どうやら神様は俺の事が嫌いらしい   作:なし崩し

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受かりましたぜ……ギリギリ。
というわけで更新可能となりましたので最新話をば。
ぶっちゃけリハビリに近いので勘弁を。きっと書いてれば作風を思い出してくると思うので。


それにしてもDグレ連載止まりましたねェ……


第二十五話

 

 

 

 

 

 

 落ちる。

 正直意味がわからないし、状況を理解しきれていない。

 いや、なんで俺さ? リナリーじゃないの? っていうか、元々俺が狙いならリナリー危険に晒さないで済んだんだけどそこのところどうしてくれるんだろうかノア一家。ホント有り得ない。

 ……さて、どうしたものか。

 省エネモードとはいえ、今も現在進行系でゴリゴリと削られている精神力が何時までもつか。この先が不安すぎる。

 この『無毀なる湖光(アロンダイト)』は再度封印できるだろうか。

 きっと視界が開ければ方舟の中。いずれティキがやって来てゲームが始まるのだろう。

 そうなれば原作を辿ること間違いなし。

 こんな状態である俺が助かる方法と言えば、再度ミランダを頼り一時的に精神力を回復させてもらう他ない。いや、厳密にはもう一つあるけど、暴走イノセンスと手を組むとか有り得ない。

 まぁつまるところ、ここが正念場である。

 よし、あとは任せた弟弟子よ! 

 そう思いながら只々落ちる。

 するとどうだろうか、上から誰かの手が伸ばされてきた。

 

 ――――ラースロ! 待ってたよぉ。

 

 あ、ロードかとわかってしまう俺は有り得ない。

 

 ――――手を伸ばすだけだよぉ? それだけで、楽になれるから。

 

 それは実に、魅力的な提案であった。

 ロードが言う楽とは、どういったものなのか分からないが異様に惹かれる。

 

 ――――ラスロが望む世界を見せてあげるよ? ねぇ、おいでよ。

 

 俺が、望む世界。

 それはきっと、『アイツラ』と共に過ごした過去の世界。

 帰りたいと切に願う、あの世界だろうか。

 

 ――――それに、ボクがいればなんでもできるよぉ? ラスロが望むこと、ぜぇんぶ!

 

 望むこと全部か。

 あれやこれも、全部か。

 もしかして、借金の返済も可能なのだろうか。あと、高級酒の撲滅。

 

 ――――さ、掴んでぇ。そうすれば、ボク達は家族だよ。一緒に家に帰ろうよ。

 

 帰るか、いいなその言葉は。

 帰る家ができるのか。

 

「――でも、それは違うだろ」

 

 ふと、一人の少女の笑顔が脳裏によぎる。

 教団に戻れば、任務にでも行っていない限り出迎えてくれた少女がいる。

 彼女の「おかえり」に、「ただいま」と返さない、変な意地を張っている俺なんかに何度も何度も声をかけてくれる少女がいる。教団をホームだと言って、出迎えてくれるのだ。馴染んでいないと自分に言い聞かせて、希望にすがりつく俺なんかに。

 そんな優しい彼女を無下にした俺が、今更帰る家?

 

「有り得ない」

 

 もし、こんな俺が帰る家だと定めるなら、教団以外にはありえない。

 こんな時にも帰る家は向こうにしかいないと言い張る俺がいるが、今だけは押さえつける。

 

 断言する。

 俺が今後、もし、万が一、この世界を認め、馴染むことに納得したのであれば、

 

「――――膝ついて、頭下げて、先ずはリナリーに謝るよ」

 

 ――――へぇ……なびいてはくれないんだぁ?

 

「無論だ。そうやって、許してもらえるまで頭下げる。そして、許してもらえたのならば、俺は教団をホームにするよ。万が一に、万が一にだからな。大事なことなので二回言いました」

 

 すると、クスクスクスと笑い声が聞こえた。

 

 ――――あはは♪ そうでなくちゃねぇ! それでこそラスロだよ。そのラスロを、ボクは求めてるんだから。

 

「勘弁してください。割と、切実に」

 

 こんな中途半端に寝ぼけてる頭で、変な誘惑は堪える。

 師匠との生活がなければ、きっとなびいていたに違いない。

 ちょっとだけ、師匠に感謝である。

 

 ――――フフ♪ それじゃあ、今回はここまでにしておくねぇ……次は、もっと辛いの用意しておくよぉ。

 

「……流石ノアの長子。鬼畜だなぁオイ」

 

 ――――そこまでしてでも、欲しいんだよ? 悪意の泥を染み込ませて、コッチに堕として見せるねぇ。

 

 

 

 

 ――――それじゃあ、方舟で待ってるよ。バイバーイ、ラスロぉ。

 

 

 それきり、ロードの声は聞こえなくなる。

 

 

 

 

 そして――――――まばゆい光りを引き裂いて、俺は方舟へと落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――で? 説明してもらえますか、ラスロ?」

 

「さっさと吐けよ狸、毛皮にすんぞ」

 

