そんな物語。
提督がゲスいですがイチャイチャしてます。
春の訪れ、そう言えば聞こえは良い。
「もう朝か……」
だが『四季の始まり』、と言ってしまうと軽い倦怠感に襲われたりはしないだろうか。
「提督。朝ご飯もうすぐできますよ」
鳳翔さんは僕を起こそうと寝ている布団に近づいてくる。
「すまない。あと数刻ほど……」
「駄目です。二度寝のレベルではありませんよ、もう」
そう言いながら鳳翔さんは僕の布団を剥ごうとする。
「ほら……んんっ!」
鳳翔さんが僕の布団を剥ごうとするがびくともしない。
いくら艦娘とはいえ艤装をつけなければ並の人間と同じ。ましては男と女の力なら差は開ききっている。
「ん! くぅっ!」
「…………」
とはいえ布団を破かれては元も子もない。なら僕は――。
「よっと」
「きゃっ!?」
不意に鳳翔さんの手を引っ張ってみた。
「おいしょっと――ごめんよ、鳳翔さん」
予想通り鳳翔さんを布団に倒れこませることができた。
「しっかりと起きてるじゃないですか」
「あはは……」
勿論、鳳翔さんの声が聞こえた時にはすでに目が覚めている。じゃなければあんな行動はできない。
「起きてください、ご飯が――っ!?」
僕は鳳翔さんに抱き着く。甘く優しい香りが心地良い。
「良いじゃないか鳳翔さん。せっかくのお休みだよ? 僕はこうして鳳翔さんとお休みを満喫したいな」
「――」
鳳翔さんはこういうのが苦手らしくて、される顔が急に赤くなるのでたまにやりたくなる。
「て、提督?」
「ん。何かな?」
鳳翔さんを抱きしめたまま聞く。
「こ、こういうのは、はえんちだと……」
「破廉恥でしょ?」
噛んでる鳳翔さんもお茶目で良い。
「私は艦娘で、あなたは提督なんですよ? こんなことはいけないと思うのですが……」
「んー。僕は鳳翔さんが好きだけど、鳳翔さんは僕のこと好き?」
「それは、その……」
鳳翔さんがもじもじしているのを見ると、つい揶揄いたくなる。
「フフッ、恥じらう鳳翔さんは可愛いなぁ。あ、勿論普通の鳳翔さんも可愛いよ」
「んぅ……」
ちょっと不機嫌な鳳翔さんの頭を優しく撫でる。
「さて。鳳翔さん分を満タンにしたわけだし、そろそろ起きようかな」
「もうちょっと……」
僕が起きようとしたら鳳翔さんが服をつかんできた。
「?」
「もうちょっとだけ良いですか? 私はまだ足りないというか、なんといいますか……」
鳳翔さんは上目使いでお願いしてくる。僕はそれに答えないような男ではない。
「取りすぎもたまには良いよね」
この後、昼過ぎまで布団に入っていたことは言うまでもない。
◆
「もう……休日はいつもこうなのですから、もっと有意義な時間過ごし方というものがですね……」
鳳翔さんのお説教を聞きながら朝ご飯(しかし昼過ぎ)を食べるのも毎度のこと。鳳翔さんのお説教はラジオやテレビよりもずっと聞いていられる、見ていられるほどに良いものだ。
仕事中揶揄って、お説教なんてのが多いけどね。
「提督、ちゃんと聞いていますか?」
「うん、聞いてるよ。鳳翔さんが可愛いって」
「聞いていませんね!?」
見惚れてお説教の中身自体を聞いていないことが多い。
「ごちそうさま、今日も美味しかったよ」
「お粗末さまです」
この後は鳳翔さんの家事を手伝うことが僕の日課である。
「ありがとうございます。いつもこんなことを……」
「あーいやいや、鳳翔さんの手伝いしないと気が済まなくてさ」
鳳翔さんも僕の仕事を手伝ってくれているので、これぐらいしないと自分が情けなくなるからでもある。
「鳳翔さん、この後の用事は?」
「えーと……特にはありませんね」
「じゃあゴロゴロする?」
僕は鳳翔さんの頬を軽くつつく。
「牛さんになりますよ?」
「鳳翔さんの牛乳飲みたい」
「いきなり何を言うんですか!?」
鳳翔さんは両腕で胸をガードする。
「いや、牛って言ったら乳牛じゃない?」
「と、とにかく! 運動しないとダメです!」
「じゃあプロレスする?」
「ッ……!」
「痛ッ!?」
僕は鳳翔さんからの見事な平手打ちをプレゼントされた。何か悪いこと言ったかなぁ?
「は、破廉恥ですよ!」
「そうかな?」
「貴方はいつもいつも破廉恥なことを……」
おう。鳳翔さんのお説教第二ラウンドが始まってしまったぞ。
◆
月が美しい。気が付けば、よい子が寝る時間になっていた。
「もうこんな時間ですね」
「ああ。とても有意義な時間だったよ」
「私はちょっと疲れましたね」
鳳翔さんは小さなあくびをしながら月を見る。
「ちょっと早いけど寝ようか」
「そうですね――って何をしているんですか!?」
「いや、一緒に寝ようかなーって」
僕がとっている行動は至極単純。鳳翔さんをお姫様抱っこして自分の寝室に向かっている。
「こ、これは……」
「ん? お姫様抱っこだけど、知ってる?」
「そうではなくて! 一人で歩けます!」
鳳翔さんはお姫様抱っこから抜け出そうとする。
「おっと、危ないよ。今暴れたら頭ぶつけて痛くなるよ?」
「もう別の意味で痛くなってます!」
鳳翔さんの顔が赤くなっている。やっぱり可愛い。
「よし、このままお持ち帰りってことで」
「よし、じゃありませんよ!? 下してください!」
抱いている鳳翔さんの甘い香りが鼻孔をくすぐる。この香りを今日は何回かいだのだろうか。そんなことを考えるのは無粋ではあるけど、しいて答えるなら数えきれない、だろう。
「今夜は月と鳳翔が綺麗だな……」
「はい……」
それを聞いた鳳翔さんの顔からは滴が流れていた。
2000文字ちょっとの作品ですがお読みいただきありがとううございます。
今回は色々始まる前に書けてよかったです。
鳳翔さんだって誰かに甘えたい時がある、そんな作品になっています。
次回のキャラはまだ決まっておりませんがガンガン書いていく予定です。