天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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大晦日だというのに私はなんちゅうもんを投稿しているのだろう?





長門さんと真犯人2

 

 

 

 

 

やぁ、良い子のみんな!私だ、長門だ。

今の時間帯は深夜、良い子も悪い子も皆寝る時間だ。

だが今の私は寝るわけにはいかない、犯人を確保しなければならないからな。

 

 

 

 

 

深夜の鎮守府は通路に常夜灯が付いているだけで、非常に薄暗い。

私も本当なら暖かい布団に包まってぐっすりと眠っておきたいところだが、全員が寝ているからこそ犯人が動き出す可能性がある。

そこで犯人の痕跡を調査し、あわよくば捕まえてしまおうというのが私の魂胆だ。

とはいえ私がいるのがバレてしまっては、犯人が行動をしないかもしれない。

そこで私は考えた、犯人に気付かれることなく調査をする方法を!

 

何でもこの世の何処かには『伝説の傭兵』と呼ばれる潜入のスペシャリストがいるらしい。

その傭兵は段ボールを被って行動することにより、敵の目を誤魔化して発見されることなく任務を遂行したという。

私もそれに倣い段ボールを被って行動しよう………………と思ったのだが、残念ながらここの鎮守府には女性としては大柄な体格の私が入り込めるサイズの段ボールが無かったのだ。

それに無理に被っても頭の角が段ボールに刺さってしまう、よってその案は却下だ。

 

しかし私は閃いた、段ボールが無ければ他の物を被ればいいということに!

段ボールよりも大きく丈夫で、そして手に入れるのが簡単なもの。

そう、それは大タルだ!

大タルは私が立ったまま入っても多少の余裕があり、木製なので角が刺さることもない。

これに入って行動すれば私の姿が犯人に見られることはない!

ただしこのままだと前が見えないので目の位置に穴を開ける必要があるが、それも見つからないメリットに比べれば些細なことだ。

 

 

 

 

 

そしてもう一つ必要な物がある、それは食料だ。

長時間の調査ではお腹も空いてくる、しかし夜食のためだけに自室に戻るなんて論外だ。

聞いた話によると、刑事が張り込みをする際にはアンパンと牛乳を用意するらしい。

しかしタイミングが悪く、私の手元には牛乳もアンパンも無い。

そこで私は代わりのものを用意した。

まず用意したのは元気ドリンコ、これは飲料であると同時に眠気を覚ましてスタミナも回復させてくれる。

今は深夜だからな、いずれ眠気が襲ってくることだろう。

眠気に負けて捜査が出来なければ本末転倒だ、よって元気ドリンコは必須さ。

 

更にもう一つ、私が用意したのはドーナツだ。これは小腹が空いたときの食料だ。

何故ドーナツなのかというと、以前陸奥の紹介で知り合ったアイオワという狩娘にアメリカの警察はいつもドーナツを食べているということを教えてもらったからだ。

要するにゲン担ぎだな、警察御用達のドーナツを食べて犯人を捕まえるのだ!

 

私が用意したドーナツはウラカ・ゼ・リング、青い色が食欲をそそらない実にユニークな一品だ。

私としては腹持ちのいいドスドーナツが良かったのだが、これしか用意出来なかったんだ。

とはいえこのウラカ・ゼ・リングも捨てたものではない。

見た目はアレだが、ふんわりと甘いミルクの風味がとても美味しいドーナツだ。

 

ついでにアメリカではドーナツをコーヒーに浸して食べるということも教わった。

私もそれに倣ってこのウラカ・ゼ・リングを元気ドリンコにジャブジャブ浸してから食べてみようと思う。

 

 

 

 

 

しかしこれでもまだ準備は万全とは言えない。

もし本当に幽霊が現れた場合、今の私では太刀打ち出来ないからだ。

まさか殴って倒せるとは思えないし、取り押さえるなんてことも物理的に不可能だろう。

とはいえ幽霊なら清められることに弱いんじゃないだろうか?

