逆に驚いてしまったくらいです。
これはまた数か月もお待たせできないなと思い、なんとか書き上げました。
本当はストックして定期更新できるのが一番いいんですけどね。
シェイラは海斗に口づけている間、時が止まったかのように感じていた。二人きりの空間に流れる音はほとんど皆無で、次第に秒針の音さえも消えていく。
「おーい、海斗遊びにきてやったぜー!」
……ドアの開く音がした。
「なぁっ!?」
「これはこれは……」
突然の訪問者は二人いた。ドアを蹴破るような勢いで入ってきたのはステイシー、その後ろからひょっこり顔を出しているのが李だ。リアクションの大きさこそ決定的な違いが見えたが、二人ともその表情に驚きが浮かんでいるのは同じだった。それもそのはず、シェイラと海斗のキス現場をまさに目撃してしまったのだから。
「シェイラ、お前何やってやがんだ!」
「ち、違いますよ!これはそういうんじゃなくて……!」
そこまで矢継ぎ早に言ったところで気づく。このまま否定せずにいれば、ステイシーへの嫌がらせにもなるのに、どうして焦って言い訳をしようとしてしまったのか。いやそれ以前にそもそも普段であれば部屋の前の人の気配などには気づくことができるはずだ。それもできないほど、海斗との世界に没入していたということを改めて感じると、シェイラは柄にもなく自身の頬が熱くなるのを感じた。
「そういうんじゃないだぁ?バリバリ現行犯だろーが!」
「……ふっ、ふふふ。残念でしたね、ステ公。海斗ちゃんは既に私のモノです」
「ファック、なに勝手なこと言ってやがる!いいぜ、今すぐ私が上書きしてやる」
「ステイシー、落ち着いてください。海斗はどうやら寝ているようです」
「アン?」
冷静に状況を見ていた李からの一言で、ステイシーはよくよく海斗を眺めてみる。
「それにシェイラがベッドの上から動かない……いや動けないようですし、これはまたいつもの海斗が発動したんでしょうね」
「あぁ、じゃあこの毒蜘蛛は寝こみを襲った不届き者っつーことだな」
「うぐっ……」
結果的にまさにその通りであるので何の反論もできない。加えて体も思うようには動かないのでただただ不機嫌な目で睨み返す程度の抵抗しかできなかった。
「救護班でも呼んだほうがいいのか?」
「いえ、外傷があるわけではありませんし、同じく休みを満喫している仲間に仕事をさせるというのも気が引けます。とりあえず、海斗を起こして……」
その瞬間、唐突な気の発生を感じた。
「ん……あぁ」
「海斗ちゃん?」
「ん、シェイラか。顔近いな」
「いや、これは違うんです!って、すぐに体が動かないんですけど」
「いいよ、別に嫌じゃない」
「海斗ちゃん……」
「なに甘い空間展開してんだ!」
「うぉっ」
背後からステイシーのキツめのヘッドロックが海斗を襲う。
「なんだステイシー、来てたのか」
「ちなみに私もいますよ」
「おう、李も」
「海斗ちゃん、それより体は平気ですか?」
「ああ、上手いこと保険は働いたようだが、必要なかったみたいだ」
海斗の言う“保険”というのが先ほどの唐突な気の発生に関係しているのだろう。李とステイシーは部屋に入ってきたばかりで海斗をただ寝ているものと思っていたのだから、何も違和感を感じることはないだろうが、シェイラは海斗の意識がなかったことを知っている。それがいきなり何事もなかったかのように目を覚ましたのだ。おそらく海斗はあれだけハイレベルな防御を巡らせたうえで、毒を取りこぼす可能性まで考慮に入れていたのだろう。そして、力の使いすぎで気を失うことも考えて、あらかじめ時限式で発動するように気つけの技を仕込んでおいたのだ。万が一、毒が残っていても大事には至らないように。必死の解毒を行ったシェイラだったが、助けなどなくても海斗は自分の力で生き残っていたのだ。ただ、それでも……
「シェイラ、ありがとうな」
「へっ、な、何がですか」
「体が随分楽になってる、助かったよ。シェイラのおかげだろ?」
「いえ、シェイラちゃんはそんな別に大したことは……」
「この状態で、よく無視して会話ができるなぁ」
そう、海斗はステイシーに首を絞められたままである。ニコニコしながら怒るステイシーは手加減してくれているのだろうが、やはりその威力は凄まじい。海斗はその首を絞めているステイシーの手首をゆっくりと握る。
「ステイシー、ちょっとばかし借りるぞ」
「アン?」
ステイシーは海斗の言葉の意味が分からずに首を傾げるが、すぐに理解する。海斗に触れている部分を通じて、自分の気が海斗に流れ込んでいくのを感じたのだ。海斗のほうもそれを感じたように頷くと、そのままシェイラに向けて手をかざした。温かな光がシェイラを包んでゆく。
「この感じ……」
「これで疲労感は消えるはずだ。無理しなければ普通に動けるだろ」
確かにすぐに本調子とまではいかなかったが、明らかに先ほどまで体を重く縛りつけていただるさが消え去っていた。体を動かすのにも億劫さはない。
「はぁ、少し疲れた。ステイシー、悪いが少しこのままでいいか」
「お、おう。私は全然かまわないぜ」
「あぁ、助かる」
海斗はそのまま体重を預けるように後ろにいるステイシーに寄りかかる。その大きく柔らかい胸がクッションのように海斗を受け止めた。なかなか海斗のこんな姿を見たことがなく、困惑気味だったステイシーも、海斗が自分を頼ってくれていることを理解すると、頬を染めながら海斗の顔を覗き込んでいた。首を絞めていた腕も、今は海斗をしっかりと抱きしめて離さなかった。
ステイシーの胸を枕にして、李さんにマッサージ、シェイラちゃんに耳かきされたりしたら幸せだろうなぁと考えながら書きました。
たぶん今後の展開ではないと思うのですが、常に妄想はあります。