人類最終試練〜〝破壊の化身〟と〝絶対悪〟〜   作:葛城 大河

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呉爾羅を問題児世界のチカラに合わせて書いてみた短編。ただそれだけである。


〝破壊の化身〟と〝絶対悪〟

 

悪あれかしと謳われ、人類の為に絶対悪を掲げた魔王が居た。それは一人の女の涙を止める為に自ら、怪物の道を選び悪に染まった者。いずれ、現れるであろう己に光輝の剣を突き立てる英雄が目の前に出てくるのを誰よりも待ち望みながら。しかし、〝彼〟が魔王として生まれた時代、また同様にソレは出現した。

 

 

巨大な体躯。悍ましい程に怒りを滲ませた咆哮。人類に向けられた純粋な殺意。ただただ人類を無に還す為に、文明を終わらせる為に振るわれる破壊。ソレは〝彼〟よりも実に悪であり、〝彼〟よりも精神が怪物に染まっていた。目的は文明の破壊。勇者など関係ない。英雄など関係ない。人類ならば等しく破壊する正真正銘の怪物。そこにいずれ来たる救済などなかった。あるのは無。ひたすらに続く虚無である。

 

 

怪物は咆哮を上げる。憎悪を込めて誕生の産声を轟かせた。地を踏み締め、人類に進行する。その怪物の出現に、人類も攻撃に出た。しかし、相対するのは正真正銘の怪物。〝破壊〟そのものである。人類のチカラなど意味を成さず、寧ろそのチカラを眼にした怪物がよりいっそうに憎悪を浮かべた。そして放たれるのは文字通りの破壊の一撃。顎が開き、背びれが綺麗に光り輝く。幻想的なまでに綺麗なその輝きに見入っていた者は、次の瞬間。

 

 

視界を覆い尽くす程の青白い閃光によって消滅した。振るわれた一つの閃光。それによって一つの国が地図から消失したのだ。想いも、懺悔も、怒りも、願いも。全てを問答無用に消し飛ばした。だが、それでは足りぬと怪物は雄叫びを轟かせる。これでは晴れない。この程度では憎悪がやむことはない。破壊しなくては。消さなくては。この世界から文明を無に還さなければ。この苛立ちは、憤怒は抑える事が出来ない。

 

 

故に、破壊の化身は歩を進めた。しかし、その重い足が止まる。何故なら〝破壊の化身〟たる怪物の眼前に────ソレは居たのだから。夜天を照らす凶星のような紅玉の眼を持ち、三頭の白蛇を伸ばす一体の怪物。同じモノによって生み出され、しかし、お互いが違う意思によって突き動かされる二体の怪物の邂逅。一体は宗主の為に〝絶対悪〟を掲げた三頭龍。一体は人類が手にしたチカラが齎した出来事に憎悪を燃やし、文明を無に還す事を定めた黒龍。

 

 

紅玉の瞳が、憎悪を燃やす黒龍を射抜く。こんな終わりなど認められない。彼女が見た人類の終末は断じてコレではない。勇者が、英雄が救わなければならないのだ。しかし、この黒龍はソレを考えていない。このまま行けば、文字通り世界はコレに破壊されるだろう。勇者が現れる事なく、英雄が剣を振るう事なく。別の形でこの存在が、世界に終末を齎してしまう。ダメだ、と。それだけは行けないと。三頭龍は黒龍に六つの紅玉を向けて吼えた。

 

 

明確な敵意。ソレを感じ取った黒龍は、すぐに三頭龍を滅ぼすべき相手だと定める。

 

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa──────ッッッ‼︎」

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa──────ッッッ‼︎」

 

 

