幾度と無く同じ一ヶ月を繰り返している暁美ほむら。今回も失敗し転校初日からのやり直し、しかし今回はほんの僅かな気まぐれにより斜め上の事態に遭遇してしまった・・・



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連載やめて加筆し、読みきりで投稿し直しました。


理解不能・・・関わりたくない・・・

 ほむらSide

 

 また同じことの繰り返し、先生に呼ばれ転校生として挨拶し、物珍しさから集まるギャラリーの質問に素っ気無く答え、いつものように鹿目まどかに保健室に案内して貰う。

 

 案内とは名ばかり彼女の前を歩き、保健室までの道のりを淡々と歩いていき、その道中を周囲のギャラリーが静かに騒ぎ立てる。少しして雑音が消えて渡り廊下の近くに差し掛かろうとした時、風が吹き髪をさらう。ふと振り返ると窓が開いており顎に指を当てる。

 

(こんなこと今まであったかしら)

 

 思いながら視界には影が差している階段が映り、足を向ける。

 

「え?あ、暁美さん---」

 

「こっちからでも行けるでしょ」

 

 この行動に深い意味はないただの気まぐれ、しかしその階段を下りていくと下から声が響いた。

 

 

 

 Side off

 

(しょう)、見たか?下の学年の転校生、美人だったよな」

 

 我が友、古田健(ふるたけん)が顔をニヤケながらの質問、こう言う時は調子よく肯定的に合わせてやるのが作法だと思うが、俺は思ったことを反対の意味に聞こえるように答えた。

 

「美人ではあるが、氷と言うか・・・能面みたいだったな。なーんか知らんが、近寄るなってバリア出してたし・・・う~ん、いやあれは見下し精神のオーラかもしれんな。自分は人には言えないモノ背負ってるんだ、豪いんだぞ。みたいな」

 

「いつもながらよくそこまで話を膨らませるよな~、ハハハハ!」

 

 そんな俺に健は笑いながら背を叩いてくる。そして俺もこんな遣り取りが嫌いではなかった。だから調子に乗って遠慮なく膨らました憶測を口に出す。

 

「ちなみに俺が思うにあの転校生ちゃん、親がヤクザだったりとか」

 

「ほほう。ちなみに根拠は?」

 

「ない。ただ華奢な体の割には何かと戦ってるみたいな堂々とした印象だったからな。案外見えないところで銃ぶっ放してたりとか」

 

「それだと実はどっかの秘密組織のスパイとかの方がカッコ良くね?」

 

「ほう、学生とは仮の姿か・・・ならば授業が終われば派手な衣装に変身して正義をなすとか」

 

「今度は変身ヒーローか、流石に浮世離れしすぎだぞ。

 しかし、何だかんだでよく見てんじゃん、やっぱりタイプか?」

 

 その問いに腕を組んで考えてしまう・・・あの転校生は間違いなく美人、美人に目が行くのは健全な男であると開き直るのもいいが、何故かそこから先に話を続けられそうな気がしない。今の話は憶測ではあるが抱いた印象が下敷きになっているのも事実、男の性以上に人間、いや生物としての本能とも言うべき物が危険信号をチラつかせている。

 

「そこまで真剣に考え込むなよ・・・・・まぁ、なんにしてもアタックとかするつもりだったら、その妄想癖は直すか隠すかしたほうが良いぞ。相手が俺だから笑ってすんでるけど、もしも本人の耳に入ったら-------」

 

「そうね。とても大変だわ」

 

 健の言葉を引き継ぐように階段上からの声に顔を上げると、今の今まで噂していた美人の転校生が凄まじい冷たい眼で俺たちを見下ろしていた。顔に掛かる影も迫力に拍車をかけ近くにいたピンク頭の同級生と思われる女子もオロオロしながら転校生と俺たちを交互に見ており、そんな同級生を置いて転校生はコツコツと聞かせるように階段を降りて近づき、健を無視して俺の襟首を掴んで顔を近づける。

 

「私にどんな印象を抱こうと、それをダシにしてどんな妄想をしようともアナタの自由よ。でもそれを口に出すなら、もっと周囲に気を払うことね。じゃないと取り返しのつかないことになりかねないわよ」

 

 美人に顔を近付けられ普通なら役得なはずなのだが、今の彼女の顔には色気でなく怖気しかなく、俺は恐怖で上級生のプライドも男の意地も引っ込んでしまい、短く謝罪した。

 

