ジンキ・エクステンドSins   作:オンドゥル大使

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♯272 罪人達の演舞

 地上へと問い返しても、全ての通信網の途絶、という状況に司令官は椅子を蹴りつけた。

 

「何が起こっている! 地上との通信が出来ないなど!」

 

「目下確認中ですが……宙域の人機とも通信が出来ません! ローカルモードに通信設定をして、極めて限定的な空間に設定してやっとで……!」

 

「復旧急がせろ! このままでは敵に攻められても……」

 

 そこまで口にしてエアロックを潜ってきた相手に司令官は視線を合わせていた。この状況を作り出したのか、という予感に覚えず声が出る。

 

「……まさか、これを読んで」

 

「そこまでは。ですが、想定出来ない事態ではありません。我々を買う、と言ってくださったのがここまで早く、スムーズに行くとは。こちらも予想外でしたよ」

 

「……何が起こっているというのだ。渡良瀬」

 

 口にした名前に、渡良瀬は落ち着き払って応じる。

 

「バベル、というシステムをご存知で?」

 

「……空想上のものだな。世界規模でのシステム基盤。噂には上った事が何度か」

 

 だがそれらは全て夢想の代物。遠くない未来、そのようなものが出来上がるかもしれない、という想定であったはず。

 

 だからか、直後に渡良瀬が放った言葉に司令官は息を呑む。

 

「そのバベル、どうやら掌握されたようです」

 

 まさか、と声に出そうとする。

 

「アンヘルか?」

 

「いえ、アンヘルでさえもそのシステムの恩恵に与っていた。それに彼らが自分の首を絞めるような真似をする理由もない。これは別の組織の仕業でしょう」

 

「……ブルブラッドキャリアの、情報操作」

 

「あり得ない話でもないですが、ブルブラッドキャリアにしてはやり方がずさん、いえ、もっと言えば脇が甘い。情報網を押さえたのならば、モリビトによる主要都市の同時攻撃くらいはやってもいいはず」

 

 その報はない、という事はブルブラッドキャリアの仕業という線は薄い。

 

「……だが誰が……。では何者の仕業だというのだ?」

 

「考えられる該当人物は一人だけ……。ですがこれは……バベルの存在を説くよりもなお、難しいでしょう」

 

 わざとぼやかされているようで司令官は落ち着かなかった。渡良瀬に言葉を弄されているような場合でもない。

 

「……我が方が全滅してからでは……!」

 

「宇宙ならば少しは安全でしょう。ご心配なく。問題なのは地上のアンヘルと弱小コミューンのパワーバランス。この期に乗じて総攻撃、という腹積もりのないコミューンもないとは限りません」

 

 それは暗に、今ならばアンヘルを落とせる、という甘い囁きでもあった。現状、動ける兵力は極めて少ない。この状況からならば、ゾル国は復権出来る。

 

 アンヘル中枢を落とし、全てを塗り替えられる。

 

 唾を飲み下した司令官に渡良瀬は心得たように口にする。

 

「……あまり逸らぬよう。急いては事を仕損じます。ですが、我々ならば動ける」

 

「……先の協定、すぐにでも活かせると?」

 

「造作もありますまい。今のアンヘル、どこからでもつけ入る隙はある」

 

 今ならば、天下を取れる。その予兆に、心臓が高鳴った。ゾル国が再びこの世の春を謳歌する。全ては自分次第。やれと命じれば、アンヘルは壊滅する。

 

 しかし極度の緊張に晒された神経はすぐには英断を下せなかった。

 

「……情報を。その上で判断する」

 

「賢明でしょう。こちらからも集めます」

 

 身を翻した渡良瀬の背中を見送り、司令官は口走る。

 

「……悪魔め」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エラーナンバー14586を参照』

 

『不可』

 

『では直近のエラーを呼び出せ』

 

『不可』

 

 全ての参照データが赤く塗り潰され、完全に掌握された事を理解したのは声明が届いてから十分後の事であった。

 

