天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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フロンティアが終わっちゃうなんて非常に残念。
でも良く持った方ですね、それにまた何か新しいことが始まるかもしれないし。

それにしてもよりにもよってメゼポルタ編の執筆中に終了告知が出るなんて……。
えっ、それはお前の遅筆が原因だって?





曙ちゃんと風翔剣士4

 

 

 

 

 

『みんなで飲もうぜ達人ビール!レッツ・ドリンク達人ビール!ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ…。プハー!狩りの後のこの一杯!イェーイ!最高だぜ!』

 

「…………。」

 

淡々と流れるCM、他に見るものがないので仕方なく見る。

 

『DX斬破刀!風と雷の力で悪を断つ!ボタンを押すと必殺技を叫ぶぞ!狩技・風翔雷撃気刃斬!!これでキミもクロス・ダオラだ!』

 

「……あのさ、漣。」

 

「ん、何?」

 

「何で無編集なの?CMそのまま録画されてるんだけど、消してないの?」

 

「え、だって市販のDVDやBRにはCMなんて入ってないじゃん?」

 

「そりゃ当たり前でしょ、市販なんだから。それがどうしたっていうのよ?」

 

CMが消されていないことに対して漣に文句を言ったら、逆にこいつ何も分かってねぇなという呆れ顔で返されてしまった。

 

「いーい、ぼのたん?当時の放送中にどんなCMが流れていたかなんてことは市販品じゃ分かんないんだぞ?なのにCM消しちゃったら、見返しても当時の気分に浸れないじゃん。それにDX斬破刀みたいな番組の関係商品とかは、番組終わったら見る方法なんて動画サイトくらいになっちゃうっしょ?だったらCMを消さずに一緒に録画しておくのは番組ファンとしては当然のことだって分かるでしょ。」

 

「………ウ、ウン。ソウネ。」

 

何言ってるのか全然分かんなかったけど、この話題にはこれ以上触れてはいけないってことだけは分かったわ。

 

「……あっ、CM終わったよ。続き見るよ、続きっ!」

 

再びクロスダオラのアイキャッチが映る。

CMと漣の話のせいで1分しか経ってないのに随分と長く感じたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん……ハッ!?そうだ、オレはカイザーという奴に負けて……斬られた傷が無くなっている?それにここは一体どこだ?」

 

コモンドが目を覚ますと、そこは見覚えのない場所であった。

歴史を感じる石造りの趣ある小部屋、コモンドはそこにあるベッドに寝かされていた。

ベッドの他に物はほとんど置いておらず、窓もなく外の様子を窺うことは出来ない

 

「気が付いたかニャ?」

 

「誰だ……んっ!?」

 

目覚めたばかりのコモンドに話しかける謎の声、コモンドがその声のする方へ視線を向けてみると、そこにあったのは一つの小タルであった。

 

「タル?タルが喋っているのか?」

 

「ボクはタルじゃないニャ!」

 

被っているタルを放り捨てる小さな影、コモンドが改めてその声の主を確認してみると……。

 

「ネコが喋っている!?」

 

タルの中から姿を現したのは、二足歩行をするシャムネコのような不思議な生物であった。

 

「ニャッフーン、ビックリしたかニャ?ボクの名前はシャイナス、キミの名前を教えてほしいニャ。」

 

「あ、あぁ……オレの名はコモンドだ。」

 

「コモンド?よし、覚えたニャ。それじゃコモンド、聞きたいことはいっぱいあるだろうけど、のんびりしてるとあいつらが戻ってくるニャ。」

 

「あいつら?」

 

「キミを誘拐した連中ニャ!キミはあいつらに捕まって身体に宝玉を埋め込まれてしまったのニャ!」

 

「なんだと!?宝玉?そんなものを埋め込んだのか!?オレの身体に!?」

 

自分を倒した相手にここに連れて来られたことまでは予想していたコモンドだったが、流石に得体の知れないものを体内に埋め込まれたことまでは予想出来ず狼狽の色を見せる。

 

「埋め込むとっても手術したワケじゃないのニャ。宝玉は身体にかざすと勝手に吸い込まれて消えるのニャ。それに誰にでも埋められるワケじゃなくて、キチンと適合する人じゃないとダメなのニャ。キミが狙われたのはきっと適合者だったからなのニャ。そして一度埋め込んだ宝玉は適合者が死ぬまで取り出せないのニャ。」