「済みませんでした」

 

「理解したなら良いのよ」

 

 彼女も短く答えて手を放して連れの女子に声をかける。

 

「ごめんなさい、更に気分が悪くなったから、早く保健室に行きましょう」

 

 返事も待たずそのまま階段を下りていき、慌ててピンク頭の女子が俺たちの近くに来て軽く会釈して追いかけて行った。

 

「やっぱりヤクザの-----」

 

「いい加減懲りろ」

 

 健が頭を小突き休み時間の関係もあり俺たちは教室に戻っていった。

 

 

 ほむらSide

 

 

(今まであの道を利用したこと無かったけど、気まぐれなんて起こすもんじゃないわね)

 

 ほむらは後悔と同時に階段の上級生、特に饒舌に語っていた方の内容を思い出すと感情が掻き立てられ、頭に血が登り不機嫌なオーラを辺り一帯に撒き散らす。 

 

「あの暁美さん----」

 

「大丈夫、気にしてないわ。それと私のことはほむらでいいわ」

 

「う、うん。えっと・・ほむらちゃん」

 

 そのオーラを間近で浴びまくっているまどかは、ほむらの言を全く信じられず、されでもフォローすることも出来ずに只管保健室までの道を付いていくしかなかった。

 

 

 

 

 Side off

 

 

 放課後のショッピングモールでファーストフード店に入った俺は客席にピンク色の髪を見つけ、健と一緒に近い席に座るが彼女は気付く様子も無く、ぐったりと向いの席に居る青髪と黄緑色の髪をした女子たちに階段での顛末を話していた。

 

「アハハハハ、そりゃ災難だったねまどか」

 

「笑い事じゃないよ、さやかちゃん。寿命が縮むなんて思い、始めてしたよ」

 

「まぁ、まどかさんにはお気の毒ですけど、話を聴く限り暁美さんが怒るの至極当然、不思議な雰囲気な方だと思っていましたが少し安心しましたわ」

 

「仁美ちゃ~ん、それ慰めてるんだよね?」

 

 ピンクがまどかで青がさやか、そして黄緑が仁美で転校生は暁美か。ここで済まないと会話に入り謝罪の場でも設けてもらおうかと考えるが、続いて出た言葉にブレーキが掛かる。

 

「所でまどかさん、ホントに暁美さんと初対面なんですの?」

 

「う~ん、常識的にはそうなんだけど」

 

「なに、非常識なところで心当たりが在るの?」

 

「実は昨日、夢の中で会ったような・・・・・」

 

 なにその電波な回答、まどかと言ったか・・・この娘に頼むのは考え直した方が良いのか、向いの女子たちも笑いながらじゃれ合ってるし、会話に入るタイミングが無い。

 

「もしかしたら本当は暁美さんと会った事が在るのかもしれませんわ。

 まどかさん自身は覚えてなくても深層心理に印象が残って、それが夢に出てきたとか」

 

 仁美女子の見解はありえなくは無いと思うが、善し悪しも含めてあんな濃い女に会ったら簡単には忘れないと思うが、もし心の底に封印してしまっても再会したら好まざるに関わらず思い出すんじゃ・・・・と言うか、どうして俺、後輩女子の会話に聞き耳立てて分析してるんだ。

 

「あらもうこんな時間、ごめんなさい。お茶のお稽古あるので、ここで失礼しますわ」

 

「うわー、もう直ぐ受験だってのに小市民でよかったわ」

 

「じゃ、わたしたちも行こっか」

 

 そうして席を立ち店を出て行くのを見送る。結局一ミリも気付かれなかったな、しかし俺が言うのもなんだがおかしな会話だったな。いつもなら真っ直ぐ塾に向うのに、気分転換にと寄り道してみれば全く正反対の心境になってしまうとは・・・・・

 

「翔、思ってることが在るなら聞くぞ」

 

 健がストローを加えながら面白そうに言ってくる。その余りにものんびりした態度に素っ気無く口を開いた。

 

「いいよな~、推薦決まって受験勉強しない奴は」

 

「来年はあの転校生がそうかも知れないな。体育の授業で県記録出したって噂で持ちきりだったぞ」

 

「嫌味か!」

 

