果たして主人公は元の姿に戻れるのか?本来のブラックマジシャンの中身であるマハードは何処に行ったのか!
そんなノリで書いたコメディ短編。
心の広い人はよければどうぞ!デュエル(ダメージ物理)スタンバイ!
その日、俺は自室で一枚のカードをにやけた顔で眺めていた。スマホの充電器が壊れたから貸せと勝手に部屋に入ってきた妹に「うわキモッ」と言われ心へのダイレクトアタックを喰らう破目になったが、今日くらいは広い心で許してやろう。まあ普段も特に何も言い返せないんだけどな! 妹コワイ……。
ま、まあそれはどうでもいい。今はそれよりも昼間に見てきた映画の余韻に浸ろうじゃないか。
俺が手に持つ一枚のカードは「守護神官マハード」。これは初代遊戯王がジャンプに掲載されていた時から20周年を記念して製作された映画「劇場版遊☆戯☆王~THE DARK SIDE OF DIMENSIONS~」の入場特典でもらえるカードである。
遊戯王シリーズは人気が根強く主人公を変えてアニメ作品が現在も続いている。そんな遊戯王シリーズだが今回製作された映画は初代しか詳しくない俺にとっては非常に嬉しいもので、内容は漫画の最終回……闇遊戯ことアテムが冥界に去った後の武藤遊戯と海場瀬人が主軸となった物語だ。
色々忙しくて前売り券を買ったにも関わらず今日まで映画を見に行くことが出来なかったが、感想は「見てよかった」の一言に尽きる。あれは劇場で見てこそだろう。いや、ブルーレイ出たら買うけど。でもあの涙出そうになるくらいの感動は劇場版の大画面で見てこそより価値があるというものだ。
特典カードは映画公開周から一週間ごとにその種類が変わる。俺が今回ギリギリ入手できた特典は、初めの頃はシークレット扱いで正体が分からなかった4種類目。
守護神官マハード。3000年前アテムに仕えた六神官の一人であり、死後は自らの魂に宿る精霊と合体し「ブラック・マジシャン」となった人物である。その魂は3000年の時を越え、マジック&ウィザーズのカード「ブラック・マジシャン」として再び主君に仕えた。武藤遊戯及びアテムにとってのエースカードだ。
映画でもキーカードとして活躍したが、映画を見に行く前に漫画遊戯王を全巻大人買いして読み直した俺としては非常に感慨深い。なんたってブラック・マジシャンじゃなくてその前身たるマハードさんがカードになって手元にあるんだぞ! 感動するだろ!
俺、リアルタイムで遊戯王世代だったけど当時は親が厳しくて遊戯王カード集められなかったんだよな。そんなもの集めるのに金を使うな! もっと有意義に使え!って感じで、デッキすら作れなかった。大人になってからちょこちょこ集めた事はあったけど、シンクロとかエクシーズとか知らない召喚方法が増えててチンプンカンプンだったから本当に集めただけのなんちゃってコレクターだ。デュエリストではない。
でもそんな俺だって、格好いい遊戯王カードや漫画で見る白熱したデュエルには憧れた。
だから妹よ。今さらデュエリストにはなれないけど、こうしてかつて漫画で憧れたものを手にして浮かれるくらいは許してくれよ。キモイとか言うなよ。
「あーあ。でも、一度はデュエルしてみたかったなぁ……」
ついぼやく。
やろうと思えばタッグフォースというゲームで一人でも出来るようだが、俺は生のデュエルがしてみたかった。漫画やアニメのようにソリッドビジョンが浮かぶわけではないけど、「俺のターン! ドロー!」とか「〇〇を召喚!」とか言いながらやってみたかった。いや実際にデュエルしてる人がそんなノリでやってるかは知らんけど。なんかこう、思いっきり叫んでみたいじゃん。一度は。
そして、こういうのを「魔が差した」と言うのだろう。
俺はおもむろに立ち上がると、部屋のドアを開けて左右を確認する。誰も居ない。よし!
