【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0208話『山城の進水日と提督の気持ち』

 

 

 

 

うちの鎮守府では提督が好きなのは文字通り榛名というのはもう知られているんだと思うんだけどそれとは別に私は山城も同様に好きなのは知る人は少ない事だと思われているらしい。

扶桑や時雨辺りは知っている事なんだけどどうにも認識があまりされていないという。

まぁそれもしょうがないとは思っている。

この体になってからというもの、榛名を構いきりになっているという自覚はあるしな。

それなので今日は山城の進水日というわけなのでなにかと私の思いも改めて知ってもらいたいと思っている。

前に一回山城と気持ちを確かめ合った時があったけどそれ以降はあまり個人として接触する機会はあまりなかったからな。

だいたい山城は扶桑か西村艦隊の面々と一緒にいる事が多いし、いざ一緒になろうとしても一人の時はなぜか警戒されるし。

なので今回は助っ人を用意した。

 

「……というわけで相談に乗ってくれないか扶桑?」

「まぁ……山城の事は応援したいですから別に構わないのですけど……私でよかったのですか?」

「ああ。山城の事なら扶桑が一番知っていると思ったからな」

「そうですね。ですが知っていると思いますが提督も知る限りあの子は私に常に気を集中しているきらいがありますから……」

「うん。それも知っているけど山城本人の本音も知りたいところだし」

 

そう。

前に一回その件を山城に話した時に山城はこう本音を漏らした。

 

『でしたら、でしたら……私の事も守ってくださいね?』

 

と。

だから山城もどこかでは気にしてくれていると思うんだ。

 

「そうですね。私もぜひ山城には素直になってもらいたいわ。でも、あの子は手強いですよ……?」

 

頬に手を添える扶桑は少し難しそうな顔になった。

そこなんだよなー。

山城は本音は中々語らないから手強い事は重々承知している。

 

「まぁなるようになるさ」

「そうですね……」

 

それで早速という感じで扶桑に山城を呼んでもらう事にした。

扶桑の呼びかけならすぐに山城は来てくれるだろうと思うし。

私は扶桑とともに休憩室で待っていることにしている。

しばらくして、

 

「扶桑姉さま! この山城をお呼びですか!って、ゲッ! て、提督も一緒にいるんですか……」

「そんな露骨に嫌そうな顔をしないでくれないか?」

「しょうがないじゃないですか! せっかく扶桑姉さまに呼ばれたと思ったのに提督までおまけでいるんですから!」

「堂々とおまけ発言をするとはなかなかに度胸あるよな……」

「そうよ山城。ちょっと提督に謝りなさい」

 

扶桑にも指摘をされてしまったために山城は抗う事も出来ないんだろうという感じで、

 

「……その、提督すみませんでした」

「うん。まぁ別に怒っていないから大丈夫だよ」

「そうよ山城。提督が本気で怒っているところなんて見たことないでしょう?」

「まぁそうですけど……ところで提督は今日は扶桑姉さまと一緒になにをしているんですか?」

「その件だけど今日は何の日かくらいはわかっているよな?」

「ええ。私の進水日でしたよね?」

「そうだ。だからって言葉も変だけど扶桑と一緒に山城の事を祝おうと思ってな」

「そうだったんですか……ありがとうございます」

 

そう言って素直に感謝の気持ちを言ってくる辺りは嬉しいんだけどまだ続きがあるんだよな。それは扶桑に任せるとしよう。

 

「ウフフ……それと、山城? 提督がね、改めて山城の気持ちを知りたいらしいのよ」

「え゛っ……」

 

つい裏声が出てしまったのか急いで口を抑える山城の姿を見て可愛い奴めと思う。

それで山城は少し顔を赤くさせながらも、

 

「そ、その……提督? あんまり調子に乗らないでくださいね? 私は扶桑姉さまという想い人がいるんですから……」

「それは前にも聞いたよ。だけどもう一度山城の本音を知りたくてな。こうして扶桑にも場を設けてもらっているんだからできれば本音を喋ってもらいたいところだな」

「それは……確かに私も提督とは最初にケッコンカッコカリしたという自覚はありますから多少は提督の事は好きですよ? ですが、提督は榛名の事が一番好きなのでしょう……?」

「はぁー……やっぱり山城も他のみんなと同じ認識でいたか」

 

私は思わずため息を漏らす。

扶桑も扶桑で少し笑みを零しながら、「提督、ご愁傷さまです……」と私を気遣ってくれるのは嬉しいけどね。

 

「な、なにか変な事を言いましたか?」

「ええ、言ったわね山城。あなたは提督の気持ちを理解していないようで私は少し悲しいわ……」

「そんな、扶桑姉さま……!」

 

慌てだす山城に私は追い打ちをかけることにした。

 

「それじゃ改めて言わせてもらうけど……私は榛名と山城の二人を同じくらい大好きだからな。それはケッコンカッコカリを争ってもらった時から変わらない気持ちだよ」

「あう……その、恥ずかしいですからそんな素面で堂々と言わないでください……私もどう反応していいか困ります……」

「山城の思うままに行動していいのよ? 今は私達だけしかいないんだから……」

 

おおらかに扶桑は笑う。

こういう時はやっぱり扶桑は頼りになるよな。

山城は扶桑の物言いでやっぱり色々とテンパっているし。

と、そこに榛名が表に出てきて、

 

《山城さん、大丈夫ですよ。あなたの本当の気持ちを教えてください。前にも言いましたけど私は山城さんに勝負で負けてしまっていますから……》

「榛名までそちらにつくのね……」

 

もはやここには味方はいないと悟った山城はどうしていいかという感じだけどしばらくして覚悟が決まった表情になったのか、

 

「その……提督、それではもう一度聞かせてください。もし私がピンチになったらすぐに助けてくれますか?」

「ああ。必ず助けるよ」

「それと……私を最初に選んだことも後悔していませんよね?」

「していないよ。だから山城もそこは最初の絆を結んだ仲として誇ってもらっても構わない」

「そうですか……それでは、その……最後に聞きます。こんな事を改まって聞くのは今後一切ないと思いますからしっかりと聞いてくださいね?」

「うん、わかったよ」

 

そして山城は一回深呼吸をして気持ちを落ち着かせたのかさらに真剣な表情になって、

 

「でしたら……でしたら榛名と同じくらいに私の事を愛してくれますか……?」

「ああ……それは誓うよ。だから山城ももう不安にならなくていい。今後なにか困った事があったらすぐに私の事を頼ってくれ」

「わかりました……提督、その気持ちはありがたく受け取っておきますね。…………もう二度とこんな恥ずかしい事は聞きませんからね!? いい加減調子に乗りますと主砲をお見舞いしますからね!」

「あはは……それは怖いな。大丈夫、山城の気持ちを確認できただけでかなりの収穫だからもう聞かないから安心してくれ」

「山城、とっても可愛かったわよ」

《はい。榛名も少し見とれてしまいました……》

 

それから扶桑と榛名に少しの間山城は可愛がられていたために山城は顔を盛大に真っ赤にしてのは記憶に残った。

最後に進水日の贈り物も贈ったのでそれで喜んでもらえてよかったと思う。

 

 

 




今回は山城の進水日ともあり最初の嫁艦ですのでこんな話を書いてみました。
こんなに山城は素直じゃないだろう……というツッコミは無しの方向でお願いしますね。



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