そこで私が用意したのは空きビンで汲んできた海水だ。

海水には塩分が含まれている、これにより清めの効果があるんじゃないかと私は考えた。

何よりここは鎮守府、海が近いので海水は簡単に手に入るし元手もタダだ。使わない理由は無い!

ついでに自己流で念仏的なものも唱えて海水を聖水に変えておいた…………多分変わったと思う。

清めの塩と聖水の合わせ技!

これにより更なる清めの効果が期待出来る、もはや幽霊など恐れるに足らず!

 

これで準備は完了だ。犯人め、目にもの見せてやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が廊下の真ん中で大タルを被って待ち伏せを始めてから何時間経ったのだろうか?

体感的には午前3時か4時を過ぎたような気がする。

ね、眠い……それに退屈だ……。何も進展が無く、ただただ時間だけが過ぎていく。

刑事や探偵、そして潜入工作員はいつもこんな大変なことをしているんだろうか?

だとしたら想像以上に大変な職業だったのだな、実際に体験してみないと分からないこともあるものだ。

 

さぁて、こういう時こそ用意した元気ドリンコとドーナツの出番だ!

こいつを食べて眠気を吹き飛ばすとしよう。

 

ゴソゴソ……ゴソゴソ………………うーん、暗くて手元が良く見えん。

 

えーっと、多分この柔らかな手触りの物がドーナツだろう。

ウラカ・ゼ・リングは指に吸い付くようなしっとりとした柔らかな触り心地も特徴の一つだ。

この病みつきになる触り心地と甘く優しいミルクの香りが世の男性の心を掴んで離さないそうだ。

それにしても何故男性に人気なのだろうか?女には分からん感覚だ。

 

 

 

 

 

えっと、元気ドリンコはコレか?

触った時の形状がボトルだし、中で液体がチャプチャプとしている。

よし、これということにしておこう。

忙しい狩り場でも一気に飲める大口経ボトル、今回はこの大口径を利用してドーナツを浸してみようと思う。

 

キャップを開けて、半分にちぎったウラカ・ゼ・リングをドリンコに浸す。

暗くて見にくいが、ドーナツが湿ってきたような感覚があるから上手くいったようだ。

後はドーナツの形が崩れない程度にドリンクを吸わせて、それを食べる。

 

 

 

 

 

あぐあぐ……むぐむぐ……ゴクンッ!

 

 

 

 

 

「んっ???何か味が変だな…………あっ…………海水だこれ。」

 

 

 

 

 

「……………!!!あああぁぁぁ!!!しょっぱああぁぁぁい!!!そして苦くいぃぃぃ!!!エグいぃぃぃ!!!があああぁぁぁ!!!ぎゃあああぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

げ、元気ドリンコと海水を間違えたァァァ!?

同じ形のボトルに入れたのは失敗だった!

自室でこれを用意した時は部屋が明るかったから間違えるなんて考えもしなかったが廊下は暗く、タルの中は更に暗い!

これでは見て分からないのは当然だ、せめて触っただけで分かるようにボトルそのものに細工をするべきだった!

 

海水独特の塩辛さと苦さが混ざった味に、ドーナツの甘みが混ざった何とも形容しがたい味。

一言で言えば不味い!

不意打ち気味に浴びせられたあまりの不味さに思わず叫び声をあげてしまう。

最初からこんな味がすると分かっていればまだ耐えることも出来るが、これは流石に耐えられない。

 

「ゲホッ、ゴホッ………………ハァハァ。」

 

よしっ、落ち着いた。

少々みっともないところを見せてしまったかな?

だが安心してくれ、ここから犯人を確保して華麗に名誉挽回といこうじゃないか?

 

 

 

 

 

ペタペタペタペタ…………。

 

 

 

 

 

この音はっ!?何者かの足音!!

こっちへ向かって誰かが歩いてきている!?

ペタペタという奇妙な足音は生気の無い幽霊特有のものだろうか?

足音が聞こえるのは出入り口の方向ではなく、むしろ廊下の奥の方からだ。

つまり帰って来た川内の足音ではない。

こんな時間に廊下を歩く者なんて犯人以外に果たしているだろうか?

