門さんと下着泥棒3

 

 

 

 

 

そう、それはほんの数日前のことよぉ。

その日はもう夜になっていたし、私もそろそろ休もうと思って自室でくつろいでいたの。

するとトイレに行っていたハズの天龍ちゃんが血相を変えて飛び込んできたの。

 

「た、龍田!龍田ァ!!」

 

「あらぁ、お帰り天龍ちゃん。随分と早かったわねぇ、もしかして間に合わなかったのかしらぁ?」

 

「別に漏らしてなんかいねぇよ……ってそうじゃない、緊急事態なんだ!!」

 

「はいはい、どうしたの?」

 

ふふっ、慌てちゃって可愛いわねぇ。

ちなみに今の天龍ちゃんの格好はいつもの変態コーデじゃなくてパジャマ用の黒ジャージよ。

眼帯は付けたままだけどねぇ。寝辛くはないのかしら?私だって寝るときは頭の輪を外すのに。

えっ、私の寝間着?フフッ、それは秘密よぉ♪

 

「こ、ここの鎮守府には幽霊が出るのか!?」

 

「……はい?」

 

流石の私も急にこんなことを言われたら困惑するしかないわぁ。

 

「幽霊ねぇ。フフッ、天龍ちゃんったら面白いこと言うのねぇ。」

 

「嘘じゃねぇって!本当に見たんだよ、幽霊!」

 

「はいはい、それでその幽霊はどこで見たのかしらぁ?」

 

「そことあっちだ!」

 

「うーん……そこやあっちって言われてもねぇ。そうだ、それじゃあ私をそこまで連れて行ってくれるかしら?」

 

「え゙っ!?」

 

露骨に嫌そうな顔をする天龍ちゃん。

 

「いや、また幽霊が出るかもしれないじゃん?危ないことはやめよーぜ?」

 

「でも正体を確かめといた方がいいんじゃない?ほら、幽霊の正体見たり枯れ尾花って言うでしょう?それにトイレにも行けてないんじゃないかしら?」

 

「ゔっ、それは……。」

 

「大丈夫、一緒に行ってあげるから安心してねぇ。」

 

それにしてもお化けが怖くてトイレに行けないなんて、天龍ちゃんったら本当に可愛いわねぇ♪

深海棲艦より幽霊の方が怖いのかしら?

 

 

 

 

 

別に私はトイレ行く必要は無いんだけど、天龍ちゃんの為にも一緒にトイレに向かう。

天龍ちゃんは私の背中に隠れるようにして着いて来ている。

もし本当に幽霊がいるのなら、背中に隠れたところでどうしようもないと思うのだけどねぇ。

 

「そこだ、そこの曲がり角だ!まずそこで出たんだよ!!」

 

そこぉ?当たり前だけどここは何の変哲もない普通の廊下よ、本当にここに幽霊が出たのかしら?

 

「オレがトイレに行こうと思ってここの廊下を通っていると、そこの曲がり角を人影が通っていったんだよ。最初は誰かがいるんだと思ったんだ、それでせっかくなら一緒に行こうと思って俺もここを曲がったんだ。ところが曲がってみるともう誰もいねぇんだ、消えてたんだよ!」

 

私も曲がり角を通ってみる。当然だけど幽霊がいた痕跡なんて何も無いわねぇ。

そもそも曰くも何もない普通の廊下なんだから、無い方が普通なんだけどね。

 

「本当にいたのかしらぁ?何もいないわよぉ?そもそも見間違いじゃなくて?」

 

「ホントだって!ほら、周りにも隠れるところなんて無いじゃないか!!幽霊なら実体が無いから消えたり壁を抜けたり出来るだろ!?」

 

言われてみれば、確かにここには扉も窓も無いものねぇ。

とはいえ通気口なら天井にあるわねえ。

まぁスパイ映画じゃないんだし、そんなところを人が通ったとは思えないけど。

そもそも幽霊が消えたり壁をすり抜けることが出来るなんて、誰が最初に言い出したのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も幽霊や怪異と遭遇することなんて一度もなく、普通にトイレにまで辿り着く。

 

「ほら、何も出なかったじゃない。やっぱり幽霊なんていないのよぉ。分かったら早く済ましてらっしゃい。」

 

「………………。」

 

「天龍ちゃん?」

 

「次に幽霊が出たのがここなんだよぉ……。」

 

ここぉ?トイレに幽霊だなんて怪談話としてはありきたりねぇ。

 

「オレも最初の廊下で見たときは見間違いだと思ったよ、あれはオレの勘違いだったんだってな?だけどここで再び幽霊が現れたんだ、トイレの中に入っていく人影を見たんだよ!」

 

トイレに住み着いた幽霊ならともかく、わざわざトイレに立ち寄る幽霊なんて変わった幽霊もいるものねぇ。

幽霊も用を足すのかしら?というかやっぱりそれ幽霊じゃないでしょ?

