ライズで遊び倒すと言ったな?
あれは嘘だ。
リアルが忙しくて全然遊べてないです。
オサイズチ倒した時点で私の村クエストは止まっている。
せめて推しモンのドスバギィを倒して装備一式造りたい。
まどろみの中から意識が覚醒していく。
目覚めと共に自我が芽生え、それと同時に知識が流れ込んでくる。
周囲は未だ暗闇、だけど五感はしっかりしている。
私は誰だろう?そしてここはどこなんだろう?どうして周りは真っ暗なんだろう?
そうだ、私は艦娘だ。そして私の艦種は……。
そんなことを考えている間に暗闇に光が差し込んでくる。
いや、これは扉が開かれているんだ。
それによってここがどこなのか何となく察しが付いた。
だったら私が最初に言うセリフも決まっている。
「ドイツ海軍所属、潜水艦U-511です。ユーとお呼びください。少し遠出してきました。よろしくお願いします……。」
目覚めたユーが初めて目にしたのは、三度笠を被った若い女性だった。
ほっそりとした身体に、絹糸のように艶めく長い青髪。
見た目麗しい艦娘達と比べても、負けず劣らず愛らしい顔つき。
お世辞にも胸があるとは言えないがその代わりに安産型のお尻をした、スレンダーなスタイルの美人がユーのことをじっと見ていた。
次に周囲を見渡してみればここはコンクリート打ちっぱなしの薄暗く狭い部屋で、雑に積まれた段ボール箱や出しっぱなしの工具が目に付いた。
それらからここは工廠なのだと当たりを付ける。
「………………。」
「えっと……あ、あなたがユーのアドミラール……つまり提督ですか?」
ひたすらこちらを見続けてくる女性に気後れしつつも、勇気を出して話しかけるユー。
「キャー!何この子すっごく可愛い!お人形さんみたーい!」
「むぎゅ!?」
次の瞬間、女性は破顔してユーを抱き締めると思いっきり頬擦りを始めた。
「あ、あのっ!?」
「えへへ~!嬉しいなー、嬉しいなー!こんなキュートな子が来てくれるなんて幸せ~!」
女性の突然の奇行にユーは目を白黒させながらもなんとかコミュニケーションを図ろうとするものの、ユーを愛でることに夢中の女性には聞こえていない。
「あーっ!やっぱりこうなったでち。ほらトモちゃん、早く離して。ユーが困ってるでち。」
女性の後ろからひょこっと姿を現したのはピンク色の髪をした潜水艦伊58、通称ゴーヤである。
「あっ、ゴーヤ!見て見て!新しい仲間が増えたよー!それもこんなに可愛い子!」
「それは分かったから、早く離すでち。このままじゃ話が進まないよ?」
「ゴーヤもしかして妬いてるの?安心して、ゴーヤもとっても可愛いよー!」
「わぷっ!?そうじゃないでち!!離すでちーーーっ!!」
ユーを離したかと思いきや今度はゴーヤに抱き着く女性と、ジタバタと暴れるゴーヤ。
このやり取りは10分近く続いた……。
「ユクモ鎮守府にようこそー。私がここの提督だよ。私のことは気安くトモちゃんって呼んでいいからねー。」
「アド……提督?」
「違―う!ト・モ・ち・ゃ・ん!!」
「と、トモちゃん?」
「イエーーース!!」
ユーとゴーヤを散々撫で繰り回した後、ようやく自己紹介を始めた提督改めトモちゃん。
「トモちゃん、ユーはドイツの子だからイエスじゃないよ。確かヤーでち。」
「やー?どいつの子?ゴーヤ、どいつって何?誰のこと?」
「そのどいつじゃなくて国のことでち、ヨーロッパのドイツ!!そんなベタベタのダジャレなんか聞きたくないでち!」
「えっ……?あ、あぁ~、そのドイツね?も、もちろん分かってたよ!私これでも学生時代は友達に天才トモちゃんって呼ばれたこともあるんだからね!今のはただのお茶目だよー!」
(それ絶対に天才じゃなくて天災でち……。)
ゴーヤのツッコミに一瞬ワケが分からないという顔をしたものの、ようやく意味を理解したのか取り繕うトモちゃん。
どうやらダジャレではなく本気で勘違いしていたらしい。
「それにしてもユーって確か建造では手に入らないはずでち。トモちゃんはどうやってユーを造ったの?」
「えっ、そうだったの?」
「提督なのにそんなことも知らないの!?ユーは通常では手に入らない珍しい子なんでちよ!!」
