【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0211話『浦風、頑張るけん!』

 

 

 

 

今日は浦風を秘書官としている。

それはとうとう駆逐艦の育てる予定の残り人数が18人になったのでちょうど浦風を育て中だからであるのだ。

 

「提督さん。今日はうちに任しとき!」

「ああ。頼むよ浦風」

「あははー。提督さん、ちと真面目すぎるのう。もう少し肩の力を抜いた方がいいけん!」

 

浦風はそう言って笑みを浮かべる。

もう恰好も寒い事もあって腕まくりはしないで長袖を着て上着も羽織っているけど、それでもどこかさばさばしているようなイメージがあるから夏が似合うという感じなんだろうなぁ……。

 

「……ん? 提督さん、どしたの……? うちの顔を見たかってなんの起きへんよ?」

「いや、すまない。どうしても浦風は夏のイメージの方が強いから厚着をしていると少し不自然な感じがしてしまってな」

「そうかな? じゃけぇ提督さん、うちの事やらしい目で見てるんじゃないけ?」

「そんなことはないぞ」

「ホントかー? まぁいいか。……そうじゃ! 榛名姉さん、ちょっとええか?」

 

浦風が榛名の事を呼んだので何事かと思いながらも榛名が姿を現してきて、

 

《浦風さん、どうしました?》

「うん。榛名姉さんなら提督さんの好みの味を知っていると思ったんじゃ!」

《え、ええ……。いつも提督の食べるものは把握していますから知っていますけど、どうして今それを……?》

「うん。提督さんになにか美味しいものを作ってやりたいと思ったんじゃ!」

 

浦風はそう言って笑みを浮かべる。

その自然な笑みが私の事を思ってやっているという事がよくわかるものだから少し嬉しくもあるな。

だけどそこで榛名が少し拗ねているのか頬をふくれさしてしまっている。どうしたんだ……?

 

《浦風さんはいいですよね……榛名もできることなら提督にお料理を作ってあげたいのに》

「榛名姉さん……そうじゃね。確かに榛名姉さんの気持ちも考えもせずにすまんかった。だけど、いつか榛名姉さんも自由になれる日が来ると思うんじゃ。だから今は我慢してほしいんじゃ……」

《浦風さん……すみません。少し大人げなかったですよね》

「いいんじゃ。榛名姉さんは謂わば禁欲状態をずっと続けているようなものじゃ。だからたまには感情を発散させておいても罰はあたえらんて!」

「浦風の言い分は納得できるな。榛名、不満があったらすぐに言ってくれ。なにか出来る事はするから」

《提督まで……本当にすみませんでした》

 

榛名はそう言って私と浦風に頭を下げてきた。

おそらく少しの罪悪感を感じているんだろうな。

別に榛名の感情は悪いものじゃないしいいと思うけどな。

むしろずっとこんな状態でストレスも溜まらない人も珍しいものだろう。

榛名は我慢しているだけでたまには息抜きもしないとやってられないだろう。

そうだな。

 

「浦風、なにか榛名にできることはないか?」

「そうじゃねぇ……」

 

二人でそれで考え込む。

脇の方で榛名が《あ、あの……本当に大丈夫ですから》と言っているけど今は聞いてあげない。

榛名の労いも大切な事だからな。

 

「そうじゃ。金剛姉さんのところにいくのはどうじゃろう? きっと霧島姉さんもいると思うしなにかと相談に乗ってくれるお思うんじゃ」

「そうだな。そうと決まれば……浦風、仕事の方はどうなっている?」

「無論大事なものはすでに終了しとるよ。ばっちしじゃ!」

「よし。それじゃ早速金剛達のところに行くとしようか」

「がってんじゃ!」

《ああ……提督と浦風さんが私の話を聞いてくれません……》

 

榛名の虚しい声が聞こえてくるけど今は我慢していてくれ。

それから私と浦風は戦艦寮に移動をしている。

おそらく金剛の部屋でみんなは集まっているだろうからな。

 

「金剛姉さん、おるかー?」

『オー、その声は浦風デスカ! どうしましたカ?』

「うん。今提督さんも一緒のおるんじゃけど部屋の中に入っても大丈夫じゃけぇ?」

『テートクもいるんですカ!? それならウェルカムデース!』

「……だそうじゃ。提督さん、それじゃ入らせてもらおうかの」

「そうだな。金剛、入るぞ?」

 

そして金剛の部屋の中にドアを開けて入らせてもらうとちょうどよく霧島と比叡も一緒にいた。

 

「司令、どうしましたか?」

「司令も金剛お姉さまのお茶会に参加しにきたんですか?」

「まぁ似たようなものだよ。少し相談があってな」

「テートク! なんでも聞いてください! ワタシならなんでも相談に乗るネ!」

「そうか。それじゃさっそく内容を教えようか」

 

それで私と浦風は三人に榛名のストレスが溜まっている事を伝えると、

 

「オー……やはりハルナはストレスが溜まっていたんですネ……」

「そりゃそうですよ、金剛お姉さま。榛名はずっとこんな自由に触れない状態なんですから……」

「比叡お姉さまの言う通りですね。榛名……なにかあるのならこの霧島にも相談してくださいな? 双子の姉妹なんですから」

《霧島……はい、ありがとうございます》

「そうじゃよ榛名姉さん。榛名姉さんかて別に誰も縛ってはおらんのじゃから自由に発言してもいいんじゃ。提督さんもきっと榛名姉さんがしたい事なら応えてくれると思うしな。じゃろう? 提督さん」

 

浦風にそう聞かれたので私は「そうだな」と答えた。

だって私だけの身体じゃないんだから榛名の事も思いやってやらないと罰が当たってしまうからな。

 

「そうデース! ハルナ? 我慢を溜めちゃノーなんだからネ?」

《はい、すみません。金剛お姉さま》

「それなら良いんですヨ! テートクもたまには榛名の我が儘も聞いてやってくださいネ?」

「わかっているさ」

 

その後に私達は少し金剛達とお茶会をしていった後に執務室へと戻る道すがらで、

 

《浦風さん、それに提督も……本日は私の我儘に付き合ってくださりありがとうございました》

「気にするな。たまには息抜きも必要だからな」

「そうじゃよ。榛名姉さんかていつまでもその状態は嫌じゃろう? いつか分離できる日を楽しみにして待っとるんじゃ! 必ずうちらがいい方法を見つけるけんね!」

《はい!》

 

それで今日一番の榛名の笑顔を見れたので良かったと思う。

こういう場を作ってくれた浦風には感謝だな。

ちなみに今日のお夕飯は浦風特製の食事を振る舞われて私も楽しめた感じだった。

 

 

 




今回は浦風回でした。
嫉妬する榛名もそれはそれで……。
本当に普通の精神をしていたら榛名の状態はおかしくなっても仕方ないですからね。




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