天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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令和になってからの初投稿です。

本当は先月に投下したかったんだけど、細かい所が気になって何度も手直ししていたらいつの間にか一ヶ月過ぎてました。

遅筆スギィ!!





曙ちゃんと風翔剣士3

 

 

 

 

 

出掛ける朧と潮を見送ったあたしと漣は、先ほど通った道を戻って漣の自室に戻ってきた。

……ったく、本当ならあたしだって今頃二人と同じように出掛けていたっていうのに。

 

「休日をボッチで過ごしてもいいことないって言ってたけど、休日なのに部屋にこもっている方がよっぽど不健全じゃない?」

 

「まぁまぁ、固いことは言いっこなしですぜお嬢ちゃん。」

 

漣は新たな座布団を取り出すとそれを最初に漣が座っていた座布団の横に置き、そしてそこをポンポンと叩いてあたしに座るように促してきた。

この部屋ってイスは無いの?せめて座椅子とか。仕方がないので座布団の上に割座で座る。

 

「それでどうしようっていうの?」

 

「フッフッフッ、今日はぼのたんを洗脳……じゃなくて一緒に観賞会をしようと思ってね?」

 

「ふーん、観賞会ね……ん?今、洗脳って言った?」

 

「言ってないよ。」

 

「いや、絶対言ったでしょ!」

 

「気のせいだって~。聞こえたとしてもそれは空耳でしょ、あんまり細かいことを気にしてると頭がバケツになるよ?」

 

「ちょっと、それどういう意味よ!?ハゲるよじゃなくて???」

 

漣は食い下がるあたしを無視してテレビにつながれた再生機器にBRDを入れると、自分の座布団に正座をする。

さっきもしてたけど、テレビを見るのにいちいち正座するなんて疲れない?

 

「ん~、何?漣の座り方が気になるの?」

 

あっ、見てたのバレた。

 

「この番組を見るときは絶対に正座って決めてるの。番組へのリスペクト、真摯な気持ちで向き合おうってね。」

 

番組関係者でもないのにそこまでするヤツなんていないわよ……。

 

 

 

 

 

「それでは……はーい、よーいスタート。」

 

 

 

 

 

BGM:魂を宿す唄

 

漣がリモコンの再生ボタンを押すと同時に流れ出す、厳かな雰囲気のオープニング。

そして現れる番組タイトル。

 

『風翔剣士 クロス・ダオラ』

 

「……これって、さっきあんたが見てた番組?」

 

「そうだよ。(肯定)」

 

「なんかその喋り方ムカつくからやめて。」

 

「フヒヒwwwサーセンwww」

 

音楽に合わせて進んでいくオープニング映像。

映像の中で鎧の戦士、クロス・ダオラによって行われる演武、そして殺陣。

 

「……この動き、只者じゃないわね。」

 

子供騙しの低予算番組だろうと高をくくっていたが、この身のこなしは明らかに素人じゃない。

撮影用のスーツなのか本物の鎧なのかは知らないが、スーツアクターは動きの障害になるであろう装備を身にまとったまま華麗な動きを見せている。

 

「おっ、ぼのたんも分かるぅ?」

 

漣のドヤ顔。

凄いのはスーツアクターであってあんたじゃないでしょ、何であんたが偉そうにしてんのよ?

 

「この番組の凄いところはアクションにCGやワイヤーをほとんど使っていない点なんですよ!主役のクロス・ダオラは勿論、敵役も雑魚戦闘員も全員素の身体能力だけでアクションをこなしてんの。だというのに迫力不足かと思えばそんなことは全然ない!寧ろそこに予算を使わなくて済むから、それ以外の部分に予算を割り当てることが出来るようになって映像が迫力満点になってるんだって!」

 

………………なんか漣が熱弁しているけど流石に付き合いきれないわ、要するに中の人たちは全員凄いってことでいいのよね。

 

「そんな凄い番組のわりに、朧と潮からは評判悪いのね。」

 

「うぐっ、痛いところを突きおって……。」

 

ガックリと項垂れる漣。

 

「あの二人は食わず嫌いしてるんですぅー!特撮番組に興味がないからって見もしないで否定するのはどうかと思いますぞ!二人が見てないだけで、これ本当は人気番組なんだからっ!」

 

「ふーん。」

 

そういえば武蔵と清霜もこの番組を見ているみたいだったわね。

人気番組っていうのも嘘じゃないのかも?