 地下都市、ソドムを走る電脳の情報網でも、エホバを名乗った男の位置情報は元より、どこからハッキングされたのかも全く不明。

 

 レギオンは声を軋らせる。

 

『……エホバ、だと。神を気取る愚か者が』

 

『ゴルゴダの使用を提言する』

 

 承認を取るまでもない。すぐにでも実行に移させようとした矢先であった。

 

「それでは地上が荒れますよ」

 

 靴音と共に一人の男がレギオンの義体の間に影を落とす。まさか、と全員の思考が同期した。

 

『貴様の仕業か……! 水無瀬!』

 

 その怒声に水無瀬は唇の前で指を立てる。

 

「お静かに願います。今は、立て続けに起こった事実を反芻しようじゃありませんか」

 

『落ち着いているではないか、水無瀬。バベルが奪われたのだぞ』

 

 その腹の内を探ろうとしたが、相手は同期ネットワークから外れた肉体の持ち主。顔色一つ変えずにこちらを窺う。

 

「焦ってもどうしようもないですよ。バベルは掌握された」

 

『それがどういう意味なのか、分からないわけではあるまい』

 

 言葉振りに滲む焦りに、水無瀬は頭を振った。

 

「だから、あなた方は機械に身を落とすべきではなかった。一番に恐れているのはその義体への直接的なハッキング行為でしょう? 分かっていますよ。見透かせるほどに」

 

 脳を焼かれるのが最も恐ろしい事を水無瀬は理解している。自分はその範疇にいないからここでは傍観を決め込めるのだろう。

 

『……いいのか? 水無瀬。貴様を消すくらい、この場所では造作もない』

 

「ですが死体を一つ作ってどうなるというのです? 焦り過ぎですよ皆様方。いつものように、もっと冷静に事を進めましょう。そうしないと、どこから流れ弾が飛んできてもおかしくはない。ブルブラッドキャリアか、あるいは他の弱小コミューンでも」

 

 ここで水無瀬が情報をリークし、地下都市ソドムの位置情報がどこへなりと割れれば、自分達は破滅だ。分かっていての言動なのだろう。

 

『……水無瀬、一家言ありそうだな。聞かせてもらおうか』

 

「では、ご拝聴ください。まずこのエホバなる人物。記録上、我々が辿る事は出来ません。バベルを掌握される、という事は個人データへのアクセス権すら奪われるのと同義」

 

『聞かなくとも分かる。バベルを奪われた、という事態の早期究明を……』

 

「まぁ、まずは一つ一つ、解きほぐしましょう。その上で、成り立つ事実くらいはある」

 

『……水無瀬、貴様らしくないな。まるで何か時間を稼いでいるかのような物言いだ』

 

 義体の身分である自分達はこういう時、図星という顔をしない。だが人間でしかない水無瀬はどうだ。

 

 その表情が凍りついたのを、察知しないほどに疎い連中ではない。

 

「……何の事だか」

 

『水無瀬。そういえば帰ってきていないではないか。ガエル・ローレンツ。彼はあの後どうなった? 我々では辿る手段がなくてね。彼を誘導も出来ない』

 

 こちらからガエルの位置情報を如何とする事も不可能。何も出来ないのはレギオンの側なのだが、水無瀬はこの時、愚かしくも口走っていた。

 

「……彼を墜とすつもりですか」

 

 光明が差した。その隙を見逃すほど、自分達は統合されていないわけではない。

 

『ガエル・ローレンツ。《モリビトサマエル》が今は惜しい。少しの兵力を逃すわけにもいかない現状では』

 

 こちらが先に手を打ったように思わせる。それだけで水無瀬の対応は変わるはずだ。

 

 思った通り、水無瀬は言葉を失った。

 

「……今の彼に、どうしろと」

 

『《モリビトサマエル》を扇動させて人心を掌握する。難しい事ではあるまい? あれは登録上、モリビトタイプ。我が方の戦力ではない』

 

