俺はかめはめ波(攻撃)を諦めない!   作:さわZ

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その一、威嚇用


第四話 かめはめ波の正しい使用方法

王都アポロは多くの魔法使いを輩出している一種の学園都市である。特に火の魔法使いが多く輩出されているのには訳がある。

王都アポロの名称になった200年前に勇者アポロと火の大精霊イフリートが契約し、悪魔や怪物を打ち倒し建国された国の名が勇者アポロからきている。また、その勇者アポロと契約した火の大精霊が今でもこの地に留まり王都の人々を見守っている。と、派遣隊員から聴かされたアルフ達は興味津々で勇者アポロと火の大精霊イフリートの冒険譚を聴いていた。

コレットは勇者と後に結ばれる王女との話に。アルフは勇者がいかにして強くなったのかを聴いていた。だが話を聴き終えた二人の表情は正反対。コレットはニコニコしているのにアルフはしかめっ面をしていた。

火の大精霊イフリートと契約して強大な力を手にいれたというのが気に入らないのだと。彼としてはその大精霊と共に切磋琢磨しあい互いの実力を高め合う。それを期待していたのに「勇者は大精霊と契約して魔物を倒しました」という、出会い。勝利。の流れが気に入らないのだ。

素質があり、才能があったから勝ったではなく、努力、友情、勝利の三本柱。落ちこぼれでも努力すればエリートを越えられる。自分の想う大英雄はそんな人物だから。

勇者アポロは神の子だとか実は亡国の王子だったという説もある。それでも勇者と呼ばれるまでたゆまぬ努力してきたんだと無理矢理納得したアルフだったが、その10分後。その勇者の血縁者だという貴族とその護衛に対して大立ち回りをしていた。

何でこうなった。と、ため息をつく派遣隊員達。

事の発端は王都アポロの立派な城壁に目を輝かせていたコレットとアルフが城門前で順番待ちをしている商団や自分達と同じように魔法使いの卵達を連れてきた一団が城門を通る手続きをしていると一際派手な装飾をした馬車がアルフ達の乗っている馬車に割り込みをしてきた。

その特、派手な馬車とアルフ達の乗っている馬車がぶつかり、その衝撃で比較的に体重の軽いコレットが外に投げ出された。とっさにアルフも飛び出しコレットを抱き止めながら地面に叩きつけられる。それが城門前で順番待ちをしているという事と合わさる状況はかなり危険だ。

まず柔らかい土の上ではなく舗装された石畳に叩きつけられる。他の馬車の下敷きになるという物理的な危険性。そして、順番待ちをしている馬車の馬糞の上に落ちるという衛生面での危険性だ。

アルフはそれを知ってか知らずか、どちらにせよ《後悔のない行動》をとるためにコレットを抱き止めながら背中から地面に叩きつけられた。背中に生温い感触を感じながら。

コレットの無事を確認しながら服を脱いでいたら、ふいにぶつかって来た馬車の乗員。自分と同じくらいの少年がいやらしい顔で笑っていた。まるでこちらを嘲笑うかのように。

それを見たアルフはまた《後悔のない行動》にうつる。

身体強化の魔法で道端に落ちていた石を蹴り飛ばして自分達にぶつかって来た馬車の車輪の支軸をへし折った。

アルフの身体強化の魔法があればその辺に落ちている石もライフルの銃弾のように撃ち出す事が可能となる。

車輪の支軸をへし折られバランスを崩しながら倒れた馬車から先程自分達を笑っていた少年が転がり落ちてきた。馬糞の上に。頭から。

それを見たアルフは自分がされたように相手を笑った。その間にコレットはアルフの服を脱がせ、水魔法で綺麗に洗っていた。

自分が笑っていた相手に笑われる。はっきり言って自業自得だがアルフに笑われた少年は怒り狂い、自分の護衛隊員にアルフを痛めつけろと命令を出す。貴族たる自分を笑う不敬な輩を痛め付けねば気がすまないらしい。

アルフ達を連れてきた派遣隊員が止める間もなくアルフ対貴族の護衛隊員の乱闘が始まる。だが、相手と場所が悪かった。

護衛隊員の武器は鎧の上から、槍や剣もしくは魔法だがそれらを振り回すには狭すぎる城門前。更に回りには無関係の人達や馬車があるために充分に力を発揮できない。対してアルフは素手で猪を仕留めることが出来るだけ打撃力と機動力で相手を翻弄していく。

それに業を煮やした貴族の少年が火の魔法ファイヤーボールを放つ。バスケットボール程の大きさの火の玉は周りの事を一切考えない、護衛隊員の事も考えていないだろう一撃にアルフは護衛隊員を掻い潜り、ファイヤーボールの最前に立つと同時に身体強化魔法を全開開放しながら腕を交差させる。そして、ファイヤーボールが着弾、炎上。そのままアルフが焼かれるかと思った瞬間彼を中心に一陣の風がその炎を吹き飛ばした。

貴族少年がしでかしたことも信じられないが、人一人焼き殺せる炎を身体強化の魔法の余波で吹き飛ばしたアルフも信じられなかった。コレットすらも驚いていた。まさか、ここまで自分の幼なじみが身体強化の魔法を極めていただなんて思いもしなかったのだろう。

そして最後にアルフはあの構えをする。

 

「か~め~」

 

それは彼の持つ最高の技。

アルフの魔力と気合いが手の平に集まる。

 

「は~め~」

 

それは身体強化魔法の頂点。

目の前の障害を打ち砕かんとする光の奔流。

 

「波ーーっ!!」

 

アルフが撃ち出したかめはめ波は貴族少年の馬車の天井すれすれを通過して遥か彼方に浮かぶ雲を突き破って穴を開けた。

その光景を見た貴族少年と護衛隊員は震え上がった。あんなものを喰らったらどうなるか分かったものじゃない。そう考えている彼らにアルフはこう言った。

「次は当てる」と、




次は当てる。(回復魔法を)

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