 

「死なないと取り出せないって、いくらなんでも死ぬつもりはないぞ?」

 

「死にたくないのは当たり前ニャ、だけどそれだけじゃ終わらないのニャ。あいつらは宝玉が完全に身体に馴染んだのを確認したら、今度はキミを洗脳して仲間に加えるつもりなのニャ!」

 

「洗脳だと!?ふざけるな!!」

 

幼馴染を誘拐した挙句、自分を攫って妙なものを埋め込んだような連中の仲間になるつもりなどさらさらないコモンドは激昂する。

 

「だからボクは宝玉の埋め込みに成功したことで油断したあいつらが部屋の外へ出るまで、物音一つ立てないで隠れて待っていたのニャ。あいつらはきっと適合まで時間が掛かるし、キミも当分目覚めないだろうと思ってここを離れたのかもしれないニャ。それで誰もいなくなった隙にボクのとっておきの秘薬でキミを気付けして起こしたのニャ。このタルはその際に偽装として被っていたものニャ。」

 

「そうか、助けられたな。礼を言う。ところでルリ……青い髪をした女を見なかったか?カイザーってヤツの話が本当なら昨日ここに連れて来られたハズなんだが。」

 

「青い髪をした女の人?知らないニャ。昨日はこの部屋には誰も来てないのニャ。」

 

「見ていない……か、分かった。ところでオレの斬られた傷を治してくれたのもお前か?」

 

「傷?確かに秘薬には傷を治す効果があるけど、ボクが見た時には傷なんて無かったニャ。」

 

「無かった?じゃああいつらが埋め込むついでに治療したのか?」

 

「傷が治ったのは、きっと埋め込まれた宝玉のせいニャ。」

 

「何だって?気を失う程の痛みと瞬間的な失血だったんだぞ、あれ程の傷が自然治癒で治るハズがない!」

 

コモンドが着ている服には痛々しい斬撃の痕と血痕が残されているが、その下から覗く地肌には掠り傷一つ残されていない。

これ程のダメージが自然治癒で完治したということに驚きを隠せないコモンド。

 

「それが治っちゃうのニャ。宝玉に適合した人間はあらゆる能力が大きく上昇するのニャ、治癒能力も並の人間の比じゃないニャ。とはいえ寝て起きたら全快なんて話は聞いたことが無いけど……よく分かんないけど宝玉との適合率っていうのと関係があるのかニャ?」

 

「まぁその件はいい。それよりどうしてお前はオレを助けてくれるんだ?」

 

助けてもらったことに対しては感謝しているが、何故そこまでして自分を助けたのか疑問に思うコモンド。それに対するシャイナスの答えは意外なものだった。

 

「ボクをここから連れ出してほしいのニャ。」

 

「ここから連れ出す?」

 

「そうニャ、ボクはずっとここで過ごしてきたんだニャ。いつからいたのか、そもそもその前はどこにいたのかボク自身でも分からないけど、とにかく何年もの長い間ここにいたのニャ。そしてあいつらに見つかったらきっとロクでもないことになるのは分かっているのニャ、だから今までずっと隠れて過ごしてきたんだニャ。だけどもうこんな生き方は嫌なのニャ!だからボクを連れて行ってほしいのニャ。」

 

「分かった、連れ出してやる!ここから無事に逃げ出せたらの話だけどな。」

 

「そこは大丈夫、出口までの道は知っているニャ。ボクが道案内するから走るのは任せたニャ。」

 

そう言うとシャイナスはコモンドの右肩に飛び乗った。

 

「やれやれ。言っておくがオレの足は速いからな、振り落とされるんじゃないぞ?」

 

そしてコモンドはシャイナスの案内に従って走り出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャイナスの案内に従い進んでいくコモンド達。時には上昇した身体能力を使い、時には風の声を聴きながらランポス兵の巡回の目を躱す。

 

「どうなってるんだここは?窓から見える景色が異常だぞ。」

 

ここの廊下も重厚な石造りであり、まるで中世の城か砦のようである。廊下には小部屋にはなかった窓がいくつかあったが、外は薄暗く何もない空間が広がっているばかりであり、窓からの脱出は不可能であった。

 

「簡単に言えばここは異次元なのニャ。」

 

「異次元!?」

 

異次元というとんでもないワードが飛び出したことで流石に驚くコモンド。

 

