【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0209話『初霜と雪風の本音の話し合い』

 

 

 

 

 

………私は、レイテ沖海戦でも生き残ってしまったためにあの坊の岬沖海戦でも死力を尽くすつもりだった……。

だけど、雪風と共にまたしても生き残ってしまった。

それが私の後悔の一つ。

どうせなら一緒に逝きたかったという想いもあるけどそれはすなわち乗員の人達も巻き添えにするという軽々しい言葉だから私にはできなかった。

そして迎えた本土決戦ではついには空襲を受けて一方的に撃沈されてしまった。

あの後どうにか生き残ったらしい雪風の経緯を艦娘として顕現した後に資料を読み漁って知って涙を流したのも記憶に残っている……。

 

「雪風……」

「はい。なんでしょうか?」

 

雪風はこうして私の進水日を祝いに私の部屋に来てくれているけどどうしても罪悪感を感じてしまっている自分がいるのを自覚する。

雪風自身もいつも通りの明るい笑顔を浮かべているけど、心の内ではどんなことを思っているのかわからない。

そこがどうしても悔しいと感じてしまう。

 

「ねぇ雪風。私にあなたの気持ちを教えてほしいの……」

「雪風の、気持ちですか……?」

「ええ。涼月さんが来ることが分かっている今、坊の岬沖海戦での生き残り組みがまた増える事になるわ。それでも終戦後も生き残ったのは雪風、あなただけよ。そして他国の船として連れてかれたあなたをどうしても悲しんだと思うの……だから知りたいの。雪風の気持ちを……」

「初霜さん……」

 

それで雪風は少しの沈黙の後に語りだす。

 

「……そうですね。雪風は皆さんが沈んでいく中で最後まで生き残ってしまったという幸運艦とか言われますがそれでも乗員の皆さんも必死に国のために戦っていました。だからというわけではないですが、幸運艦という呼ばれ方は本当はあまり好きではありません」

「やっぱり……そうなんですね」

「ええ……」

 

雪風の本音はやはり当たりでしたか。

そうですよね。

私も武勲艦とは言われていましたが正直言って複雑な気持ちでしたから。

それはつまり数々の仲間の沈む姿も見てきたわけですから……。

 

「でも、今はもう気にしていません! また皆さんと会えましたししれーという優しい人が雪風たちを指揮してくれますから安心していますから」

「そう……そうよね。それは私も同じ気持ちだわ。提督に会えたからこうして皆さんともまた時を一緒に過ごせる。こんなに嬉しい事はありません」

「はい!」

 

それで私達はお互いに今の現状を感謝する形になった。

 

「でしたら初霜さんはどうだったんですか……?」

「え? なにが……?」

「はい。こうして雪風が進水日のお祝いに来たのを疎ましく感じましたか……?」

「そんなことはないわ! 雪風が来てくれたのをとても嬉しく感じましたから!」

「だったらいいのです。雪風は……みなさんの喜ぶ笑顔を見るのが大好きなんです」

 

嬉しそうに笑う雪風の笑顔を見て、やっぱり雪風には敵わないなと思う自分がいた。

この子はどこでもやはり笑顔を絶やさない子でいるのだ。

それがどれだけ皆さんを勇気づけている事かが分かる。

 

「まったく、雪風はどうしてそんなに強い子なんですか」

「当然です。雪風は皆さんより少しだけですけど長生きしましたから! 確かに名前も変わって他国に使われたのは少し思う所もありますけど、それでも人を救い続ける事には変わりありませんでしたから……」

「そう……」

 

雪風は胸に手を添えて過去の事を思い出しているのかしら?

とってもその姿が尊いものに感じたわ。

 

「立派よ雪風。貴女の事を誇らしく思うわ」

「えへへ、ありがとうございます!」

 

そんな時でした。

私の部屋の扉がノックされたので私は返事をしました。誰が来たのでしょうか……?

 

『私だ。入ってもいいか初霜?』

「しれーです!」

「そうですね。はい、入っても大丈夫ですよ提督」

『わかった。それじゃ入らせてもらうよ』

 

そう言って提督は私の部屋に入ってきました。

その手にはなにかが握られていて、おそらく私に贈るものだと分かったので少しですが胸が熱くなりました。

提督は進水日の方々にはいつもなにかしらの贈り物を贈っているという話は聞いていましたがまさか私にまで持ってきてくれるなんて……。

 

「雪風もいたのか」

「はい! しれーも初霜さんのお祝いに来たんですか?」

「そうだ。だからお祝いの品も選んできたもんだからな」

 

提督はそう言って笑みを浮かべます。

ああ……どうしてでしょう。提督の笑顔が少し綺麗すぎて見れません。

嬉しいという気持ちが溢れてきましてどうにかなってしまいそうです。

だから少しでも感謝の気持ちを伝えようと言葉を紡ぎました。

 

「あの、提督……私のためにありがとうございます」

「気にするな。私がしたいだけでやっている事だからな」

「しれーはとっても優しいですね!」

 

雪風はそう言って提督に抱きついていました。

こういう時は気持ちを素直に表現できる雪風の事が羨ましいと感じてしまいます。

私も素直に提督に抱きついけたらどれだけいいか。

でも、この距離感も嫌いではありません。

そう思っていると提督はなにかを思ったのか私の頭を撫でてくれました。

 

「初霜がなにを思いつめているのかわからないけど、たまには素直になってもいいんじゃないか? 気持ちをしっかりと伝えるのもこういう時にしかできないことだぞ」

「そ、そうですね……それでは提督。私も、その……提督に抱きついても構わないでしょうか……?」

 

私は勇気を振り絞ってそう言いました。

すると提督は笑顔を向けてきて、

 

「ああ。大丈夫だよ」

「はい……」

 

それで私はおずおずと提督に抱きつきました。

少しですが嬉しい気持ちが溢れてきました。

 

「初霜さんもたまにはいいものですよ! しれーはとっても暖かいですから」

「そうですね。私も今実感できました」

「ははは。なんならいつでもいいんだぞ?」

「それは、さすがに恥ずかしいです……」

 

私はついそう言ってしまいましたがそれでもこうしている間はどこか素直になれると思いました。

やっぱり提督は優しいですね。私の事もこうして気遣ってくれますから。

今日は私の進水日でもあり雪風や提督にも祝ってもらった最良の日となりました。

 

 

 

 




今日は初霜の進水日でしたので書かせていただきました。
昨日は寝落ちしてしまってつい20分前にこの話を書き終えたので少しいつもより荒いですがすみませんでした。



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