学園生活二日目。
初日では座学を中心にした授業が行われ、今日は実技のほうになる。ちなみにまだ魔法が使えない人にも魔力の強弱を測る為の特殊な黒い水晶が準備されている。その大きさは人の頭くらいの大きさだ。
この水晶、魔力を有している量に合わせて真ん中に光が灯る。コレットのように水の魔法が使える人間が触れるとその水晶の中心に青い光が映りこむ。アルフのように無属性ならば白い光が灯る。また、この水晶は希少なので三個しかない。その為、一年生は全員試験があった体育館に集められた。
「コレット君、君は水でランクCか。うん、なかなかいいね」
「ありがとうございます」
「ではその水晶を持って一番得意な魔法を使ってみてください」
「はい。水よ、渦巻け。ウォータートルネード」
学園の中に10以上ある運動場の一角でコレットは村にいた時に自己流の修行で汚れてきたアルフの服や自分の家族の服をよく洗っていた彼女の突き出した手の先から勢いよく水が飛び出し、地面に落ちることなく直径1メートルのらせん状に渦巻く水球が現れる。
戦場ではこの魔法は直径5メートルで螺旋に蠢く水流ももっとスピードがある。それをぶつければ鎧を着た大の大人が3人吹き飛ぶが、コレットのそれにはそのようなパワーは感じられない。代わりに持久力。魔法がその効果を維持できる時間は長く出力も安定している。
(素の状態でランクC。魔法発動時にC+。持久力もかなり安定している。こちらから見ると魔力総量は100ちょっと。本当にこの子は農民か?貴族、しかも上級とまで言わなくても英才教育を受けた貴族並に魔力の練度が高いぞ)
魔力や魔法も筋肉と同じように使い続ければ鍛えられる
「…下がってよし。次の人、前へ」
次は風のクラス。その中でも貴族のフィロ・ウィグロードの番になると彼女は水晶を持ったまま足先が宙に浮き、5メートルの高さまで飛び上がった。そのまま中で空中遊泳をした後、元の場所に降りた。ちなみにこの学園の制服はスカートなのだがその点は彼女が穿いているスパッツがパンツの露見を防いでいる。
「以上です」
今までの生徒達は攻撃性の高い魔法を放っていたがコレットやフィロは見た目が地味に見える。だが、
(さすがウィグロードの家系だ。詠唱無しで中級魔術である空中浮遊をあそこまで使えるとはランクはB。魔力総量も230。やはり彼女のような貴族は別格だな。これで攻撃魔法を放っていたら大変な事になりそうだ)
(次は、・・・ああ、学園長が言っていた彼か)
「あの…、得意魔法を使うなと言われているんですけど」
曰く、治癒魔法が使える。ボケを治せる。植物を促成させる。魔物を強化する。雲すらも突き破る魔法を使う少年アルフ。彼は学園側からかめはめ波の使用を禁じられている。
つい先日はついキレてしまって使ってしまったのだが、彼がやろうとしているのは恐らく身体強化系の魔法だろうが使うと水晶を割ってしまうのではないかと不安になっていたのだろう。
「自分に出来そうな魔法でもいいから使ってみたまえ。もしくは魔力を込めるだけでいい。でも危険な事はしないように」
そう言ってアルフに魔法を使うように促した教師はアルフの出方を待った。かくいう、アルフの方はというと水晶玉を持ったまま困惑していた。
かめはめ波は駄目だし、かといって残像拳(未完成)をやるにも。というかあれは魔法じゃなくて体術だ、かといって魔法。それに似た英雄たちの技と言えば・・・。あれかな?
アルフは水晶を持ったままの手を自分の頭の横まで持ち上げる。持っていない方の手も使ってまるで手の平で顔を隠している構えに入る。
「やるぞっ、太、陽、拳!」
これは自分だけが知っている英雄たちの使っていた技。そしてこの技は英雄の相棒がよく使っていた技だ。この技は体から強烈な光を発射し相手の視界を奪う技だ。
ただし使っていたというその相棒は地球人最強の異名を持ち、幼き頃から仙人の下で修業を重ね、果ては神と呼ばれる存在から師事を受けてきた武術の天才。そんな彼の真似をしてただで済むはずがない。
魔法にはフィードバックがある。イメージがしっかりしていても不相応の魔法を使えば上手く発動しない上に魔力をごっそりもっていかれる。
アルフの体から強力な光が発せられ、その場にいた教師・生徒たちの目をつぶらせる。それだけではなく辺りを埋め尽くす閃光が迸り、まるで彼の言ったようにもう一つの太陽が生まれたかのようだった。
そしてその太陽は2、3秒もしないうちにその光を失う。その光が消えた先にいたのはその場で崩れ落ちたアルフの姿だった。
「・・・燃え尽きたぜ。・・・真っ白にな」
不相応の魔法を使った人間の姿がそこにあったのだった。
ウルトラマンでいうなら変身してすぐに力尽きる感じです。