fate/stay night_Short long days   作:のんべんだらり

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今回はやや短め。
その分次話が長くなりそうな気がするので帳尻は合うよね的な。



読む専用さん、誤字報告ありがとうございました。



■Erica

 

1

 

 

柳洞寺の参道入口に踏み入った足音が、丑三つ時の深い静けさに響く。

雑草一つない石畳が百段近く、境内までの長い道のりを支え、一段ごとに黄泉へと近づいている錯覚を訪問者に与える。寺なのであながち間違ってはいない。

今のところ異変はない。あったら土筆になんらかの変化があるだろうと、警戒は崩さずに魔術師たる少女は中学の頃は何度か足を運んだことがあ石段を踏みしめる。

登り切ったところで、寒々とした風だけが参拝者を歓迎してくれた。息一つ乱さない凛の横で、通い慣れている土筆は額から汗を垂らし、目を閉じて呼吸を整えるように息を吐き出した。

そんな彼を懐かしがるように風が、火照った熱を冷ましていく。

 

「うん、大丈夫」

 

柳洞寺に魔女の面影はない。そもそも魔女と言われて真っ先に思いつくキャスターは子供服が似合うサイズになり、魔女と言うより魔女っ子だ。

保護された場所で秘密裏に陣地を敷いているかと過ぎったが杞憂のようだ。契約を通して流れる魔力の質は善ではないものの、凛自身も本気で疑っていたわけではないが。

凛は、胡散臭い彼の情報を敵味方の判断材料としてではなく、勝敗に関わる鍵としての価値に変えた。

 

「相変わらず、正体不明の自信ね」

「山が教えてくれた」

「冗談でも山と話したとか言わないでよ」

「この前から遠坂は僕を木の精霊かなにかと間違えてるんじゃないの?」

 

呆れ気味な土筆の顔面に無性に拳を叩き込みたい衝動に駆られたが、脳裏から相次いだアーチャー、キャスター両名からの異常なしの報告で踏みとどまる。

だが、凛が与えた僅かなその隙に、すかさず階段を降りかけ帰り支度する顕悟にさすがに魔術師は拍子抜けしてしまった。

 

「てっきり、中も確認するのかと思ったけど」

 

確認する気があるならアーチャーに行かせるわよ、と従者をこき使う口調が定着している凛にやんわりと土筆は断りを入れた。

 

「お寺は9時消灯だからどっちにしても会えないよ。寝ている一成の顔見る趣味ないし」

 

私だってない、とアーチャーの頑なな同意は主人により黙殺。

建物の構造を把握し忍び込むことなど容易いと自覚している土筆は、忍者じゃあるまいしと含みのある言い方とともに二度目の苦笑を向けた。

 

「だからって屋根から落ちて死にかけてまでやって来て顔も見ずにすごすごと帰るわけ?労働に対する対価が軽すぎじゃない?」

 

屋根から落ちたのも、魔力弾の圧力で意識を飛ばしかけたのもだいたいが赤い少女のせいであるが、気に入らないと表情にありありと浮かべている凛の怒る理由が顕悟にはわからない。

彼女に迷惑はかけていない、はず……と若干不確実な己の所業を土筆は何遍も思い返してみる。

無駄な体力を使わせてしまったかもしれないが、これで気兼ねなく法螺吹き(慎二)をなぶることができると邪悪な微笑みをたたえたアカイアクマが言っていたのだから、矛先は既に慎二に移っている。ならば、感情を仮面で隠すことなど容易い彼女が露わにする嫌悪とはなんなのか。

 

「異常がないってわかったんだから成果はちゃんとあるよ」

 

凛の言わんとする本質とは違うとわかりながらも、顕悟は反論にもならない異論を延べた。

 

「いいえ、それは慎二の偽情報に対する結果。神城くんの行動原理の報酬じゃないわ」

「僕はなにかがほしくて心配しているわけじゃないから」

「でもね神城くん。命かけて見に来た心配を、ちょっと確認したくらいで満足してる姿は正直不信を抱くわ。”ねぇ、あなたホントに柳洞くんが心配だったの?”」

 