「不可能です。今の状態では」

 

『やれといえばやる。彼はそういう男だよ』

 

 戦争屋ならば、一つでも食い扶持が欲しいはず。その心理を突いたつもりであったが、水無瀬は別の事を思い浮かべていたようだ。

 

「如何に《モリビトサマエル》とガエル・ローレンツとは言え、現状、前に出るのは……」

 

『撃墜されたか』

 

 その言葉に水無瀬が絶句したのが伝わった。憶測の域を出ない攻撃であったが、どうやら有効であったらしい。

 

「……エホバ追跡は無理です」

 

『らしくない言葉だな、水無瀬。平時の彼ならばこう言うはずだ。掃除程度なら造作もない、と』

 

 それがガエル・ローレンツという男の性だ。戦場を追い求めて涎を滴らせる獣。

 

「《モリビトサマエル》は使えません」

 

 頑として譲らない姿勢から鑑みて、《モリビトサマエル》は相当な痛手を負ったらしい。その考えの下、全員の意識が統合された。

 

《モリビトサマエル》が使用出来ない以上、自分達が使える駒は限られてくる。

 

 すぐに議決が降りたのは、誰もが奥底では考えていた事が一致したからだ。

 

『……月面へのアクセスを試みる』

 

 その決定に水無瀬が困惑する。

 

「まさか……ブルブラッドキャリアと? 不可能です! 聞き入れるはずがない!」

 

『しかし、彼らからしてみても好条件ではないかな? 地上のバベルが混乱している矢先に、こちらへと切り込める隙だと、思い込ませられる』

 

『それに連中の目的は地上への報復。ならば、させてやればいい。我々が手を組めば、その目先の靄は晴れる』

 

「……確かに、地上の人々が下る、という点においては、合致しているでしょう。ですが連中を招き入れればいずれは……」

 

 いずれはこのレギオンでさえも破滅する。そう言いたいのだろうが、そうはならないであろう秘密くらいは隠し持っている。レギオンは総体だ。この地下都市の思考義体を別の端末に移送し、内部データを取って変えるくらいは想定されている。

 

『何の問題がある? 貴様の言っているのは我々が躊躇する、という前提だ。なに、エホバなる個人に星を支配させる事に比べればこれくらい、交渉術の一つに過ぎない』

 

「しかし……ブルブラッドキャリアが頷くかどうかは……」

 

『その程度の試算、まさかされていないとでも? 傲慢の象徴たる元老院が堕ちてから、そのシミュレートは六年前に既に済んでいる。ブルブラッドキャリア側からしてみても旨味のない話ではない。地上のバベルへの介入を、一時的にせよ復活させるのだから』

 

 無論、継続的に相手への優位を与えるつもりはない。バベルを貸し与えるといっても一時的な擬似端末を介しての支配のみ。事が済めば擬似端末ごと相手を焼き切る手はずだ。

 

 水無瀬はここまで覚悟と考えが及んでいるなど少しも思い浮かばなかったのだろう。冷や汗が額に浮かんでいる。

 

「……ですが、相手は強情です。条件を提示されれば厄介なのはこちらのほう」

 

『水無瀬、どうにも随分と、相手を買い被っているようだな。再び報復の芽を蘇らせたとは言っても相手の手はず、所詮は児戯。報復作戦しか頭にない、使い古された老人の繰り言だ。最早、その考えに我々は頓着していない』

 

『必要ならば星の一部くらいは与えてやる。それくらいの温情は見せるとも』

 

 水無瀬は絶句する。苦し紛れのように、一言口走った。

 

「……読み間違えれば負けるのはこちらですよ」

 

『読み間違えれば、の話だろう。なに、我々は敗北しないさ。何のための総体、何のためのレギオンだ。星の外に追放された人々にはない叡智が我々にはある。罪の証……ゴルゴダの使用権が』

 

 その名前に水無瀬は慌てふためいた。

 