「そんなこと言われたって、普通に建造したら完成したんだよ?」
「こ、これが天災たる由縁……。」
「えへへ~、天才だなんて。そんなに褒めたって何も出ないよぉ~。でも強いて言うならここはカリュード諸島だからね、常識は通用しないんだよ。常識なんか投げ捨てろー!」
「そもそも投げ捨てるだけの常識を持ってないでち!」
ユーを差し置いて盛り上がるトモちゃんとゴーヤ。
このやり取りも10分近く続いた……。
「ユーちゃん、ほったらかしにしちゃってごめんね。」
「あっ!?いえいえ、大丈夫です。」
「塩対応!?やっぱり怒ってる?ほら、ゴーヤも早く謝って!」
「いや、どう考えてもゴーヤは悪くないでち……。」
さっきからずっと自分そっちのけでコントのようなやり取りを続けているトモちゃんとゴーヤ。
まだ造られたばかりで状況を全然把握していないユーは訳も分からずそれをぽけーっと見ていたのだが、急に会話を振られたことでつい適当な返事をしてしまい、それを怒っているんだと勘違いしたトモちゃんは慌ててゴーヤにも謝らせようとする。
「いや、本当に怒ってないよ!ユーはちょっとびっくりしただけなんです!」
このままでは会話が進まないと思ったユーは強引に話を進めることにする。
「ユーはドイツ生まれのドイツ育ちだからヤーパンには詳しくありません。だからたくさん迷惑を掛けると思うけど鎮守府のこと、そしてヤーパンのことを色々と教えてもらえると嬉しいです!」
「うんうん、任せて!ユクモ鎮守府はユーのことを歓迎するよー!鎮守府のこともヤーパンのこともたっくさん教えてあげるからねー!」
「ダンケ!」
「これからよろしくねー!……ところでゴーヤ、ちょっといい?」
「なんでち?」
ようやく話が進んだことに安堵するユーを他所に、トモちゃんとゴーヤはひそひそと内緒話を始めた。
「あのね、だんけとやーぱんって何?」
「ゴーヤだってドイツ語に詳しいわけじゃないから何でもかんでもは分かんないよ。……っていうか意味も分かんないのにヤーパンについて教えるって安請け合いしたの?」
「ごめんねー。」
「仕方ないでちね……。ダンケはありがとうって意味だよ。」
「うんうん、それでやーぱんは?」
「ヤーパンは……うーん?ドイツ語でヤーはイエスのことだったから、直訳するとイエスパン?」
「イエスパン?何それ?」
「言ってみただけでち。イエスパン、自分で言っておいてなんだけど意味不明でち。話に脈絡がなさ過ぎだし、そもそもドイツ語だとパンはパンって呼ばなかったような……?あーもう、はっちゃんがいてくれたらドイツ語で悩むことはなかったのに~。」
「ユクモ鎮守府に伊8はいないもんねー。」
ゴーヤはトンチンカンな推理をしているがパンはポルトガル語であり、ドイツ語だとブロート(brot)である。
そもそもパンは英語だとブレッド(bread)になるのでイエスとパンはつながらない。
ゴーヤはイエス(yes)がヤーだということは知っていたが、ヤーの綴りがjaということまでは知らなかったようだ。
知っていればヤーパンの綴りがJapanだということに気付けたのに……。
Japan、つまり日本のことである。
そもそもユー本人に直接聞けばいいのではという当然の疑問が出るが、ゴーヤはトモちゃんのテンションに付き合ったり新しい仲間の加入やらドイツ語の登場というイベントの連続でそこまで頭が回っていないのである。
ちなみにトモちゃんには最初からユーに聞くという発想自体が無いのであった。
「それではユーちゃんのユクモ鎮守府着任記念として、私からのプレゼントだよー!」
そう言ってトモちゃんがユーに渡したのは旧スク水、いわゆるてーとく指定の水着である。
ちなみにセーラー服の部分はない、スク水単品である。
「えっ?でもそれって確か改造されたユーが着るものだよね?ユー改造どころかまだここに来たばかりだよ?」
スク水を見たユーは困惑を隠せない。
ちなみにトモちゃんが差し出した水着はゴーヤと同じデザインのものであり、呂500デザインのものですらないのだが、ユーも自分が改造されると大体そんな感じになると大雑把に知っているだけで、具体的にどうなるかは知らないので水着が違うことには全く気付いていない。