「ハハハハ、まぁそんな俺だから、こうしてお前の気晴らしにも付き合えるんだ。普通は今頃-----」

 

「あ~、塩を塗るような真似はやめて。俺が悪かった」

 

 そう本来、この時期の三年生に遊んでる余裕は無い。特に部活にも入っていない俺は親から口うるさく進学について言われている。息抜きが出来るほんの僅かな一時を自分でぶち壊す愚を犯すなど以ての外である。

 

「じゃ、受験生は受験生らしく大人しく塾に行くとするよ」

 

「時間はまだまだ大丈夫だろ?」

 

「けど、無駄には出来ない。じゃあな」

 

 手を振って店を出てバス停を目指していると、ふとさっきまでの会話からか塾にも行かず勉強しているとも聞かないクラスメイトが頭に浮かんだ。学校が終わると直ぐに帰り、休みがちで殆ど(・・)接点も無いのだが、一度気になると中々直ぐには消し去れない。義務教育までの中学ならともかく高校では出席日数が足りなければ留年してしまうし、そもそも何処の高校を受験するのかも未だハッキリさせないとクラス委員と担任が愚痴ってたのを思い出すと、ああは成りたくないなと思っていたら何の因果か、そのクラスメイト『巴マミ』がモールの裏側さらにその奥に向っている光景に出くわした・・・・・・偶然だよな?

 

「あれ?でもあの先って確か・・・」 

 

 行ってみると記憶通り立ち入り禁止の表札がありありと存在し見渡す限り巴の姿は無く、中に入っていったのは容易に想像出来た。

 さて、見なかった事にして立ち去ろうか、店員さんに伝えて対処して貰おうか、騒ぎになる前に捕まえるか・・・

 そもそも階段で暁美と会わなかったら、このモール自体に来なかったんだし一番目の選択肢でも問題は無いが、たられば言っても時は戻らない。二番目の選択肢がベターだろうが入った瞬間そのものを見たわけじゃないのに違っていたら、怒られるのも嫌だ。携帯で時間を確認するとまだ大丈夫の範囲だ。凄まじく愚かだと言う自覚は在るが、俺は最後の選択肢を選び、立ち入り禁止を越えて中に入っていった。

 

「電気は無いがこの程度ならライトは必要ないか」

 

 携帯電話をポケットにしまい、周りを気にしながら慎重に歩いていき目当ての人物を探す。それにしてもアイツはこんな所に何の用があるんだ?金目のものなんて有りそうもないし、人の居ない所で何かするにしてもリスクの方が高い気がするのだが・・・・・・やっぱり放っといて引き返そうかな。そんな考えの考え事をしていたら携帯を落としたのに気付き、俺は足と止めて来た道を振り返る。しかし近くにはなく戻って行くと入り口から半分くらいの距離で見つけ安心する。壊れていないか開いてボタンを押し画面で辺りを見ててみると一瞬何も無い空間が歪んだように映った。

 

「・・・なんだ、今の?」

 

 今度は自分の目で確認するがそこには何も無く、携帯が壊れたのかと再び画面を向けるが何も変化は無く疑問ばかりが増す。

 やっぱり引き返そうかな、迷っていると幽かに話し声が聞こえる。息を呑み行ってみるとブルーシートの上でコスプレをして何も無い虚空に手をかざす同級生巴マミとその虚空を囲むように見ている下級生の確か、まどかとさやか・・・・・一体何してんの?

 

「お礼はこの娘たちに言って、私は偶々通りかかっただけだから」

 

「あなたがわたしを呼んだの?」

 

 この場には幽霊がいるの?しかしこのモールや近くで人が死んだなんて話は聞いたことが------

 

「なんで、あたしたちの名前を」

 

 止めだ、止め・・・・・見なかったことにしよう。そうだ俺は受験生だ塾に行って勉強だ。さあ、早く行こう!!