そうと決まれば早速捕まえよう!

 

 

 

 

 

廊下の曲がり角で足音の主を待ち伏せする。

この大タルは目の位置だけでなく、腕の位置にも穴を二つ開けてあるのだ。

この工夫により、タルを被ったままでも犯人を取り押さえることが出来るようになっている。

そしてこのタルは身を隠すだけではなく鎧の役割も果たしてくれる。

流石に深海棲艦レベルの攻撃は防げないが、そんじょそこらの不審者の攻撃なら難なく防いでくれるだろう。

まさに攻守一体の装備というワケだ!

 

ペタペタペタペタ……。

 

すぐそこまで来たッ!

確保するならこのタイミングしかない。よし、行くぞ!

 

「うおおぉぉぉ!!」

 

角を曲がって来た人陰に飛び掛かる。

 

 

 

 

 

シュッ、バギイッ!!

 

 

 

 

 

「げふっ!?」

 

一瞬で鳩尾をタルの鎧ごと撃ち抜かれ、そのまま吹き飛ばされて廊下の壁に叩き付けられる。

打撃と壁にぶつかった際の二つの衝撃により、砕けてバラバラになる大タル。

な、何が起こったんだ、確かに不意を突いたハズなのに???

 

鳩尾の痛みで蹲りながらも人影を見上げる。

私よりも小柄なその人影は、右手の手刀を突き出した状態で立っていた。

ぬ、貫手!?あの一瞬で貫手を繰り出して私を迎撃したというのか?

下手に使うと逆に指を痛める貫手を繰り出したにも係わらず、まるで痛がる様子を見せない。

そしてタルの鎧ごと私を打ち抜いて吹き飛ばす程の技量、犯人は一体どれほどの達人だというのか!?

 

 

 

 

 

「一体そこで何をやっているんですか、長門さん?」

 

蹲ったままの私に人影が声を掛けてきた………というかこの声どこかで?

 

人影が左手に持っている懐中電灯のライトを点ける。

うおっ、眩しっ!?

 

「もう一度聞きます。一体そこで何をやっているんですか、長門さん。」

 

ようやくライトに目が慣れてきた……って神通?

そこに立っていたのは着た神通だった。

意外と可愛らしいパジャマを着ているのだな。

ペタペタと音を立てていたのは、履いているスリッパによるものだったのか。

しかし見た目こそ可愛らしいものの、その目はまるで笑っていない。

 

「神通が犯人だったのか!?」

 

「いきなり何を言い出すのかと思えば…………とにかくそこに座って下さい!!」

 

「は、はいぃ!」

 

神通の剣幕に負け、鳩尾の痛みも忘れて慌ててその場に正座する。

 

「廊下からいきなり叫び声が聞こえてきたから何事かと思って見に来てみれば、こんな時間にこんな格好をして貴女は何をしているのです!?あまつさえ暗がりからいきなり飛び掛かってくるなんて言語道断!見知った顔でなかったら、そのまま四肢の骨を粉砕していたところですよ!?」

 

さらっととんでもないことを言い出す神通。

下手したら両腕両足を複雑骨折するハメになっていたのかもしれなかったのか、ひえ~っ!

 

「いや、これは……。」

 

「言い訳無用ッ!貴女が何をしようとしていたのかは知りませんが、ただでさえ騒動があってみんなが不安になっているときにこんなことをするなんて何を考えているんです!?鎮守府の一員としてもっと良識のある行動を心掛けて下さいっ!!」

 

ヒィ~~~、神通のマジ切れ説教モードだ!?

こうなった神通はそう簡単には止まらない。

眠い、口が苦い、鳩尾が痛い、正座も痛い、神通の説教が耳に痛い、何より神通から放たれるプレッシャーがとても怖い。

幾つにも重なった責苦が私を襲う!

 

 

 

 

 

そして私は朝日が昇ってくるまで、このまま神通に説教され続けたのであった。

 

 

 

 







それでは皆さま良いお年を~!



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