「ゴルゴダの使用はバベルによる完全な情報の秘匿、という前提条件の上であるべきもの……! それを無闇に使えば……」

 

『反感は免れない、か? だがその世論とやら、ここまでもうろくしていれば何も見えまい』

 

 世界はバベルネットワークに依存し切っている。この状態で誰が情報発信など出来るというのか。

 

「……ブルブラッドキャリアに利用されれば」

 

『そのケースは既に反証済みだ。世論には不都合な事実にこう言ってやればいい。本当にその場所が爆撃されたのか、ではご確認を、とでも。別の位置情報を取らせれば似たような地平に、似たような青い平原が広がるばかりだ。位置情報の誤認程度はわけない』

 

 それでも、と水無瀬は首をなかなか縦に振らなかった。レギオンは同期ネットワークに水無瀬の煮え切らない態度を予見させる。

 

 ――《モリビトサマエル》に何かを仕込んだか?

 

 ――いや、それにしてはあまりにも迂闊。この場合、自分が仕掛けに出て見事に鼻っ柱をへし折られたと見るべきだろう。

 

 ――……あのガエル・ローレンツだ。何か自分が生き残る術を講じていないとも限らない。水無瀬はあの男の唯一信頼を置く人間。殺すのは惜しい。

 

 ――ではこの議会では。

 

『……水無瀬。勘繰られれば惜しい腹のうちがあるのは読めるぞ。だが、ここでは探りあいはよそう。もっと建設的な意見を述べるべきだ』

 

「……ブルブラッドキャリアへのアクセス……」

 

『賢しいではないか。元々、ブルブラッドキャリアの情報端末、古巣に通話をかけるくらいは可能だろう?』

 

「ネットは絶たれて久しいのですよ。分かれば」

 

『分かれば、我々の力を借りる事もない、か。それも込みだ』

 

「……どういう意味で」

 

『かつてのブルブラッドキャリアの諜報員を人質に取っている、とでも前置きすれば相手の意見も変わるかもしれない』

 

 いずれにせよ、こちらの優位に回る事など全て織り込み済み。読み切れていないのはこの場で水無瀬のみであった。

 

 苦渋に歯噛みする水無瀬に、レギオンは総意を返す。

 

『ゴルゴダの投下を準備。それより以前に、情報操作を開始する。エホバなる人物の特定と共に、そのコミューンを爆撃。地図を少し塗り替えればいいだけだ』

 

 それ以上の議論は無駄だと判断したのだろう。水無瀬は首肯していた。

 

「……御意に」

 

『水無瀬。ブルブラッドキャリアへのアクセスは貴様に一任する。交渉も、な』

 

 自分達だけならば月のバベルへと繋げるのは容易ではない。橋渡しにはちょうどいい役割であった。

 

「……分かっております」

 

 靴音を響かせて遠ざかっていく水無瀬に、レギオンの総体は判断する。

 

『勝利者は我々、レギオンだ。者共よ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――だとでも錯覚させれば、満足だろうか?」

 

 バベルのないレギオンなどただの元老院時代と同じか、あるいはそれ以下の情報網だろう。まさか端末を隠し持っているなど連中は思っていまい。

 

『よくやった。水無瀬。ゴルゴダの投下予測は』

 

「レギオンは何よりも世論を味方につけて、六年前の殲滅戦に漕ぎ付けた。今度も世論を無視しての行動は不可能だろう。アンヘルがいくら私兵とは言え、反感を一部からでも買えばそこまでだ」

 

『では我々ブルブラッドキャリア側からわざと隙を見せるとしよう。その期に乗じてレギオンにハッキングさせた、と思い込ませる。出来るな?』

 

 やらなければ死ぬだけだ。水無瀬は静かに頷く。

 

「二枚舌なんて慣れちゃいないが」

 

『よく言う。六年もの間レギオンに潜伏していた。それが何よりの証明だろう』

 

