書けば出ると信じて書いてみた。
ピックアップに間に合わせるために眠気を堪えて突貫工事で作り上げたのでストーリーが意味不明かもしれませんがご了承ください。
――こたつとは、人類の生み出した至上の対寒宝具ではなかろうか。
「はぁー……暖かい」
時は人類史を巡る決戦を終えた一月。
そんなとりとめのないことを考えながら世界を救った少女、藤丸立香はカルデアの自室に置いたこたつに入ってのんびりとしていた。
足元からぽかぽかと伝わる、人に尽くす最良を突き詰めた優しい暖かさは何物にも代えがたく、頼りになる後輩は車輪がついてたら夢の万能兵装だなんて言ってたけど別に動かなくてもこたつは偉大なものだと思う。
もし人理焼却を止められなければ、こうしてこたつでぬくぬくしていることもなかっただろう、立香は人類史を懸けたグランドオーダーを共に戦ってくれた全ての英霊達に改めて深い感謝の念を抱いた。
そんな安い感謝いらないとか言われそうだが気にしてはいけない。
「あー、でもこうしてると眠くなるなあ……」
懸命に起きようとする努力も空しく瞼がだんだんと落ち始め……
「おかーさん?」
こんこん、と小さくドアを叩く音に立香の肩が跳ね上がる。
聞こえてきた声は幼い少女のものだ。
「入ってもいい?」
「いいよ、おいでジャック」
「うん!」
手元のリモコンを操作してドアを開けるとここ最近よく見る白髪の少女――ジャック・ザ・リッパーが飛び付いてきた。
ぎゅうっと抱きついてくるジャックの頭をいつものように撫で、せっかく来てくれたのに寝るのは良くないのでむんと体に力を入れて眠気を追い出す。
「おかーさん大丈夫? かいたいする?」
「大丈夫。でも解体は嫌かなー」
「むー」
不機嫌そうに頭をグリグリ押し付けるジャックの頭を撫でつつ、再びこたつに足を入れ直す。
立香の動きを真似て寄り添うようにこたつに入ったジャックだったが、やがてするするとこたつに潜りはじめた。
いつものことなので立香は驚きも咎めもせず、ジャックが寝やすいよう足を揃えて膝枕の準備をする。
「ここ、おかあさんのなかにいるみたい……すぅ……」
太ももに何かが乗る感触を覚えた瞬間にそんな声が聞こえ、やがてそれは安らかな寝息へと変わる。起こさないようにそーっとこたつの中を見ると、ジャックはあどけない寝顔を見せていた。
「おかあさん、か」
ジャックは初めてこたつに入った時から時々こうして潜って寝ることがある。
彼女――正確に言うと『この子達』の願いは母のお腹の中に帰ることで、こたつで寝るとそれに非常に近いものを感じるのだとか。
流石に腹を掻っ捌かれたくないので彼女の願いは叶えたくても叶えられずいたのだが、まさかこたつがそれを解決してくれるとは思わず、眠るジャックにほっこりする気持ちとこたつで解決したことへの微妙な気持ちがせめぎあう。
「
「マスター、入っていいかしら」
またしばらくは動けないなあ……とミカンに手を伸ばした所で聞こえたノックと二つの声。
彼女たちに返事をせず手元のリモコンを無言で押し、目のあった二人――ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィとナーサリー・ライムにこたつを指差してからしーと人差し指を口に当ててこたつを捲ってやると、納得のいった顔で静かにこちらにやって来た。
「ジャックたら、またマスターのこたつに潜り込んでたのね」
「私たち、三人で遊ぼうと思ってジャックを探してたんですが姿が見えなくて。たぶんここかなーって思って来たんです」
「なるほど、流石ジャックの友達ね」
ジャックを蹴らないようこたつに足を入れず腰をおろした二人と会話をしているともぞもぞとこたつから白い頭が出てきた。
「う~ん……あ、ジャンヌにナーサリー」
頭だけを出し、ぬうっと二人の方を向く。
「ジャック、あんまり
「おかーさん、めいわくだった?」
「ううん。子供はいっぱい甘えていいの」
「じゃあ解体していい?」
「そんなことしたらマスターが死んでしまうわ。我慢なさい」
「むー」
やいのやいの騒ぐ三人は微笑ましく、自然と頬が弛んでしまう。
立香も三人に交ざって会話したりミカンを食べさせてあげたりしながら時間を過ごしていたのだが、ここで問題が起きた。
「ジャック、私ちょっと行ってくるね」
