48番目の逸般人   作:白鷺 葵

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【諸注意】
・クロスオーバー先のネタバレ注意。
・FGOとのクロスオーバーということで、クロスオーバー先で発生した事件が1900年代初頭~半ばと2011年に変更されている。
・2部に関するネタバレ注意。
・2部に関するネタバレ注意。
・2部に関するネタバレ注意。
・アヴィケブロン×ぐだ子/ぐだ子×アヴィケブロン。
・他版権側の登場人物→ぐだ子。こちらは片思いのままだが、一応救い(らしきもの)はある。
・クロスオーバー先に関連するオリジナル特異点イベントが発生(重要)
・クロスオーバー先に関連するオリジナル特異点イベントが発生(重要)
・クロスオーバー先に関連するオリジナル特異点イベントが発生(重要)
・前回以上の捏造要素あり(重要)
・前回以上の捏造要素あり(重要)
・前回以上の捏造要素あり(重要)
・前回以上のキャラクター崩壊注意
・始まりそうで始まる前に終わる
・前作『箱庭虚構楽園島ノーウェア/親愛なる“■■”へ』終了後の時間軸。
・推奨BGM『星歌』/『エイトメロディーズ』(MOTHER)

【主人公】
賀陽(カヤ) 曜子(ヨーコ) 性別:女性 第1部開始⇒17歳、第2部開始⇒19歳
・小学生の頃、両親の海外転勤に伴って留学していた経験がある。
・滞在先はイーグルランドにあるオネットという田舎町。お隣さんに住んでいた野球帽の少年は相棒であり、ある意味“片割れ”的な繋がりがある。
・行方不明になってしまった“友達”と再会し、「自分たちが“友達”だった/“友達”であること」を確認し合った。
・先祖の名前がジョージとマリア。アメリカの田舎に住んでいた夫婦で、ある日突然行方不明となる。数年後に夫は帰って来たが、妻はついに帰ってこなかった。
・特殊な行動コマンドは「祈る」と「歌う」。使用頻度が高いのは「歌う」。


特殊異聞帯:心象幻影国家マジカント/■■

 アヴィケブロンのマスター・賀陽曜子には、強い絆で結ばれた“友達”がいる。7年間行方不明だった金髪の少年や嘗ての“旅の相棒”である赤い野球帽を被った少年とつい最近再会し、友情を確認し合ったばかりだ。その際、シャドウボーダーはとある異聞帯に迷い込んで大騒ぎになったが、詳細および内容は割愛する。

 あの異聞帯は凄かった。文鳥が棒と合体した「ぶんちょうぼう」というキメラにゴルドルフとカドックが頭を抱えたり、「ネンドじん」と呼ばれるゴーレムの類が労働力として生み出されていたり、人や動物問わず改造して凶悪なキメラに作り変える研究が行われていたり、「きゅうきょくキマイラ」なる生物が人間を踊り食いしたりしていた。

 レイシフトやシャドウボーダーによる虚数潜航とは違う形の時空ジャンプの成れの果てを初めて目の当たりにしたが、背丈と心が少年のまま醜悪な老人になった曜子の“友達”の姿は忘れられない。嘗て己を憐れみ、好奇の視線を向け、嘲笑い、迫害してきた連中と同じことを思ってしまったことにぞっとしたものだ。閑話休題。

 

 曜子は社交的な性格で、サーヴァントたらしだ。彼女に心を許し、あるいは心酔し、絶対的な忠誠を誓う英霊はごまんといる。

 早い段階で彼女に召喚された英霊は数多い。強く賢く多芸で優しい英霊も数多い。彼女に親愛以上の情愛を抱く英霊だっている。

 

 英霊に愛された少女が選んだのは、どういうわけか、詩とゴーレム製作の才能しか持たない厭世家の魔術師(キャスター)・アヴィケブロンだった。

 

 現在の関係性に落ち着くまで紆余曲折あったが、正直今でも信じられずにいる。不誠実で臆病な引きこもりが、凛と気高くどこまでも広く深い器を持った誰からも好かれる少女に見出されるなんて。生前には得られなかった唯一無二の“友”という関係を築けたことだけでも、自分にとっては奇跡だというのに。

