天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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ライズの新作ももうすぐなのに、未だにアイスボーンの話を書いてる作品があるらしいっすよ。
まぁこの作品のことなんですけどね。





天龍ちゃんとアイスがボーン!4

 

 

 

 

 

背に天龍と川内を乗せたまま雪の森を駆け抜けるウルグ。

ときおり立ち止まっては地面の匂いを嗅ぎ、そしてまた走り出す。

それを繰り返し、やがて森を抜けて開けた雪原に出た。

 

「ヲウンッ!」

 

雪原に出たウルグは周囲を確認して立ち止まるとその場にペタリと伏せた。

そして首だけで振り返り、天龍と川内の方を向いて一咆えする。

 

「どうしたんだコイツ?」

 

「降りろって言いたいんじゃない?」

 

天龍と川内がウルグの背中から降りてみると、ウルグはスッと立ち上がり森の方へと引き返していく。

やがてウルグの姿は雪や木々に紛れて見えなくなった。

 

「さて、ここで降ろされたからにはこの辺にあの背ビレがいるはずだけど……。」

 

そう言いながら辺りを見渡そうとするが、見渡す間もなくヤツは来た。

 

「川内ッ!あれを見ろ!」

 

二人の前に雪を掻き分けながら現れたのは、写真に写っていたのと全く同じ黒い背ビレ。

背ビレは雪の中を泳いでいるとは思えないほどスムーズかつ悠然と進んでおり、そのスピードは二人の全力疾走をも上回っている。

背ビレは二人を認識しているのか、雪を撒き散らしつつどんどん接近してきていたのだが……。

 

「消えた!?」

 

二人の目前まで来た途端、背ビレは雪の中へと沈んで消えていった。

 

「嫌な予感がする、このままここに立ってるのはマズいよ!」

 

天龍と川内は己の直感に従いその場から飛びのいた、次の瞬間……。

 

 

 

 

ドオォォォォン!!!

 

 

 

 

 

さっきまで二人が立っていた場所から雪を突き破り、巨大な生物が飛び出してきた。

その姿は分かりやすく言えば足の生えた古代魚といった感じであり、ここだけで判断すればユーモラスな生物に思える。

しかし一目で肉食であることが分かる口腔からはみ出た太く鋭い牙、こちらを獲物としか見ていない青白い瞳、全身を覆う黒と黄色の硬質な鱗、一際目立つ巨大な一本角、そして18メートルはあろうかという巨体がこの生物の危険性をこれでもかとアピールしていた。

 

 

 

 

 

『クアァ……バラララララララ!!!』

 

 

 

 

 

 

雪の上に胴体で豪快に着地した古代魚は大きく息を吸い込むと咆哮を上げる。

 

「ど、どう見ても深海棲艦じゃないよな?」

 

「そだね、これは現地の大型モンスター。泳ぎに適した形に進化した結果、深海棲艦と似た姿になっただけ。背ビレの正体が深海棲艦じゃないって分かった以上、本来ならここで任務を終わらせてもいいんだけど……。」

 

「分かってる!ボワボワが見てるってんだろ!?あそこで啖呵切っといて今更引き下がれるか!任務に関係ないからってここで帰ったら、一生ボワボワに軽視されたままになるだろ!それに今後また任務でこの島を訪れるようなことがあったとき、ボワボワに敵対されてたんじゃ支障をきたす!そんなの認められるか!」

 

「そこまで分かってるならいいわ、なら私達がやるべきことは一つだね。」

 

「あぁ!コイツを討伐して、オレ達の勇気と実力を見せ付けてやれ!」

 

「ターゲット、暫定的に凍魚と仮称。これより交戦を開始する!」

 

 

 

BGM:凍て地に轟きし猛哮

 

 

 

二人の闘志を感じ取ったのか、大量の雪を巻き上げながら敵意剥き出しで突進してくる凍魚。

来るのが分かっていれば避けるのは容易と、二人は散開しようとしたが……。

 

「くっ、分かっちゃいたが足元が雪だから動きにくい!」

 

雪により退避が遅れてしまった天龍、その隙を見逃さない凍魚は突進の勢いを利用して飛び上がった。

 

「うおおっ!?」

 

このままでは潰される、そう判断した天龍は恥も外聞もかなぐり捨てて、その場から全身を投げ出すような動きで回避を試みる。

これは通称ハリウッドダイブ、正式名称は緊急回避と呼ばれるれっきとした回避方法なのだが、攻撃を避けるためとはいえ、顔面から雪の中へ突っ込むことになった天龍の姿は無様の一言であった。