 

「それでな、まだこの時はそいつが幽霊だなんて思わなかったんだ。だからオレも続けてトイレに入ったんだが、やっぱり誰もいねぇんだよ。トイレのどこを探しても誰もいない、個室は全部開いていたんだ!!」

 

「ふぅーん。でもそこの窓から出て行ったんじゃないかしらぁ?」

 

「それも考えたさ、だけどここのトイレの窓には外から格子が嵌めてあるだろ?」

 

言われてみればその通りねぇ。

ここには女子トイレということで防犯のために窓に格子が付いているのよ、私としては別にそんなもの無くても問題無いと思うんだけどねぇ。

格子は腕ぐらいなら抜けられそうな隙間があるけど、流石に頭や身体を通すのは無理ねぇ。

 

「もしそこから逃げようとしても格子に顔が挟まっちまうよ!だけど幽霊なら窓や格子どころか壁すら無視して出入り出来るだろ?だとしたらやっぱりそいつは幽霊じゃねーか。それで気味が悪くなってきたオレは急いで部屋に戻ってきたんだよ!」

 

「そういうことだったのねぇ。とはいえ結局幽霊なんて見当たらなかったわよぉ?きっと幽霊の国に帰っていったのよ。何なら見張っといてあげるわよぉ?」

 

「幽霊の国ってなんだよ!?あの世か?あの世のことなのか!?」

 

散々騒いだ天龍ちゃんだけど、結局尿意には勝てなかったのか私がトイレの入り口で見張ることを条件にトイレを使うことにしたわ。

私としては天龍ちゃんが使っている個室の前で待ってあげても良かったんだけど、それは流石に恥ずかしいから嫌なんだって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレの中で再度幽霊が出現するなんてこともなく、天龍ちゃんは怖がりながらも無事にトイレを済ませて出てきた。

 

「ほら、何もなかったでしょ?それじゃあ戻りましょ。」

 

「そ、そうだな!幽霊なんていなかったんだ!フンフフ~ン♪」

 

鼻歌を歌いながら意気揚々と歩きだす天龍ちゃん。

どう見ても空元気だけど、それに対してツッコむのは流石に野暮ね。

そんなワケで部屋に帰るために来た道を戻り始めたの。

 

「そう言えば予備のトイレットペーパーがやけに減っていたわねぇ。清掃の連装砲ちゃんが補充しなかったのかしら?」

 

今思えばこれも犯人が盗っていったのかもしれないけど、この時は泥棒騒ぎなんて知らなかったから、そんなこと考えもしなかったわぁ。

 

そして先程の通路の曲がり角まで戻ってきた時、少し面白いことが起こったの。

 

 

 

 

 

ガサッ……。

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「あら?」

 

「なぁ、今何か物音がしなかったか?」

 

「えぇ、したわねぇ。上の方から。」

 

ガササッ……。

 

「ひいっ、やっぱりだ!どっかに何かいるぞ!?」

 

先程の幽霊騒動で精神が参っているのか、単なる物音程度で怖がる天龍ちゃん。

この音は多分通気口からね。

 

「や、やっぱり幽霊じゃ?」

 

さっき自分で幽霊には実体が無いって言ってたじゃない。

実体の無い幽霊がどうやって物音を立てるっていうのかしら?霊的パワー?

 

『オオオォォォ……。』

 

「こっ、この声は!?まさか幽霊の声?」

 

本当にそうかしら?そもそもこの声ってどこかで聞いたことがあるような?

 

『キイイィィィ……。』

 

「また聞こえてきたッ!?この声は間違いない、これは現世を恨む幽霊の声だ!怨嗟の慟哭だ!!」

 

怨嗟の慟哭って……天龍ちゃんったら急に何を言い出すのかしら?