 そもそも、アヴィケブロンは「自分が幸せになるべきではない」と考えていた。嘗て召喚された自分の分霊は、理想を叶えるために子どもを生贄にしている。死後に人を殺した分霊はそれを深く悔いながら消滅し、本体は分霊の行動に衝撃を受け、異聞帯で曜子に召喚された分霊はその贖罪から『ある決断』を下した。結果、アヴィケブロンは今ここにいる。

 

 

「――――♪」

 

 

 シャドウボーダーの一角に作られたアヴィケブロンの工房、その外から、聞き慣れた旋律が響いて来る。続いて紛れるように聞こえてきたのは、子どもたちの声だ。

 

 歌を歌っているのは曜子。聴衆はナーサリーライム、アビゲイル・ウィリアムズ、ジャック・ザ・リッパー、ポール・バニヤン、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィといったところか。そんなことを思った刹那、何処からともなく楽器の演奏が聞こえてきた。今度は老若男女の声も混じる。――工房の外は、ちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。

 街灯に引き寄せられた蛾のように、アヴィケブロンもふらふらと外へ向かう。工房の扉を開けて顔をひょっこり出せば、案の定、そこは賀陽曜子による小規模のコンサート会場となっていた。仲がいい英霊・悪い英霊の括りなど関係なく、音楽性の好みが正反対であるはずのカドックやゴルドルフもちゃっかり聴衆に紛れる程の様相である。豪華だ。

 

 

「ああ、ごめんねアヴィケブロン。煩かった?」

 

「いいや、構わないよ。丁度休憩しようかと思っていたところだったんだ」

 

 

 後ろ手でゴーレムたちに指示を出し、即座に工房内を片付ける。何名かがアヴィケブロンの発言と行動が何を意図していたかに気づいたらしく、あからさまに表情が変わった。

 その中から更に何名かは「自分たちは邪魔か?」と遠回しに訊ねてきたが、アヴィケブロンは首を振った。曜子がいるのなら、こういう喧騒も悪くはないと思う己がいる。

 聖杯大戦で顔を会わせたサーヴァントたちが目を丸くする姿に居心地悪さを感じ、話題を変えるために曜子へ「歌の続きが聞きたい」と乞う。曜子は二つ返事で頷いてくれた。

 

 

(同じフレーズを反復する、シンプルな歌だ)

 

 

 8小節からなるメロディーと短い歌詞を繰り返す。愛の歌を歌おうと呼びかけるそれは、余計な装飾すべてを削ぎ落している。ただ真っ直ぐに何の小細工もなく、聞くものすべてに語り掛けていた。心地よいメロディーとストレートな歌詞の奥底には、深い愛情と祈りで満ち溢れているように思う。

 曜子が歌を歌うと、大抵はこの歌――曲名は『星歌(せいか)』、あるいは『エイトメロディーズ』――を歌うことが多い。時々戦闘中に歌を歌うこともある。不思議なことに、『星歌』に限らず、彼女が歌うとしょっちゅう不思議なこと――曜子側が有利になるような現象が発生するのだ。原因は不明である。

 

 シャドウボーダー内には娯楽や嗜好品が少ない。そのため、クルーおよび曜子の精神衛生上の観点から、時折こういった小規模のお祭り騒ぎが認められている。程なくして、ミニコンサートは大盛況のうちに幕を閉じ、白紙の大地に夜がやって来た。コンサート時の喧騒は鳴りを潜め、ボーダー内部は静寂に包まれる。

 部屋に響くのは、文字を綴るペンの音。背後から感じるのは、アヴィケブロンの背中を真っ直ぐ見つめる曜子の眼差し。彼女は決してアヴィケブロンの邪魔をすることなく、けれども好奇心と尊敬に満ちた眼差しで、アヴィケブロンの背中を見つめてくるのだ。それが少し、面はゆい。

 “曜子と過ごす静寂の心地よさ”と、“このまま何もせず曜子を放置しておくことに対する申し訳なさ”や“「唯一無二の関係としてどうなのか」という疑問”が湧き上がる。暫しペンを弄びながら悩んだ後、アヴィケブロンは後者2つを取ることにした。

 

 他の者と一緒にいる曜子の姿を見て、寂しさやその他諸々に駆られた自身の経験が活きた結果だ。

 

 

「さて、そろそろ休憩にするかな」

 

「じゃあ、今回は私が飲み物淹れるね」

 

 