 

「だからこそぼのたんには期待しておりますぞ!」

 

「は?何の話???」

 

「つーまーりーぼのたんがこの番組を評価してくれて、更にファンになってくれれば朧と潮の視聴に対する抵抗感はグッと下がるってワケなんですよ!あの捻くれぼのたんすら楽しく見ているのなら、自分も見てみようって気になるでしょ?」

 

「あんたねぇ、朧と潮を引き込むためだけにあたしを利用しようっての?」

 

「いやいや、そんなことはございませんですよー。それはそれ、これはこれだから。ぼのたんには純粋に番組を好きになってもらいたいからねー。」

 

「全く、調子のいいこと言っちゃって……。」

 

「ほら、もうすぐオープニングが終わるから。画面見て画面見て!本編がはっじまっるよー♪」

 

漣にいいようにされてるのが少し気にいらないけど、そこまで言うのなら番組を見てやろうじゃない!その上で酷評してやるんだからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッ、こいつらは一体何なんだ!?」

 

金髪の青年を取り囲む、青と黒の鱗のスーツに赤いトサカを持つ恐竜のようなマスクを身に着けた十人前後の集団。体つきからして男性も女性もいるように見える。

彼らは牙を剥く大蛇を模した大剣や赤い鉤爪のような二本の小剣、恐竜の頭を模した巨大な笛や散弾銃のような見た目をしたボウガンといった様々な種類の武器でそれぞれ武装している。それらの武器の共通点は全てスーツと同じ青と黒の鱗を持つ皮で覆われているというところだろう。

クチバシのような部位から覗く彼らの顔は、黒く無個性な仮面に阻まれ表情を窺うことが出来ない。

 

町外れにある昼下がりの雑木林、何故青年はこのような場所で武装集団に囲まれているのか?

その理由は前日にまで遡る。

 

 

 

 

 

「失踪事件?」

 

「そう、失踪事件。コモンド、あなた知らなかったの?」

 

「悪いなルリ、ニュースはあまり見ないんだ。」

 

ここは田舎と呼ぶほど寂れているわけではないが、都会と呼ぶほど発展しているわけでもない小さな町、竜ヶ町(りゅうがちょう)

その町にある小洒落たカフェのテラス席に座り談笑する二人の若い男女、デート中なのだろうか?

精悍で尚且つ端正な顔つきをした金髪の青年の名はコモンド。

その対面に腰掛けているクセのない艶やかな青いロングヘアーをした、可愛らしい顔立ちをした美しい女性の名はルリ。彼女は良く言えばスレンダー、悪く言えば平坦な体つきをしている。

 

 

 

 

 

ピッ!

 

「あっ、ぼのたん!何で止めるのぉ!?」

 

しまった!見せられている映像が衝撃的で、ついリモコンの一時停止ボタンを押してしまった!

 

「……えーっと、そこに映っている青髪の女の人、どこかで見たことあるんだけど?」

 

「ぼのたんも分かっちゃう?その通り、この人ユクモ鎮守府の提督さんなのですよ!」

 

「ユ、ユクッ!?……ユクモってあのユクモよね?」

 

「ぼのたんの言うユクモがどのユクモなのかは知らないけど、この提督がいるのは温泉で有名なあのユクモ鎮守府だよ。」

 

「いやいや、現役の提督でしょ。何でテレビに映ってるの?」

 

「そりゃ特撮番組なんだから演者がいるのは当然でしょ。」

 

漣の『何言ってんだこいつ?』という目線に晒される。く、挫けないわよ、この程度じゃ。

 

「いや、あたしが言いたいのはそういうことじゃなくて、何で提督が役者やってんのかってことよ。」

 

「あー、そっち?まず前提としてカリュード諸島は基本的に提督と狩娘に、それを補佐する職業の人達しかいないから役者も芸人もいないの。もっともここまで一般人を連れてくるほどの余裕はないし、ここまで来たがる酔狂な人もいないんだけどね~。」

 

……まぁそりゃそうよね。

ここは大海原にある離島。道中までに普通の深海棲艦がうようよいるし、いざ圏内に入ったら入ったで今度はアタリハンテイ力の影響を受けた深海棲艦とやり合わなきゃいけない。

こんな遠くに戦力にもならない一般人を護衛するというのは流石にリスクに対してリターンが少な過ぎる。

 

「そんなワケでこの番組を作るにあたって、オーディションをしてやる気と実力のある人材を集めたんですよ!」

 

「じゃあ今テレビに映っているユクモ提督もオーディションを受けたってこと?」

 

「その通り!ほら、ここの隅に映っているカフェの店員さんよく見て。」

 

「えーっと、これって狩娘の最上?」

 

「イエーッス!彼女はミナガルデ鎮守府の最上さん。こんな風に見知った人が登場人物として出てくるから、そういった人を探しながら見るのも面白いかもねー?」

 

ミナガルデ鎮守府もメゼポルタ鎮守府に比べれば小さいけど、それでもかなり大きな鎮守府よ。

そんなところからもオーディションを受けにやってくるなんてどうなっているのかしら?

