天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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モガ鎮守府編はっじまっるよー!






天龍ちゃんと一泊二日の旅1

 

 

 

 

 

「もうちょいで着くゼヨ!もうすぐワシの故郷にして、所属鎮守府でもあるモガ鎮守府に着くんだゼヨ~!」

 

「着クゼヨ~!」

 

「もうちょいか。」

 

「モガはいい所ゼヨ~。カリュード諸島の海はきれいだけど、中でもモガ近海の美しさは格別ゼヨ!船として生まれたからには、一生に一度はモガの海で泳いでみるべきゼヨ。」

 

オレは今、師匠こと潮風丸の交易船に乗せてもらい、モガ鎮守府を目指している。

そもそも今回どうしてオレがモガ鎮守府に行くことになったのかというと……。

 

 

 

 

 

『天龍ちゃんもたまにはよその鎮守府に行ってみたらどうかしら?知らない場所で知らないメンバーと狩りをするっていうのは新鮮だし、何より勉強にもなるわよぉ~。もしどこかに行ってみたいのであれば神通さんに相談してみるといいわぁ。どのみち別の鎮守府に行くのなら提督か秘書艦に報告する必要があるんだけどね。まずは神通さんに会いに行ってらっしゃいな。』

 

『よその鎮守府に行ってみたい……ですか?でしたらモガ鎮守府はいかがでしょうか?モガでしたら潮風丸さんに頼めば連れて行ってもらえると思います。それにネコになったという多摩さんのことも気になりますからね。』

 

『モガ鎮守府に行きたい?だったらワシの交易船に乗ればいいゼヨ!丁度次の目的地もモガ鎮守府だしお安い御用ゼヨ!』

 

 

 

 

 

……というやり取りがあって今に至る。

あー、別の鎮守府に行くのって初めてだから緊張してきたな。

どんな場所で誰がいるんだろう?

 

「着いたゼヨ~、今船を着けるゼヨ。」

 

ゲッ、考え事してたらもう着いてた!?

まだ心の準備が終わってねーってのに!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここがモガ鎮守府、オレの所属しているクロオビ鎮守府とは全然違うな。

何というか、少なくとも見た感じでは鎮守府らしさがない。

クロオビ鎮守府は茶色のレンガ造りの建物で庭には緑の芝生が広がっているという、いかにも鎮守府らしい鎮守府だ。

まぁやたらと広い農場付きの中庭とか、深海棲艦と戦える訓練場とか普通の鎮守府にはなさそうなものも多いけどな。

 

それに対してモガ鎮守府は広い海にポツリと浮かぶ小島と、木の板を組み合わせて作られた海上の足場を土地としており、これまた木を組み合わせて作られた草葺き屋根の素朴な小屋がいくつか建っているようだ。

これって本当に鎮守府か???鎮守府の建物が木組みの小屋って……。

これは鎮守府なのではなく、東南アジアのどこかにありそうな水上の村なのでは?

 

「それじゃあワシは積み荷を降ろさなきゃいけないからオヌシは先に行くゼヨ。」

 

そういや単なる船じゃなくて交易船だったな、商品が乗っているんだっけ?

 

「積み荷って、今回は何が乗っているんだ?」

 

「まぁ色々と乗っているけど、今回の一番の目玉はラングロローラーゼヨ!」

 

「ラングロローラー?何だそれ?」

 

「簡単に言えば美顔ローラーの類ゼヨ。赤くて丸いローラーは、固さと弾力を兼ね備え、肌にしっとりと吸い付くことから今静かなブームになっているんだゼヨ。」

 

ふーん、そういうのがあるのか。オレは美容とかあんまり興味ねーから知らなかった。

 

「ちなみに商品バリエーションとしてガンキンローラーとバルキンローラーっていうのがあるゼヨ。ガンキンローラーはめちゃんこ堅くて重たい金属製で、片手で使う商品なのに重量が5㎏くらいあるゼヨ!コイツは表面が強固な突起で覆われているから使うと顔面がボコボコになる凄い商品ゼヨ!バルキンローラーに至ってはなんと骨製の商品で、ローラー本体に粘性の高いタールを使用することで骨を接着しているゼヨ!表面は長くて鋭い硬質の尖った骨で覆われているから、使うと顔に穴が開くスペシャルな商品ゼヨ!この二つはラングロローラーと違って何故か全然売れないゼヨ、不思議ゼヨ。格安にしとくからオヌシ使ってみるゼヨ?」

 

「断る!!」

 

そんなの考えなくても売れない理由は分かるだろ!!

人にゴミを押し付けようとするんじゃねぇ!