 まぁ、こうなると思っていた。

 いや、でもさ? しょうがないじゃないか。俺だって混乱していたのだ。まさかここで俺を引きずり込んでくるなんて考えてなかった。リナリーが連れて行かれても守れるようにと、準備だけはしていたがそれは自ら「巻き込まれる」という心構えの話だ。まさかその騒動の中心に立たせられるなんて……

 

「……結論。全部ノアが悪い」

 

「そこに直れ、たたっ切る」

 

 スパン、と方舟にある白い家の壁に切れ目を入れる神田。

 よく見れば顔に青筋がピキピキと。殺気も本物だ。

 チラリとアレンを見れば、吐きましょう、楽になりますよと笑みを浮かべていた。

 両脇は壁、前後は修羅と道化。

 

「逃げ場ねぇ……」

 

 たらりと冷や汗が流れる。

 そんな殺伐とした中、唯一の癒しとも言える少女を発見した。

 ……発見した?

 

「……え、リナリー?」

 

 声をかければ、どうしたの? と小首を傾げる。

 ポンポンと頭に触れれば普通に感触がある。

 

「……ラスロ?」

 

 つまり、本物。

 

「はっはっは――――――デブ殺す、二度殺す」

 

 アレか。

 俺だけじゃなく、結局はリナリーも引きずり込んだのか。

 いい加減にせぇよぽっちゃり。

 取り敢えずぽっちゃりにはもう一発追加と決めつつ、どう説明したものかと考えを巡らせた。

 

 

 

 

 

 

 

「――――――つまり、元凶は分かっても理由まではわからないと?」

 

 頷くことで肯定の意を示す。

 実際、俺が引きずり込まれた意味が分からない。積年の恨みつらみ、もしくはジャスデビたちに頼まれて伯爵が落としたのか。しかし、それにしては落ちてきた当初に聞こえたロードの声と、その内容と現状が噛み合わない。ぽっちゃりならば、勧誘の暇があるなら滅殺しにくるだろう。

 

「ターゲットは俺だろうけど、リナリーも後から別に引きずり込まれた事から十分気を付けないといけない。使用者を守る、過去に例のない珍しいイノセンスを所持してるんだからな――っと、みィつけた」

 

 少し原作との差異が見られたが、もしかしたら居るかもと思い地面を眺めていたらやはり、いた。

 ペチャンコになり、風邪に吹かれれば飛んでしまいそうなカボチャの傘。正直、破壊してしまいたいのだが後が怖いのでやめておく。いや、これ破壊すればぽっちゃりは『あの剣』使えなくなるんじゃないかなぁと思ったりしたわけで。まぁ、破壊してもその内復活しそうだけれど。

 

「まぁ、いい。他にも使い道はあるしな?」

 

「ラスロ、それは一体……あれ、何処かで見たことのあるような?」

 

「あ、それ伯爵が持ってたカボチャの傘さ! なんでここに!?」

 

「ギャアァァ!? 絞るな、絞るなレロ!! 何するレロかこのナマモノ!!」

 

「うるせぇ廃棄物。骨だけにしてやろうか」

 

「待つさラスロ、それじゃあユウとなんら変わりない――ユウ、いえ神田さん、刀、下ろすさ!!」

 

 そう、カボチャの傘であり伯爵の武器?でもあるレロだ。

 それにしても、誰に潰されたのやら。

 原作でも、誰かに潰されていたはずだが思い出せない。

 まぁ対して重要なことでもないしどうでもいいのだが。

 というか、それよりも、だ。レロが此処にいるという事は、原作と同じように進んでいると言ってもいいのだろう。恐らくだが、伯爵が俺を始末するために選んだ方法が、『じわりじわりとその存在が消えていき、絶望しながら死ぬ』というものなのだろう。やっぱり性格が悪い。

 

「キィィィ!!放すレロクソエクソシスト+ナマモノ! 吐き気がするレロ!!」

 

「おい、なんで俺をエクソシストの中に入れずナマモノで言い表した? 俺も立派なエクソシスト、神の使いだよ?」

 

 すると、突き刺さる幾つかの視線。

 その視線の数おかしい。なんで四つ以上あるの? ロード、ティキ、レロの三つくらいだと思っていのだが後ろからもグサリときてる。多分アレン、神田、ラビ、リナリー、そしてレロその他だろう。ノア組、一体どこから見てやがる。

 

「――この信頼度の低さ、有り得ない」

 

「何度でも言います……自業自得です。というか、どうせ本気で言っている訳じゃないでしょう?」

 

「まぁな。あんまりエクソシストであることに誇りとか持ってないし」

 

「そこのモヤシと狸、黙ってろ。……オイ傘、テメェなら出口知ってんじゃねぇのか?」

 

「そ、そんなことないレロ! 本当だから刀下ろすレロ! 食い込んでるぅぅぅ!?」

 

「待つさ!? 殺ったら聞けなくなるさ!?」

 