 

「この番組の登場人物はほとんどが狩娘や提督で、役者としては素人ばかり。にもかかわらず、演技力も悪くないのが凄いところ。そして俳優を雇わなかったのが功を奏したのか、そっちの面でも予算が浮いたらしいんですよ。お陰で番組のクオリティがまた上がるという好循環!」

 

「あんたさっきから予算とクオリティの話になるとテンション上がるわね……。」

 

番組関係者でもないのに予算の話で盛り上がるとかどうかしてるわ。

 

「それにしても鎮守府での仕事があるっていうのに狩娘どころか提督までオーディションを受けに行くなんて案外暇なのね。」

 

「なんだとぅ!?」

 

何となくつぶやいた一言だったのだが、それが癇に障ったのか漣が怒り始めた。

 

「漣だってスケジュールが空いていたらオーディション受けに行きたかったの!それなのになんてことを言うんだ、ぼのたん!漣だってテレビ出たかったのに、新しく始まる特撮番組に出られるってんでワクワクしてたのにィ!オーディションに落ちたならともかく、挑戦すら出来なかったんだぞぉ!この悔しさがぼのたんに分かるかッ!!うわぁぁぁぁん!!!」

 

怒ったかと思ったら悔しがったり、そうかと思えば泣き出したりと忙しいわね。

 

「ご、ごめん。謝るから、機嫌直して……ね?」

 

「まぁ、もう終わったことだし気にしてないんだけどね。」

 

先程まで騒いでいたのが嘘のようにケロっとする漣。謝って損した……。

 

「ところで確かユクモ提督ってルリって名前じゃないわよね?それにこんな落ち着いた雰囲気の女の人じゃなかったと思うんだけど?」

 

もっとこう、アホっぽい……じゃなくて天真爛漫な人だったわよね?

あまり親しくはないけど、少なくとも絶対にこんな人じゃなかったわ。

 

「そりゃそうでしょ、役名に決まってるじゃん。そして落ち着いて見えるのは演技。」

 

「まぁ言われてみれば当然よね……。」

 

「い~いぼのたん、普段の自分とは全然違うキャラクターを演じられるっていうのは大切なことなんだよ!」

 

普段と違う自分を演じるぅ?いや別にあたしは役者目指してないんだけど……。

 

「ほら、電話掛かってきたときとか、お客様が来たときに普段通りの喋り方じゃマズいっしょ?それに漣だって色んな喋り方するけど楽しいよ。ぼのたんもやってみない?うぃいいいいいいいいいっす!どうも、ボノボで~す!……ってね。」

 

「絶対に嫌!!」

 

客が来たときくらい普通に話すわよ!

それにボノボって類人猿じゃない!あたしは猿じゃないわ!

 

「それとカリュード諸島にこんな子洒落たカフェなんてあったっけ?」

 

よく見ればカフェだけでなく町の景色も見える。だけどカリュード諸島は鎮守府以外の建物はほとんどない。小洒落たカフェは勿論、町なんてあるはずがないのだ。

 

「あぁ、あれセットとCGだよ。」

 

「あれがセットとCGィ!?」

 

ウソでしょ、なんて作り込みよ……。

 

「ほら、さっきも言った予算の都合。予算が余ったお蔭でクオリティが凄いんですよ。」

 

力を掛ける部分が間違っているわ……。本土の町で撮影すればこんなセットいらないのに。

まぁいいわ。さて、いい加減続きを見るとしましょ。

 

ピッ!

