天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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大きなサメのぬいぐるみをゲーセンで取ったその日の晩に、海でサメに下半身を喰い千切られる夢を見ました。

ふざけんな!(声だけ迫真)





球磨ちゃんと熊1

 

 

 

 

 

「あれ?ここは……クロオビ鎮守府か?」

 

オレはふと気付くと、クロオビ鎮守府の食堂に立っていた。

見慣れた自分の鎮守府、しかし何かがおかしい。

室内のはずなのに部屋が広く見えたり、逆に狭くも見える安定しない空間。

自分が立っているリノリウム性の床は頑丈な鉄板のようにも、ふかふかのクッションのようにも感じる、硬くて柔らかい大地。

食堂の椅子とテーブルはふと目を離せば増減を繰り返している。

明るいのに暗い、何もかもが矛盾した不安定で不思議な世界。

何より生き物の気配が一切しない、本当にここはいつもの食堂なのだろうか?

 

「そもそも何でオレはここにいるんだ?」

 

自分が直前まで何をしていたのか思い出す……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ、オレはモガ鎮守府に研修に来ていたんだ。

それでソ級を狩猟して無事に鎮守府に帰還した。

狩りの成功のお祝いとオレへの歓迎を兼ねて、鎮守府の料理担当のスパイスと名乗る連装砲ちゃんが豪華な夕食を作ってくれて、それをみんなで食べたんだ。

モガの海の幸をたっぷりと使ったパエリア、美味しかったなぁ……。

 

モガ鎮守府には食堂として使える部屋、というか小屋が無い。

連装キッチンのカウンターで2人くらいまでなら座って食べられるが、大勢でワイワイと食べられる場所はない。

だからみんなで集まって食事を摂るときは、野外に大きなテーブルを置いてそこで食べる。

天気のいい日限定だが、空の下でワイワイとみんなで食べるのはちょっとしたキャンプ気分だ。

 

提督にあーんで食べさせようとする北上と、その北上にあーんで食べさせようとする大井。

提督からあーんで食べさせてもらおう球磨、我関せず黙々と食べる多摩。

おかずの取り合いから喧嘩に発展するパトルとトッピ、その二人をなだめようとする文月。

そしてこんがりと焼かれたドス黄金魚を頭からバリバリ食べる木曾。

騒がしいけど楽しくて、そして美味しい夕食の時間だった。

 

 

 

 

 

夕食が終われば入浴の時間になる。

しかしモガ鎮守府には浴場もない、ないない尽くしの鎮守府なのだ。

なのでここでは農場の隅の方にドラム缶風呂が設置してあり、みんなそこで一日の汚れを落とす。

当然狭いドラム缶風呂なので一人用であり、詰めても二人が精一杯だ。

 

真っ先に入浴に向かった提督と、提督と一緒に入るために後を追おうとして揉める北上と球磨。

そんな二人を尻目にこっそり抜け駆けして、提督と一緒に入浴したちゃっかり者の多摩。

小さい身体を生かして三人で入る文月とPT小鬼群達。

オレは大井と一緒だ、とはいえ流石に一つのドラム缶に二人一緒に入ったりはしない。

洗いっこをした後、交代でドラム缶に入っただけである。

 

モガ鎮守府でも入浴時のユアミシリーズは標準装備であり、正真正銘の裸の付き合いはしていない。

提督と多摩の混浴も着衣入浴であり、やましいこともやらしいこともなかったらしい。

ちなみに提督のユアミ姿は何故か上半身まで隠した女性用のものであり、男性なのに女性的な色気が半端なかった。

 

 

 

 

 

食事を済ませて入浴も済ませたら、後は就寝の時間である。

モガ鎮守府には大きな建造物がなく複数の小屋で構成されているのは最初に説明したが、それは狩娘達の生活の場となる寮も同様である。

提督用、球磨型用、睦月型+PT小鬼群用の三つの小屋があるが、スペースの問題で個人用の個室は存在しない。

当然天龍型の小屋などなく、客を寝泊まりさせるための余った小屋も存在しない。

しかし睦月型のメンバーは文月を除いて現在遠征中なので、オレはスペースの余裕のある睦月型の小屋で寝ることになった。

ちなみに木曾は鎮守府の出入り口である桟橋のすぐ近くに作られた、犬小屋ならぬ熊小屋で寝ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりオレはここに来る直前まではモガ鎮守府で寝ていたハズなんだ。」

