そのための右手、あとそのための拳?(拳?拳はやるため――)
金!金!金! 金!金!金!って感じで

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NYN姉貴の大富豪物語

「うーん、わからねぇな」

 幻想郷にある小さな町の一角、お菓子作りの材料屋さんで、半妖のにょんは悩んでいた。

 カウンターの奥に座り、腕を組んで首をひねると、頭の上にあるネズミの耳がぴくぴくと動く。

 客が来ない。

 二月前、人もそれなりにいるここに材料屋を出したのはいいが、売り上げはかんばしくなかった。これでは、夢の大富豪にいつまでたってもなれない。

 何か策はないか、小さい頭を左右に何度も動かし、考えていると不意にドアが開いた。

「あ、いらっしゃいませー」

 気の抜けたような声でそう言うと、手に籠を持ったいちごが見えた。

「こんにちは、にょんちゃん」

 いちごがほほ笑んで言う。

「ちっすちっす、今日はなにを買いに来たの」

「ううん、たまたま近くを寄ったから、会いに行こうと思って」

「あ、そう……」

 にょんは露骨に声を落とした。

「あ、ごめんなさい。迷惑だった?」

「いや、迷惑ってわけじゃないんだけど、最近、売り上げがよくなくって」

「そうなんだ。みんなお菓子作りそんなに好きじゃないのかな。私の周りではよく作ってるけど」

「うーん、そうみたい」

「じゃあ」いちごは胸の前で両手を叩いた。「せっかくだから、なにか買っていこうかしら」

「ほんと!いやー持つべきものは友だね、なに買っていくの」

「じゃあ、前に売り切れだった卵をください」

「ないです」

 妙な間が流れる。

「え、なんで」

「しょうがないさ、前のバレンタインの日からまだ入荷してないもの」

「かなり前だと思うんだけど」

「そんなこと言われても、ないものはないです」

 いちごはなんとも言えない顔で続ける。

「じゃあ、牛乳」

「ないです」

「もしかして小麦――」

「ない」

 いちごは額に手を当てた。

「じゃあ、何ならあるの」

「コンドームなら二千箱ほど奥にあるがね」

 いちごは両手でカウンターを叩いた。

「やめたら!?この仕事」

「えーどうして」

「誰がここでコンドームなんて買うの?」

 にょんは目を見開き、驚愕した。

「はあぁ!そっか、気づいた!」

「いま気づいたの?」

「ここの住人は生中出し大好きな、淫乱ド変態野郎たちのたまり場だったのか!」

「違う違う!違うわよ!」

「そういえば、その辺のおばさんがお○んこ中出しOKだし、とかいってたような」

「にょんちゃん!ちょっと落ち着いて」

「いちごも、おま○こ中出しOKなの?」

「NGよ!……て、そうじゃなくて。よく考えて、お菓子作りの材料屋さんなのに、そんなもの売ってたらおかしいでしょ」

「でも、お菓子作りの材料屋さんって一周まわってエロく聞こえるよね」

「それは知らないけど。とにかく、店でそんなもの売らないで」

「なに売るかなんて、こっちのかってじゃん」

「本気でやめたら?この仕事」

 にょんは腕を組んで、目を閉じた。

「うーん、確かに、たまに来るお客さんは、基本ドン引いて帰るからやめた方がいいのかも」

「かも、じゃなくて絶対やめた方がいいよ」

「でも私の勘では、これが売れるってビンビン来てるんだけどなぁ」

「にょんちゃん自分に商才ないってわかってる?」

「失敬な!これでも店の経験は豊富なんだよ」

「ああ、そうだったんだ。適当なこといってごめんなさい」

「そうだよ。私にかかれば盗めないものなんてない」

「店の経験って、万引き?」

「まあね」

 にょんが胸を張ってそう言うと、いちごは、なにいってんだこいつ、と言いたげな表情をして黙った。

 

 