 わざとらしく背伸びをして振り返れば、先程背中に向けられた眼差し以上に鮮烈な笑顔が待っていた。

 構ってよかった、と、内心アヴィケブロンは安堵する。自分の判断は間違っていなかったようだ。

 

 

「すまない。退屈させてしまったようだな」

 

「ううん、ちっとも! 何かに打ち込む人の背中は格好いいから、いつまででも見ていたいって思うんだよね」

 

 

 格好良いと言われて嬉しくない奴はいない。特に、曜子を唯一無二の相手とみなしているアヴィケブロンにとっては。一瞬舞い上がったアヴィケブロンであったが、曜子の尊敬と憧憬の眼差しの奥底に既視感と懐かしさを見つける。

 

 曜子はカルデアに来る以前に、同年代の少年少女――平均年齢12歳――たちと一緒に世界を救ったことがある。誰も知らない少女の偉業に触れたのは、前回迷い込んだ特殊な異聞帯だった。彼女の“友達”が作った悪趣味な箱庭・ノーウェア島を駆け回った出来事は記憶に新しい。あの島は本来、永遠の楽園となるはずの島だったらしい。閑話休題。

 曜子曰く「大人たちの半分も生きていない少年少女(じぶんたち)のリュックは、思い出で一杯になった」そうだ。当時の出来事を語る少女の横顔はキラキラと輝いていて、秘密にしていた宝物をこっそりアヴィケブロンだけに見せてくれたように思えて、優越感があった。…………同時に、その場にいなかったことが非っっっ情に悔やまれたが。

 更に曜子曰く、「アヴィケブロンの言う『自分の目的の為なら、ありとあらゆるものを踏み躙る』タイプの人間や、アヴィケブロンのような『自分の特技に縋りつくあまり、時々寝不足とコンプレックスから暴発してしまう生真面目な努力家』タイプには覚えがある」らしい。若者言葉の『だめんず』という単語が脳裏によぎったのは何故だろうか。

 

 前者とはこの前の一件で顔を会わせたが、後者の該当者とは顔を会わせていない。曜子が語る“友達”の1人なのだから、彼も魅力的な人物であることは容易に想像がつく。

 善き心を持つ善き青年であるとも。けれどどうしてか――酷い嘘だ。本当は全部自覚している――アヴィケブロンは、件の“友達”に対して、汚い感情を持たずにはいられなかった。

 

 

「そういえば、“彼”も、しょっちゅう夜なべして色んな道具を修理してくれたっけ。どれも冒険を助けてくれたんだ」

 

「そうか。……その話を聞かせてくれないか? 後学に使えるかもしれない」

 

 

 「キミの“友達”が作った発明品とやらに負けられないから」という言葉を無理矢理飲み込みながら、アヴィケブロンは曜子の話に耳を傾けた。

 

 

 

 

「キミはいつも、その歌を歌うな」

 

 

 アヴィケブロンの指摘に、曜子は目を瞬かせる。

 

 彼の指摘は最もだ。幼い頃からそうだが、オネットから始まった長い冒険の最中も、カルデアから始まった人理修復の旅の最中でも、曜子は『星歌』――あるいは『エイトメロディーズ』を口ずさんできた。当時の記憶を思い返しながら、曜子は口を開く。「お母さんがよく歌ってくれたんだ」――脳裏に浮かぶのは、静かに微笑む母の姿だった。

 

 

「この歌、好きなんだ。『少しでも世界が優しいものでありますように』って祈りが込められているみたいで」

 

「成程。今ある世界に対する祈りか」

 

 

 自身の経歴と信仰心から楽園を夢見たカバラのゴーレム使いにとって、祈りという言葉はどこか琴線に触れたのだろう。興味深そうに身を乗り出してきた。

 声の調子が明るくなったあたり、曜子が歌う『星歌』に対して強い興味を抱いたらしい。それはとても嬉しいことなのだが、残念ながら、曜子では力になれなかった。

 曜子がこの歌について知っている内容は、そんなに多くない。母方の親族に伝わる歌で、先祖が1900年代初頭のアメリカの田舎町に住んでいたことくらいだ。

 

 確か、ご先祖夫妻はアメリカで発生した謎の行方不明事件――日本で言う“神隠し”の類に近い――の被害者だった。現在でもオカルト番組でちょくちょく取り上げられているようで、たまに関連番組から取材を申し込まれる。記録は擦り切れてしまっているにもかかわらず、だ。