無事だとわかればそれでいい?そんなのまるでつり合っていない。

自然と棘のある声にさすがに土筆が困惑を訴えるが、うっかり癖はあっても徹底的に調べてこそ、という完璧を求める意志は揺るぎなく、薄紫色に変わってしまった少女の想い出をもった遠坂家の当主は止まらない。。

引き離されて、魔術師の取決めだと正当化して縛りつけていくら納得させたところで気になって気が気でなくて、無駄な心の贅肉なのに無駄と切り捨てられない。認めよう、己が己であるからこそ己であっても誤魔化しきれるはずがない。そう、たとえ頭でどんなに理解しても刻まれた未練が残っている。

だが、このノッポのすっとこどっこいは、一欠片の曇りもなく清々しくただ在るのだ。

あれだけ大切に思う存在がありながら、一瞬で一切の執着を切り捨てる神城顕悟は――詰問に乱されることもなく、そう思われることさえも許容した上でやはりただ在るだけである。それがたまらなく煩わしく、凛の胸の奥が引き絞られたようにつっぱり、荒れ狂う。

今は苛立つ程度の()()だが、放っておけば確実に世界と確執を起こす。神託に似た確固たる声が己を討ち立て囃した。――遠坂凛は決して神城顕悟を容認してはならない。

そうして、離れた距離が永遠に埋まらないような、少年少女の間に赤い壁が割って入る。

 

「アーチャー、どきなさい」

 

主人の命に背き、能力の低下の呪いを負いつつも弓兵は不動を貫く。

 

「そうだぜ、邪魔はしてやるなよ野暮ってもんだ」

 

もう少しでコロシアイになってたのによ、と上機嫌な口笛を交えながら舞い降りたローブの()――否、ローブを被ったように幻視させる神城顕悟だったモノが人をくったような顔つきで喉を震わせていた。

 

「殺し合い?誰にもの言ってんのよ、一方的な蹂躙でしょ」

「そうかぁ?」

「外から眺めただけで満足している無欲さに、自分は強欲だって気づかされただけで殺すかっての」

「そのわりには苦戦してたみてぇだったけどな」

 

暗に凛と顕悟の追いかけっこを知っているかの口ぶりに舌打ちを隠さず、役割に徹している赤い盾の横に並ぶ。

並行して相手の位置を把握し、遠坂家の魔術師は事態を考察していく。

 

「アンタもバカね。そんな木偶の坊を操ったって勝てないわよ」

「けど、一番安全だろ?」

「虫唾が走るくらいにね」

「イイ顔するねぇ。いっそこのまま殺しちまえよ。こいつ、アンタの言いたいこと死んでもわからねぇだろうし」

 

サーヴァントも始末できて一石二鳥じゃね?と砕けた口調と表情のカミシロケンゴは、ケタケタと似ても似つかない笑い声をあげた。

 

「ずいぶん口がまわるじゃない。で、()()はどこにいるって?」

「華奢な小娘のナリしてても優秀だねぇ。慧眼の通り、本体じゃねぇけどこのまま殺せばソレなりにダメージは被るんだぜ?」

 

無論、アサシンが挨拶がてら借りた喋る案山子も運命共同体にして。

 

「他人の形貌で挨拶なんてしつけがなってないのね」

「欲張りなオンナだなぁ……アサシンって知られるリスク背負って教えに来てやってんのに」

 

言い触らしてるやつとは大違いだ、と凛たちを呼び出すために使われたあわれな男をアサシンは嘲笑った。

 

「魔力が閉経した男と違って簡単になびく女じゃないのよ。だいたい、アサシンのくせに魔女?図々しいわね、誇張にも限度ってもんがあるわ」

「俺は名乗った覚えねぇのにな、勝手に早とちりしたんだろ。あいつ、早漏っぽいもんなぁ」

「ふん、白々しい。心理操作はお手の物ってわけ。いいわ、言うこと言ってとっとと消えてくれる?じゃなきゃ、死なない程度に殺してあげるわよ」

「おお怖っ」

 