 

 

 

 

 

「もう、あなたは相変わらずね。一人暮らしだからって新聞やテレビも家にないのはあなたくらいのものよ。今のご時世ニュースくらい携帯でだって調べられるんだから。本当に自分の興味のないものにはとことん無関心よねぇ。そんなのだから友達が少ないのよ。」

 

「余計なお世話だ。それで、その失踪事件がどうしたんだ?」

 

ルリは世間に無関心なコモンドに呆れた様子を見せるが、コモンドは話が気になったようで続きを促す。

 

「そうそうそれでね、以前から世界中で失踪事件は起きていたの。とはいえ場所も時間もバラバラだったから最初は同一事件だとは思われていなかったのよ。だけど事件は徐々に件数を増やしながらこの国を、そしてこの町を囲むように範囲を狭めてきたの。そしてここ最近はほとんどこの町、竜ヶ町で失踪件数が起きているのよ。」

 

「この町で?」

 

「そう。被害者には共通点がなくて、時間帯もバラバラ。ほとんどの被害者に失踪する動機が無かったから誘拐だと考えられてるんだけど、そもそも犯行の瞬間どころか不審な人物すら目撃されていない、そして現場にも証拠となるものがまるで残されていない。そして仮に誘拐だとしても攫った後の動向も不明で、身代金を要求するわけでもないし、臓器販売とかスパイに仕立て上げるといった目的で海外に連れ出しているのかと思えばそういった動きもない。本当に消え去ってしまったみたいね。」

 

「まるで神隠しみたいだな。」

 

「証拠が無さ過ぎて警察とかも手の出しようがないみたいね。不可能犯罪ってことで精霊や宇宙人の仕業じゃないかとも噂されているそうよ。」

 

「なるほど、言われてみれば。確かに最近は風の様子がおかしい日が多かった。今も風が乱れているんだ、もっと早く気付くべきだった。」

 

「またいつもの風の声が聴こえるっていう?幼馴染で昔から付き合いのある私は知ってるからいいけど、あまりその話はしない方がいいと思うわよ。遅れてきた中二病だと勘違いされるでしょ。」

 

「うるさいな。自分のことだ、そのぐらい分かってるさ。言うわけないだろう。」

 

コモンドは生まれつき風の声を聴くことが出来た。

風を感じることで周囲の状況や、人の善意や悪意といったものが朧気ながら分かるのだ。

何故風の声を聴くことが出来るのかは現在でも不明だが、当時のコモンドはそれを普通のことだと思っていた。

しかし周囲から気味悪がられるようになり、本当に親しい相手以外にその話はしなくなった経緯がある。

 

「しかしどうしてこの町なんだ?最初は事件は世界中で起きていたんだろう?スケールダウンにも程があるだろう。竜ヶ町はそこまで大した町じゃないぞ、言っちゃ悪いが特に面白みのないどこにでもある古臭い町だ。精々ウェポンズ伝説のゆかりの地ってだけだ。何故わざわざそんな町の住人を狙うんだ?なぜこの町に拘るんだ?竜ヶ町でないといけない理由があるのか?」

 

 

 

ウェポンズ伝説とは世界中で広く知られている、古の英雄の物語である。

この物語はおとぎ話とされているが、同時に人類の歴史の歩みを紐解くための研究対象ともなっている。

調査の結果、現在はコモンド達の住んでいる竜ヶ町にルーツがあるということが判明している。

 

 

 

「さぁ?パッとしない町だし、犯行が気付かれにくいとでも思ったんじゃないかしら?」

 

「今まで全く証拠を残さなかったのにか?」

 

「うーん、人攫いの考えていることなんて分からないわ。」

 

「そこは同感だ。」

 

誘拐の話はそこで打ち切り、その後は取り留めのない話が進んでいく。

やがてユリは腕時計を確認すると席を立った。

 

「話に夢中になり過ぎちゃった。私、そろそろ帰るわね。」

 

「そうか、ならオレも帰るとするよ。」

 

「もうっ、そこは送っていくと言うのが男の甲斐性ってものでしょ?」

 

「オレもお前もそういうキャラじゃないだろう?」

 

「ふふっ、まあね。だけどか弱い私は帰っている途中に誘拐組織にさらわれちゃったりして?」

 

「笑えないジョークを言うのはやめろよ。」

 

「ゴメンゴメン。それじゃあ明日もいつもの時間にここで会いましょうね。」

 

「ああ、またな。」

 

コモンドも席を立つと、二人はそれぞれの帰路に着いた。何てことはない日常の1ページ。

しかし翌日コモンドがルリと再会することはなかった。

 

 

 

 

 

翌日、コモンドは行方が分からなくなったルリを探していた。

 

「どういうことだ?連絡が取れないだけならまだしも、家に帰った様子もないなんて。」

 