「あ、そっかー。狩娘のお迎えって久しぶりだから忘れてたよ。」
「誰もが通る道でち。」
「???」
よく分からないといった顔をしたユーと、それを見て懐かしいものを見る顔をするトモちゃんとゴーヤ。
「あのねー、ここはカリュード諸島って言う島なんだー。」
「なるほど、ここはヤーパンのカリュード諸島。」
「……うん?まぁいいや。そうそう、ここはヤーパンのカリュード諸島!そしてカリュード諸島の艦娘は船の力ではなくて狩人の力で戦う狩娘っていう存在になるらしいんだ!」
「えっと……らしいって?」
「ごめんでち、肝心のトモちゃんがその辺あんまり理解してないの。とにかくユーは船の艦娘じゃなくて狩人の狩娘としてこの世に生を受けたと思ってもらえばいいでち。」
「そ、そんなことないよー!私だってちゃんと分かってるもん!カリュード諸島がヤーパンで、水着が艦娘で、着任記念が狩人だって!」
ゴーヤの解説にトモちゃんは意味不明な言い訳をしているが、ユーはそれに見向きもせずに目を瞑ると自分の胸に手を当てて一度深呼吸をする。
すると自分の中に船の力とはまた違う、熱く滾る未知の力を感じ取った。
「狩娘……。なるほど、今のユーはUボートの艦娘じゃなくて、イェーガーのゼーレを持った狩娘なんだね?」
「えっと……そう、その通り!(イェーガー?ゼーレ?あれだよね、マンガのキャラクターの名前やアニメに出てくるの組織の名前だよね?ユーちゃんってマンガやアニメが好きなのかなー?外国人って日本のオタク文化に興味ある人多いもんねー。)」
またしてもドイツ語が分からないのに適当に返事をするトモちゃん。
イェーガーは狩人、ゼーレは魂のことであり、ユーは割とそのまんまなことを言っている。
狩娘は獲物を屠ることはするが、決して人類を補完したりはしないのだ。
「そして狩娘は狩人だから艦娘と違って艤装を持ってないし、製造直後は服も下着以外何も着ていないんだよー。」
トモちゃんに言われて自分の姿を確認したことにより、ようやく艤装もウェットスーツも身に着けていないことに気が付いたユー。
今のユーが着ているのはドイツの民族衣装の一つであるディアンドルによく似た下着、いわゆるMHXの女性用インナーType7である。
「というわけでコレ着てねー。」
「え、ここで?」
「大丈夫大丈夫、一瞬で着れるから!」
改めてユーに水着を渡すトモちゃん。
この場で着替えるように促すトモちゃんに驚くユーだったが、言われた通りに着替えてみれば着替えは文字通り一瞬で終わり、更には最初に着ていたインナーまで消えていた。
「それじゃあゴーヤ、ユーにこの鎮守府を案内してあげて。私はちょっとやることがあるからねー!(棒)」
トモちゃんはそう言うや否や、明らかに挙動不審な歩き方で工廠から出ていく。
最後のセリフもどう聞いても棒読みであり、素人目に見ても何か隠しているのがバレバレだったが、服が一瞬で変わったことに気を取られていたユーは全く気付かない。
「やれやれ、トモちゃんにも困ったもんでち。んじゃ、鎮守府案内するから付いてきてね。」
隠し事の下手なトモちゃんにため息を吐きつつも、ユーを連れて工廠を出るゴーヤ。
テレビで演技してた時はあんなに上手だったのに、それ以外で演技させるとどうしてあんなにヘタなのか?
トモちゃんはクロス・ダオラでヒロイン『ルリ』を演じており、作中では既にネオウェポンズに囚われているので主人公コモンドの回想シーンくらいでしか出番はないものの、儚い雰囲気をした薄幸の美少女として人気がある。
そんなルリの正体がこんなポンコツ提督だと知られたら、ファンは幻滅するのではなかろうか?
そんなことを考えつつもゴーヤはトモちゃんに与えられた任務を遂行すべく歩き出す。
そういえば自分が着任した当時もこんな感じだったなぁ~、なんて懐かしさも感じながら……。
映画のモンハン見ました。
ミラ・ジョボビッチ演じるアルテミス大尉だけど、バイオハザードのアリスの印象が強すぎてアリスにしか見えねぇ……。
あとガレオスまずそう、よい子のみんなはアプケロスを食べようね!