PS版ジョジョ第三部格ゲーのスーパーストーリーモードでダービー兄とポルナレフのギャンブル勝負を初見プレイで二回連続勝利したというのが私のプチ自慢。
流石に三回連続はなかった。
こんなところで運使わんでもいいのに……。
「ふわああぁぁぁ……あったけェ~~~、生き返るゥ~~~。」
「割と本気で死を覚悟したよ、寒いって辛いんだねぇ……。寒冷地行ったことなかったから知らなかった。」
氷雪島のベースキャンプに建てられたテントの中、そこで天龍と川内は火を起こして暖を取っていた。
「しかしこれからどうすんだ?このままじゃ調査どころか、外に出ることすらままならないぞ?」
「それは問題ないよ、ほらここに……。」
川内が手に取ったのはテントの隅に束になって吊るされているトウガラシ。
「トウガラシ?そういやトウガラシに含まれるカプサイシンには体を温める効果があるって聞いたことがあるけど、ひょっとしてそれをかじりながら探索でもするつもりか?流石にトウガラシの丸かじりは勘弁してほしいんだが……。それにトウガラシだけで耐えられる寒さじゃないぞ?」
「そこは安心していいよ、そのまま食べるつもりはないから!」
川内は近くに置いてあった箱からすり鉢とすりこぎを取り出すと、トウガラシ数本をゴリゴリとすり潰していく。
あっという間に粉末状になったトウガラシ、それを空きビンの中に入れる。
続けてポーチから魔法瓶のポットを取り出し、ビンにお湯を注いでいく。
やがてトウガラシはお湯に溶け出していき、見るからに辛そうな真っ赤な液体が完成した。
「出来た、これこそ寒い地域の必需品!一口飲むだけで全身ポッカポカになるスペシャルアイテム、その名もホットドリンクだ!」
「いや、それってトウガラシの粉末をお湯で溶いただけの単なるトウガラシの汁じゃ……。」
「ホットドリンク!」
「そんなこと言われたって、誰がどう見てもトウ「ホットドリンク!!」……分かった、もうそれでいいよ……。」
天龍は川内からホットドリンクを渡されると、飲むように促される。
見るからに辛そうな赤い液体に天龍は顔をしかめるものの、鼻を摘まむと一気に飲み干す。
「ん゛ん゛っ、辛ッ!?……あれ、暖かい?」
予想していたとはいえ、脳を貫くような強烈な辛味が天龍を襲った、しかしそれと同時に身体の奥底からポカポカと暖かな熱が生まれてきた。
今の状態ならたとえ全裸で雪の中に飛び込んでも平気でいられるという確信がある。
「ね、効くでしょ?調合技術の発達によってにが虫のエキス無しでもここまでちゃんとしたホットドリンクが作れるようになったんだ!」
「にが虫?」
「うん、にが虫。とても苦いけど高い滋養効果のあるエキスが採れる虫。ホットドリンクを作る際にはそのエキスを混ぜる必要があったんだけど、今じゃ不要なんだ。にが虫調達するのって結構面倒だし、何より辛いトウガラシと苦いにが虫を混ぜて作ったホットドリンクってこの世のものとは思えないような味がしたからね!味噌や醤油で味付けしないととてもじゃないけど飲めたものじゃなかったよ。」
調合技術の向上だと川内は言うが、すり鉢でトウガラシを砕くだけのこの単純作業に技術もへったくれもないと天龍は思うのであった。
「それじゃ身体も温まったことだし調査に行こー!」
ホットドリンクで寒さへの耐性を得た天龍と川内はキャンプから出発した。
混じりけのない美しい純白の雪が降り積もった白銀の世界、ホットドリンクにより寒さを気にする必要が無くなった天龍は周囲の風景を楽しむ余裕すら出てきた。
「おい見ろよ、鼻の短いマンモスだ!」
「えーっと、あれはポポといって見た目は大きくて強そうだけど実際はとても大人しい草食種だよ。家畜として飼育されることもあるみたいで、実際に飼ってる鎮守府もあるんだって。」
「トナカイっぽい生き物もいるじゃん!」
「そいつはガウシカ。ポポと同じ草食種だけど、ポポよりもずっと気が荒いみたいで迂闊に近付くと怒ると角を振りかざして襲ってくるんだって。」
