【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0020話『駆逐艦曙の回想』

 

 

 

私達がこの世界に来てから驚きの連日だという事に新鮮味を感じていた。

思えばあれはいつものようにクソ提督が毎日の任務で私達と画面越しで会っていた時の事だった。

私達の存在はシステムだと分かっていたのでクソ提督に命令されればなんでもやった。

何度も海域に出ては深海棲艦と戦って勝って練度も上がっていくというある意味ルーチン作業。

でも、その境界はある時にふとしたことで一気に壊れた。

 

鎮守府全体がいきなり発光をし出して何事かと思った矢先に目も塞いでしまうような輝きが私達を覆った…。

そして次に気づいた時にはまるで本物の風景のような景色が窓の外に広がっていたのだ。

さらに驚いたのは私達の体はデータではなく本物の体になっていた。

それでもう鎮守府に在籍している艦娘は私を含めて大パニック。

当然よね…。

何が起きたのか分からないけど自由に行動できることがこれだけの違いがあるなんて思わなかったから。

でも、少し時間が経過してみんなも一応の落ち着きを見せ始めてきた時に、

 

「曙! 榛名を見ましたカ!?」

「榛名さん…? どういう事? 一緒じゃなかったの?」

「イエス! 榛名が最後に行った場所は提督の執務室デス! でも執務室にもいなかったデース…」

 

それで騒ぎになる鎮守府内。

他にも川内さんなど第二遠征艦隊の面々も行方不明という話を聞きつけてどんどんみんなが不安に押しつぶされそうになってきた時にふとした時に港を見守っていた秋津洲から人がやってくるかも!という知らせを受ける。

それで向かってみると、数隻の船に艦娘だろう人達が私達の鎮守府に入ってこようとしていたのだ。

それで大騒ぎになり、だけど部外者をこの鎮守府に入れるわけにはいかないと、ある意味防衛本能が働いて私達はなんとか追い返した。

だけどそれからも何度か侵入しようと試みる輩が増えてきて、

 

「私と武蔵がこの鎮守府の砦になります」

「ああ。提督がいない今、この鎮守府は私達の手で守らねばならない」

 

大和さんと武蔵さんがそう言って港で一日中艤装を展開して見張りについた。

それからは隠し見てくる視線はあれど大和さん達の姿が抑止力になっていたのかそれ以降は侵入してこようという奴らはいなくなった。

そんなギスギスしだした中で、

 

「司令官に会いたい…」

「提督…」

「川内さん達は無事かな…?」

 

みんながみんな、不安に支配されてしまっていてこのままではやばいというそんなある日の事だった。

もう侵入してこないだろうと思っていた人間がまたやってきたのは。

 

「性懲りもなく…」

「大和、出るぞ…なにやら胸騒ぎがする…。鎮守府中にこのことを伝達しておいた方がいいだろう」

「武蔵がそこまで警戒するなんて…わかりました。曙さん、皆さんに敷地内に待機させておいてもらってもいいですか…?」

「わかりました」

 

それで通信を鳴らして全員を外に出していざ来るであろう人間を迎え撃つ準備を整えた。

まぁ、今まで大した戦力も寄越してこなかったから大和さんと武蔵さんだけでもなんとかなるだろうけど、私もなにかの胸騒ぎを感じていたのだ。

そしてやってきた一隻の船。

それに対して大和さんが副砲で威嚇射撃した。

普通ならこれですぐに撤退するものだろうと思ったけど今回だけは違った。

六、七人ほどの艦娘を投入してきたのだ。

ついに戦いになってしまうのだろうか…?と最初は思った。

でも少し様子が違っていて、やってきたのは行方不明になっていた榛名さんや川内さん達だったのだ。

最初は喜んだ。

でも、どこか榛名さんの喋り方が違うのを感じたのだろう、

 

「あれは榛名じゃないネ…」

 

金剛さんが警戒していた。

そしてその榛名さんに似ている人はここで私達に爆弾のような発言をしてきたのだ。

 

「俺は君たちの提督だ!」

 

その宣言を聞いて私は最初は「はぁ~?」という感想を抱いた。

それはみんなも同じだったようで疑惑の表情を榛名? 提督? どっちでもいいけど向けていた。

だけど話が進んでいく内に自身の事を提督と呼ぶあいつは私達と同じようにいきなりの光とともに榛名さんの体に宿ってしまったという。

そんな胡散臭い話が信じられるわけがない。

だけどあいつは私達を説得し続けた。

そこであいつは私達にとっても禁忌の話をしだした。

…そう、かつてクソ提督のせいで轟沈してしまった艦娘の名前を挙げて前に出て来てくれという話をしだしたのだ。

確かに挙げられた艦娘の名前は轟沈した人たちだったけど、でも、まだ信じられきれない。

 

「俺達に任せろ。いざとなれば吶喊してやるさ」

 

そう言って木曾さん達は前に出ていった。

そして次に起こった出来事に目を疑った。

あいつは突然土下座をしてきたのだ。

そこまでするなんて…。

でも、そこまでして信じてもらいたかったんだろうという気持ちになった。

さらに驚くべきは本物の榛名さんが姿を現して「この方は私達の提督です」と言ったのだ。

そこまで言われてしまってはもう信じるしかないではないか。

それで漣とかも「ご主人様ー!」と叫んでいて、

 

(ああ、やっとみんなが落ち着ける時が来たのね…)

 

と内心で安堵している私がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事もあってこの世界で生きていこうという話になり、今に至っている。

私は執務室に向かいながらも今度はどんな挨拶をしてやろうという気持ちにさせられて、でもいつも通りが一番だと自分で納得する。

執務室の扉の前で深呼吸をしながらも扉を開けて、

 

「用って何よ…? このクソ提督♪」

 

私は笑みを浮かべながらも、透明な榛名さんと話している提督に向かって言い放った。

 

 

 




今回は曙オンリー回でした。
提督だけではつまらないでしょうからたまには艦娘だけの話も絡めていけたらと思います。



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