俺はカードスリーブに入れた守護神官マハードのカードを左手の甲の上に置き、すっと右手を構える。そして(小さい声で)叫んだ。
「俺のターン、ドロー! 守護神官マハードを召喚!」
その瞬間、俺の視界は真っ白に塗りつぶされた。
「俺の場には「シフト・チェンジ」のカードがあるぜ! この魔法カードは前線のモンスターを他の攻撃力の高いユニットと入れ替える効力を持つ!! 場のカードの中で最も攻撃力が高いのは……ブラック・マジシャン! ブラックマジック!」
「くっ」
『え?』
視界が真っ白になったかと思ったら、気づけば見慣れた自室とはまったく別の見知らぬ光景が眼前に広がっていた。広大な森を見渡せる何処か高い位置にある石造りの建物に、裾が重そうなコートを何か格好良くはためかせている細身で長身のイケメン。そしてそいつの前で回転する妙な機械に、おっかない姿をした剣を構える化け物。
あまりにも非現実的な光景にどうしていいか分からず、キョロキョロあたりを見回していると背後から困惑したような声が聞こえた。
「どうしたんだ? 何故攻撃しない。おい海馬! このデュエルディスク不良品じゃないか!?」
「馬鹿な! そんなはずあるか! 貴様の扱いがなっていないんだろう!」
「何ぃ!? くッ、ブラック・マジシャン! ブラックマジック!」
『えっと……』
「
振り返った先には、必死に俺に向かってブラックマジックと連呼するヒトデのようなモミジのような独特の髪型をした鋭い目の少年。見覚えのありすぎるその姿に驚きつつ、次いで自分の体を見下ろしてみる。すると同じく見覚えのある装備。……うん、装備としか言いようが無いな。少なくとも俺愛用のよれたジャージではない。
とりあえず俺は困惑しながらも、必死にブラックマジック! ブラックマジック! と叫ぶ少年が可愛そうになったので恐る恐る手に持っていた杖を構えた。
『ぶ、ぶらっくまじっく! うお!?』
「よしッ! 復讐のソードストーカー撃破だぜ!」
俺がブラックマジックと言った途端に杖から黒い稲妻みたいなものがほとばしり、剣を持った化け物が爆散した。その途端俺が認識していた二人の人間以外の声が聞こえた。
「よっしゃあああ! 海馬~! 遊戯の強さを見くびるんじゃねーぜ! オラァァァ! …………にしても、今のブラックマジシャンは何だったんだ?」
「何だか妙に人間臭いっていうか、困ったような顔してるように見えたけど……」
「気のせいじゃないか?」
「でもよ本田。今度はビックリしたみたいな顔でこっち見てるぜ」
「あ、ホントだ。……おい、ガタガタ震え始めたぞ」
「そうね。あと、やっぱり凄く表情があるわ。目を見開いて口まで開けて……あの格好いいブラックマジシャンとは思えない変な顔してる」
「おい海馬! やっぱそのデュエルディスク不良品じゃねぇのか!?」
「う、煩い! そんなはずはない! それよりデュエルを続けるぞ!」
え、待って。待って。デュエル続行とかちょっと待って!
よく分からないけど、もしかして俺って今ブラックマジシャンになってる!? 夢にしてもちょっと映像のクオリティ高すぎない!? とりあえず(多分)社長はちょっと待って! なんか今度はランプの魔人みたいなの出してきたけどちょっと待って!!
「遊戯! 貴様のターンだ!」
「おう!」
(多分)遊戯さんもちょっと待って!? おう! じゃないよ!? 俺の心の準備が置いてけぼりだよ!?