雪景色の中を歩いていると野生動物の姿が見えてくる。
天龍が質問し、それに対して川内はノートでチェックしながら答えていく。
「しかし思ってたより自然に溢れた島なんだな。極寒の地っていうからもっと不毛な土地なのかと思ってたけど、ポポやガウシカみたいな動物がそこら中にブッ!?」
「天龍!?」
草食種ばかりの平和な光景を前に完全に油断していた天龍。
そんな天龍の顔面にどこからともなく飛んできた雪玉が直撃した。
「プハッ、ペッペッ!だ、誰だぁ!こんなくだらねーイタズラをしやがったのは!?」
「天龍、アイツだ!」
「アイツ?」
「ヴォッヴォッヴォッ!」
川内が指差す先、そこにいたのは白いヒヒのような姿をした動物。
白ヒヒは鋭い目付きで天龍達のことを睨んでおり、ポポやガウシカと違って明らかに好戦的な生物であることが窺える。
「アイツが雪玉を投げてきた犯人!」
「ゲッ、長門じゃん!白い長門だ、雪長門!!」
「えーっと、あれはコンガじゃなくてブランゴっていうらしいよ。寒冷地に生息する白い牙獣で、知能が高く群れで狩りを行う。足跡の痕跡から察するに群れを統率する大型の個体も存在すると考えられてるんだって。」
いつぞやの長門騒動を思い出す猿の出現に驚く天龍と、冷静にノートをめくる川内。
「群れぇ?アイツ一匹しかいないじゃん!一匹で二人の狩娘に勝てるワケないだろ!誰に喧嘩売ったのか教えてやらぁ!」
未知の牙獣とはいえ相手はたったの一匹、何より顔面に雪玉をぶつけられたことでイラついていた天龍はブランゴに灸を据えるべく一歩を踏み出す。
「ヴォッ!」 「ヴォッ!」 「ヴォッ!」 「ヴォッ!」 「ヴォッ!」
「えっ?」
そんな勇み足の天龍を出迎えたのは、雪の中から飛び出してきた何頭ものブランゴ達。
2対1の状況は、数秒も経たないうちに2対10へと変貌した。
BGM:白い闇の住人/ドドブランゴ
「「「「「「「「「「ヴオオオォォォ!!」」」」」」」」」」
「「に、ににに逃げろ~~~ッ!!」」
脱兎のごとく逃げ出す天龍と川内と、それを追うブランゴの群れ。
こちらは元々洋上での運用を目的とした艦娘の流れを汲む狩娘。
陸上でも人並みには動けるものの、それでも慣れの問題もあって海と比べると明らかに動きに精彩を欠く。
ましてやここは雪や氷で覆われた氷雪島、雪で足を取られたり氷で滑ったりと思い通りに動くことすら一苦労である。
一方のブランゴはこの極寒の環境に適応した生物であり、足場の悪さもなんのその。
むしろこの劣悪な足場の方が動き易いと言わんばかりの軽快な動きで迫ってくる。
二人がブランゴ達に追い付かれるのも時間の問題であった。
「ハアッハアッハアッ、チクショー!全然振り切れねぇ!どうするッ!?このままだとマズいぜ!」
「そんなこと言われたって……あっ、あそこ!」
川内が指差す先にあったのは岸壁にポッカリと開いた洞窟。
「ど、洞窟!?あそこに逃げ込もうってのか!?そんなとこ入ったら逆に追い詰められちまうだろ!?」
「逃げ切れないなら迎え撃つのみ!洞窟の中なら雪は積ってないから動き易いし、壁を背にして戦えば少なくとも囲まれることはないでしょ!何よりやられっぱなしで悔しくないの!?」
「わーったよ、そこまで言うならやってやろうじゃねぇか!いい加減逃げるのにも飽きてきたところだ!地の利さえ得られれば、数の差があったとしてもおサル程度に負けやしねぇ!」
洞窟に飛び込んだ天龍と川内はそのまま走り続け、やがて背を預けるのに丁度いい壁を見つけるとブランゴを迎撃すべく振り返った、振り返ったのだが……。
「あれ?あいつらいねーぞ。」
「えっ、マジで?」
振り返ってみればブランゴは一匹もいなかった。
先程までの喧騒はどこにもなく、あるのは静寂のみである。
「洞窟に入ったことで諦めてどっか行ったのか?」
「ブランゴの縄張りの外に出られたのかもね。」