 

自分の格好を確認してみれば武器こそ装備していないものの、寝巻き用の黒ジャージから天龍シリーズの装備一式、つまりはいつもの格好にいつの間にやら着替えていた。

当然自分で着替えた記憶もなければ、人に着替えさせてもらった記憶もない。

いくら自分が眠っていたとはいえ、寝ているところを着替えさせようとすれば目くらい覚めるだろう。

何よりそのままクロオビ鎮守府の食堂まで気付かれずに連れて帰るのは不可能だろう。

 

「……ってことはこれは夢か?」

 

自分の中の冷静な部分がそう告げている。

 

「確か明晰夢っていうんだっけ。夢を夢だと理解すれば好きな夢を見られると聞くけど本当かよ?」

 

よし、ものは試しだ!夢の中に龍田を出そう!

龍田はオレの大事な妹、そしてオレの頼れる相棒、大切な片割れ、脳内で作り出すのに一番適した存在だと思っている。

 

「龍田出ろ~、龍田出ろ~!」

 

ひたすら龍田のことを考える。すると食堂と廊下をつなぐ扉が開き、そこから一人の狩娘が現れた。

 

「提督~、サキュバス球磨ちゃんが貴方の夢にお邪魔したクマ~❤」

 

現れたのは龍田ではなく球磨だった。

それも胸と股を隠しただけの水着のような面積の少ない欲情的な衣装に身を包み、赤い角と赤い翼、そしてこれまた赤い尻尾を生やしたテンプレの極み、更にはヘソの下に何ともスケベなデザインのタトゥーを入れた、まさに絵に描いたようなサキュバス姿の球磨ちゃんである。

 

「ええっ、球磨ァ!?何だその格好は!?ひょっとしてオレが無意識の内に望んだのか!?会ったばかりの同性にムラムラしてたっていうのか!?」

 

「あれ、天龍?ってことはまた失敗クマ!?チクショークマ!!どおりで見慣れない場所に出たと思ったクマ!」

 

エロい格好の球磨が現れたことに自己嫌悪に陥っていたが、球磨も球磨で何故か悔しがっていた。

 

「まぁこうなった以上仕方ねークマ。天龍、悪いけど目が覚めるまでお邪魔させてもらうクマ。」

 

「何の話だよ?お前もオレが脳内で生み出した夢の登場人物なんだろ。」

 

思わず球磨に詰め寄るが、球磨はチッチッチッと言いながら人差し指を左右に振る。

小馬鹿にしたようなポーズだが、小悪魔風の衣装でされると非常に絵になる。

 

「確かにこれは夢クマ、ここは間違いなく天龍の夢の世界クマ。だけど球磨は本物クマ!」

 

「いやいや、何言ってんだ?お前がオレの夢の中に入り込んだとでも言うのか?」

 

「その通りクマ、球磨はお前の夢に入り込んだクマ!球磨は天龍の作り出した夢ではなく、正真正銘の球磨本人クマ!何なら明日起きたときに球磨に聞けばいいクマ。」

 

「マジかよ……。」

 

信じらない、というか未だに信じてないけど取り合えず無理矢理納得する。

 

「で、何で球磨はそんな格好でオレの夢に入り込んだんだ?そもそも夢に入るってどういうことだ?」

 

「夢に入るっていうのはそのまんまの意味クマ。球磨には他人の夢に入り込む特技を持ってるクマ!」

 

「いやいや、どういう特技だよ!?というかそんなこと出来るもんなの!?」

 

「修行の成果クマ。心を無にして滝に打たれたり、穴を掘ってその穴を埋めたり、ドラム缶を押し続けていたら出来るようになったクマ!」

 