 

 夫の名前はジョージ、妻の名前はマリア。前者は行方不明から2年後に帰還したが、『星歌』の作詞作曲者である後者は二度と帰ってこなかった。

 ジョージは狂ったようにPSI研究に打ち込み、志半ばで事実上の孤独死を遂げている。それが受け継がれた結果が、曜子のPSI能力だった。

 

 

「私も詳しいことは知らないんだ。けれど、お母さんが言ってたの。『この歌は貴女と貴方の大切な人を守ってくれるから、絶対に忘れちゃダメ』、『愛と祈りを伝えるための『星歌』だから』って」

 

「『星歌』……いい響きだ」

 

 

 曜子の言葉を聞いたアヴィケブロンは、考え込むようにして顎に手を当てる。母や祖母も『星歌』が何を意味しているのか分からなかったようで、詳しい話は聞けなかった。

 故に、曜子も『星歌』が何を意味しているか分からないのだ。そのことを素直にアヴィケブロンに告げて謝れば、彼は「気にしていない」と返答した。

 アヴィケブロンは『星歌』というフレーズをいたく気に入ったらしく、詩の中に組み込めないかを思案し始める。その姿が微笑ましくて、曜子はひっそり微笑んだ。

 

 

 虚数潜航していたシャドウボーダーが新たな異聞帯――先に辿り着いたノーウェア島のような限定的な特殊異聞帯――に辿り着いたのは、アヴィケブロンと『星歌』の話をしてから数時間後のこと。

 

 

 

 

「ヨーコ……!? キミ、ヨーコだよねっ!?」

 

「ジェフ!? なんでここに!?」

 

「会いたかった……! 僕、ずっとずっと、キミに会いたかったんだよ……!!」

 

 

 ――見知った他人であったとて、懐かしい戦友と再会することも。

 

 

「私はクイーンマリー。このマジカントを治める女王です」

 

「私は大切なことを忘れています。どうしても思い出すことができない……」

 

「メロディーを探してください。8つのメロディーを。そうすれば、きっと思い出せる――そんな気がするのです」

 

 

 ――迷い込んだ異聞帯の先にある国・マジカントの女王から不可思議な依頼を受けることも。

 

 

「僕には、機械修理と開発(これ)しかないから」

 

「…………」

 

「貴方と僕は、似ていますね。――仲良くなれそうな気はするけど、多分、ヨーコのことに関しては仲良くする気になれないかなぁ」

 

「……奇遇だ。僕も、キミと同じことを考えていたよ」

 

 

 ――戦友と唯一無二が変な火花を散らし始めることも。

 

 

『――はじめまして。ヨーコ』

 

『私の名前はギーグ。貴女の先祖……ジョージとマリアには、大変お世話になりました』

 

 

 ――賀陽曜子のルーツと、行方不明になった先祖・ジョージやマリアに関わる秘密を知ることも。

 

 

「これは僕の個人的な未練だから、気にしないで。……キミの征く花道は、何が何でも、僕が切り開いて見せるよ」

 

「だって、好きなこの前では、格好つけたいじゃないか」

 

「ヨーコォォォ! ――僕は、世界で一番、キミのことが大好きだァァァァァァァァッ!!」

 

 

 ――白衣を翻して駆け出した青年が、最後にそんなことを告げることも。

 

 

『この子守歌は……マリアの……』

 

「子守歌……? マスターの『星歌』が?」

 

『――歌うのを、やめなさい!!』

 

 

 ――『星歌』が『星歌』と呼ばれる所以を知ることも。

 

 

『ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン、ヨーコサンヨーコサンヨーコサンヨーコサンヨーコサンヨーコサン……――キ モ チ イ イ』

 

「せ、先輩! ギーグが、ギーグがっ……!」

 

「な、なんだアレ!?」

 

「最早あれは生物ではない。ただの呪いだ……!」

 

「うわぁ。やっぱりこの姿になったか」

 

「どうしてリアクション薄いんですか先輩!? 何をどう見てもとんでもないのに!!」

 

 

 ――いつぞやの悪魔が再現されることも。

 

 

 このときの曜子には、何一つとして予測できなかったのだ。

 

 