「ここの建物は異次元空間に存在してるらしいのニャ。だから今まで誰にも見つかることはなかったのニャ。そして出入口はいわゆるワープゲートみたいなもので、宝玉を持つ者しか自由に出入り出来ないのニャ、だからボク一人じゃ逃げられなかったのニャ。」

 

「なるほど、だから誘拐事件の容疑者と被害者が見つからなかったというワケか。だがそもそも何故異次元空間に建物が浮いているんだ?この建造物は一体何なんだ?」

 

「それについては……コモンドはウェポンズの伝説を知っているかニャ?」

 

「どうしたんだ、藪から棒に?」

 

 

 

 

 

ウェポンズ、それは古くからこの世界に伝わる伝説の戦士達の物語である。

 

かつてこの世界には人と竜が存在していたという。

人と竜はある時は助け合い、ある時は戦い、そして互いに生き続けてきた。

 

しかしある日、大きな争いが始まった。切っ掛けは些細なことだったのかもしれない。

人は知恵の劣る竜を見下し、竜は力の劣る人を蔑んだ。

人はその知恵を生かして竜を殺し、竜もその力を使い人を殺していった。

世界は人と竜が殺し合う地獄となっていった。

 

しかし全ての人と竜が愚かだったわけではない、争いに反対した者もいた。

だがそのような者は裏切り者として、同族からも命を狙われるようになった。

そんな彼らを守るために、そして争いを終わらせるために立ち上がった者達がいた。

彼らこそウェポンズである。

ウェポンズは人の知恵と竜の力、そして大いなる勇気と深い愛の心を持っていた。

ウェポンズは人と戦い、竜と戦った。そして赦し、分かり合い、争いを終結へと導いた。

 

争いが終わった後、ウェポンズは何処かへと姿を消した。

 

大きな力は新たな争いの火種となる、我々の存在は平和を取り戻した世界には不要だ。

二度と我々が必要とされることのない世界の存続を願う。

しかし再び世界に危機が訪れるようなことがあれば、我々も再び現れるだろう。

 

そう言い残して……。

 

 

 

 

 

「子供でも知っているおとぎ話、この国どころか世界中で知られている有名な物語だ。だけどそんなおとぎ話と今の状況に何の関係があるんだ?」

 

「実はそのおとぎ話が実はおとぎ話じゃなかったとしたらどうかニャ?」

 

「何だって!?いや、しかし竜なんて世界のどこにもいないぞ?それにウェポンズが実在したという証拠だってどこにもない。」

 

「そりゃそっちの世界にいないってだけニャ。」

 

「そっちの世界、そして異次元……つまりそういうことなのか?」

 

「察したようニャね、世界からウェポンズが姿を消した後に住んでいたのがここニャ。あっ、今度はそこを右に曲がるのニャ。」

 

「こっちの道だな、それでつまりここの建物はウェポンズの移住先ってことなのか?」

 

「そんなところニャ。古代には現代の科学では解析しきれない超文明と技術があったのニャ、古代の技術を使えば異次元に建物を浮かすのなんて簡単……じゃないけど出来ないことはないのニャ。だけどウェポンズはただ住んでいただけじゃないのニャ。この異空間を見つけたウェポンズは自分達以外出入りが出来ないように細工をすると中に城塞を作り、命尽きるまで世界を見守り続けていたのニャ。」

 

「誰にも知られることなく世界を守り続けていたのか。凄いな、ウェポンズは間違いなく英雄だったんだな。それじゃあ竜がいないっていうのは?」

 

「それも似たような話ニャ。戦争後もしばらくは人と竜の共存が続いていたんだけど再び同じ過ちを繰り返さないようにと、竜達も新天地を求めて別の次元へと旅立っていったのニャ。」

 

「よくそこまで知ってるな、お前。」

 

「伊達に長く生きてはないニャ。いつ頃の記憶なのかまでは分からないけど、うろ覚えとはいえここまで覚えてるっていうことはきっとボクも当事者なのニャ!ボクはきっとウェポンズの従者をやっていたのニャ、そうに違いないニャ。」

 

「記憶が曖昧な割に能天気なヤツだな、お前何歳なんだよ?」

 

自分だったら記憶がハッキリとしない状況でそこまで都合よく物事は考えらない。

脱出を望む割にはお気楽で都合のいい思考のシャイナスに呆れるコモンド。

 