「いや、そんなの修行どうのこうので出来るもんじゃないと思うんだが。というか後ろ二つは単なる拷問じゃん。第一修行内容が夢に入ることと全然接点ないし……。」

 

「甘いクマ!大井も言ってたけど、やって出来なかったなら出来ないと言っていいクマ。でも見ての通り球磨は実際に出来たクマ!つまりこれは修行さえすれば誰でも出来ることクマ!」

 

「う、うん……。」

 

修行してもそんなこと出来る気がしないし、そもそもどんな修行を積めばいいのかさえさっぱり不明だが、深くツッコむのはやめにする。

 

「ちなみに身体の一部を変化させる特技も持ってるクマ!ほら球磨の顔をよーく見るクマ。」

 

次の瞬間、球磨のアホ毛がハートの形に変化した。

それと同時に瞳の中にもハートが浮かび上がり、舌の形までハートに変わる。

サキュバスを思わせる格好をしていることも合わさって、まさに発情しているかのようである。

 

「これも修行の成果クマ!別に夢の力で誤魔化しているワケじゃねークマ、これは実際に出来るクマ。何なら明日の朝にも改めて見せてやるクマ。ただ瞳を変化させるのはちょっと辛いからあんまり長くは出来ないクマ。」

 

「いや別に見たくないし、興味もない。」

 

「遠慮しなたっていいのに、見たくなったらいつでも言うクマ。」

 

球磨のアホ毛と瞳と舌はあっという間に元の形に戻っていく。

 

「球磨は夢に入る修行の一環で夢を自由に操ることも出来るようになったクマ。この夢自体は天龍の見ている夢だけど、既に球磨の支配下にあるクマ。だからホラ、こんな風に……。」

 

球磨が指をパチンと鳴らすと、クロオビ鎮守府の食堂だったこの場所は一瞬で眩しい日差しと潮風の香りが漂うモガ鎮守府に変化した。

 

「うおっ!?すげぇ!!すげぇけど、お前の支配下って……。あっ、だからオレがどれだけ考えても龍田が出てこなかったのか!」

 

「別に支配したくてやってるワケじゃないクマ。夢に入り込むと嫌でも球磨の支配下になってしまうクマ。こればっかりは球磨にもどうしようもないクマ。そういうものだと思って納得するクマ。更にはコういウコとモ出来ルクマ……。」

 

今度は球磨の肌と髪が病的なまでに白くなり、瞳も赤い光を放ち始める。

そしてサキュバスの衣装は黒い薄手のドレスのようなものに変わり、淫紋と翼と尻尾は全て消えて無くなり、唯一残された悪魔の角は黒と赤の縞模様へ変わっていく。

話す言葉もどことなくぎこちなくなっていく、これらの特徴は間違いなく……。

 

「球磨が深海棲艦になった!?」

 

「変ワッタノハ球磨ダケジャナイクマ。ホラ天龍、自分ノ姿ヲヨーク見テミルクマ。」

 

言われるがままに天龍が自分の姿を見下ろしてみると、着ていた天龍シリーズはいつの間にか消えており、その代わりに胸と股だけを隠した水着のような服に着替えていた。

下腹部にはピンク色のハートを象ったタトゥーが入れられており、お尻からは尻尾、背中には翼、そして左右のこめかみからはねじれた角が一本ずつ生えていた。

要するにさっきまでの球磨の格好であり、サキュバス天龍ちゃん爆誕というわけである。

 

「なんじゃあぁぁぁこりゃあぁぁぁ!?」

 

「夢ノ世界ハ球磨ノ思イ通リクマ。ダカラ自分ノ身体ヲ変化サセルコトモ簡単ダシ、他人ノ服ヲ変エルノダッテ朝飯前クマ。服ドコロカ別ノ生キ物ニシチャウコトダッテ出来ルクマ。」

 

「ええぃ、元に戻せ!恥ずかしいだろうが!」

 

「マァ深海棲艦モードハ球磨モ落チ着カナイシ、普通ニ戻スクマ。」

 

