天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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天龍ちゃんと楽しい採集2

 

 

 

 

 

あれから虫あみを振るい続けた結果、釣りミミズに続いてにが虫とかいう青い虫に、セッチャククロアリとかいう蟻んこも数匹ずつ採れた。ミミズにアリって、小物ばっかで達成感が無いな……。

それにしても何で海の上でアリが捕れるんだ?これ羽アリじゃなくて普通の働きアリじゃん。ついでに言うと虫あみも2本ダメになった。脆過ぎだろ、虫あみって消耗品だっけ?

 

 

 

 

 

「これで鉱石に木材に虫と色々な素材を集めたな。もうそろそろ帰っていいんじゃないか?」

 

「それはダメよぉ、これは採集ツアーじゃないもの。れっきとしたクエストだからノルマを達成する必要があるわぁ。」

 

あ、そうですか。でもノルマって何すんだろ?またイ級でも狩るのか?

 

「今回のクエストの目的はね、黄金魚5匹の納品よ。」

 

「おう……ごん……ぎょ……?新手の深海棲艦か?」

 

「もうっ、そんな訳ないでしょ。魚よ、魚。」

 

えぇ~、深海棲艦と戦うならともかく魚を捕るとか漁船の艦娘にでもやらせりゃいいじゃん……いやいや漁船の艦娘なんていなかったわ。

本土の艦娘ならイベントとかいってサンマ釣りをすることがあるらしいけど、狩娘も似たようなことやる必要があるのかぁ~。

 

「で、どこで釣りゃいいんだ?足元は全部海じゃん。」

 

「この諸島の魚は1ヶ所に群れる習性があるから適当なところに釣り糸を垂らしても何も釣れないわよぉ。心配しないで、私が釣りポイントに案内してあげるわぁ。」

 

 

 

 

 

どんどん進む龍田に着いて行く。釣りポイントって遠いんだな、どこまで行くつもりなんだか?

 

それにしてもいい景色だよなぁ。白い雲、空を飛ぶ海鳥、そして海の上を歩く2匹の無茶苦茶デカい黄色のダンゴムシ、まさに大自然………………ん、ダンゴムシ?

 

「何だあれ!?今度こそ新手の深海棲艦か?」

 

「あぁ、あれねぇ。あれはクンチュウっていうの。この海域に生息していたダイオウグソクムシがアタリハンテイ力の力場の中で生活しているうちに突然変異したものよぉ。」

 

えぇ~、アレがダイオウグソクムシ?ダイオウグソクムシって確か最近の水族館で人気の深海生物だろ。オレが知ってるのと色も形も全然違うじゃん、サイズも人間並みだし……。

そもそも深海生物が何で海面を歩いてるんだよ、アメンボじゃあるまいし当たり前のように海面を歩くのやめろ!これもう突然変異ってレベルじゃないだろ、核実験の影響で怪獣化したっていう方がまだ説得力あるぞ!?

 

 

 

 

 

オレが変わり果てた水族館のマスコットに呆然としていると、クンチュウは体を丸めてこちらにコロコロと転がって来た……って危ねえっ!ぶつかるかと思ったぜ。

 

「もうっ天龍ちゃん、そこはぶつかるトコでしょ?ほらほら空気読んで。」

 

嫌だよ!リアクション芸人じゃねーんだから!

 

「さてと、おふざけもこのくらいにして……クンチュウは深海棲艦じゃなくて、れっきとした野生動物よぉ。だけど縄張り意識が強いのか狩娘を見つけると攻撃してくるの。深海棲艦との戦闘中に横から体当たりされて、その隙に深海棲艦にやられた狩娘は数知れないわ。だから深海棲艦じゃないけど狩りの対象として認められているのよぉ。」

 

深海棲艦だけじゃなくてグソクムシとも戦わなきゃいけねぇのか、狩娘も結構大変なんだな。

まぁいいか、巨大化したとはいえ深海棲艦ですらないグソクムシなんかにこのオレが負けるわけねぇだろ?転がってなきゃ動きもトロいから狙いやすいぜ、喰らいなっ!

 

 

 

ガキンッ!

 

 

 

「うわっ、弾かれた!?」

 

オレが振り下ろした骨の一撃はクンチュウの黄色い甲殻に直撃するも、まるで手応え無く弾き返された。

こいつ無茶苦茶硬い!?いくら骨製の武器だとはいえ、深海棲艦のワ級やイ級に通用したんだぞ?グソクムシすら倒せねえってどういうことだよ!?深海棲艦よりグソクムシの方が強いっていうのか?そんなの嫌過ぎるだろ!