「それじゃあ、あいつらはウェポンズの残党ってことなのか?」

 

「それは違うのニャ!あいつらはウェポンズじゃないのニャ!」

 

伝説の英雄が罪なき人々を害しているという事実に疑問を抱くコモンドだったが、その考えはすぐに否定された。

 

「そういえばネオウェポンズと名乗っていたな……。」

 

「そもそもウェポンズは既に全員亡くなっているのニャ、残党なんてあり得ないのニャ。」

 

「まあそれは当然だな。ウェポンズにだって寿命はある。」

 

「その通りニャ。そしてウェポンズがみんな死んじゃったことでこの拠点はボクを除いて無人になったハズなのニャ。なのにボクが長く眠っている間にネオウェポンズっていう連中に占拠されてたのニャ。」

 

「だけど入り口はウェポンズにしか開けないんだろう?でもウェポンズは全員死んだんだ、それでどうやって入り込んだんだ?」

 

ウェポンズしか出入り出来ないのにウェポンズではない者が出入りしているという矛盾。

しかしこの答えは非常に簡単なものだった。

 

「確かにウェポンズは全員亡くなったのニャ、でもその子孫は今も生きているのニャ。」

 

「子孫だって?」

 

「カイザーに何か変な言われなかったかニャ?」

 

「……あぁ、龍の匂いがするとかどうとか言ってたな。」

 

「それニャ、ウェポンズが竜の力を持っていたっていうのはもう知っているニャ?その竜の力は薄れながらも世界中に広がっていったのニャ。だけどほとんどの人の竜の力は無いに等しくて、力に目覚めることなく一生を終えるのニャ。だけどたまに先祖返りなのか竜の力の強い人が生まれるのニャ。そういった人は普通の人とちょっと違った点があるのニャ。コモンドも人とは違う不思議な力を持っていないかニャ?」

 

コモンドはその不思議な力に対して心当たりがあった。生まれたころからずっと持っている、風の声を聴く力。

 

「……ああ、持っている。」

 

「やっぱりニャ。ウェポンズにもキミにそっくりな人がいた気がするニャ。うろ覚えだからどんな人だったのは思い出せないけど、キミを見たときにデジャブを感じたんだニャ。これもキミを助けた理由の一つニャ。この人なら絶対にボクの助けになってくれるって思ったのニャ。」

 

思っていたよりもフワッとした理由だったが、そのお陰で助かったことに対して自分とよく似ているという先祖に内心感謝をするコモンド。

 

「きっとネオウェポンズの創始者も竜の力が強かったのニャ。それで偶然この次元を発見してウェポンズの遺産を手に入れたのニャ。それで何を思ったのかは知らないけどネオウェポンズを名乗って活動を始めたのニャ。」

 

「そして勢力拡大のために世界中から竜の力のある者を集めた、いや拉致したんだな?」

 

「その通りニャ。ネオウェポンズは竜の力を持つ人を捕まえて宝玉を埋め込んでいったのニャ。特に強い竜の力を持つ人は、竜を超える龍の力を持つ者と呼んで何としてでも確保しようとしているみたいだニャ。」

 

「世界中で犯行をしていたというのに、徐々に竜ヶ町を中心に犯行を行うようになったのは竜ヶ町にウェポンズの子孫である竜の力を持つ者が多く住んでいたからなのか。」

 

コモンドはウェポンズのルーツが竜ヶ町にあるということを思い出し、誘拐事件が増えてきた理由を推測する。

 

「だがその宝玉というのは何だ?」

 

「宝玉はウェポンズが亡くなる前に、自分達の持つ力を結晶化させたものなのニャ。当時ウェポンズが持っていた力とほぼ同等の力が封じられている宝玉と、宝玉を作る際に零れ落ちた大量の破片から作られた竜玉があるのニャ。ウェポンズは自分達が死んだ後の時代で災いが起きた時に備えて、後世のために力を残そうと思って宝玉を作ったみたいだニャ。そして宝玉を埋め込むと、その宝玉の製作者であるウェポンの力を得られるのニャ。」

 

「だが、その世界を守るための力がネオウェポンズに悪用されているんだな?」

 

「そうなのニャ。竜の力を持つ人には竜玉を埋め込んでランポス兵に、そして龍の力を持つ人には宝玉を埋め込んでカイザーみたいな上級戦士にするのニャ。」

 

