【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0196話『炬燵の季節ですよ』

 

 

 

 

阿賀野は先日から一斉に出されていた炬燵にあたって暖を取っていた。

 

「はぁー……あったかいな~」

 

完全に緩い顔つきになっているためすでに阿賀野型長女の威厳なんて微塵もないのである。

そこに雷がやってきて、

 

「阿賀野さん。そんなにあたりすぎない方がいいわよ。それでいざ出撃なんかしたら一気に体が冷えちゃうんだから」

「それでも今この時だけは炬燵は阿賀野のベストポジションなの~」

 

完全に阿賀野はタレパンダと化していた。

これは強敵ね……と雷は思うのであった。

と、そこに、

 

「ほう……これが噂のコターツというものか?」

「ごーちゃんも入ってみたいなー!」

「暖かいの……?」

 

初めて見るのであろうアークロイヤル、ジャージ姿のごーちゃん、リシュリューの海外勢三人がやってきた。

その三人を見て瞬時に雷は悟った。「あ、これは間違いなく堕ちるわね……」と。

阿賀野は三人を手招きしながら、

 

「とっても暖かいよー。三人も入ったら……?」

 

と、誘う。

アークロイヤルとリシュリューはまだ半信半疑の状態だったんだけどごーちゃんは迷いもなく炬燵に飛び込んでいった。

 

「うわぁ!?」

 

叫び声を上げるごーちゃん。

それでやはり危ないものなのか……?と険しい顔つきになる二人。

だけど次の瞬間には、

 

「はにゃはにゃ~……なんだろう、このもうお外に出たくなくなるような幸福感は……」

「そうでしょうそうでしょう? 炬燵ってとても暖かいんだから! アークロイヤルさんもリシュリューさんも入ったら? 暖炉よりも温いから」

 

ごーちゃんのその緩み切った表情を見てアークロイヤルは入るかどうか迷った。

入った瞬間、私もあんな顔になってしまうものなのかという戦慄を感じていたからだ。

だけどリシュリューの方は決意を固めたのか、

 

「それなら入らせてもらおうかしら……?」

 

そう言ってリシュリューも炬燵へと入っていった。

そして……、

 

Ce qu’est un merveilleux(なんて素晴らしい)……このコターツは魔性のものかしら? 足元から全身に熱が行き渡っていくわ」

 

ごーちゃんや阿賀野みたく緩み切った表情にはならないも笑みを浮かべて炬燵の魔力を味わっているリシュリューだった。

これで二人が撃墜されてとうとう残りはアークロイヤルだけとなり、ここは逃げの一手を取るか?という気持ちになっていた。

なぜかってここで入ってしまったら威厳が保てなくなる可能性があるからだ。

じりじりと迫ってくる炬燵の勢いにアークロイヤルは負けそうだった。

 

「入っちゃいなよ、ユー……?」

 

阿賀野がまたしても手招きをしてアークロイヤルを誘ってくる。

 

「アークロイヤルさん、無理はしちゃだめだからね? 入りたかったら入るのよ?」

 

雷からもやせ我慢をしているのが分かったのでそう声をかけられる。

それでとうとう意を決しようかと思いかけた前に、

 

「同志ガングート、これが炬燵だよ」

「おー! これはまた面白いものだな」

 

そこにヴェールヌイがガングートを連れてやってきた。

新たに海外勢の艦娘のエントリーだ!

冬になると地獄だと言われるロシア人のガングートはさて、どう反応するのか?

それを見届けてからでも悪くないとアークロイヤルは一回思いとどまっていた。

ガングートはそれで迷いもなく炬燵に入っていき、

 

「ハラショー! これはいいな! 祖国ロシアにもこれがあったらもっと戦えたかもわからんな!」

 

大絶賛だった……。

そして海外勢が三人目が撃墜されてとうとうアークロイヤルも心が折れたのだろう。

 

「そ、それでは私も入らせてもらおうかな……?」

「折れたねー……」

「折れちゃったわね……」

 

阿賀野と雷の呟きは聞こえてこないようにアークロイヤルは炬燵へといそいそと入っていった。

そして、

 

「くっ……! なんたることだ……私がコターツなどに敗北するなんて……」

 

涙を浮かべながらもゆるい表情になっているアークロイヤルの姿がここにあった。

くっころな表情、いただきました!

そこに提督が現れて、

 

「お! さっそく海外のみんなも炬燵に負けているんだな」

「あ、司令官。うん、さっき全員負けちゃったわ。ところでなんでアイスなんて持ってるの……?」

「いやな、炬燵を出したらきっと入るだろうと思って炬燵に入る際の至高の贅沢であるアイスを炬燵で食べるを実践してもらおうかとな」

「司令官もなかなかいけない人ね。そんな事をしたらもう抜け出せなくなっちゃうわよみんな」

 

雷は呆れながらも、それなら私も入ろうかしらと言って阿賀野の隣に入っていった。

 

「提督ー! 阿賀野にもアイスちょうだい!」

「わかった。バニラでいいか?」

「うん!」

「雷は抹茶を貰おうかな?」

「私はバニラでいいよ司令官」

 

それぞれ提督からアイスを貰う阿賀野、雷、ヴェールヌイの光景を見て海外勢の四人はというと、

 

「なぁちっこいの。炬燵でアイスというのは体を壊さないものなのか?」

「同志も食べてみれば分かるよ。暖かい中でのアイスはとてもハラショーだよ」

「そうか……では貰おうかな? 提督よ、私にもくれ」

「ammiraglio! ごーちゃんにもちょうだい!」

「それではリシュリューも頂こうかしら?」

「わ、私は……」

「アークロイヤル。ココは素直に食べておいた方があとあと後悔しないで済むぞ?」

「そ、そうだな……それじゃ一つ頂こうかしら」

「了解だ」

 

それで全員にアイスが行き渡ったのを見て、

 

「それじゃいただこうとするか」

「「「いただきます」」」

 

全員がア炬燵にあたりながらもアイスを口に入れる。

 

「んーーー! やっぱり炬燵にはアイスよね!」

 

阿賀野が真っ先に叫んだ。

その表情は幸福感で満ちていた。

 

「これは……なるほど。暖の中のアイスというのもなかなかいいものだな」

「ごーちゃん、これとっても気にいっちゃった!」

「これはなかなかに危険な魅惑ね……Délicieux」

「くっ……! これはダメだ! ダメになってしまう!」

 

それぞれ絶賛の声を上げていた。

アークロイヤルに関してはもう抜け出せないだろうという思いは間違いではない。

 

「あはは。気にいってくれてよかった。でも食べ過ぎないようにな。炬燵の中でもお腹は壊すんだからな」

 

提督もそう言いながらもアイスを美味しく食べているのであった。

それから続々と暖を求めて海外勢が後からやってくることになるのだがこの辺にしておこう。収拾がつかなくなるので。

 

 

 




今日は阿賀野と雷の進水日ですので二人を一緒に出しました。
海外勢は炬燵にあたったら堕ちるのは約束された未来ですね。



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