特殊異聞帯

心象幻影国家マジカント

星歌

 

 ――これは、愛と祈りの行く先を見届ける物語。

 

 

◇◆◇

 

 

 祈りを込めて紡がれた歌がある。

 「少しでも、世界が優しいものであるように」と。

 

 愛を込めて紡がれた歌がある。

 「どうか健やかに、幸せであるように」と。

 

 難しい言葉は必要ない。誰もが使える簡単な言葉と、心地よいメロディがあればいい。

 

 紡がれた数だけ、口ずさんだ数だけ、降り積もった愛は力を増していく。

 それは、人が人生を歩いていく際に積み上げた出会いと別れのように。

 沢山の笑顔と沢山の涙が、出会いと別れを彩り、旅を続ける導となったように。

 

 

「――――♪」

 

 

 青年は口ずさむ。泥や土埃、煤や返り血で汚れた金髪の髪を整えることなく。

 

 

「――――♪」

 

 

 青年は口ずさむ。泥や土埃、煤や返り血で汚れた白衣や深緑のブレザーを気にすることなく。

 

 

「――――♪」

 

 

 青年は口ずさむ。蜘蛛の巣状のヒビが入った眼鏡のレンズを修理することもなく。

 

 

「――――♪」

 

 

 終わり逝く世界で、歌を歌う。嘗て少年だった青年にとって、鮮烈な存在だった少女の姿を思い浮かべながら。

 ()()()()()()()少女が歌っていた歌を、()()()()()()()()()()()『彼女』のために歌い続ける。

 少女と『彼女』は「よく知る赤の他人」でしかないけれど、そのどちらにも、少年/青年は心惹かれたのだ。

 

 だから祈る。少しでも、『彼女』を取り巻く世界が優しいものであるように。

 だから祈る。どうか、『彼女』が健やかで幸福であるように。

 

 ――これは、少年が『彼女』に贈る歌。青年が『彼女』を愛していることを伝えたくて歌う、楽天家気質(Pollyanna)な『彼女』のための歌だ。

 

 

「――きこえたかい?」

 

『――きこえたよ』

 

 

 その返答だけで、充分だった。

 

 その返答だけで、少年の想いは報われる。

 その返答だけで、青年の想いは報われる。

 

 ――滅び逝く“世界”は「無駄ではなかったのだ」と、笑って目を閉じることができるから。

 

 

「――――♪」

 

 

 そんな『彼女』だから、自分は少女と『彼女』を愛したのだ。

 届くはずのない愛の歌を歌う。もう聞こえていないと知りながら、それでも歌う。

 少女に告げられなかった分を、『彼女』に伝えたありったけの分を、燃やし尽くす勢いで。

 

 この歌はきっと、滅び逝く世界に相応しい。降り積もってきた想いを葬るには、あまりにもいい天気だ。

 いつかの旅の終わりに見た青空と同じ、澄み渡った空が広がっていた。

 

 さようならを告げ、それぞれの道に踏み出していった子どもたちの背中が脳裏をよぎる。此度の別れも、きっとそれと変わらない。

 

 

「――――♪ ――♪ …………」

 

 

 歌い終えて目を閉じる。

 なんだか酷く眠かった。

 

 ――次に目が覚めたら、彼女に会えればいい。

 

 青年はそれだけを願いながら、意識を微睡みの底へと沈めていった。

 

 




クロスオーバー先:『MOTHER』、『MOTHER2』、『MOTHER3』
・「ぐだ子はPSIが使える」。「PSIは魔術礼装の威力を補強するために使っている」という設定がある。特殊コマンドは敵にランダムでバステとバフ+味方にバフがかかる。
・名前の由来はMOTHER2の「おまかせ」で選択できる名前設定にあった『ヨーコ』より。

<作中で出てくる楽曲を順番に並べてみる(作中での歌詞表記なし、歌詞なしのMOTHERシリーズBGM含む)>
1.曜子が歌った楽曲⇒『星歌』/『エイトメロディーズ』
2.少年が歌った楽曲⇒『Pollyanna』、『ビコーズ・アイ・ラブ・ユー』

Pixivに前話をベースにした小話≒今回の作品のベースとなった小話『Miss.Pollyanna系マスターとアヴィケブロンの話』(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9591560)を投稿しています。双方共に盗作ではありません。
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