かつてウェポンズと友好があったシャイナスには、ウェポンズの技術が悪用されていることに対して深い怒りと悲しみを抱えているようだった。

正義のための力を、悪事に利用する。コモンドにはウェポンズがこの世界を去った理由が分かるような気がした。

 

「それで、オレに埋め込まれた宝玉が何の宝玉かは分かるか?」

 

「それは分からないのニャ。実はどの宝玉にどのウェポンの力が封じられているかは不明なのニャ。運用しているネオウェポンズでさえ分かってないのニャ。」

 

「じゃあ適当に埋め込んだってワケなのか!?」

 

「そうでもないのニャ。適合者と宝玉にもそれぞれ相性が合って、相性の悪い宝玉はどんなに頑張っても埋め込みようがないのニャ。それに埋め込んだ後にウェポンズの力を発揮してみれば、それで何の宝玉を埋め込んだか分かるから問題ないのニャ。」

 

「そんなのでいいのか?」

 

世界を救った救世主と、その遺産を悪事に用いる悪党という真面目な話の後に、こんな適当極まりない話を聞かされて若干呆れるコモンド。

 

「そして新しい戦士を作り出すと改造絆石を使って手先に変えてしまうのニャ。」

 

「改造絆石?それはなんだ?」

 

さっきから初耳の連続なのに、またしても知らない言葉が出てきたことで流石に疲れを見せるコモンド。

 

「絆石というのは、人と竜の信頼の証のようなものなのニャ。昔の人は絆石を使うことで竜と心を通わせていったらしいのニャ。だけどそれもネオウェポンズによって単なる洗脳装置に変えられちゃったのニャ。これで無理奴誘拐された人でも、あっという間に組織に忠誠を誓うのニャ。」

 

改めて洗脳前に助けて貰えたことに胸をなでおろすコモンド。

 

「それで、あいつらの目的は分かるか?」

 

「それについては流石に分かんないニャ…………でも。」

 

「でも、なんだ?」

 

「ある程度の推測は出来るニャ。ネオウェポンズは世界中から竜の力のある者を集めて仲間にしているのニャ、そして選ばれた者だけがこの世界で生きられるって言ってたのニャ。きっとあいつらの目的は世界征服なのニャ!竜の力を持たない人を劣等種として排除しようという選民思想なのニャ!」

 

「世界征服……本当にそうなのか?」

 

実際にカイザーと斬り結んだコモンドには、ネオウェポンズの目的が世界征服のような俗なものだとは思えなかった。

カイザーとの戦いは一瞬で決着がついたため、あれだけで全てを察することが出来るとは流石のコモンドも思っていない。しかし戦いに込められた意思は時に言葉よりも雄弁に、そして正確に物事を語るのだ。

具体的に説明するのは難しいがカイザーからは欲望のために世界を掌握するのではなく、寧ろ世界に仕えようという意思を感じた。

勿論カイザー以外のネオウェポンズが同じことを考えているとは限らない。しかしあれ程までに強く感じられる意志ならば、少なくともカイザーが本気で世界のために行動しようとしているということだけは分かる。

そこだけを見ればネオウェポンズは確かにウェポンズの遺志を継ぐ新たなウェポンズ、正義の集団と呼んで差し支えないだろう。しかし彼らからは自らの信じる正義のためなら何をしても構わないという独善的な、そして自分の行動が全て正義であると信じて疑わないという狂気的な意思を感じるのだ。

そもそも正義の集団が秘密裏に罪無き者を拉致するだろうか?力無き者を害悪と呼び捨てるだろうか?

コモンドにはネオウェポンズが兵力を蓄えた後に、無辜の民を粛正するつもりであろうことがハッキリと感じられた。

つまり彼らの目的が世界征服であろうがなかろうが、悪しき集団であるということに間違いはないのだ。

 

 

 

 

 

「もうすぐ出口だニャ!」

 

「だが見張りが一人いるようだぞ?」

 

シャイナスの案内でようやく要塞の出口に到着したコモンド。しかし風の声を聴くことが出来るコモンドには、見なくとも出口の前に立つ見張りの気配がしっかりと感じられた。

 

「きっとランポス兵ニャ。」

 

「あの青いトカゲ人間か、このまま見つからずに行くのは無理だな。少々荒っぽくいくとするか。」

 