 

「うーん、残念ゼヨ。まぁ欲しくなったらいつでも言うゼヨ。それじゃオヌシが来ることはあらかじめワシの方から鎮守府に伝えておいたから、このまま行っても大丈夫ゼヨ、ドントウォーリーゼヨ!」

 

そう言うと師匠は船の中に戻っていった。

ローラーの件はともかく、色々とありがとな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モガ鎮守府へよーこそ。アタシはこの鎮守府で秘書艦をやってる北上だよー、どもどもよろしくー。」

 

「そして私が大井よ。」

 

「オレはクロオビ鎮守府から来た天龍だ、よろしく頼むぜ。」

 

師匠がいなくなり、手持ち無沙汰になったオレを迎えに来てくれたのは二人の狩娘。

ゆるーい雰囲気の北上と、どことなくつっけんどんな様子の大井だ。

 

しかし北上の服装、というか装備はオレの知っている北上のものとは全く違う。

大井の格好は緑色の半袖セーラー服といういわゆる艦娘としての北上と大井の初期衣装なのだが、北上の服装は緑色の半袖や長袖のセーラー服でなければ、ベージュのヘソ出しセーラー服でもない。

身に着けているのは脛まで覆うデザインのサンダル、ベルトとサスペンダーで支えられた赤いスカート、白いベスト、黒いアームカバー、そして赤くて丸い帽子。

何というか、南国の役場の事務員といった感じの服装である。

 

「何出会って早々に北上さんのことをジロジロ見ているんです?」

 

「まぁまぁ、大井っち落ち着きなよ~。」

 

北上の姿が気になり頭のてっぺんから足の爪先まで見ていたところ、大井に釘を刺される。

ヤベッ、流石に見過ぎだったか?

 

「んー?私の格好が気になるのかな~?ホラ、これはアレだよアレ。スカラーシリーズって言って大本営公認の秘書艦用の制服、っていうか装備の一種。ほれほれ~。」

 

そう言ってその場でくるっと一回転しながら装備を見せつけてくる北上。

しかしオレとしては服装よりも、聞きなれない単語の方が気になった。

 

「大本営公認の秘書艦用の制服ぅ?何だそれ?そんなのあったのか?オレんとこで秘書艦やってる神通はそんなの着てねーけど。」

 

「そりゃ公認ってだけで絶対に着なきゃいけない義務はないからねー。それに作成の際に要求される素材も特別なチケットやコインが必要になるから、いざ作るとなると結構面倒臭いんだよ。まぁアタシはせっかく秘書艦やってるのに普段通りの格好ってのもつまんないからこうして作成したんだけどね~。」

 

オレの鎮守府では本人の艦種と違う装備を身に着けているヤツはいないから、こうして見ると新鮮だ。

えっ、初期の頃のオレ?アレは物資不足による間に合わせの装備だからノーカン!

 

「ミナガルデ鎮守府ではメイドシリーズが秘書艦用の装備になっていて、ジャンボ鎮守府やポッケ鎮守ならヘルパーシリーズ、ユクモ鎮守府なら撫子シリーズ、タンジア鎮守府ならセイラーシリーズ、バルバレ鎮守府ならエコールシリーズ、ベルナ鎮守府ならサージュシリーズとチアフルシリーズ、アステラ鎮守府ならシーカーシリーズとブリゲイドシリーズ、セリエナ鎮守府ならギルドワークシリーズ、そしてロックラック鎮守府とモガ鎮守府がこのスカラーシリーズっていうふうになってるの。」

 

いっぱいあり過ぎて、半分以上頭に入ってこなかった……。

 

「何というか、鎮守府ごとに制服があるって感じだな。」

 

「まぁ大体そんな感じであってるよー。そっちの秘書艦が使ってないだけで、クロオビ鎮守府ならクロオビシリーズが正式装備になるんじゃないかな~?」

 

ええっ!?クロオビシリーズってオレの提督が着ているやつじゃん!