 

「期待を裏切らないわねぇ、天龍ちゃん。クンチュウの甲殻はとっても硬いから並大抵の武器じゃ弾かれて斬れ味が落ちるだけよぉ。その代わりクンチュウは衝撃に弱くて軽く蹴られただけでもひっくり返っちゃうの。ほら見て、さっきのクンチュウも天龍ちゃんに斬られた衝撃で裏返ってるでしょ?クンチュウはお腹が柔らかいから、ひっくり返してお腹を攻撃すればいいのよぉ。」

 

そう言いながら龍田はひっくり返ったクンチュウのお腹を操虫棍で突いた。途端に体液を撒き散らして動かなくなるクンチュウ。ホントにお腹が弱いんだな……こう言うとなんか腹の調子が悪いみたいだ、言い方を考えよう。

 

さて、言われた通りにもう1匹のクンチュウに蹴りを入れてみる。蹴られたクンチュウはサッカーボールのように転がっていき、止まると同時にひっくり返ってジタバタともがき始めた。

ボディがガラ空きだぜ!振り下ろした骨は先程とは違いクンチュウに深々と突き刺さる。これには耐えられないのか、先程のクンチュウと同じように緑色の体液をまき散らしてそのまま動かなくなった。

 

「せっかくだから剥ぎ取りましょ?クンチュウの硬い甲殻は優秀な防具になるのよぉ。」

 

こんな硬い奴に剥ぎ取りナイフの刃が通るのかと不安になったが、ナイフの刃は硬い甲殻など無いも同然と言わんばかりにクンチュウを解体していく。ひょっとして骨よりナイフで戦った方が強くね?

 

「天龍ちゃん、剥ぎ取りナイフで戦おうって考えてるでしょ?残念だけどそれは無理よぉ。ナイフの刃の鋭い斬れ味もアタリハンテイ力のお陰だから普通に使えばただの鈍らよぉ。基本的に倒した相手を解体するときにしか使わないし、戦闘中でも相手の身体に乗った際に弱らせるために刺す程度ねぇ。普通に振り回しても全然斬れないし、ヘタすると折れちゃうわよぉ?そもそもナイフじゃリーチが無さ過ぎるわ。相手はノロマなゾンビじゃないんだから、そんな変な縛りプレイしたって誰も得しないわよぉ?」

 

また考えを読まれた!?どうなってんの?オレってひょっとしてサトラレなのか?

しかしナイフが折れたら剥ぎ取れなくなるな、そりゃ困る。それにオレは太刀で戦うって決めたんだ。まだほとんど使わないうちから他の武器、ましてやナイフに浮気なんて真似は出来ねぇぜ。

 

若干ズレたことを考えながらも2匹のクンチュウを解体した結果、連中の甲殻が手に入った……っていうかまるでエビの脱皮殻のようにクンチュウの甲殻が尾頭付きで綺麗に剥ぎ取れた気がするが、気にしないことにしてポーチに詰める。

しかしポーチにクンチュウが2匹も入ってるって考えると少し気味が悪いな、次にポーチに手を突っ込むときには気を付けよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もテクテクと歩き続けてようやく目的地に辿り着いた。ここが釣り場かぁ、見た目は周囲の海と変わらないが泳ぎまわる魚のシルエットが肉眼でもハッキリと見える。思ったよりも浅いところを泳いでるんだな。

 

「やっと着いたわねぇ。じゃあさっそく釣りをするわけだけど、まずはお手本として私が釣るからよぉーく見ておいてね?」

 

そう言って龍田はポーチから釣竿を取り出すと、テグスにルアーを着けて海に投げ入れた。

そういやオレ、そもそも釣竿なんて持ってたっけな?持ってないと釣り以前の問題だぞ。

そんなワケでポーチに手を突っ込んで探してみる。

 

「おっ、この硬くて細い手触りは釣竿………………じゃないな。あっ、そうかこれってクンチュウの触覚だ!釣竿にしちゃザラザラしてるからなんか変だと思ったぜ………………ゲーッ!?あれ程気を付けようと思ってたのにさっそく触っちまった!?」

 

鳥肌を立てながらも我慢して再度ポーチを探るとようやく釣竿とルアーが出てきた。

なんだ、ポーチの中に釣竿専用の収容スペースがあんのかよ。しかし釣竿なんて買った覚えも入れた覚えも無いんだが、それなのに入ってるってことはこれはポーチのセット品ってことか。

 

「ちょっと天龍ちゃん、騒ぐと魚が逃げちゃうでしょ?それによぉーく見ててって言ったじゃない、ほら魚が掛かりそうよぉ。」

 