「スローイング・ディスク! バトル! ブラック・マジシャン! 魔精・ラ・ジーンに攻撃!」
『あのっ』
「またか!? ブラック・マジシャン! 攻撃だ!」
『あの、ちょっと待』
「攻撃だ!」
やばい。表情とかは分かってるっぽいのに俺の声向こうに聞こえてないっぽい。どうしよう。
『ちょ、何やってるんスかブラック・マジシャンさん!』
『え!? だ、誰』
『あんたと入れ替わりで引っ込んだカース・オブ・ドラゴンっスよ!』
『カース・オブ・ドラゴン!?』
だから色々待って! 夢にしても色々酷いよ!? あの怖い顔の格好いいドラゴンが何でこんな舎弟口調なの!?
『とにかく攻撃するっス! ご主人様が困ってるっス!!』
『あ、はい。すみません。えっと、ブラック・マジック!』
再度杖を振るう。再び稲妻がほとばしり、目の前の魔人に殺到した。……なんか、ちょっと楽しくなってきたな。
よく分からんが、多分映画を見た事によってテンション上がってこんな夢を見てしまっているのだろう。これってたしか、王国編でペガサス城に入る前の社長と王様のデュエルだよな? ライバル同士の戦いをモンスター……それもブラックマジシャンの姿で見られるとか最高じゃないか! 何だ、俺の想像力も捨てたもんじゃないな。凄いクオリティーだ。
けど夢と分かれば怖くない。目が覚めるまでブラックマジシャンを堪能しよう!
そして開き直った俺だったが、俺の渾身のブラックマジックは社長が発動したトラップカード、マジックランプに跳ね返された。そして跳ね返されたブラックマジックが襲ったのは……。
「カース・オブ・ドラゴンを粉砕!!」
『ぐぁあああああああ!?』
『カース・オブ・ドラゴンさああああああん!!!!』
カース・オブ・ドラゴンさん逝ったぁぁぁぁぁぁ!! そんな、混乱する俺に声をかけてくれたカース・オブ・ドラゴンさんが!!
『くっ、許さないぞ!』
俺は戦友カース・オブ・ドラゴンさんの仇を打つと決め社長を睨むが、社長の眼力が強すぎて思わず俯いてしまった。うん、社長の目力怖い。
しかしデュエルが進むと、俺はシャッチョが発動した死のデッキ破壊ウイルスの効果で俺と入れ替わった暗黒騎士ガイアさんと共に墓地に行く破目になった。しかも夢だというのに、ウイルスに蝕まれる体が物凄く痛かった。想像だけど、多分硫酸とかぶっかけられたらこんな感じじゃないか? ってくらい痛かった。もう大絶叫よ。そしてリアルな痛みがあるのに目が覚めないのにビックリだよ。え、何この悪夢。ついさっきまで楽しくなってきたとか言ってた自分をぶっ飛ばしたいんだけど。
そして本当の悪夢はそこからだった。
いくら待っても夢から覚めないんだよ。…………覚めないんだよ!! つまり俺、ずっとブラック・マジシャンなんだよ!