神通が制服着た場合だと提督とペアルックになるのか……。

というか提督はああ見えて実は公認の制服を着ていたのか、意外。

 

「さーて、潮風丸から大体の話は聞いてるよ。自分のとこの鎮守府だけじゃ学べないようなことを経験しに来たんだって?案外真面目なんだねぇ~。」

 

相変わらず緩い雰囲気のまま話を進める北上。

クロオビ鎮守府の秘書艦の神通がビシッとしたしっかり者だったせいか、この北上の独特のペースには未だ慣れない。

 

「そっちの鎮守府じゃ学べないことだなんて言われてもねぇ~、アタシらにとってはこれが普通だから何を教えればいいのか分かんないんだよね。この北上さまの頭脳を持ってしてもそっちに無くて、こっちにしかない独自のものなんて分かんないからさ。」

 

投げやりにも程のある北上の話に思わずズッコケそうになる。

これが神通だったらあれやこれやら次々に提案が出てくるからなぁ……。

鎮守府の設計自体もそうだが、この秘書艦のギャップだけで充分に独自の経験になったよ。

 

「なので取り合えず天龍は球磨姉ぇと木曾、そして大井っちと一緒に狩りに行ってもらうことにしたよ。アタシ達の狩りに参加しつつ、そこから何か学べるものがあるといいねぇ~。」

 

「えっ!?」

 

実際に現場に出て目で見て盗めという、まるで職人の技術を覚えさせるかのような提案をする北上。

しかしそれを聞いた大井はギョッとした表情で北上の方を見る。

 

「あ、あの……北上さん?」

 

「んー?何、大井っち?」

 

「私そんな話聞いていないんですけど……。」

 

「そりゃ今言ったからね。」

 

「なっ、何で私に相談せずにそんなことを決めちゃうんですか!?」

 

「だって大井っちに出撃スケジュール決めさせると必ずアタシと出ようとするじゃん?それは別にいいんだけど、今日は仕事あってアタシ出られないからさー。だったら大井っちの出撃枠はここに組み込んじゃえーって話になるっしょ。」

 

「だったら多摩姉さんに出てもらえば!」

 

「多摩姉ぇは今日はゴロゴロしときたい気分なんだって。」

 

「グハッ!」

 

ゴロゴロしたいという雑な理由だけで多摩の出撃が却下されたことにショックを受ける大井。

というか多摩には確認を取ったのか……。

 

「んー、でも安心していいよ。大井っちには出撃のこと伝えなかったけど、球磨姉ぇ達にはちゃんと事前に伝えといたから。」

 

「ゴフッ!!」

 

北上に詰め寄る大井だが、フォローどころか更なる追い打ちを喰らって轟沈する。

 

「球磨姉さん達にはちゃんと確認を取っているのに、私だけスルーされていただなんて……。」

 

「アタシはさー、サボって溜め込んでた書類をいい加減処理しなくちゃいけなくなってねー。いやぁ、面倒臭いったりゃないね。」

 

「だったら私が手伝います!これでもそういった作業は得意なんです!」

 

「んー、気持ちは嬉しいけど今回はいいかなって。だって今日は提督が手伝ってくれる約束してくれたからねー、えへへ。」

 

「て、提督と一緒に!?羨ましい、私だって秘書艦になれれば提督と……じゃなくて提督ったら私がいないのをいいことに、私から北上さんを奪うつもりね……。」

 

「大井っちったら、まーたそんなこと言っちゃってー。それにアタシは既に提督のだもーん。」

 

「ゴッハァ!!!」

 

仕事が面倒だといいつつ惚気る北上と、対照的にヨロヨロと地べたに体育座りになるとそのまま地面にのの字を書き始める大井。

というか今気付いたけど北上の左手の薬指に光るものが見えたぞ……。

 

 

 

 

 

「お、おい。右手のそれってまさか……。」

 

「うん?あー、気付いた?そう、これは提督からもらった大事な指輪。」

 

そう言って見せつけてきたのは小さなダイヤがキラリと光る、シンプルながらも上品なデザインの指輪。

 

「ケッコンカッコカリ!?つーことは練度100超え!?百戦錬磨のエリート艦!?」

 

ケッコンカッコカリは猛者の証。神通も歴戦の狩娘だし、やっぱ秘書艦って強くなきゃなれないのか?

しかし尊敬の眼差しで指輪を見るオレとは対照的にキョトンとした表情の北上。

またオレ何か言っちゃいました?

 

「んー?あぁ、なーるほど。そういったことも知らないんだ、こりゃ学習させ甲斐がありますなぁ。」

 

「へっ?」

 

「あのさー、忘れてるのかもしれないけどカリュード諸島には練度なんてないよ。」

 

「あっ、そういえば……じゃあハンターランクの上限解放用の指輪か?」

 

「ハンターランクを上げるのにも指輪は不要だよ。」

 

「あれ?じゃあその指輪は一体?」

 

練度の開放でもなければハンターランクの開放でもないとなるとその指輪は何の役に立つんだ?