言われた通りに水面に浮いたウキを眺めると、すぐ真下に垂れ下がったルアーに数匹の魚が群がっているのが見えた。そしてとうとうルアーに1匹の魚が喰い付く。すかさずリールを回す龍田、そして水面を突き破って現れたのは金色に輝く美しい魚。

 

「あらあら、1回目で釣れちゃったわぁ♪幸先良いわね、これが今回の目的の黄金魚よぉ。」

 

「え、コレが?確かに金色だけど、どう見てもアロワナじゃん!これって淡水の熱帯魚じゃねーの?」

 

「なぁんだ、そんなことが気になるの?この島では海水や淡水なんて考えてもしょうがないわよぉ。海でアロワナやデメキンが釣れるのは普通のことだし、川でイワシやマグロが釣れるのも普通のことなんだから。」

 

普通とは一体……うごごご!まぁいいや、どうせ考えたって分からねぇんだ。とにかくオレも黄金魚を釣ろう。

 

とりあえず龍田と同じようにルアーを海に投げ入れる。するとさっきと同じように魚が集まってくる…………が、全然喰い付かない。何でだよ、偽物の餌だってバレてんのか?

 

「落ち着いて天龍ちゃん、ルアーは釣り餌に比べて食いつきが悪いのよぉ。慣れればなんてことないんだけど、天龍ちゃんは釣り初心者でしょ?こういうときはさっき採った釣りミミズを使うといいわよぉ。釣り餌はルアーと違って魚に食べられちゃうから何度も使いまわすことは出来ないけど、その代わりに喰い付きはバツグンなんだからぁ。」

 

一旦ルアーを引き上げ、今度は餌を釣りミミズに変えてもう1度挑戦してみる。……おおっ、明らかにさっきよりも魚の反応がいいな。

そしてようやく1匹の魚の影が餌に喰い付いた。

 

「この瞬間を待っていたんだーっ!おりゃあああぁぁぁ!!」

 

リールを巻きつつ釣竿を思いっきり引く、そして釣れたのは………………あれ?これはどう見ても魚じゃねーな、拳より少し大きなサイズの緑色の団子みたいなのが釣れたけど海藻の塊か?おっかしいなぁ、確かに餌に喰い付いたからゴミを釣ったとは思えねーんだけどな?

 

疑問を感じつつも釣り針から海藻を外そうとすると、いきなり海藻がウネウネと動き出した!?

 

「うわっ、なんだこれ?気持ちわりーな。」

 

「あらっ、それツカミダコじゃない?珍しいわねぇ。」

 

ツカミダコ?よく見てみると海藻の塊だと思ったものには眼があるし、足や口もある。れっきとした動物みたいだ。

 

「それはツカミダコっていってね、身体中に海藻を生やして擬態する習性を持つこの島固有の珍しいタコなの。本物を見るのは私も初めてよぉ。」

 

ふーん、なんかメンダコに似てるな。だけどこれホントにタコか?足が7本しかないし、それに吸盤もないな。あ、口を広げて威嚇してきた……うわ、えらく立派な歯が生えてるな。タコに歯なんてあったっけ?

 

釈然としないが、とりあえず生きたままのツカミダコをポーチに詰めてもう1度釣りミミズを餌にして竿を振るう。

再び集まる魚の群れ、そして……。

 

「きたきたきたーっ!どっせーい!!」

 

次に釣れたのは……何だこれ?魚の骨じゃん。目の前でクネクネと身をよじらせる、これまた拳骨より少し大きな魚の骨。魚の骨なんだけど魚にしちゃ妙なシルエットをしているな。尻尾が2本も生えてるし、その尻尾の先にも頭……というか頭骨がある。

骨なのに生きてるってアンデッドか?そもそも骨が餌を食べるのか?

 

「今度はガロアイカねぇ。ツカミダコに負けず劣らずとっても珍しい種類のイカでね、食べた獲物の骨を身にまとう習性を持つこの島にしかいない珍種よぉ。これも本物を見るのは初めてねぇ。」

 

これイカなのか……。あっ、ホントだ。釣り針を咥えている魚の頭骨の下に本物の顔がある。ツカミダコと違って立派な吸盤とカラストンビもあるな。2本の尻尾だと思ってたのは触腕か。

あまりタコに見えないツカミダコに比べりゃ遥かにイカっぽいな、マンメンミ!