きっと通気口の中にジョニーとスミスがいるからだと思うんだけどなぁ……。

 

 

 

 

 

タタタタタッ……。

 

 

 

 

 

「ひっ、今度は何だ!?」

 

続いて聞こえてきたのは何者かの足音。

その音はどんどんこちらへと近付いてきているみたい。

そして……。

 

「やせ~~~ん!!」

 

「うわあああっっ!!!???」

 

いきなり暗がりから飛び出してきた何者かに驚いた天龍ちゃんは、そのまま脇目も降らずに逃げ出して行っちゃった。

私には着いて来てって言ったくせに、自分は置いて行っちゃうなんて酷いわねぇ。

 

「ひゃぁっ!?いきなり大声出さないでよ。ビックリしたなぁ、もう。」

 

飛び出してきたのは川内ちゃん。

 

「こんばんは、川内ちゃん。」

 

「あれ?誰かと思ったら龍田じゃん。するとひょっとして今大声出しながら走り去っていったのが天龍って娘?」

 

「そうよぉ、そういえばまだ会ったこと無かったんだっけ?」

 

「そうだねー、まだ会ったことは無いねー。そうだ!親睦を深めるついでに一緒に夜戦に行こうって誘ってみてよ?」

 

「それくらい自分で言ったらいいじゃない?」

 

「そんなこと言われたってさ、日が昇ってくると眠くなっちゃうし。どうしても時間が合わないんだよねー。」

 

「まぁ気が向いたら誘ってみてあげるわ。それじゃあ私はもう寝るからねぇ、バイバイ。」

 

「はいよ~、それじゃーねー!よーし、夜戦だ夜戦だぁ~~~!!」

 

全く、夜だっていうのに賑やかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………その後、部屋に戻ってみると布団に包まってガタガタと震えている天龍ちゃんがいたからその日は一緒に寝てあげたのぉ♪」

 

「姉さん、また他の人に迷惑を掛けて……。」

 

「いやぁ、だってさぁ……そんなに驚かれるなんて思わなかったし?」

 

「夜戦に行くのはともかく、夜中に廊下を騒ぎながら走り回るのはやめて下さい。」

 

「だって夜なんだよ、テンション上がるでしょ?それに時間は有限なんだよ、早く行かないと朝になっちゃうじゃん。」

 

何とも言えない空気が執務室を包む。

確かにアレは私もうるさいと思っていた。

 

「姉さん、とりあえずその話はまた今度にしましょう。今は窃盗事件の方が優先です。それで龍田さんは天龍さんが見たという、その幽霊が犯人だというのですか?」

 

「んんー、全然。」

 

あっさりと手の平を返す龍田に周囲が唖然となる。

 

「だって幽霊が物を盗むなんておかしくないかしらぁ?呪うとか憑り付くとかならまだ理解出来るけど、幽霊が泥棒なんてねぇ。もしそうなら盗んだ物はあの世に持って行くのかしら?それに私自身も幽霊なんて信じてないからねぇ。」

 

だったら何故そんな話をしたんだ?

 

「とはいえ天龍ちゃんが人影を見たってことは、そこに誰かがいたってことじゃないかしらぁ?もちろん幽霊じゃなくて、実体のある誰かがねぇ。その人影が犯人かどうかは分からないけど、天龍ちゃんの話が正しければ正体不明で神出鬼没の何物かが鎮守府の中をうろついているってことよぉ?」

 

ふむ、なるほどな。

隠れたり通ることが出来ない場所で身を隠すことが出来るのなら、盗みをした後に見つからないといった理由にも頷ける。

とはいえ本当にそんな人物が存在しているのだろうか?

しかし雷と電のパンツを始めとして、鎮守府中から物品が無くなっているというのもまた事実。

私を差し置いて二人のパンツを手に入れた……じゃなかった、パンツを盗んで二人を悲しませた犯人を許すつもりはない!

 

 

 

 

 

犯人への義憤に燃える私は、ある決意をするのであった。

 

 

 

 

 






科学的には死後の世界とか幽霊だとかは存在しないらしいっすよ。
夢が壊れるなぁ。

じゃあ実際に起きている心霊現象は何なのかって疑問が残るけど、あれも科学的に証明が出来るものなんだろうか?


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