実は二人が洞窟に駆け込んだ時点でブランゴは引き返していたのだが、走るのに夢中の二人はとっくの昔にブランゴがいなくなったことに全く気付いておらず、手頃な壁を見つけるまで無駄に走り続けていたのだった。
「ブランゴから逃げ切ったのはいいけどよ、洞窟って薄暗いし何か出てきそうで不安になるな。」
「そう?私としては暗い方が落ち着くけどなー。」
ブランゴがいなくなったことで緊張の糸が切れ、それにより走り続けたことによる疲労が徐々に込み上げてきた二人は息を整えるついでに駄弁って時間を潰す。
「そりゃお前が夜戦好きだからだろ……ひゃあっ!?」
突然、天龍の首元にヒンヤリと冷たくてプニプニとした感触の物体が触れた。
反射的に物体を掴み取って見ると、そこにいたのは白くブヨブヨとした皮膚に包まれた、全長40㎝はありそうなヒルのような姿をした生物であった。
「ギィ……ギィ……。」
「うわっ何だコイツ、気持ち悪ッ!」
「そんなに気持ち悪いかな?私はこういうの結構好きだよ。プニプニでスベスベだし、生き物として未成熟な感じが普通に赤ちゃんみたいで可愛いと思う。」
「お前精神状態おかしいよ……。」
ホラー映画に出てくるクリーチャーのような薄気味悪い外見のヒル状生物を可愛いと言い張る川内に天龍はドン引きである。
「多分天井に張り付いてたのかな、天龍を獲物だと思って落ちてきたのかも?ヒルに似てるから血を吸ったりしてね?それにしても天龍がひゃあって、ひゃあだってプププ……。」
「ええい笑うな~!それよりこいつの情報はないのかよ!?」
「ん~、ノートを見る限り書いてないっぽいね。つまりこれって新発見だよ新発見!新種の調査も大事な任務、写真撮ろう!そのままそいつ持っといて!」
「ちょっ、他人事だと思って無茶言うな!こいつ噛み付いてこようとすんだよ!本当に血を吸われたらどーしてくれんだ!?」
天龍に掴まれたままのヒルはギィギィと鳴きながら身をよじって暴れる。
たまに首を伸ばして短い牙が並んだ丸い口で噛み付いてこようとするので油断も隙もあったものではない。
必死にヒルを抑える天龍をよそに呑気にカメラの準備を始める川内。
ボトッ……ボトッ……ボトッ……。
「「えっ?」」
そんな天龍と川内の頭上から何匹ものヒルが降ってきた。
一匹だと思って油断したところに大群が現れるとは、何やらデジャブを感じる展開である。
しかもそれらのヒルは全長1メートル程はあり、明らかに最初の個体より大きい。
何よりヒルの大群は二人が入ってきた洞窟の入り口の方角に陣取っており、逃げようにも退路を塞がれてしまっている。
「どうすんだよ、この状況?こいつら身体はデカいし数も尋常じゃないぞ、こんなのに集団で血を吸われたらミイラになるって!」
「だっ、大丈夫!見るからに動きは遅そうだし、体型から考えて攻撃方法は噛み付き一択!ブランゴに比べたら戦闘力は確実に劣ってるはず!」
「そっ、そうだよな!さっきのに比べりゃこのくらい!」
天龍は持ってたヒルを放り捨てると背中の太刀に手を掛け、川内もカメラを取り出すのをやめ、背中の狩猟笛を意識しながら身構える。
次の瞬間、天龍と川内の前に巨大な生物が落ちてきた。
背部は光沢を帯びた白色をしており、腹部は逆に暗い赤色をしている平べったい巨体。
目も鼻も耳もなく、短い牙がびっしりと並んだ丸い口のみが存在する顔。
本来目があるべきところにはウネウネと脈動するピンク色の部位があり、これがまた嫌悪感を煽る。
尻尾と思わしき部位は頭部と同じ形状をしており、まるで頭部が二つあるようだ。
周囲に眷属のようにヒルを侍らせるその姿は、まさにヒルの王と呼ぶにふさわしい。
BGM:零下の白騎士/ベリオロス
「また新種!?」
「ウヒイッ!?何だ何だ何だ、今まで見てきた中で一番気持ちわりぃバケモノだ!ひょっとしてブランゴどもが引き返したのってこいつがここにいたからなんじゃ……って危ない、何か吐き出した!」