コモンドは足元に落ちていた小石を拾い上げると、見張りのランポス兵の方へ向けて軽く放り投げる。

 

ヒュッ!コツン。

 

「ギ?」

 

「おらあっ!!」

 

「ギエッ!?」

 

小石に気を取られて隙を見せたランポス兵に踵落としをお見舞いして意識を刈り取る。

 

「さっき倒せたから勝てるとは思っていたが、ここまで弱かったか?」

 

敵の明らかな弱さに疑問を抱くコモンド。

 

「それはきっと宝玉のお陰ニャ。きっとコモンドは生まれつき龍の力を使いこなしていたのニャ、だから普段から強かったのニャ。それが宝玉の力を得たことで更にパワーアップしたに違いないニャ!」

 

「オレの身体能力の高さにはそんな秘密があったのか……まぁそれは置いておくとして、この扉は普通に出て大丈夫なのか?」

 

出口と思われる大きな両開きの重厚な木製の扉。しかしこの扉を開けた先に待っているのは底なしの異次元空間である。

 

「大丈夫ニャ。行きたい場所を思い浮かべて潜れば、大体その辺りに出られるのニャ。」

 

「大体その辺りってお前なぁ……。」

 

シャイナスの適当な返答に呆れるコモンドだったが、このままじっとしているワケにもいかず、覚悟を決め扉を開けると何も無い空間へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

「ここは……町外れの雑木林?」

 

コモンドが異次元の扉を抜けると、そこはランポス兵やカイザーと戦った雑木林だった。

振り返ってみるが、そこには木製の扉も異次元の穴も無く雑木林の景色だけが広がっていた。

 

「ここが外の世界なのニャ、月を見るなんていつ振りかニャ?」

 

シャイナスはコモンドの肩から降り、景色を眺めたり深呼吸をしている。

 

「すっかり夜になってしまっているな。」

 

カイザーと戦ったときはまだ日中だったが、今は完全に深夜である。

少なくとも数時間は経過しているようだった。

 

「さて、やっと逃げられたしこれから……ッ!!」

 

「ほう?完全に気配を殺していたつもりだったのだが、吾輩に気付くとは流石であるな。」

 

人の気配を感じたコモンドが向き直ると、木の陰から怪しげな男が現れた。

鋭い棘が目立つ紫色をした中華系の鎧、顔には大きな耳とクチバシを持った鳥のような仮面を被っている。

 

「吾輩は鬼教官のフルルガ。ランポス兵達の教育を担当している、その名の通り教官だ!」

 

「フルルガ?ネオウェポンズの追手か!?」

 

「追ったワケではない。こういうこともあるかと思って試しに監視していただけだが、まさか本当に当日脱走するとは。吾輩の勘は今日も冴えておるな、決して外に出て職務をサボっていたワケではないぞ。ヌハハハ!」

 

フルルガは両手を広げるとこちらにゆっくりと近付いてきた。

穏便に済ませたいのかもしれないが、その逃がさないとでも言いたげな姿勢は自然とコモンドに警戒態勢を取らせる。

 

「栄誉あるネオウェポンズの一員に選ばれたというのに、一日経たずに逃げ出すとはランポス訓練兵以下だぞ。今すぐ戻るのだ!」

 

「冗談じゃない!拉致に洗脳、挙句の果てには選民思想!そんなことで誰がお前たちに協力するか!」

 

コモンドはそう叫ぶが、その答えが分かっていたかのようにフルルガは笑い始める。

 

「ヌハハハ!やはりか、だが貴様はすぐにその選択を後悔することになるぞ?何故なら貴様は吾輩に力尽くで連れ戻されることになるのだからな!」

 

フルルガの広げた両手にそれぞれ独特な形状をした小剣と、スパイク付きの丸い盾が現れた。

 

「吾輩のクロオビソードを前にして、無事でいられるかな?」

 

 

 

 

 

BGM:唸る一匹狼

 

軽くジャンプするとコモンド目掛けて剣を振り下ろすフルルガ、

コモンドも上がった身体能力で躱し、フルルガの横顔に右ストレートをお見舞いするが……。

 

「ふんっ、ヌルいな。所詮はヒヨッコよ!」

 

まるで効いた様子はなく、回転斬りを繰り出してくる。

 

「くっ、こいつランポス兵とはワケが違うぞ!?」

 