大袈裟におどけたアサシンがへらへらと笑う。その顔はいつも土筆の気の抜けた笑い方と同じくして、全くの異形。

 

「アンタさぁ、いつまで遊んでいる気だい?」

 

雑草などに拘ったところで百害あって一利もない。そんな無駄なことに時間を使うなよ魔術師。望みは聖杯――そして積み上げる勝利だろう、と。

暗殺者の発言が額面通りならば、それは逆効果である。先の会話から慮れば、無駄と言いながら断ちきれない凛に関わらせようと誘導しているようにも取れる。

 

「もう三日も死人がいない。脱落者出してもらわねぇとさ、ほら、盛り上がらねぇじゃん」

 

せっかくの大儀ある殺人なのにさぁ、と続けた恍惚は冗談か軽口に混ぜだ本音か。

魔女なみに癖のある相手に少女は優雅に微笑みで対峙する。生憎、ホンモノの魔女の手ほどきは受けている凛に死角はない。

 

「言われなくとも。アンタをぶちのめす方法しか考えてないわ」

「へぇ……こりゃあ、ずいぶんと高貴だぁね。ヒィヒィ鳴かせて欲に溺れさせてやりてぇなぁ」

「性癖さらしてんじゃないわよ、この色ボケ」

 

暗殺者は心底愉快そうに二ィ、と口元を歪めて。

 

「気が変わった。出血サービスで俺の能力を披露しちゃおうかねぇ」

 

できれば戦闘は控えたかった赤い魔術師は不機嫌の極みであった。

己の従者の名を呼べば、命令を待っていた弓兵は瞬時に両手に色違いの剣を携えていた。

 

「ヒュゥ!カッコいいねぇ、にいさん。二刀流は男のロマンさね」

 

口の減らないサーヴァントね、と凛はなじりながらもピリリと緊張した背筋を伸ばしたまま。

身体は土筆であるがアサシンがどんな仕掛けを隠しているかわからない。利用されているとはいえ、皮肉屋の名無しと言えど英霊の一撃は確実に土筆を肉片と化すだろう。

暗殺とは不意打ちだからこそ必勝。故に防御は不要、謀殺の武器はあらゆる謀略を張り巡らせる怜悧な頭脳。か弱きその身をさらした時点で敗者は定まっていた。

 

「いいわ、アーチャー。全力でやって」

 

返事は予備動作なくされた投擲(とうてき)だった。

ランサーと拮抗した撃ち合いを三大騎士でもない、増して一般人の身体を借り受けた凶手が受け止めるなど笑止。弓の冠を授かっている英霊が制止している標的に当てるなど造作なく、それは必中の一矢である。

血管一本隔てた急所を射抜く弾丸となった双剣は寸分の狂いもなく、カミシロケンゴの愚策にも受け止めようとした掌を貫き、胴体に吸い込まれるように突き刺さった――はずであった。

 

「あちちちち、火傷しちまったよ」

 

頬をリスのように膨らませて掌に息を吹きかけている様子は、ふざけているとしか思えない。

 

「……奇術使いか?」

「伊達に刺客(アサシン)を名乗っているわけじゃないんでねぇ。ネタばらしはしねぇよ?白けちまう」

 

軽薄な態度の奥に隠れて獰猛な獣のような牙を剥き出して笑うアサシンを、五大元素使いは冷静に分析していた。

深追いは赤い従者では差し支える。待機している群青の魔女のカードを切るほどの相手ではないと即座に判断。

 

「うんうん、アンタがその調子ならまた会うだろ。なんたって俺、運命感じちゃったし」

 

不敵な挑発にわずかにたじろいだのは、乙女の危機だからか、アサシンが解放しつつあった土筆の顔が覗いたからか。

 

「最後まで残ってたら、俺の手でオンナの悦びを教えてやるよ」

 

こうして魔女に似て飄々としたアサシンとの会遇は帳を下ろす。

 

 

 

2

 

 

弓と暗殺の鍔迫り合いとも呼べぬ、陳腐な衝突のあくる日。

 

「それじゃ、あとよろしくな」

 