 

 心臓の鼓動が早くなっているのを感じ、早足でモール出てバス停に向う。と言うか・・・最初からそうしてれば良かったんだ・・・・やはり愚かと分かってる選択などするものじゃない。

 

「そんなに酷い顔して何処に行くの?」

 

 突然の声に振り返ると美人転校生、暁美が思いっきりガンを飛ばしながら近づいて来た。

 

「え・・・あ・・・・・う・・・・」

 

 呂律が回らず喉を押さえるが、異常があるのは喉じゃないんだ・・・・とにかく気持ちを落ち着かせよう。手を喉から胸に持って行き深呼吸をすると眼前にペットボトルが差し出される。

 

「とりあえず、水飲んで落ち着きなさい」

 

 顔と口調から俺を気遣ってのことで無いと悟ったが、しかし意識よりも無意識が俺の体を動かしペットボトルを受け取り中の水を一気に飲み干していく。

 ゴクゴクと喉を鳴らし口元から水が垂れて襟元が濡れてしまうが、心臓は落ち着きを取り戻していったようで暁美が見計らったように話しかけてくる。

 

「落ち着いた?じゃあ、質問するわ。アナタ、さっきまであの(・・)フロアに居たでしょ。どうしてあそこに?」

 

「もしかして・・・君もあそこに?」

 

「質問してるのは私よ」

 

 確かに質問に質問で返すのは無礼だ。しかし、さっき見た事をそのまま伝えるのもプライバシーの侵害になりそうで・・・・いや、俺が思い出すのも言うのも嫌なだけか。少々考えて俺は当たり障りの無い答えを口にする。

 

「クラスメイトがあそこに入っていくのが見えてな・・・追いかけていったんだ」

 

「クラスメイト?」

 

 暁美は顎に手を当て考えるポーズを取り、素でやっているのかカッコ付けているのかと口に出したかったが、先の出会いの事もあり飲み込んで待つことにした。

 

「巴マミの事?親しいの?」

 

「いいや、同じクラスなだけだ」

 

「なのにワザワザ追いかけて行った・・・・巴マミに特別な感情でもあるの?」

 

 普通そんなこと聞くか・・・と言うか先輩だろ、俺も巴も。無理に敬意を払えとは言わんがどうしてそんな上から目線で話しが出来るの?流石に腹が立ってくるぞ。

 

「あの見た目だからね。大抵の男は放って置かんと思うぞ」

 

「答えになってないわ、貴方自身はどう思っているの?」

 

「・・・・・・仮に、暁美の思った通りの感情を抱いているとしたらどうだって言うんだ?俺と巴の仲を取り持ってくれるのか?」

 

「それもいいかも知れないわ。但し彼女を絶対に最後まで見捨てないで、支え続けるのを誓って貰うわ」

 

・・・・え、マジで?ってか即答かよ、いやいやいや、そもそも何その誓いって?十五歳だよ、最後までってつまり結婚まで視野に入れて付き合えってこと?いくらなんでも早すぎないか、青春の域を確実に超えているぞ。

しかし暁美の目は真剣であり、巴との間にどんな繋がりがあるのか・・・聞きたくは無いが今のままでは心が安らがない、希望的観測かもしれないが答えは得たい・・・・・が、それには手順を踏む必要があるな。俺は考えをまとめ口を開く。

 

「結論から言うと俺に巴マミに対する恋心は無い」

 

「そう」

 

 暁美はもう話しは終わりとばかりに背を向けようとするが、そうはさせない。

 

「でも彼女の蟠りか葛藤か・・・怯えてる何かに対しては思うところがある」

 

 暁美の目が再び俺を捕らえ目を細めて聞いてくる。

 

「アナタ、何を知っているの?」

 

「アナタじゃない、って言うかお互いまだ名乗ってなかったな。

 俺は天野翔(あまのしょう)、見滝原中の三年で巴マミとはクラスメイトだ」

 

「私は暁美ほむら、知っての通り今日から見滝原中の二年生で、巴マミとは・・・同類と言ったところかしら」

 

 なんだ同類って?いきなり意味不明だぞ、まぁ、出だしで会話を躓かせるわけには行かないからスルーしよう。

 

「それで巴マミの何を知ってるの、天野先輩?」

 

 面食らう俺に仕切り直すように聞いてくるが、そんな不遜な態度で先輩扱いしても上辺にもならないぞ。しかし俺は我慢して人差し指を立てて語る。

 

「まず先に言ったが、巴はあの見た目で入学の頃()モテててな。物腰も一見(・・)穏やかだから色々な男が放って置かなかった」

 

「先輩もその一人って訳?」

 

「いいや、それにそれも一時のブームだ。相手を建ててたつもりだろうが片っ端から振りまくり、同姓である女子たちとも一線を引き、都度都度休みがちな娘だったからね。夏休みが終わる頃には存在そのものが風化していたと言ってもいい状態だった」