バク転で回転斬りを避けたコモンドだが、攻撃が通用しないことに少なからず動揺していた。

このまま避け続けていても決定打が無い以上、勝ち目はない。

 

「ヌハハハ!貴様は改造絆石を使った最終処置が施されておらんから、宝玉の力を使いこなせんのだ。そんなザマで吾輩に勝てるハズがない!諦めて戻るか、それともそのまま吾輩に打ちのめされるか、どちらか選ぶといい!」

 

勝ち誇るフルルガ。

しかしそのフルルガの発言により、下がって観戦していたシャイナスの脳裏に浮かぶものがあった。

 

「絆石……宝玉……ボクは何かを忘れて……そうだッ!よく聞くのニャ、コモンド!」

 

「なんだッ!?」

 

叫ぶシャイナス。コモンドはフルルガから目を逸らさずに、シャイナスの言葉に耳を傾ける。

 

「ボクは絆石と同じ能力を持っているのニャ!」

 

「どういうことだ!?何を言っている!?」

 

「理由なんて分からないニャ!でもボクは絆石の代わりを果たすことが出来るのニャ!今はその事実が重要なのニャ!ボクを受け入れるのニャ!そして宝玉の力を開放するのニャ!」

 

「分かった、それでこの状況を打開出来るっていうのならそれで充分だ!来いッ!」

 

突如として全身から眩い光を放つシャイナス。

やがて光の粒子と化したシャイナスの肉体は、コモンドの全身を包み込んでいく。

 

「うおおおぉぉぉぉ!!」

 

「何だこれは!?ぬうっ、風が強くて近寄れんっ!?」

 

 

 

 

 

BGM:大敵への挑戦

 

光に包まれると同時に、黒い小規模な竜巻に覆われ姿の見えなくなったコモンド。

やがて竜巻が消えると、そこに立っていたのは鈍く輝く美しくも力強い鎧に身を包んだ戦士だった。

 

「き、貴様!改造絆石無しで宝玉の力を使いこなしたというのか!?それにその姿は、まさか!?」

 

姿を変えたコモンドに恐れ慄くフルルガ。

 

「ハアッ!」

 

「何!?早、ぐわっ!!」

 

変身したコモンドが繰り出したパンチは威力、スピード共に先ほどの比ではなかった。

フルルガは咄嗟に右腕の盾で防ぐが、防ぎきれずに吹き飛ばされ地面を無様に転がった。

 

「な、何なのだ?今のパワーは?吾輩をこうも簡単に吹っ飛ばすとは。まだ腕に痺れが……。」

 

呆気にとられるフルルガを他所にコモンドは右腕をかざす。

すると右腕から雷光がほとばしり、やがてその光は一振りの太刀へと姿を変えた。

 

「その武器!その太刀は!!鬼斬破!?間違いない、貴様は太刀のウェポン、風翔のフルクシャ!!旧ウェポンズの創始者にして、最初に世界を守った伝説の男と同じ装備を、こんな男が!?そんなバカな!?これは何かの間違いだ!」

 

怖気づいたのか、無意識に後ずさりを始めるフルルガ。

 

「いや、吾輩は鬼教官のフルルガ!新兵に負けることなどあってはならんのだ!それに貴様はたった今宝玉の力を理解したばかり、そんな青二才に吾輩が敗れることなどありえん!」

 

しかしフルルガは逃げ腰になっていた自分に気付くと、自らを鼓舞し再び向かってきた。

 

「どりゃあ!!」

 

キィン!!

 

フルルガの放つ渾身の一撃。しかしそれもコモンドの鬼斬破に一瞬で受け止められ、そのまま鍔迫り合いとなる。

 

「力を込めているのにビクともせん!どうなっておるのだ!?ぬおっ!?」

 

コモンドが鬼斬破を振りぬいたことで力負けしたフルルガは大きく弾き飛ばされた。

コモンドは体勢を崩したフルルガに左腕を向ける。

 

「烈風っ!!」

 

「ぬわぁ!な、何だこの竜巻は!?」

 

コモンドの左腕から放たれた空気の塊は、フルルガに直撃するとその身を拘束するように竜巻へと変わる。

 

「いくぞっ!狩技・風翔雷撃気刃斬!!」

 

コモンドの握る太刀、鬼斬破から激しい紫電が放たれる。

そしてコモンドはフルルガ目掛けて太刀を構えたまま高速で突進……否、一足で真っ直ぐに跳躍すると、一瞬でその身体を突き抜ける。

そしてフルルガの背後に着地して太刀を鞘に納めると同時に、フルルガは竜巻もろとも縦に両断された。

 

「わ、吾輩がっ!?鬼教官のフルルガが、こんなヒヨッコなんぞに!?だが、これで勝ったと思うなよ?ネオウェポンズを裏切った貴様に決して安息の時は訪れん、次々と追手が現れる!これから貴様は死ぬまで闘いの日々を続けるのだ!ヌハハハ!!」

 

ドゴォォォォォン!!!!!