小さな魔女に戸締りを任せ、登校組として最後に玄関をくぐった士郎は待たせている面子を見渡し、額を抑えた。

頭二つ分ほどひょっこり出たるは、一週間ほど前に家を失くした同級生。料理も掃除もよく気が利く働き者で、彼のお陰で士郎が放置していた庭の植木は瑞々しくよみがえり、家の酸素が濃くなったような気さえする。

珍しく寝ぼけているのか、朝から鴨居に前髪の生え際をぶつけたり敷居に小指を引っかけたりして、隣に並んでいる艶やかなツインテールの持ち主が呆れたように注意を促していた。こちらも数日前から家に住み込むようになった密かに焦がれている才色兼備の少女だが、先日、その美しい顔の裏に少年の甘酸っぱい青い実を躊躇なく踏み砕き、挙句からかい倒すアカイアクマの片鱗を見た。とはいえ、普段は美人で上品な少女を朝っぱらから理由もなく見つめることはやはり気恥ずかしい。

そしてもう一人。金糸の髪を後頭部でまとめ上げ、ブラウスに青いスカートの現代風の服装の上からなぜか雨合羽を被った西洋美人がいる。

 

「なぁ、セイバー。ホントに行くのか?」

「もちろんです。道中、脅威がないとはいえません」

「うん、まぁ、そうだろうけどさ」

 

その恰好で、という意味は通じずに士郎はうな垂れた。

どうにもこの剣のサーヴァントは生真面目といえばそうだが、過保護なきらいがある。それを口にすれば最期、「シロウ、貴方の認識の甘さを叩き直してあげましょう」と物理的に修正される宿命を内心にとどめながら、力関係の逆転を痛感する剣の主は通い慣れた道のりがこれほどまでに過酷だと思った日はない。

なんだかんだでこういった場面で説得してくれる同盟相手はニマニマと遠巻きに楽しむばかりで、人間てるてる坊主を連れ立って登校しようが歯牙にもかけていない。

頼みの綱となる同じ男児たる土筆も、論点が明後日の方向に失踪しそうで不安が残る。良識ある男だが、稀に今日の友は明日の敵のような予想外の切り返しをする天然なのだと共同生活で培った。

 

「シロウ。思うことがあるならば隠さず言ってください。私は貴方の剣と告げたはずです」

「……その、慎二たちがどこで見ているかわからないし、あんまり目立つのはどうか、と思うんだが」

「だからこそ目を引かぬように防御性の低いけれど隠遁に適した服装にしたのではありませんか」

 

不本意です、と全身で物言うサーヴァントを傷つけないようにどう説明したものか。

 

「少し離れて歩くとか……」

「それでは護衛の意味がなくなります」

「そうなんだけどさ、周囲から誤解されるのが、困ると言いますか……」

「警戒させるのは好都合ではないですか」

 

士郎の脳内で他人の視線を気にするはじらいたちが必死な反証もむなしく、白旗を上げそうになっていた。

 

「衛宮くんは、セイバーのような女の子が傍にいて照れているのよ」

 

いけしゃあしゃあと述べる学園の優等生も等しくその対象であるとわかっておいでなのか。士郎の恥じらいたちが盛んに騒ぎ立てる。

 

「じゃあ、僕と先に行く?そのまま林を案内できるし、少しなら立地を見て回る時間もあるよ」

「む」

「え」

「ですが、士郎の護衛が……」

「遠坂にはアーチャーがついてる。同盟の衛宮も遠坂と一緒に居れば一応安全だよ。ほら遠坂って一度口にしたことは守る主義だから」

 

大事なマスターを託すほど赤い陣営は信頼に値するのか――騎士の審判が白日の下にさらされる。

全てをかけた戦いに身を置く戦士にとって、微塵も疑っていない土筆はさぞ滑稽に映ることであろう。だが、意外にも剣兵は首を縦に振った。

 

「わかりました。貴方の助言に従いましょう、ケンゴ」

 

そういって颯爽と歩いていった二人に、慌てたのが残された者たちである。

 