 

 暁美は黙って聞いており、俺は立てる指を二本にして話を続ける。

 

「俺は二年生つまり去年も巴と同じクラスでな。休みがちな巴にプリントを届けに住んでいるマンションを訪ねたんだ。正直なんで欠席してるのか聞いてなかったし、出て来た巴は病気とも怪我とも思えないように見えたし未だに分からん女だよ」

 

「それで、プリント届けてそのまま帰ったって訳じゃないんでしょ?」

 

「言っとくけど、巴からの申し出だ。お礼がしたいって言われてな部屋に上がってケーキと紅茶を振舞われた」

 

「・・・・一人暮らしの少女の家に?」

 

「それも上がってから始めて聞いたの。無論、俺もビックリして退散したんだが、その帰り道にな、あの部屋や持て成しが薄っぺらくて危うい・・・いや脆そうだと感じたんだ」

 

「どう言う事?」

 

「巴の部屋は見事と言っていい程にお洒落だったが、とても中学生がコーディネイトしたとは思えない出来だった。何かの真似だと思うとしっくり来て、そしたら食ったケーキも飾りみたいに思えてな」

 

「飾り・・・」

 

「そう巴自身の心のな。広い部屋に高い家具、豪華な菓子で日々を満喫してますってね」

 

「只の妄想癖のあるスケベ男子だと思ってたけど、中々深く見てるわね」

 

「一応、褒め言葉と受け取っておくよ」

 

「勿論よ、賢いって褒めてるんだから」

 

「で、次の日に巴に話をしようとしてみたんだが、アイツ自身悟ったみたいで、避けられるようになって、俺にもおかしな噂が立ちそうな気配があり動き辛くなってズルズルと今日に至るって訳」

 

「臆病ね、良い意味で」

 

「ん、良い意味?」

 

「ええ、その賢さと危機感、爪の垢を煎じて飲ませてあげたいと思うわ」

 

 相手は明らかに巴じゃないよな。まぁそんなことはいい、それよりもここからが俺にとっての本題だ。

 

「まぁ、そんな訳でな。巴に対して抱いているのは知りたいという好奇心だけだった」

 

「だった?」

 

「ああ、未だに我が目を疑ってるよ・・・」

 

「何を見たの?」

 

 暁美は真剣な目で問うて来る。その様は正気であり狂ってなどいないと感じさせる・・・ならば俺の心のモヤモヤをどうにか出来るかと期待がこもる。

 

「逆だ。何も見えなかった・・・何も無いのに虚空に語り掛ける少女たちが居たんだ。電波なのかホントに幽霊でも居るのか、とにかく俺の本能が関わるなと警報を鳴らしてる」

 

「結構なことじゃない、見なかった事にして忘れるといいわ」

 

 暁美が背を向けて去ろうとするが、腕を摘む。

 

「・・・・なに?」

 

「一つだけ答えてくれ、巴マミと同類と言ったな。おかしいのは俺かそっち(・・・)か?」

 

 ここまで見せた誠意に対し暁美が歯牙にもかけずに立ち去るかもしれない、俺自身がおかしいと称した彼女に答えを求めるなど再び愚かな選択をしている自覚はある。だが俺は今直ぐに答えが欲しい、現状では思い込みでしかないモノに自分以外の誰かからの言葉が無ければ踏ん切りが付かない。

 

 俺の心情を察したのか暁美は両手を俺の頬に当てて言ってくれた。

 

「大丈夫、天野翔は何もおかしくない。

 おかしいのは異常なのはこっち、そしてアナタは踏み留まり引き返すことが出来る人間の筈よ。なにも恥じることは無いわ、アナタはそのままでいて」

 

 ありがとう。

 

「・・・・そんな感謝に満ちた顔で見ないでよ」

 

 心の中で言っただけのつもりが顔の出てたようだ。手を放して顔を逸す様は照れてるのだろうか?だとしたら可愛いところがあって良いと思うが、そのまま早足で去ってしまい言えずに終わってしまった。

 

「あ、いかん。このままだと遅れる」

 

 気が付くと大分時間が過ぎており、俺は慌てて塾に向って走っていった。

 

 

 

 




私はこれが普通だと思いたい。

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