突然の事態に動揺している天龍と川内に向けて怪物はおもむろに口から紫色をした粘液を吐き掛けた。
粘液は二人の間をすり抜けてそのまま後方に着弾し、ゴポリという音を立てつつ刺激臭のあるガスを発生させる。
振り返らずともこの臭いだけで理解した。
この粘液の正体は猛毒であり、浴びてしまえばひとたまりもないということが。
「うわ、こいつ毒吐くのかよ!?今度はどうすんだ!?新種の調査も大事だが、この状況でまだ調査なんて言わないよな?解毒薬なんか一本も持ってないのに、こいつとやり合うのはマズいぜ!」
「うん、流石にこれは想定外。せめて写真の一枚でもほしかったけど今度ばかりは逃げるよ!」
「と言っても出口の方はあいつに塞がれてる、どこに逃げんだ?」
「そりゃ洞窟の奥の方だよ!どこかに抜けられるかもしれないでしょ!?」
「しゃーねーな。行き止まりだったら恨むからな!」
「その時は一緒にやられてあげる!それにクエスト申請は出してるから、負けてもレンタクが来てくれる。少なくともそのまま食べられちゃうようなことはないから安心して!」
「ハッ、そりゃありがたいこった!」
本日二度目の逃走劇。
今回は足元が安定しているので先程よりも早い速度で走れているのだが、怪物もその鈍重そうな見た目からは考えられない程のスピードで迫ってくる。
しかも走り方がこれまたおぞましく、つい振り返ってしまった天龍は振り返ったことを後悔した。
「ヤベッ、今見たが距離が近くなってんぞ!」
「このままじゃいずれ追い付かれるってこと!?だけどこの洞窟多分行き止まりだ、私達の出す音が向こう側から反響してる!出口があるのなら音が返ってくるはずないもん!このまま進んでも逃げられない以上、どうにかして撒かないと!」
「撒くっつったって相手はデカい上に速いし、しかもこのまま進めば行き止まりときた!こうなったらどっちかが足止めでもするか!?」
「それはどうしようもなくなった場合の……あっ、あれ見て!あそこの壁の上、何かいる!」
「まさかこの状況で新手……何だありゃ?小人か!?」
このままではどうやっても逃げ切れない。
そんな状況に絶望すら感じ始めたとき、川内が洞窟の壁に何かを見付けた。
そこにいたのは角の付いた茶色の毛皮を被った小人のような生き物がおり、片手にはモリを持っている。
「ウィッキキーッ!!」
「グボォ!?」
小人はモリを構えると、小柄な体格からは想像出来ないほどの勢いで怪物に投げ付けた。
モリはそのまま怪物の眉間へと突き刺さり、怯んだ怪物は思わず足を止める。
「「「「「ウィキーウィキーウィッキキー!!」」」」」
怪物が動きを止めた瞬間、地中から小人の仲間が大勢飛び出しモリの集中砲火を開始した。
モリの雨を浴びている怪物は完全にバランスを崩しており、前にも後ろにも動けずされるがままである。
「すげぇ、あの化け物の動きをあぁも簡単に止めるなんて……ん?」
「キッキッ!」
「ひょっとして付いてこいって言ってんのか?」
「キッ!」
ふと天龍が違和感を感じ視点を下げると、最初にモリを投げた小人がすぐそこに立っており、天龍の服の裾を引っ張っていた。
引っ張られるがままに付いていくと、すぐ近くの洞窟の壁に人間が匍匐前進をしてようやく通れるレベルの小さな横穴が開いており、小人は迷うことなく穴の中へと入っていった。
「ここに入るの!?どうする天龍、この小人信用する?」
「このままここでじっとしててもしょうがないだろ、もしもこれが罠ならその時また考えりゃいい!本当はスカート履いたままこんなとこ通りたくなかったがそれは我慢だ!川内、この穴に逃げ込むぞ!」
「しょうがないなぁ。」
天龍と川内はまず先に背負っていた武器を穴へ押し込むと、続けて穴の中に潜り込んでいくのであった。
みんな大好きギィギとギギネブラ。
初見でエリアの隅に置いてあったタマゴの正体が分からずに、鉱石と勘違いしてピッケルで掘ろうとしたのは自分だけじゃないと信じたい。