直撃は避けたものの、天龍のすぐ側に凍魚の巨体が落下したことで大量の雪が舞い上がる。

舞い上がった雪は当然のように倒れている天龍の背中へと降り注いだ。

 

「畜生、やりやがったな……って、なんだこりゃあ!?」

 

攻撃を避けた天龍はその場で立ち上がるとすぐさま反撃しようとするが、自分の意に反して腕はピクリとも動かない。

ふと自分の身体を見下ろせば、両腕と胴体を覆うように雪の塊が付着しており、腕が全く動かせなくなっていたのだ。

その姿はまるで雪だるまである。

 

「この雪おかしいぞ!ただの雪なのに固まってて全然取れねぇ!」

 

この固まった雪の性質にはカラクリがある。

凍魚の体表からは雪を固める性質を持った粘液が染み出しており、この粘液を使うことで凍魚は身体中に雪を纏っているのだ。

体表から剥がれ落ちた雪にも当然雪を固める粘液が付着しており、その雪を浴びたことにより天龍の身体も雪で固められてしまったというわけなのだ。

 

「クソがっ!このままじゃ手も足も……いや、足は出てるか。とにかく手が出ねぇぜ!」

 

「こっち来て!私が叩き割るから!」

 

「イテッ!?」

 

雪だるま状態のまま、その場から走って逃げだす天龍。

川内が天龍を覆う雪に狩猟笛を叩き付けると、思いのほかあっさりと雪は剥がれ落ちた。

 

「感謝するぜ川内、反撃だッ!」

 

再び雪の中に潜行するべく、その場で腹這いになって雪を掻き分けている凍魚。

その隙だらけの背中に天龍は太刀を振り下ろす。

 

 

 

 

 

ズムッ……。

 

 

 

 

 

しかし太刀から伝わってくるのは、今まで感じたことのない妙な手ごたえ。

直撃させたにも関わらず、まるでダメージが通った様子はない。

 

「ゆ、雪だ!身に纏った雪で攻撃を受け止めやがった!?」

 

凍魚が全身に纏った雪の塊は、衝撃を和らげるクッションの役割を果たす。

硬過ぎず、柔らか過ぎない絶妙な硬さを持った雪の装甲が、太刀の斬撃を包み込むように無効化したのだ。

 

「天龍下がって!そういうものを引っぺがすなら打撃武器の出番!」

 

天龍と交代で飛び出した川内は凍魚の背中に狩猟笛を思いっきり叩き付けた。

当然のように雪の装甲に阻まれる狩猟笛の一撃、ここまでは先程の太刀の下りと全く同じである。

 

 

 

 

ピシッピシッ……バキン!

 

 

 

 

 

しかしここからが違った。

狩猟笛を受け止めた雪の装甲はヒビが入り、そのまま砕けて表皮から剥がれ落ちた。

 

「ハンマーや狩猟笛は叩き壊すのなら得意なんだよね~。それ、もう一丁!」

 

流れるような動きで凍魚の巨大な角にも狩猟笛を叩き付けると、その衝撃で頭部の雪も同様に剥がれ落ちる。

 

「どう?これで少しは攻め易くなったでしょ?」

 

「上出来だ!今度こそ喰らいやがれ!!」

 

雪の無くなった凍魚の背中に再び太刀を振り下ろす、今度こそ確かな手ごたえ。

凍魚の皮膚に斬撃の痕を刻み込み、ワンテンポ遅れて傷口から舞い上がった血飛沫は、外気に冷やされてあっという間に赤い結晶に変わる。

 

『バラララララララ!!』

 

凍魚は一瞬痛みに悶えたものの、素早い動きで天龍達から距離を取ると、雪の中を円を描くような動きでグルグル泳ぎ始めた。

 

「何やってんだ……って、ああっ!?」

 

回転を止めた凍魚の全身は先程の巻き直しのように、再び雪の装甲で覆われていた。

 

「どーすんだよ、もう一度雪を剥がそうにも何度も同じ手が通じるとは思えねーし。このままじゃキリがないぜ?」

 

「うーん、そうだ!」

 

「おっ、何か閃いたのか?」

 

「相手が雪を纏うなら、纏えなくしちゃえばいいんだよ。」

 

「纏えなくする?そんなこと言ったってどうやって?辺り一面雪まみれだぜ?」

 

「ほら、ここに来るまでにウルグに乗せてもらったでしょ。その時に景色を眺めてたんだけど、途中でスケートリンクみたいに凍り付いた海があったのを覚えてない?そこなら雪がないから装甲を纏われる心配も無いし、足場も安定しているから有利に戦えるよ!」