同時に上げる大咆哮。たった上げたその雄叫びに、世界は震撼する。三頭龍の影が鋭く黒龍に向けて放たれる。尋常ではないその龍影は、しかし、黒龍の振るう剛腕によって砕かれ、その衝撃に大地が捲り上がる。続けて振るわれる龍影は、悉くが黒龍に傷をつける事が叶わない。高速に放たれる龍影をしっかりと、眼に捉えながら砕き、粉砕して進んでいく。次いで、黒龍が攻撃に出た。巨躯の体とは思えない速度で接近し、その剛腕を三頭龍に振るう。

 

 

ソレを防ごうとした〝彼〟はその時、異常な衝撃を感じて鮮血が舞った。黒龍は〝破壊の化身〟たる怪物。生半可な防御では意味など成さない。三頭龍はその一撃に驚愕したと同時に、黒龍もまた驚愕した。拳から感じる大質量。見た目とは完全に逸脱したその質量に、憎悪に揺れた瞳が見開く。と、同時に突然、湧いたような敵意に周囲を見渡した黒龍は、自身を取り囲むように立つ二頭の頭を持つ双頭龍が視界に入った。疑問を覚える黒龍は、だが、目の前に居る三頭龍から確かに舞ったであろう血がない事に気付くと理解した。

 

 

つまり、この双頭龍は三頭龍が流れ出た血から生まれた化身なのだと。ま、だからなんだというのか。敵が増えた? 関係ない。増えたならば、増えた存在ごと破壊すればいいだけなのだから。そう思った黒龍の視界が揺れた。全身から感じる衝撃。それに眼を動かせば、三頭龍が拳を振るっていた。それに殴られたのだと理解した黒龍は、怒りを滲ませる。同時に囲むように立っていた双頭龍が、黒龍に向けて殺到した。

 

 

しかし、鬱陶しいと言わんばかりに放たれる尾の一撃に双頭龍が容易く粉砕される。例え、増えたといっても、所詮は本物よりもチカラが劣る存在でしかない。黒龍は顎を開く。背びれが幻想的に輝き始める。それを眼にした三頭龍は、なにをするのかを理解して、自身もまたチカラを行使する。両手の間に一つの炎を生み出す。口の奥に青白い光が覗く。

 

 

刹那────炎熱の一撃と青白い閃光が解き放たれた。衝突する二つの一撃。二つが二つとも同じモノにより生まれたギフトであり、閃熱系最強の一撃である。拮抗する炎熱と閃光は、次の瞬間に爆ぜた。轟音を辺りに響かせ、世界に鳴動が奔る。それだけでは、とどまらず爆ぜた衝撃により地盤が砕け、大地が割れる。天が焼かれ、空間すらも燃やした。威力は同等。いや、憎悪の分だけ黒龍の方が少しだけ上だった。

 

 

とはいえ、このままでは勝負がつかない。故に三頭龍は行使した。

 

 

「〝アヴェスター〟起動───相剋して廻れ、〝擬似創星図(アナザー・コスモロジー)〟」

 

 

使うのは自身の世界(うちゅう)を顕現させるチカラ。〝彼〟の世界(うちゅう)はとある二元論。それを最速で構築出来る相剋の〝擬似創星図〟。相手のチカラを含めた額面上の性能を、全てそのまま己に上乗せするというもの。それを眼にした黒龍もまた、チカラを行使する事にした。

 

 

「─────〝擬似創星図(アナザー・コスモロジー)〟」

 

 

今まで喋る事のなかった怪物が、遂に声を出す。

 

 

「…………■■■■■」

 

 

そして最後の一言を口にした。黒龍が口にしたのも、三頭龍と同じく自身の世界(うちゅう)を顕現させるチカラ。瞬間、胸や背びれ、眼など体の随所(ずいしょ)が炎のように赤く発光する。体から蒸気を噴き出し、ギラギラと三頭龍を睨む。これが黒龍の世界観(うちゅうろん)の発露。死と生。創世と破壊の具現。文字通り、世界に終末を齎す〝破壊の化身〟の創造。お互いの宇宙論のぶつかりあい。再度、二体の怪物が衝突した。

 

 

次の瞬間────世界が粉砕された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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