球磨が再び指を鳴らすと天龍の衣装は元の天龍シリーズ一式へと変化した。

角も翼も尻尾もタトゥーも全て消えた、プレーンな天龍ちゃんである。

一方の球磨はサキュバス姿に戻るかと思いきや、アシラ一式へと変化した。

 

「球磨だって恥ずかしいものは恥ずかしいクマ、着替えられるなら着替えるクマ。それあの衣装は提督とクマクマする為に三日三晩掛けて考えたものクマ。それ以外の用途で使うのはちょっと嫌クマ。」

 

「クマクマする?」

 

「ニャンニャンするって意味クマ。ニャンニャンだと多摩っぽいから球磨らしくクマクマって言ってみただけクマ。」

 

「えっと……提督とクマクマするってことは元々は提督の夢に入っていやらしいことをする予定だったってことか?最初に出てきたときに提督って言ってたし。」

 

「その通りクマ!何たって球磨は提督が大好きクマ、愛してるクマ、控えめに言ってケッコンしたいクマ!」

 

「えっ?いやケッコンって言っても、そもそもお前の提督は北上とケッコンカッコガチしてただろ?」

 

いきなり飛び出した爆弾発言。

そもそも球磨は大井をそそのかして北上から提督をNTRせようとしてたのではなかったか?

 

「北上は球磨が提督とケッコンしたいことを知ってるクマ。」

 

球磨が両手をパンパンと二度叩く、すると今度はその場に北上が現れる。

服装はパジャマでもエロ衣装でもなく、スカラー一式である。

 

「うおっ、北上!?お前も本物か!?」

 

「この北上は球磨が作ったものクマ、球磨の記憶の中の北上クマ。」

 

 

 

 

 

『球磨姉ぇも提督とケッコンしたいの?うーん、他の狩娘なら嫌だけど球磨姉ぇならいいよ。だけど条件付き、提督と球磨型全員でジュウコンすること!みんなが提督のことを好きなのは知ってるよ、球磨姉ぇだけ認めたら多摩姉ぇと大井っちが可哀想でしょ。だからこれが達成出来たらケッコンを認めたげる。』

 

 

 

 

 

北上はとんでもないことをさらりと言い放つと、煙になって消えてしまった。

 

「球磨型全員でジュウコン!?な、何言ってんだ?」

 

「言葉通りクマ。多摩も大井も提督のことが大好きってだけクマ!だけど既に北上がケッコンしてるから遠慮してるんだクマ。だから多摩と大井を説き伏せて全員で幸せになるクマ!」

 

あぁ、球磨型狩娘のしあわせ家族計画ってこれのことだったのか。

 

「多摩はもう陥落したクマ、だけど大井が手強いクマ。あんだけ提督好き好きオーラを出していながら未だに首を縦に振らないクマ。提督のことは好きだけど北上のことも好きだから、二人の間に割り込むのが嫌なんだクマ。本人公認なのに頭が固いクマ。だから球磨は大井を落とすために日々努力してるクマ!」

 

「努力って姉の立場を利用してあの歌を無理矢理歌わせることか?」

 

「それだけじゃないクマ!寝てる大井の枕元で提督とケッコンしたいと一晩中ささやき続けたり、提督が入った後のお風呂の残り湯やそこで見つかる抜け毛を大井の食事にちょっとずつ混ぜたりと色々工夫してるクマ!これで少しずつ大井は提督とのケッコンを意識するようになるクマ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思わず「バカじゃねーの!?」と言わなかった自分を天龍は褒めたくなった。

ハッキリ言ってドン引きしているし、それって単なる嫌がらせだろとも思っているけど、言わないし態度にも出さず、あーそうなんだーと分かったフリをする。

深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている。なら最初から覗かなければ覗き返されることもない。

天龍はこれ以上踏み込むと引き返せなくなるラインというものを生まれて初めて感じたのであった。

 

 

 







書いてるうちに最初に考えていたものと違うものが書き上がることってありますよね?

球磨ちゃんがこんなイカれたキャラになったのもそのせいです、でも反省はしていない。



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