俺はかめはめ波(攻撃)を諦めない!   作:さわZ

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かめはめ波は攻撃用。いいね?


第三話 撃てば命の泉が湧く

「この先にある村で少しばかり補給作業を行います。」

 

王都から派遣隊員の言葉にアルフは肩身を狭くする。

深夜にあったゴブリンの襲撃と2つの意味で突然変異したゴブリンの進化系リトルオーガへの対処で派遣隊の物資の消費が無視できないほど出たからだ。

本来ならゴブリン退治だけだったのにリトルオーガというイレギュラーで灯りに使用した松明に援護に放った弓矢。怪我人が数人出たので傷薬の補充など物資の半分が昨晩の内にきえた。本来、リトルオーガと遭遇すれば物資の半分どころか派遣隊の全滅すらあったが幼少期から亀仙流もどきの修行をしてきたアルフに身体強化の魔法が加わることで物資の半分で済んだのだがリトルオーガの原因もアルフなので彼が肩身を狭くするのも仕方ない。

そんなことで立ち寄った村は余りにも寂れていた。

人だかりが殆どなく、村の真ん中にある井戸には木の板と釘で蓋がされている。

何かあったのかと最寄りの宿に入りながら話しをしつつ食事でもしようとするとなんとコップ一杯の水さえ有料となっていた。

聞けば数日前にゴブリンの群れが村を襲撃した。何とか撃退はしたもののゴブリンの一匹が村の井戸の中に落ちて井戸の水が使えなくなることになったのが原因だ。

ゴブリンは基本的不衛生な生き物であり病原菌の固まりとまで揶揄されている。その為、アルフはリトルオーガとの殴り合いを制した後、問答無用でコレットのウォータートルネード。魔法的洗濯機で全身を隈無くきれいにされた。

派遣隊員やコレットがこの村に残って水を供給させるかと考えたが、それでは自分達もこの場留まり続けることになる。この村の村長も今来ている自分達。派遣隊に新しい井戸の建設を王都に打診してもらうつもりらしく自分達は尚更ここには留まれない。だが派遣隊やコレットの水魔法で新しい井戸が出来るまでの水を溜めるには圧倒的に水の容量が足りない。少なくてもこの村の畑は全滅し、最悪死人が出るかもしれない。

そんな中、コレットがポツリと呟いた。

 

「量がなければ質を上げればいいじゃない」

 

と、

 

アルフは納得ができなかった。かめはめ波は攻撃用であり断じて回復魔法ではないのだと。だがしかし、コレットの魔法で作り出した水にかなり弱めのかめはめ波をぶつけたら、その水はキラキラと輝き、まるで聖水の如く力強さを感じさせた。

試しにアルフが飲んでみるとなんか元気になった気がした。次に弱っている村人にも与えると元気になった。

ここまで実験したから大丈夫。という訳で枯れ果てる寸前の畑の真ん中に立たされるアルフ。

もうじき自分の頭上にコレットや派遣隊。村の水魔法使いが放つ水球が落ちてくるだろう。その水球をかめはめ波で粉砕。その水しぶきで畑も回復させようということになった。だがそれを裏切るつもりでかめはめ波を撃つ。アルフはいつも以上に気合い込める。

そして、彼の頭上に次々と撃ち出される。それらを迎撃するために構える。

 

「か、め、は、め、波ーーっ!!」

 

その日、その村、その畑で奇跡の雨が降り、その雨に濡れた畑と村人達に活力を与えた。その事に涙を流す、コレットと派遣隊員。そしてアルフの姿があった。

 




上を向いて歩こう。

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