「どういうことよ衛宮くん。なんでアイツがあんなにもセイバーから信頼されてるの?下手したら衛宮くんより上じゃない」

「し、知らないぞ」

 

騎士王の直感スキルゆえの判断であるが、マスターたちは口々に突拍子もなくころりと絆されたセイバーに異を唱えた。

 

「なんかあるでしょ、思い出しなさい」

「急に言われたって、神城はここんとこ、作り置きしているお菓子の数が合わないってぼやいていたくらいで」

「それよ」

 

あっちゃーと言わんばかりに仰ぎ、凛は目を覆った。

冗談半分で話した主夫仲間との雑談に、大真面目な同意が裏付けられる。

 

「神城くんが自分の分をセイバーに与える現場見たの、一度や二度じゃないもの。……はぁ。まさか最優サーヴァントが餌付けで奪われるなんて」

「神城の作る洋菓子は甘いものが苦手な俺でも別格だってわかるけど、あのセイバーが?」

 

であれば、士郎のつくる和食メインの料理や凛の本格中華であっても剣兵の評価は等しくあらねばならない。

やっぱり一緒に仕留めとくべきだったわ、などと不穏な雰囲気を醸し出すアカイアクマに、のけ者にされた半人前はそっと怒りを終息させる。

朝からおかしいのは()()()()の態度ではない。

 

「なぁ、柳洞寺は問題なかったんだよな?」

「……全部見せたでしょう」

 

文字通りキャスター視点で記録された昨夜の出来事は、説明が不要なほど鮮明に直接その場にいなかった者たちの脳に共有されている。

 

「別に置いていかれたことを責めてるわけじゃなくてだな。いや、相談がなかったのは物申したいとこだけど」

 

トイレットペーパーの買い置きが切れたついでのごとく報告された一時はむくれたが、士郎自身、雲の上の存在であった超一級の宝石魔術師に拝み倒してあの高潔な剣の隣で戦うための処方を受けて一日でチョモランマを登りきるような夜を過ごしていたのだから不服はあれど文句はない。

土筆と優等生の両名と数日とはいえ寝食を共にしていたからこそ気づいた僅かな溝に、半人前は足を踏み入れる。

 

「神城のあの翠の目、あれも魔術なのか?」

「植物ばっかり見てるヤツだし、光の加減で葉でも移り込んだんでしょ」

 

翠というよりは青と黒を混ぜ合わせた濃さが、一日で薄まったことは流石の半人前でもわかる。

そして、何事もはっきりと周回遅れにして勝負をつける魔術の師が、うっすら隈のあるはんなり顔を直視しないように位置取りしている裏事情。

本人のいないところで聞いていいものか、悩んだ末、むしろ本人のいない場でなければ、半人前の師は口を開かないのではないかと思った。

 

「さすがに無理がある言い訳だと思うぞ。目の治療をしていた遠坂が知らないはずないだろ?」

 

木々を見守るときにふとした細める瞳がにわかに発光を帯びているのだ、己よりも知識が豊富で優秀な魔術師は気づく。もし見落としたなどととぼけるつもりならば、未熟な魔術師に未来はない。生き残り夢の悲願のために師弟は解消すべきだ。

 

「等価交換」

 

それを言われると困ってしまう。

仏頂面で言葉短く告げた以上、彼女にこれ以上の譲歩はない。

 

「ってことは魔術が関係しているんだな、やっぱり」

 

しまった、と口の前に手をあてた赤い少女は描いたような柳眉を下げて一つため息をこぼす。隠すつもりはないの、とでも言いたげな。

 

「……すぐにわかるわ、嫌でもね」

 

なぜなら此程、勉学を勤しむ校舎は戦場と化す。

ブラウニーからの憂慮(ゆうりょ)と完璧な優等生からの疑惧(ぎく)を、玄関の戸の傍から離れる気配のない少年少女の影を見兼ねたキャスターに現時刻を通達されるまで送られているとは土筆は与り知らない。

 

 




孤独、謙遜、休息、心地よい言葉、博愛

(紫)閑静 (白)幸せな愛を (アワユキエリカ)協力、無欲さ
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