「おかーさん、行かないで」
「うっ」
「おかーさんといっしょに入るこたつ、おかーさんの中みたいだから……だから、いっしょに入ろ?」
こたつに自らの求めていたものを見いだしたジャックだが、どうやら彼女がおかーさんと慕う自分が同伴するのが条件に入っているらしく立香がこたつから出ようとするとひき止めてくるのである。
今日のようにナーサリーとジャンヌがやって来ては、ジャックを諭して連れ帰るのがお決まりになっている――
「すぐ、すぐ帰ってくるから」
「や!」
「聞き分けなさいなジャック。マスターが困ってるわ」
「やー!」
――のだが、大体ジャックの説得は軽く見積もっても15ターンを越える長期戦になる。
普段なら立香も二人とともにのんびり優しく説得するのだが、今回ばかりは悠長にしていられない事情があった。
「ジャック、私ちょっとトイレ行きたいんだけど……」
「うー」
「少しくらい我慢してください。
幸い、早めに言い出したのでそこまで切羽詰まってはいないが、いつか時間切れが訪れる。それまでにジャックをどうにかして説得できなければ待ち受けるのは悲劇だ。
15ターンで済めば間に合うが、それ以降だとけっこう厳しい。どうする藤丸立香。
「マスター、失礼します」
だが、世界は立香を見捨てなかったらしい。
クッキーを持ってランスロットがやって来たのだ。
「あ、ランスロット。その手に持ったクッキーは?」
「エミヤ殿が我が王のためにクッキーを焼いてくれたのですが、いくつかはマスターに渡してほしいと」
「ありがとうランスロット。エミヤにもお礼言っておいてくれる?」
「承知しました」
「よろしくね。ほらジャック、クッキー食べよ?」
「おかーさん食べさせて」
だが偶然入ったランスロットの援護も虚しくジャックは引きこもったまま。
いよいよこれは長期戦もやむなしか……とランスロットに目をやり、
「待って!」
その時、立香に電流走る。
「マスター、どうしましたか」
「ランスロットって確かマシュにコート買ってもらってたよね。今だけ借りれないかな?」
「ええ、宜しいですが……何に使うので?」
「私がこたつになる」
それじゃお願いねとランスロットを立ち去らせ、ナーサリーにフォウくんを抱えて歩きやすいようにと裁縫好きの英霊達が作った肩掛け式の抱っこひも型礼装を取ってきてもらう。
立香の考えた作戦は単純で、礼装でジャックを抱えて上から体格差のあるランスロットのコートを着込むことで自身をこたつに置換するだけ。
子供だましみたいな手だが効果は抜群だったようで、ジャックは上機嫌にこたつからの離脱を認めてくれた。
「おっとと」
「ジャックは赤ん坊じゃないけれど、大丈夫かしら?」
「大丈夫、軽いから」
「大丈夫ですよナーサリー。
むふー、と得意気に胸を張るジャンヌにそうだねと返して、再び転びそうになる。
ジャック自体は軽いのだが、それでもフォウと違って人の重みがある。それを礼装で抱っこしてるせいかどうにも重心が取りにくい。
「あったかーい」
それでもほっこりしてるジャックを見れば降りてなんて言えない訳で、立香は時々左右を歩く二人に支えてもらいながらカルデアの廊下を歩く。
すれ違う英霊やスタッフ達の視線がお腹に集中している気がしたが、そろそろ我慢の限界が近かった立香はそこまで気が回らない。
目的地になんとか到達した立香は全力でジャックの説得にかかり、十分だけ猶予をくれた彼女を二人に預けて個室へと駆け込んだ。
「マスター、大丈夫だったの?」
「うん、何とか」
結論から言うと、立香は間に合った。
無事に難題を乗り越えられた達成感を胸に、行きと同じくジャックを抱えてマイルームへと戻る。
エミヤの作ってくれたクッキーをみんなで食べ、ていつものように四人で話をしたりしながら立香は取り戻した平和な時間を過ごしていった。
後日、ジャックを抱えてランスロットのコートを羽織った立香が妊婦に見え、ランスロットとの間に子供が出来たのではという憶測がカルデア内を飛び交うという事態が発生しその噂の火消しに奔走することになるのだが、それはまた別の話。
後日、トイレに行くときの視線にちゃんと気付いていれば良かったなぁ……と人類史を取り戻した少女は疲れた顔でそう語ったという。
書けば当たる? そんなことなかった
50回回したってダメなものはダメみたいです