 というやりとりを得て、ようやく傘が落ち着きを取り戻し神田の問いに答えた。

 それはやはり、出口はないの一言である。

 ブチギレた神田が六幻を振りかぶり真っ二つにしようとしたが、そのタイミングでレロの中から伯爵の声が聞こえてくる。それは段々と大きくなり、奴の到来を予感させる。……まぁ、レロの口からぽっちゃりの風船が出てきただけだけどな。

 

『ご苦労さまです、レロ♥ えー、エクソシスト諸君というか、吾輩が呼んだのはそこの狸とお嬢さんだけなんですがまあいいでス♥ 取り敢えず、そこの数名にお伝えしましょウ♥ この船に出口はありませんのであしからズ♥』

 

 ハイハーイ、アレン君は俺を睨むのやめましょう。

 ホント正常な思考回路してなかったんだよあの時の俺。反省してるよ。

 

『更に更ニ♥! この船のダウンロード(引っ越し)が終ったところから崩壊していきまス♥』

 

 その瞬間、一部の建物が爆ぜで神田に降り注ぐも全て一刀のもとに微塵切りにした。

 増える殺意の視線。まぁアレンにも向いてるけど。

 

『崩壊に飲み込まれれば、待っているのは次元の狭間♥ 抜け出すことは叶わない黄泉の国へと向かうことになるでしょウ♥ そこで、一つチャンスをあげましょウ♥ そこの狸、ラスロ・ディーユを渡しなさイ♥ それだけで、他のエクソシストは助けてあげてもいいですヨ♥?』

 

 一気に視線が二つ増える。有り得ない。

 きっとラビとクロウリーだ。まぁクロウリーは殆ど殺気は感じず呆れが大半のようだが。

 そこでふと、気づいた。

 他のエクソシストは助けるとか言ってるけど、皆は俺のこと見捨てないよね? というかやっぱり目的は俺なんですねー。俺が一体何をしたの言うのだ。俺とぽっちゃりは敵なのだから、今までの攻撃行為は仕方がないのだ。

 

「――って、正気に戻れ俺? それ適応されたらこの取引もありになるだろうが」

 

 しかし、本当に他の皆を助けるつもりがあるんだろうか。

 俺だけでいいならば、何故別途でリナリーを引きずり込んだ?

 チラリとリナリーを見る。彼女は気丈に伯爵風船を睨みつつ、こちらに気づく。

 するとリナリーは、はっ、とした後にぎゅっとコートの裾を掴んできた。

 

「――ダメだよラスロ。……行かせない」

 

 いや、言われても俺行かないよ? 逝け言われたら説得する気だったから。……誤字じゃないよ事実だよ!

 それに対して、アレンたちは視線で語る。

 

 ――リナリーに救われましたね?

 

「……全くもって、その通りっと」

 

 俺は苦笑しながら、『無毀なる湖光(アロンダイト)』を振り抜き風船を破壊する。

 ギャー伯爵タマがー!? とか叫んでる傘はアレンに渡して『道化ノ帯』でぐるぐる巻きにしてもらった。そうしている間にも崩壊は始まっており、俺たちを飲み込もうとしているので場所を移動しつつ無駄とわかっていても出口を探す。位置的にというか、裾を掴まれたままだったので俺がリナリーを背負って逃げた。途中でクロウリーに渡す予定である。

 

「だぁぁぁ!? これで何軒目さ! 本当に出口ないんじゃねぇの!?」

 

「いえ、どこかに出口はあるはずです! 僕はそれを通ってアジア支部から日本まで来たんですから!」

 

 言いながらも更に住居を破壊し出口を探す。

 俺も『無毀なる湖光(アロンダイト)』で破壊しようかと思ったが、力を込めるだけでゴリゴリいったのでやめた。本当に不味い状況だ。ここまで精神力が削られるのは久しぶりすぎる。師匠との修行以来ではないだろうか。急がなければならない。思ったよりも持ちそうにないこの精神力じゃあ、どうなってしまうか分からない。先ほどのように寝起き+精神力消費による思考の鈍さなどが相重なると廃人と化しそうだ。

 だから俺は、魔術を使い棺桶を召喚。

 中からブツを取り出し叫んだ。

 

「――っ、出てこい瓶底眼鏡ェ! 今すぐ出てこないと、次に再会したときこの宝具(酒瓶)が開帳されることになる!!」

 

 その酒瓶は、思い出のあの酒瓶である。

 初めてティキを殴り気絶させたあの酒瓶である。

 無論、あの時の酒瓶はダメになったがそれと銘柄も何もかも同じ酒瓶である。

 そう、ティキのトラウマとなっている酒瓶である。

 故に――――――

 

「待て待て待て待て狸くん!! いい加減に止めようぜソレ、雰囲気作ってんの無駄になるんだよ! それ異常に怖いんだよ!? ソレじゃなくとも酒瓶見るだけ頭部に鈍痛走るんだよ? ……つうか狸くん、ロードにバラしたろ! 腹抱えて転げまわって馬鹿にされたじゃねぇか!!」

 

 

 

 ――――――ちょっとスイッチ(トラウマ)押して早送りしてみた。

 それに反応する瓶底眼鏡のノアとか、有り得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 


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