約束の時間にカフェに向かうもルリはおらず、カフェの店員に聞いても姿を見てはいないという。

しばらく待ってみるが、それでも姿を現さないルリを疑問に思い連絡をしてみるが反応はなく、仕方なく自宅まで向かってみるも人の気配は無かった。

 

「幼馴染だからって平気で合鍵渡すなんてどうかしてるな。しかし部屋には帰宅した形跡がない。そして相変わらず風の様子もおかしい。まさか本当に誘拐されたんじゃないだろうな?」

 

ここで前日の誘拐の話を思い出し、ルリの自宅とカフェまでの道を往復してみるがやはり見つかることはなかった。

 

「この道を通ってないのか?くっ、昨日オレが送っていってやれば……。そういやあいつは景色のいい通り道があると言っていたがそっちを通ったのか?」

 

後悔するコモンドだったがルリが寄り道した可能性を考え、せめて手掛かりだけでも得るためにカフェとルリの自宅をただ往復するだけではなく、周辺の道も探すことにした。

 

 

 

 

 

「本当に景色がいいな、これは寄り道をしたくなる気持ちも分かる。」

 

美しい並木道、景色を楽しむのも程々にコモンドは周囲を見渡す。

 

「いい道だ。しかし、だからこそ他に誰もいないのが気になるな。こんなにいい道だというのに吹いている風からは全く心地良さが感じられない。何故誰もいないんだ?」

 

まだ時間は昼過ぎ、にも関わらず通行人の姿は見当たらない。

それに対してコモンドが疑問を持ったその時。

 

ガサッ……。

 

「!?」

 

不意に物音が聞こえた方へ顔を向けるコモンド。

彼が目にしたのは木陰から木陰へと身を潜めながら走り去る怪しげな人影だった。

 

「誰だ!?待てっ!」

 

人影を追い走るコモンド。

体力と運動神経には自信のあるコモンドだったが、それでも人影には中々追い付けない。

相手に追い付かないことに焦りを感じるコモンドだったが、やがて人影は雑木林まで到達するとそこで立ち止った。

 

「あんなところで立ち止まるなんて、誘われているのか?しかし飛竜の卵は飛竜の巣だ!」

 

 

 

※『飛竜の卵は飛竜の巣』とはカリュード諸島で使われていることわざの一つ。意味は虎穴に入らずんば虎子を得ずと同じ。

 

 

 

相手の露骨な狙いに気付くも、敢えてその誘いに乗ることにしたコモンドも雑木林へと足を踏み入れる。

 

「追い付いたぞ、お前は一体何者だ?」

 

追い付いたコモンドは背を向けて立っている人影に声を掛けつつ近付く。

 

「……ギギッ!」

 

「なっ!?」

 

コモンドの声に答えるように振り返る人影。

近付いたことで明らかになった全貌、それは青と黒の鱗を持ったトカゲ人間としか表しようのない姿をした怪人だった。

大口を開けた爬虫類そのものの頭部、その口腔にある人間の顔は漆黒の仮面に覆われており全く感情を読み取ることが出来ない。

 

「「「「「ギッギッギッ!」」」」」

 

「クッ、こいつらは一体何なんだ!?」

 

それと同時に周囲の木陰からも同様の姿をした怪人が十人近く姿を現しコモンドを取り囲んだ。

こうして物語は冒頭へと繋がる。

 

 

 

 

 

「「「「「ギィーーーッ!!」」」」」

 

それぞれの得物を振りかざしてコモンドに襲い掛かる怪人たち。

 

「こいつら問答無用か!?だけど動きが甘いッ!」

 

コモンドは峰に何本もの牙があしらわれた長大な骨刀を振り下ろして斬りかかってきた怪人の攻撃を躱し、まだ太刀を振り下ろした体勢のままの怪人の顔面にジャブを決める。

殴られた怪人が怯むのを確認するや否や続けてソバットをお見舞いし、怪人を吹き飛ばす。

 

「剣術には自信があるんだ。そっちがやる気ならこっちも遠慮はしないぞ!」

 

倒した怪人から太刀を奪い取ると、続いて襲い掛かってきた一人の怪人をすれ違いざまに斬り捨てる。そして次々と襲い来る怪人と大立ち回りを始めるのであった。

 

 

 

 

 

「どうした?数ばかりで大したことないんだな。そんなことじゃあいつまでもオレには勝てないぞ?」

 

「ギギ……。」

 

次々と怪人を倒していくコモンド。多くの仲間が倒されたからか、それともコモンドの実力に臆したのか、怪人達は徐々に及び腰になってきた。

 