 

「存外鈍いんだねぇ、これはそのまんまケッコン指輪だよ。」

 

「だからケッコンカッコカリの指輪だろ?」

 

「ケッコンカッコカリの指輪じゃなくてケッコン指輪。別に能力が上がるとかスキルが増えるとかじゃない、永遠の愛を誓い合った夫婦の証明としての指輪だって。」

 

「あー、ケッコンか。そっかケッコンかー、なるほどねー………………は???」

 

ケッコン、つまり結婚!?愛し合う二人が夫婦になるというアレ!?

艦娘だってケッコンカッコカリ止まりなのに狩娘はマジモンの結婚してんの!?

 

「おーおー、見てわかる程動揺してるねぇ。そう、アタシはこう見えて人妻なのですよ!まー籍は入れてないんだけどね。そもそも結婚式挙げてないし、カリュード諸島には結婚式挙げられる場所もないんだけどねぇ。」

 

見せつけるかのように指輪が嵌っている左手を胸に当てて、フンスと胸を張る北上。

狩娘……つーか艦娘は見た目通りの年齢はしていないとはいえ、女子高生の奥さんとか若妻ってレベルじゃねーぞ!?

ケッコンカッコカリを通り越してマジでケッコンしちまうなんて一体どんな提督なんだろう?

 

 

 

 

 

カリュード諸島にはケッコンカッコカリ制度自体がないということにまず驚き、その代わりに普通にケッコンしている狩娘がいるということにも驚いた。

これだけでも自分の鎮守府にいただけでは知り得なかった事実であり、勉強になった。

 

しかしその一方で新たな問題が発生した。

その問題とは指輪を一瞥したことにより、よりドヨ~ンとした空気を漂わせる大井。

暗い雰囲気のまま「北上さん……提督……。」と小声でブツブツ呟き続けており、非常に不気味。

北上を提督に盗られたことがショックなのか、それとも逆か、はたまたその両方か……。

どちらにせよこんな様子じゃ使い物になんねーぞ。

 

「大井っちはねー、三日に一回はこうなるんだよ。でも心配いらないよ、任せといて。立ち直らせ方も熟知してるから。」

 

小声でオレにそう耳打ちすると北上は凹んでいる大井の前に立ち、敢えて聞こえるようにワザとらしく独り言をこぼした。

 

「………………あー、残念だなー。アタシは大井っちが戦果を挙げてくれるのを楽しみにしてたんだけどなー。モガ鎮守府初心者の天龍にモガの素晴らしさを教えてくれる素敵な大井っちを見たかったんだけどなー。提督もきっと褒めてくれると思ったのになー、本当に残念だなー。こりゃ提督のご褒美のナデナデやハグもお預けかなー、あー勿体ないなー。」

 

誰がどう聞いても棒読みである。

 

「……分かりましたッ!北上さんがそこまで言うのなら私の力を見せましょう!提督にも私の活躍を……まぁ伝えても伝えなくてもいいですけど、出来れば伝えてほしいかなって……。」

 

しかしそんな棒読みに対して分かりやすいくらい簡単に乗せられて、ガバっと立ち上がる大井。

先程までの暗い雰囲気はどこへやら、テンションは完全に回復している様子である。

チョロいヤツだなぁ……えっ?オレもしょっちゅう龍田に乗せられてるって?

別にそんなことないだろ、なぁ???

 

「それでは行きますよッ!天龍さん、くれぐれも私の足を引っ張らないようにね!」

 

「わわっ、ちょっと待て!まだオレ来たばっかだろうが!?」

 

「そだよー、それにまだ球磨姉ぇと木曾が戻って来てないじゃん。勝手に先に行っちゃうのは流石にダメでしょ。」

 

「もうっ!球磨姉さんったらどこで油売ってるのかしら!?」

 

オレの腕を引いて勝手に行こうとする大井、それを北上と二人でなだめる。

こういっちゃ悪いが中々面倒な性格してるな……。

 

 

 

 

 

しょっぱなから個性豊かなモガ鎮守府のメンバーに翻弄される天龍。

しかしこの程度、ほんの挨拶代わりに過ぎないということを今の天龍はまだ知る由も無かった。

 

 

 

 







モガの村といえば受付嬢のアイシャちゃんだよな~。
アイシャちゃん出したいなぁ~、でもこの作品の世界観じゃいくらなんでも無理があるよな~。

そうだ、北上さまにアイシャちゃんの代わりになってもらおう!(名案)
香取さんにだってソフィアの代わりをしてもらったんだし、北上さまなら髪型も似てるからいけるいける!

北上さまといえば相方の大井っちが欠かせないよね~。
そういや球磨ちゃんや多摩に木曾っちもいいキャラしてるよなぁ~。
こうなったらもう全員出すか……。



こうしてモガ鎮守府は球磨型だらけの鎮守府になったのです。




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