 

「なるほど。でもこの雪原がアイツの縄張りなんだろ?普通生き物って縄張りから出ないものなんじゃないか?どうやってここからおびき出すんだ?」

 

「それにはこれを使う。」

 

川内が天龍に見せたのは狩猟笛。

 

「狩猟笛は笛というだけあって音を鳴らすことが出来るんだけど、この音にはモンスターの注意を引き寄せる効果があるんだよね。それを利用してアイツをここから連れ出す。」

 

「了解!フォローはしてやるからしくじんなよ?」

 

 

 

 

 

『カンカンカカコカン♪カカカカココココカンコンカン♪』

 

 

 

 

 

狩猟笛、那珂ちゃんマイクから軽快な音が鳴り響く。

 

『クアァ……?バルルルル!!!』

 

その音を聞いた凍魚はにわかに興奮し始めた。

尾ビレを雪に叩き付け、鼻息は荒くなる。

 

「よっしゃ、乗ってきた!乗ってきたんだよな?あの魚が那珂ちゃんのファンだったってことはないよな?」

 

「那珂ちゃんには悪いけどそれはないでしょ?それじゃ氷の海までひとっ走りするよ!」

 

『バラララララララ!!!』

 

走り出す二人と、それを追う凍魚。

明らかにスピードに差があるが、そこは天龍が雪玉を投げ付けて凍魚の気を逸らすことで補う。

幸い雪原と氷海の距離はそこまで離れておらず、二人は5分と掛からず氷海に到着した。

 

「おおっと!?氷の上って油断してると滑るな!これで本当に有利になんのか!?」

 

「それなら油断しなきゃいいでしょ!それより仕上げの演奏よ!ここで引き返されちゃ堪らないからね!」

 

雪原を離れ、雪が浅くなってきたことで全身を埋めることが出来なくなった凍魚は普通に地面を走って二人を追ってくる。

雪がないのを嫌がった凍魚が引き返すのを阻止するため、川内は再び那珂ちゃんマイクを構えた。

 

 

 

 

 

『カンカンカカコカン♪カカカカココココカンコンカン♪』

 

 

 

 

 

『バラララララララ!!!』

 

演奏により判断力の低下した凍魚は、とうとう氷の上に足を踏み入れた。

 

「よっしゃ!作戦成功だ……って何か揺れてねーか?」

 

「え、何?演奏の音でよく聞こえない。」

 

作戦成功に喜ぶ天龍だったが、ふと足元から揺れを感じた。

しかし演奏を続けている川内にはよく伝わっていないようだ。

 

「だからホラ、足元が何だか揺れてるような……うわっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

急に揺れが激しくなり、思わずふらつく天龍。

最初は凍魚の巨体が乗ったことで氷が割れ始めたのかと思ったのだが、実際はそうではなかった。

なぜなら揺れの震源地はあろうことか川内の足元から発生していたからだ。

揺れにより演奏どころでなくなった川内がその場で尻もちをつくと、尻の下の氷に少しずつヒビが広がっていく。

 

「川内のケツが氷を割ったのか!?」

 

「こんなときに何ワケの分かんないこと言ってんの!?それよりこれどうなってんの!?」

 

 

 

 

 

ドオオオォォォォ!!!

 

 

 

 

 

「ぐわああああ―――――ッ!!」

 

「せ、センダイ―――ン!!」

 

川内の真下の氷を突き破って巨大な影が飛び出す。

かち上げられた川内は見事な車田飛びを披露し、べしゃりと顔面で氷の上に落下した。

氷の中から飛び出してきたのは手足の生えたサメとでもいうべき巨大な化け物。

化け物は氷の上に着地すると、川内の方に視線を向ける。

 

「川内しっかりしろ!!」

 

「うぐ、失敗した……。いいアイデアだと思ったのに、ターゲット以外のモンスターも刺激しちゃった……。」

 

「そんなこと言ってる場合か!?サメの化け物だぞ、化け鮫だ!」

 

音を鳴らした張本人である川内の方に視線を向けていた化け鮫だが、自分以外の巨大な生物がいるのに気が付くと、そちらに視線を動かす。

そこにいたのは当然凍魚、凍魚と化け鮫の視線がぶつかり合う。

 

 

 

 

 

『ギャアアァァァァ!!!』

 

 

 

『バラララララララ!!!』

 

 

 

 

 

お互いに敵意を高め合う化け鮫と凍魚。

想定外のモンスターの出現に、戦況は混沌を深めていくのであった。

 

 

 

 







それでは皆さんよいお年を。



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