「(とはいえ、この人数だ。顔には出さないようにしているけど流石に疲れてきた。どうにかして戦いを切り上げつつ、こいつらから情報を手に入れる方法はないか?)」

 

思案するコモンドだったが、その思考はすぐさま打ち切られる。

 

「ほう、生身のままで集団のランポス兵を寄せ付けぬとはな……。」

 

「誰だッ、新手か!?」

 

ザッ、ザッ、ザッ……。

 

雑木林の奥から現れたのはまるで炎を思わせるかのような赤い鎧に身を包んだ男だった。

二本の角の生えた赤い仮面、艶めく銀髪。深紅のマント。そして全身から薄っすらと立ち昇る陽炎。

その姿はまさしく業火を身にまとう帝王である。

 

「これ程までに龍の香りを漂わせている男に今まで気付かぬとはな。そしてこの太刀捌き、間違いない。なるほど、これは大当たりを引いたようだ。ランポス兵が敵わぬのも当然か。」

 

「お前は誰だ、何を言っている?お前もこいつらの仲間か!?」

 

「おっと、これは失礼した。自己紹介がまだだったな。私の名は超絶のフルカイザー、双剣のウェポンだ。会えて光栄だ、新たなウェポン候補よ。」

 

「新たなウェポン?オレのことを言ってるのか?」

 

コモンドは意味の分からないことばかりを話すフルカイザーに質問をするが、フルカイザーは答えるつもりはないのか一人喋り続ける。

 

「昨日の小娘も中々の香りを放っていた。しかしお前ほどの逸材に出会えるとは嬉しいぞ。やはりこの町、竜ヶ町は龍の血が濃い者が多い。」

 

「昨日の小娘?龍の血?どういう意味だ!!お前ッ、ルリに何をした!?」

 

「ほう、小娘の名前はルリというのか。だが名前などどうでもいい。龍どころか竜の才能すらない者がほとんどのこの世界にとって、お前や小娘のような存在は貴重なのだ。そして才能のない者はこの世に不要、むしろ害悪と言ってもいい。必要なのは選ばれし者だけだ。」

 

「さっきから訳の分からないことばかり!質問に答えろ!!」

 

「そして選ぶのは我々ではない。世界だ、世界なのだ!!喜ぶがいい、誇るがいい、お前は世界に選ばれた!この世界に選ばれたという事実を光栄に思うがいい!!」

 

フルカイザーは不思議な輝きを放つ二振りの剣を構え戦闘態勢をとる。

 

「クソッ!」

 

コモンドも奪った骨刀を構えるが、斬り結ぶ前から既に結果は見えていた。

フルカイザーが全身から放つ威圧感はランポス兵のそれとは桁違いであり、それだけで実力差を感じられる。

相手が手にする双剣もこちらの骨刀とは段違いの業物であることが一目で分かる。

何よりこちらは戦い続けて疲労した状態。例え武の心得が無い者でも簡単に分かる絶望的な力の差であった。

 

「うおおおぉぉぉぉ!!」

 

斬り掛かるコモンド、しかしフルカイザーの剣が煌めくと同時にコモンドの胸元からは鮮血が舞う。

 

「がっ!?あ……ぁ……。」

 

「力の差を感じても怯まずに向かってくるその姿勢、素晴らしい。案ずるな、今は何も考えずに眠るがいい。目が覚めた時、お前も私の同志として新たな世界に仕えることになるだろう。ようこそ、ネオウェポンズへ。」

 

崩れ落ちるコモンドの耳に聞こえたのは、カイザーの意味深な言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りします。』

 

「えっ……?いいところなのに、ここで提供になるの!?」

 

「そりゃそうでしょー、テレビ番組だもん。しかもこれ録画、あらかじめ編集された市販のDVDじゃないんだもん。ところでどう、この提供目?面白いっしょ。」

 

これからだってところで、あたしの目に飛び込んできたのは提供クレジット。

提供の二文字がアイキャッチのクロスダオラの両目に丁度被っているのは確かにおかしいけど、さっさと続きを見せなさいよ!?

ええい提供はいい!番組を映せ、番組を!

 

「ふふっ、ぼのたんもイイ感じにのめり込んできましたねぇ。この調子、この調子でドゥンドゥンこの番組を好きになってね~♪」

 

 

 

 

 

漣が何か言っていたが、それも耳に入らないくらいに熱中している自分がいるということにはまだ気付かない曙なのであった。

 

 

 







遅筆でもいいじゃない、人間だもの。





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