「忠義はこちらに。一時とはいえ、レギオンに味方した事、悔いている」

 

『当然だ。水無瀬、貴様は我々ブルブラッドキャリアが造り出しただけの、人間型端末に過ぎないのだから』

 

「ゴルゴダを落とされればそこまでだ。……離反兵達は?」

 

『気づき始めている頃合だろう。連中は月のバベルのネットワークを持っている。馬鹿な連中だ。わざと貸し与えているというのに。造物主への恵みを忘れた者達には鉄槌を』

 

 水無瀬は脳内ネットワークに《ゴフェル》の位置情報が浮き彫りになったのを確認する。この時点で既にレギオンより上であった。

 

「《ゴフェル》を落とすのは」

 

『どの陣営でも構わんさ。こちらの手を煩わせるな。地上の罪人達の食い合いの中で自滅すればいい。我々は惑星への侵攻計画をセカンドフェイズに切り替える』

 

 セカンドフェイズ――その情報と共に月面の重力に囚われていた一機の《モリビトルナティック》に起動がかけられた事を関知する。

 

 ブルブラッドキャリアはゴルゴダ使用の隙に乗じて、地上を完全に我が物にするつもりだ。《モリビトルナティック》落着は前回ならば相当なスキャンダルになったが、バベルネットワークのない今、誰が関知しても不都合な事実となる。

 

 それがエホバの発する情報であっても、人類は絶対に一つにはなれない。

 

「……皮肉な。神の名を騙ったところで人心を掌握は出来ない、という事か」

 

『エホバには体のいい悪役に徹してもらおう。あれも、馬鹿な事をする。百五十年……それほどまでに人類史の悪を見てきて今さらの判断だ。何が、百五十年の静謐とこの六年が違ったものか。何も違いはしない。人々は争い、血肉を貪り続けてきた。そのツケを払うまで』

 

「一つ、いいか?」

 

 尋ねた水無瀬は脳内に寄生するブルブラッドキャリアの端末を意識する。

 

『何か? まさか今さら及び腰になったなどとは言うまい』

 

「まさか。レギオン連中にはいい加減、うんざりしていたところだ。そんな折に古巣からの連絡、まさに渡りに舟であったと思うしかない。……ただ、本当にエホバが何の考えもなしに今まで静観していたと? そう考えているのか?」

 

 答えには幾ばくかの逡巡を期待していた。だが、応答は無情にも素早い。

 

『不死身の肉体を持つがゆえに、あれは考え過ぎた。今の今まで決定を保留にしたのはあれ自身の罪だ。償うのならば己の愚かさからだろう』

 

「愚かさから……か。そうかもしれない」

 

『如何にレギオンには関知されない状態になったからとは言え、貴様に繋いでいればぼろが出るかもしれん。そろそろ切るぞ。水無瀬、栄誉ある行動を期待している』

 

 一方的に切断された通信に水無瀬はフッと口元を綻ばせた。

 

「……二枚舌もここまでくれば、自分でも僥倖だろう。さて……ガエル、生きているか?」

 

 ほとんど呼吸音と大差ないが、ガエルの脈拍と返答を水無瀬は聞いていた。

 

「《モリビトサマエル》はここで潰えるのには惜しい。だが、君があの場で戦ったのは多いに意義がある。まさかハイアルファーで死人と化したカイル・シーザーと、君の書類上の娘……ベル・シーザーが蜜月の関係にあったとは。これを運命のいたずらと呼ばずして、なんと呼ぶか」

 

 内側から燻る笑いに、水無瀬は鼻を鳴らして襟元を整えた。

 

「君は少し休むといい。なに、ここから先にあるのは、地上の罪人よりももっと罪深い、本当の業を持つ者達の食い合いだよ。高みの見物が一番に賢い」

 

 エホバの位置情報は既にブルブラッドキャリアへと嘘の情報を紛れ込ませている。

 

 罪の爆弾が投下されるのは、コミューン、トリアナ――。

 

 

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