「にょんちゃん、大丈夫かな」

 あの会話から二日後。いちごはまた、にょんの店の近くを通りかかっていた。

 あのままでは何も売れないと、少し心配になり、また顔を出そうと店のドアを開くと、中には大量の人が見えた。

「うそ、大繁盛……ゴムが売れてるってわけじゃ……ないよね」

 よく見ると、中の人たちはみな、どこか近寄りがたい雰囲気を持った男だった。

 何か嫌な予感がし、カウンターまで行く。

「にょんちゃん、おはよ」

「いらっしゃいま――はあうっ!」

 にょんは、話しかけたのがいちごと分かるや否や、明らかに戸惑い、思い切り後ずさると壁に当たった。

「ど、どうしたのにょんちゃん」

「いいいいい、いや、何でもないよ!何でもない!」

 どう見ても怪しい。

「でも、とってもびっくりしてたように見えたけど」

「え!そう?いや、ほら、いちごが一瞬どでかい蛾に見えたから。いやービビった。明らか人間捕食するタイプの蛾だったもん、ビビったー」

「さすがにひどいよ……というか、何か隠してるでしょ」

 にょんは手を頭の後ろで組むと、へたくそな口笛を吹きだす。

「ぴゅっぴゅー、何のことか分かんなーい。ぴゅーい、あー今日いい天気、引くぐらいいい天気」

「今日くもりだよ」

「すいません」突然、男がいちごの隣にやってきて言う。「このいちごのパンツって、本当に使用済みですか」

 使用済み?

「あの、それどういうものですか」

 いちごがそう聞くと、男は顔を見るや目を見開いて驚くと、すぐに店を出ていった。

 すると、周りからこそこそと声がする。

 やっべえ、本物じゃん。

 嘘、やばくね。

 やっぱり本物はめちゃくちゃかわいいな、ずっと見てたいわ。

 お前ノンケかよぉ。

 いってる場合じゃねぇよ、早く逃げた方がいい。

 男たちが突如、風のように店から出ていくと、店はがらんとして静かになった。

 いちごは棚にあった写真に手を付ける。

 パンツ別パンチチラ集。

 白 五千円 赤 一万円 くまさん 五万円 フリル十万円

 隣の棚も見る。

 使用済みパンティ。

 よく見ると最近、なくなったものだった。

 いちごはにょんを見る。

「にょんちゃん……これ」

「い、いやー」にょんは目をきょろきょろさせながら答える。「ほら、ちゃんと売り上げ3・7で分けるしさ。しかし、いちごってファン多いね、まさかこんないっぱい――」

 いちごは黙ってにょんの顔をつかむと、店の外に連れ出し歩いていった。

 

 

 にょんは紐でぐるぐる巻きにされ、橋の上に立っていた。下には川が流れている。

「い、いやー、これはさすがに死んじゃうかも」

 隣のいちごに言うが、表情は動かず、返事もない。

「ほら、私たち友達じゃん。仲よくしよ」

「にょんちゃん」

 いちごが一歩、近づく。

「あ、ちょ、た、助けて……お、お慈悲~お慈悲お慈悲~お慈悲~!!」

「イクヨー」

 いちごが蹴りを入れると、にょんはドボンと音を立てて川に落ち、流れていく。

「溺れる!溺れる!お助けー!」

 叫びながら流れていくにょんを見送ると、いちごは何も言わず家に帰っていった。

 

 

 二日後、また店をのぞいてみると、性懲りもなくにょんは店を開いていた。

「今度は変なの売ってないよね」

 にょんは胸を張る。

「当たり前だよ」

「何でそんな堂々と言えるの?」

「まあまあ、過ぎたことは水に流しましょう、私も水に流されたことですし」

「にょんちゃん、私いますごくイラっとした」

「まあまあ、それより今度売る商品を見てよ」

「次は何を売る気なの」

「前回ので、みんなパンツが好きってのが分かった。ただ、いちごに許可取ってなかった、これが悪かった」

「本当に極悪よ、それ」

「でも今回は違う、ちゃんとこの人から許可を取ってるから」

 にょんが自分の隣を指さすと、座っていた色黒の男はいちごにウィンクした。

「オッスお願いしまーす」

「なに、この人」

 いちごはにょんに聞いた。

「この人は知る人ぞ知る、野獣先輩。パンツ売るのもパンチラとるのも心よく引き受けて素晴らしい人だよ」

「それ、素晴らしいって言ってもいいのかな?」

「取り分も8・2でOK。もちろん8が私」

「取りすぎじゃない」

「売りますよー売る売る」

 野獣先輩はノリノリでそういう。

「何であなたもそんなに乗り気なんですか」

「まあ、そういうわけで、これからいっぱい稼いじゃうよ~大富豪に、私はなる!」

 

 

 8時間後。

「売れない!」

「やめたら?この仕事」


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