 

フルルガは爆炎の中に包まれ、そして煙が晴れたそこには塵一つ残っていなかった。

 

「オレが死ぬ前に闘いは終わるさ、お前達の壊滅という形でな……。」

 

やがてコモンドの姿が光に包まれると、コモンドは元の姿へと戻っていた。

コモンドから離れた光の粒子は一つの塊となり、シャイナスの姿へと変化する。

 

「悪いがシャイナス、お前の持つ絆の力をもう少しだけ貸してくれ。俺にはお前が必要だ。あいつらと戦うために、そしてルリを助け出すためにも今この力を失うワケにはいかないんだ。」

 

「頼まれなくても貸すつもりだったニャ!ウェポンズの遺産を間違った形で扱うネオウェポンズは許せないニャ。それに追手が来るならボクだって無事ではいられないのニャ。だったらコモンドと一緒にいることが正解なのニャ!あっ、でも美味しいものを食べさせてくれると嬉しいんだニャ。要塞ではあいつらの目を盗んで残飯漁りしかしていなかったから、いつもお腹ペコペコだったのニャ。」

 

「全く。最後までマイペースだな、お前は。」

 

闘いにシャイナスを引き込むことに引け目を感じていたコモンドだったが、案外乗り気な様子のシャイナスに逆に毒気を抜かれてしまう。

 

「あっ、そうだ!!」

 

「何だ、急に大声出して?」

 

「とっても大事なことを忘れていたニャ!」

 

「とっても大事って何だよ?」

 

「それはコモンドの新しい呼び名を考えないといけないってことニャ。」

 

「呼び名ぁ?」

 

「そう、変身したコモンドの呼び名ニャ。」

 

重要な話かと思いきや、シャイナスの出した提案は珍妙なものだった。

 

「呼び名なんてコモンドのままでいいだろ?」

 

「チッチッチッ、そうは問屋が卸さないのニャ。コモンドは悪と戦う変身ヒーローとなったのニャ。だったら変身している際に名乗る名前が必要になるのニャ。」

 

「長い間異次元にいたくせに、そんな変な知識どこから持ってきたんだ?」

 

「風翔のフルクシャって呼び名はダメだニャ、それはネオウェポンズからの呼び方ニャ。もっとオリジナリティーのあるものを考えないといけないのニャ。うーん………………太刀のウェポン、縮めて太刀ぽんっていうのを考えてみたけど、どうかニャ?」

 

「却下。」

 

「むぅ~、一生懸命考えたのに!だったらコモンドも何か案を出すのニャ!」

 

「新たな名前か……。」

 

コモンドは考える。

 

「クロス……ダオラ、クロス・ダオラだ。」

 

「クロス・ダオラ?どっから出てきたのニャ、その名前?」

 

「オレがまだ幼い頃、幼馴染のルリと一緒に読んでいた、ウェポンズ伝説を題材とした絵本だ。その絵本の主人公は鎧に身を包み、風の力と一本の刀を武器に悪と戦う戦士だった。その主人公の名がクロス・ダオラだ。昔のことだったんで今まで忘れていたんだが、いなくなった幼馴染のことを考えていたら、ふと思い出したんだ。」

 

「クロス・ダオラかぁ、コモンドがそれでいいっていうのならそれでいいけど。うーん、太刀ぽんの方がセンスあると思うニャ~。」

 

「何度でも言うが、それは却下だ。さて、さっさと帰るぞ。」

 

「あぁ、待って!置いてかニャいで!」

 

歩き始めるコモンドと、慌ててその肩に飛びつくシャイナス。

二人の影は夜の闇に消えていった。

 

 

 

 

 

 







中国のモンスターハンターオンラインも終わるみたいだし、サービス終了と共に出会えなくなるモンスターがいると思うと勿体ないですね。



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