 

呑気に釣り針に引っ掛かったままのガロアイカを観察していると、段々とガロアイカの体色が赤くなってきた。そーいやイカって興奮すると赤くなるって聞いたことがあるな、つーことは今のコイツは怒ってんだな。

確かこういうのを鬼おこあきつ丸とかカムチャツカイヤッッホォォォオオォオウって呼ぶんだろ?ん……イカと目が合った?

 

「キイーーーッ!!」

 

「うぷっ、何だこれ……痛てててて!!」

 

怒ったガロアイカはオレの顔に向かって口から赤黒いスミを吐いてきた、そんでもってこのスミが付いたところがまるで感電したかのように痺れて痛い。コイツひょっとして毒持ってんのか!?

 

「あらあら、顔に掛かったの?ガロアイカの吐くスミには毒は無いけど、代わりに不思議な成分が含まれているから触れると痛いのよぉ~。ほらハンカチ、よく拭いといてねぇ。」

 

「頼むから、そういう大事なことは先に言ってくれ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく痛みも引いてきたのでガロアイカも生きたままポーチに詰めて釣りを続ける。ポーチの中でツカミダコとよろしくやっといてくれ。

 

「それにしても天龍ちゃん、初めての釣りでツカミダコとガロアイカを釣り上げるなんてすごいわねぇ。今まで調査団が発見したことすら片手に数えられる程度で、生きたまま捕らえた記録はないんじゃないかしら?ましてや釣竿で釣り上げるなんて偉業と言ってもいいかもねぇ。2匹とも珍し過ぎて食材としても武具の素材としても価値は見出されてないけど、これって自慢出来ることよぉ。狩娘の中でも特に釣りが上手な娘といったらメゼポルタ鎮守府の曙ちゃんだけど、天龍ちゃんも曙ちゃんに負けないくらい釣りの才能があるかもしれないわねぇ。」

 

「肝心の黄金魚がまだ1匹も釣れてねーけどな、それにメゼポルタ鎮守府ってどこだよ?」

 

「メゼポルタ鎮守府はこの島にある鎮守府の中でも特に規模の大きい鎮守府よぉ、クロオビ鎮守府なんて比較にならない程のねぇ。そしてそこに所属している曙ちゃんはねぇ、なんとカジキマグロを3000匹も釣り上げて太公望っていう銘の釣竿型の大剣を手に入れた凄い狩娘なのよぉ。」

 

いやいや3000匹もカジキマグロを釣ったって、深海棲艦との戦いはどーしたんだよ?狩娘ってそんなにヒマなの?それにカジキはそんなに釣られて絶滅しないのか?これじゃあ狩娘っていうより釣娘だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍田と楽しくおしゃべりしていると、再度釣竿に手応えを感じた。流石にもうコツも掴んだもので手際よく釣り上げる。

釣れたのは金色に美しく輝く……アロワナじゃねーな、この丸っこい姿はオコゼかな?

 

「あっ、黄金魚じゃない!おめでとう天龍ちゃん。」

 

「えっ、これさっきお前が釣った魚と全然違うじゃん。」

 

「言いたいことは分かるけど、それはどっちも同じ魚なのよぉ。アロワナ型の魚もオコゼ型の魚も生物学上はまったく同じ黄金魚、こんなに見た目が違うのに不思議よねぇ。」

 

「色以外に共通点が見当たらないんだけど……。まぁいいや、とにかくこれで黄金魚を2匹手に入れたしノルマまで後3匹だな!終わりが見えてきたぜ!」

 

「…………あのね天龍ちゃん、黄金魚は釣っただけで終わりじゃないのよぉ。狩猟クエストならターゲットの深海棲艦を倒せばそれで終わりになるからレンタクが迎えに来てくれるけど、採集クエストは納品してようやく終わりなの。つまり帰るまでがクエストなのよぉ。」

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだまだ終わらない採集クエストに、これならまだ狩猟の方が楽だと感じてげんなりする天龍なのであった……。

 

 







みんな大嫌いな黄金魚釣り。
天龍田がひたすら黄金魚釣りをし続けるシーンだけを書いても絵面が代わり映えしなさ過ぎて需要無いんで、巻いていきます。



3だけ黄金魚のデザインが大きく変更されていて、ついでと言わんばかりに小金魚のデザインも様変わり。3rd以降元通りになってるけど、あれには何の意味があったんだろ?



クンチュウ:みんなご存じ黄色のダンゴムシ。クック先生のおやつにして、フルチャージガンナーの天敵。
ただしこの海域のクンチュウは龍田の言う通りグソクムシが変異したものであり、見た目こそ同じだが厳密には違う生物である。
実は陸上にも生息しており、そっちにいるのはMH本編に出て来るのと全く同じ個体である。


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