デュエルが終わった後は遊戯デッキの中の……なんていうか、デッキに入っているカードたちが集まる謎の空間? があって、そこで他のモンスター達に「調子悪いみたいだけどどうした?」と心配されてしまった。とりあえず皆さんとても立派な体格の方ばかりなので、俺が偽物であるとバレたらまずいと思って曖昧な笑みで誤魔化した。心配そうに「クリクリ?」とすり寄ってくれたクリボーマジ天使。ちょっと癒された。
ガイアさんには「いつも毅然とした貴方が珍しい。だが、エースであるブラックマジシャン殿があんな体たらくでは情けないぞ!」と怒られ、翻弄したりしない普通のエルフの剣士には「ブラックマジシャンさん真面目だし、ちょっと頑張りすぎたんじゃないですか?」と心配され、カース・オブ・ドラゴンさんには「元気出すっス! ちょっといつもと違ってたけど、今日の
その後もこの夢が冷める様子はなく、俺は憧れていたデュエルをモンスターとして物理的に体験しながらひーこら言いながらなんとかかんとか王様と一緒に戦った。何故か一回王様の心の部屋らしき所に迷い込んだけど、罠で死にかけたからもう行きたくない。
そして原作で言う王国編が終わったころだ。遊戯デッキに新しいカードが加わった。
『あなた誰!? お師匠様じゃないでしょ!』
『マナたん……』
『マナたん!? ちょっと、お師匠様と同じ顔で変な呼び方しないでよ! っていうか、何でその名前を知ってるの? お師匠様の魂は何処? せっかくまた会えると思ったのに! あともう一度聞くけどあなた誰!』
『お』
『お?』
『俺が聞きたいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
生ブラック・マジシャン・ガールに会えたにも関わらず、色々と限界だった俺は年甲斐もなく泣いた。もう恥も外聞も無いとばかりに泣き叫び、俺はこうなってしまった経緯を一通りぶちまけた。
ブラック・マジシャン・ガールこと、元はマハードの弟子だったマナという女の子の魂が宿った精霊は俺の状況をこのように考察した。
『物語としてこの世界と繋がる異世界か……。魔術的に考えても、無くは無いわね。でもそうなると、何かの事故がきっかけであなたとお師匠様の魂が入れ替わっちゃったんだわ』
『そんな! 俺はどうすれば!?』
『う~ん……私にはどうしようもないけど、お師匠様の事だし多分自力で帰って来れると思うのよ』
『じゃ、じゃあ俺もマハードさんが帰ってきたら元の世界に戻れる!?』
『その名前も知ってるんだ。……本当にこの世界を観測する場所から来たのね』
『あの、それで俺は……』
『仕方が無いし、今はお師匠様を信じて待ちましょう。……ところで、他の皆に聞いたけどあなた随分へっぴり腰らしいじゃない』
俺が元の世界に帰るためには王様所有ブラック・マジシャン本来の中身……マハードさんの帰還を待たねばならないらしいが、それを聞いてわずかながら希望が湧いた俺にブラック・マジシャン・ガールの鋭い視線が突き刺さる。
『お師匠様の姿で情けない姿をさらすなんて許せない! 今日から特訓よ!』
『特訓!? え、えっと、例えば?』
『格好良く魔術をきめたり、攻撃されても叫ばないで格好良く墓地に行ったり、復活する時颯爽と涼しい顔で頼もしく現れるポージングや表情の作り方もろもろの特訓よ!』
『ええ!? で、でも攻撃受けると物凄く痛いし無理だよ!?』
『無理でもやるの! 安心して。お師匠様を最もよく知るこの私が手取り足取り指導してあげる!』
そう言ってウインクするブラック・マジシャン・ガール。非常に可愛らしいが、萌えてる場合ではない。
嫌だ嬉しくない! だってこの子からはそこはかとなく妹と同じ匂いがする! つまり怖い!
『さっ、始めるわよ!』
『い、嫌だぁぁぁーーーーーー!!』
誰か助けて。っていうか、マハードさんカムバック。一刻も早いご帰還を所望します!!
「マハードさんどこぉ……!」
こうして俺のブラック・マジシャンライフは始まった。
(´;ω;`)
掃除しようと思ったら遊戯王全巻読み直していた。
↓
デュエル書けないくせに遊戯王二次を書きたくなった。
↓
デュエルを書かなければいいじゃない!
↓
平目板!よし、白熱したデュエルを近くで見るためにはモンスターになればいいんだな。
↓
目に入った劇場版パンフと守護神官マハード。
↓
書いた←イマココ
マハードさん本人は実はどこにも行って無くて、主人公がログインした体の中にずっと居た。そして終盤あたりで主人公がダメージによりいよいよ精神的にギリギリになったところで魔力が戻り復活!「今までよく頑張ったな。後は私が引き継ごう。行くぞマナ!」「はい、お師匠様!」みたいな感じて超格好良く登☆場!……というところまで妄想しました。
ごめんなさい(素直に土下座)